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所得税徴収高計算書(源泉所得税の納付書) — 法令では納付書と計算書は別の書類。令和8年9月下旬以降の税務署窓口配付分に様式変更を予定

源泉所得税の納付書(所得税徴収高計算書)には、支払の区分ごとの欄に、支払年月日・人員・支給額・税額を書きます。居住者に支払う通常の給与は「俸給、給料等」欄に書き、賞与と日雇労務者の賃金はそれぞれの欄に分けます。押さえる点は次の4つです。

欄ごとの書き方は「人員」の数え方は欄ごとに違う、遅れたときの加算税は不納付加算税がゼロになる条件にまとめました。制度そのもの(誰が・何から・いつ引いて、どこへ納めるのか)は源泉徴収とはにまとめています。

用紙は10種類。給与用は「一般用」と「納期特例分」で別

居住者に支払う給与の源泉所得税には、給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書を使います(納税の告知により納付する税金には使いません)。ただし同じ給与用でも2種類あり、国税庁が様式を定めた事務運営指針では別紙3が給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(一般用)、別紙4が同(納期特例分)と分かれています。納期の特例の適用を受ける分は、使う用紙そのものが変わります。一般用の紙に半年分を書いて出す誤りは、ここを知らないと起きます。

事務運営指針の別紙様式主に使う場面
別紙3給与所得・退職所得等(一般用)居住者に支払う給与・賞与・退職手当と税理士等の報酬で、納期の特例の適用を受けない分
別紙4給与所得・退職所得等(納期特例分)居住者への給与・退職手当・対象報酬の納期特例適用分
別紙6報酬・料金等居住者に国内で支払う原稿料・デザイン料・講演料などの報酬・料金
別紙5非居住者・外国法人の所得非居住者・外国法人への各種所得の支払
別紙1・2・7・8・9・10利子等/配当等/定期積金の給付補てん金等/上場株式等/償還差益/割引債の償還金に係る差益金額金融機関・発行体など

どの用紙も、源泉徴収が必要な支払に使います。別紙3と別紙4は、納税の告知により納付する税金には使いません。

士業への報酬でも、21種類の業務に関するものは別紙3(給与用)の「税理士等の報酬」欄に書き、原稿料やデザイン料は別紙6に書きます。同じ「報酬」でも用紙が分かれる点は間違えやすいところです。

源泉徴収税額を計算する(令和8年分の月額表・賞与率で自動計算)

「人員」の数え方は欄ごとに違う

国税庁の記載要領を読むと、同じ「人員」という項でも数え方が変わります。ここは用紙の上でいちばん間違えやすいところです。

欄「人員」に書く数「支払年月日」・その他の記載
俸給、給料等(一般分)支給した実人員実際に支払った年月日。同じ月に2回以上支払ったときは最後の支払年月日
同(納期特例の場合)各月の実人員の支給月分の合計期間内の最初と最後の支払年月日(1回だけの支払は左側の年月日のみ)
日雇労務者の賃金一般分は各月の延べ人員。納期特例分は各月の延べ人員の支給月分の合計支給額は賃金の総額、税額は源泉徴収税額の合計額
賞与(役員賞与を除く)俸給、給料等の欄に準じる俸給、給料等の欄に準じる
役員賞与俸給、給料等の欄に準じる支払確定後1年を経過した未払分を納付するときは、支払年月日の記載を要しない

「日雇労務者の賃金」欄は、日額表の丙欄を適用して源泉徴収しているものを書く欄です。賞与と役員賞与の区分などは、次のとおりです。

税額表のどの欄を使うかについては源泉徴収税額表の見方で扱っています。

納付書を別に作成する3つの場面

国税庁の記載要領は、次の場合に納付書を別に作成するよう求めています。

  1. 俸給・給料等の支払年月と支払確定年月が異なるとき。支払確定年月の異なるものごとに分け、摘要欄に支払確定年月を書きます。
  2. 支払確定後1年を経過した日において未払となっている役員賞与(使用人兼務役員の使用人職務分を除く)を納付するとき。摘要欄に「1年経過賞与分」と書きます。
  3. 租税条約の規定により所得税が免除される者の分。摘要欄に「租税条約適用分」と書きます。外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律第2章の適用者を含みます。

2つ目が求められる理由は所得税法183条2項にあります。法人の役員賞与は、支払が確定した日から1年を経過しても支払われていない場合、その1年を経過した日に支払があったものとみなして源泉徴収の義務が立ちます。この分を納付するとき、「納期等の区分」にはその1年を経過した日の属する年月を書き、「支払年月日」欄の記載は要しません。支払の確定年月日は「同上の支払確定年月日」欄に記載します。

年末調整の結果は、年末調整による不足税額と年末調整による超過税額の各欄に、その月に実際に徴収した額・還付した額を書きます。ただし年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書を税務署に提出して還付を受ける場合は、その金額を含めることはできません。年末調整の超過額の還付そのものは所得税法191条、翌年に繰り越して徴収する不足額は同192条1項が定めています。

給与担当で年末の法定調書も作成する方は、年間の支払額を集計して法定調書合計表の記入範囲を確認できます。

納期限 — 土曜日は法律ではなく政令が足している

給与から預かった所得税の納期限は、給与を支払った月の翌月10日です。所得税法183条1項が、居住者に対し国内において給与等の支払をする者について「その徴収の日の属する月の翌月十日まで」と定めています。

納期の特例の対象は、承認を受けた事務所等で支払った給与等・退職手当等と、204条1項2号の報酬・料金について徴収した所得税です。給与等・退職手当等には、非居住者に支払うものを含みます。承認を受けた日の属する期間は、その日の属する月以後の支払分に限ります。

承認を受けられるのは、給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者です。条文では、居住者に国内で給与等・退職手当等を支払う者の、支払事務を取り扱う事務所等のうち、給与の支払を受ける者が常時10人未満であるものとされ、所得税法184条に規定する者は除かれます。人数の数え方は源泉所得税の納期の特例で扱っています。

ここで実務が引っかかるのが10日が休みだったときです。国税通則法10条2項は次のように定めています。

国税に関する法律に定める申告、申請、請求、届出その他書類の提出、通知、納付又は徴収に関する期限(時をもつて定める期限その他の政令で定める期限を除く。)が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他一般の休日又は政令で定める日に当たるときは、これらの日の翌日をもつてその期限とみなす。

この条文の本文に土曜日は書かれていません。受けている国税通則法施行令2条2項が、次のように定めています。

法第十条第二項に規定する政令で定める日は、土曜日又は十二月二十九日、同月三十日若しくは同月三十一日とする。

10日が土曜なら日曜も飛ばし、月曜も祝日等ならさらに繰り下げて休日明けの日が期限になること、そして納期特例の1月20日が土日にかかったときも同じ扱いになることは、この2本を重ねて初めて出てきます。国税庁「源泉徴収のあらまし」は、休日・土曜日の納期限について国税通則法10条2項と同施行令2条2項を併記しています。

給与の支払があれば納付税額0円でも提出する

給与の支払があっても、その給与について納付する税額が生じなかった場合、納める金額はありません。給与の支払があるこの場合も、計算書としての提出は必要です。国税庁は e-Tax のよくある質問(更新日 令和6年5月20日)で、書面による場合と同様に、合計額(納付税額)を0円と入力した徴収高計算書データを作成のうえ送信するよう案内しています。

納付書と計算書の入れ子で見ると、この扱いは自然に読めます。0円になるのは金銭と納付書の役割だけで、区分ごとに何人分いくら払ったかを申告する計算書の役割は消えていないからです。納付が不要であることと、提出が不要であることは別です。

0円の紙をどこへ出すか 金額が0円なので金融機関の窓口では受け付けられません。e-Tax で送信するか、所轄の税務署に提出する(郵送を含む)ことになります。毎月の作業として e-Tax に寄せておくと、0円の月だけ経路が変わるという事故が起きません。年間の締切の並びは経理の年間スケジュールにまとめています。

遅れたとき — 不納付加算税がゼロになる条件

納期限に間に合わなかった場合、原則として不納付加算税と延滞税がかかります。不納付加算税の主な扱いは次のとおりです。期限内に納付しなかったことに正当な理由がある場合は、国税通則法67条1項ただし書により徴収されません。

状況根拠不納付加算税
税務署から納税の告知を受けて納めた67条1項10%
告知前に納付し、調査による告知を予知した納付でもない67条2項5%
上の行に当たる納付で、下の2つの条件を両方満たす67条3項0%

表の率は、計算の基礎となる税額に掛ける割合です。計算の基礎となる税額の1万円未満は切り捨て、加算税の確定金額が5,000円未満なら全額を切り捨てるため(国税通則法118条3項・119条4項、下記)、表の率に当たっても実際の不納付加算税が0円になることがあります。

ゼロになる2つの条件

3項がその救済です。対象は2項に当たる納付、つまり納税の告知を受けることなく、調査による告知を予知せずに法定納期限後に納めたものに限られます。そのうえで、次の2つを両方満たす必要があります。

  1. 法定納期限から1か月を経過する日(その日が休日・土曜日等なら休日明けの日)までに納めたこと。
  2. その法定納期限の属する月の前月の末日から遡る1年間に、納税の告知を受けたことがなく、告知を受けることなく法定納期限後に納付した事実もないこと。

2つ目は、3項の「納付する意思があつたと認められる場合として政令で定める場合」の中身で、国税通則法施行令27条の2第2項が定めています。要するに、その期間に法定納期限が来た源泉徴収等による国税について過去1年の実績がきれいであることです。各号のかっこ書には、正当な理由がある場合の告知や期限後の納付などを数えない除外があります。条文は記事の終わりに載せました。

注目すべきは期間の切り方です。「過去1年」の終点が今回の法定納期限ではなく、その法定納期限の属する月の前月の末日になっています。8月10日が納期限なら、見るのは前年7月31日から今年7月31日までの1年で、今回の遅れ自体は数えません。この一手間の書き方があるおかげで、初めて1日遅れた会社は3項の対象になり得ます。

納期限に遅れた 告知を受けて(又は調査で予知して)納めた? はい 10%(67条1項) いいえ(予知なしの自主納付) 法定納期限から1か月以内に納めた? (その日が休日・土曜日等なら休日明けの日まで) × 5%(67条2項) ○ 前月末日から遡る1年間に法定納期限が来た源泉徴収等の国税に 告知も期限後納付も無い?(第1号・第2号の両方) ○ 0%(67条3項) × 5%(67条2項)
過去1年を見る期間の終点は、今回の法定納期限ではなく、その法定納期限の属する月の前月の末日である。今回の遅れそのものは判定に入らない。図の率は計算の基礎となる税額に掛ける割合で、正当な理由がある場合は徴収されない。

端数の切捨てで0円になる場合

端数の切捨てもここで効きます。67条2項の5%が適用される場合に本税が10万円未満なら、不納付加算税は計算しても5,000円に届かないので切り捨てられて0円になります。10%のほうでも本税5万円未満なら同じです。小規模な事業所で「遅れたのに加算税の通知が来なかった」ことがあるのは、多くがこの端数処理の結果です。

根拠は2つの条文です。国税通則法118条3項は、附帯税の計算の基礎となる税額の1万円未満を切り捨てると定めています。

附帯税の額を計算する場合において、その計算の基礎となる税額に一万円未満の端数があるとき、又はその税額の全額が一万円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。

さらに119条4項は、附帯税の確定金額そのものについて、加算税は5,000円未満なら全額を切り捨てると定めています。

附帯税の確定金額に百円未満の端数があるとき、又はその全額が千円未満(加算税に係るものについては、五千円未満)であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。

延滞税にも端数処理があります。計算の基礎となる税額は1万円未満を切り捨て、延滞税の確定額は100円未満の端数を切り捨てます。確定額全体が1,000円未満なら全額を切り捨てるため、納付額が0円になる場合もあります。国税通則法60条2項の本則は年14.6%、納期限の翌日から2か月を経過する日までは年7.3%ですが、実際に適用されるのは租税特別措置法の特例による割合です。国税庁が公表している割合は、令和8年1月1日から令和8年12月31日までが年2.8%(2か月以内)と年9.1%(2か月超)で、令和7年の2.4%・8.7%から引き上げられています。

令和8年9月下旬以降の税務署窓口配付分の様式変更予定

国税庁は、税務署の窓口で配付する所得税徴収高計算書(納付書)について、令和8年9月下旬以降の税務署窓口配付分から、A4三つ折り程度の複写式をA4単票式へ変更する予定としています。変更点は次のとおりです。

項目変更前令和8年9月下旬以降の税務署窓口配付分の変更予定
納税者を識別する番号整理番号(8桁)お問い合わせ番号(13桁)。窓口配付分はあらかじめ印字されるので記載不要
元号の記載—「納期等の区分」欄等に元号の記載欄を追加
徴収義務者欄—郵便番号とフリガナの記載欄を追加
用紙の形A4三つ折りサイズ程度の複写式A4サイズの単票式(窓口配付分)

実務への影響がいちばん大きいのは最後の行です。単票式は複写ではないので、税額などの記載事項を各片に3回書く必要があります。国税庁もこれを負担と見ており、記載事項を市販のプリンターで印字するツールをホームページで提供しています。

年末調整の時期に送られてくる分は、引き続き複写式 国税庁は、年末調整の時期に税務署から源泉徴収義務者へ送付する納付書については、引き続き複写式の様式を予定しているとしています。また、手元の旧様式(整理番号欄がある複写式)は令和10年9月頃まで使用できる予定とされています。

もう1点、読み替えの注意が公表されています。変更後の様式の「納期等の区分」欄には源泉所得税、復興特別所得税及び防衛特別所得税と印刷されますが、令和8年12月以前に生じた所得についての源泉徴収税額には防衛特別所得税を含まないため、それまでの期間は源泉所得税及び復興特別所得税と読み替えるよう案内されています。新しい紙に印刷されている名前のほうが、しばらくのあいだ現実より先を走ることになります。

細かいところでは、変更後の様式の左側にある2次元コードは税務署の内部手続で使うもので、読み取って納付することはできません。またA4単票式は切り離さずに金融機関等へ提出します。納付書は必ず税務署や業務センターから交付された所定の用紙を使うこととされているため、自分で印刷した用紙で代用することはできません。

そもそも紙をやめてしまえば、この変更の影響はほとんど受けません。e-Tax で徴収高計算書データを送信し、納める税額がある月はそのまま e-Tax で納付すれば、用紙を書く必要も金融機関へ出向く必要もなくなります。0円の月の扱いが変わらない点でも、電子に寄せておくほうが事故が減ります。

「税理士等の報酬」欄の21士業は、法律12+政令9

給与用の納付書には「税理士等の報酬」という欄があり、記載要領はそこに書く資格を21種類、名前で挙げています(外国法事務弁護士は弁護士に含むと明記されています)。士業なら何でもこの欄ではなく、居住者に国内で支払う、この21種類の業務に関する報酬・料金で、源泉徴収が必要な支払かどうかが分岐です。

行政書士がこの列挙に無いことは、実務でよく話題になります。

この欄の対象に含まれるもの・除かれるもの

支払う側が個人のとき・旅費と宿泊費・消費税等の扱いは、原稿料などの報酬と同じです。

司法書士など3士業の報酬は、摘要欄に「司」と表示する

記載要領は、司法書士・土地家屋調査士・海事代理士の業務に関する報酬・料金について摘要欄に「司」と表示し、人員・支給額・税額を書くよう求めています。これらの報酬は、一般の士業報酬と源泉税額の計算方法が異なります。

区分根拠源泉徴収税額
弁護士・税理士等所得税法205条1号同一人への1回の支払の100万円以下の部分に10.21%、100万円を超える部分に20.42%
司法書士・土地家屋調査士・海事代理士所得税法205条2号、所得税法施行令322条同一人に対し一回に支払われる金額から1万円を引いた残額に10.21%

率はどちらも復興特別所得税を含みます。3士業には、100万円を超える部分を20.42%にする区分はありません(所得税法205条2号の税率は百分の十だけです)。

原稿料・デザイン料・講演料などで源泉徴収が要らない主な場合

このほか、同一人に1回に支払うべき金額がおおむね5万円以下の次の賞金・謝金等は、源泉徴収をしなくて差し支えありません。

  1. 懸賞応募作品等の入選者への賞金等
  2. 新聞・雑誌等の読者投稿欄への投稿者又はニュース写真等の提供者への謝金等
  3. ラジオ・テレビ放送の聴視者番組への投稿者又はニュース写真等の提供者への謝金等

2と3は、あらかじめ投稿・提供を委嘱した人への対価を除きます。

21という数は、法律12+政令9の合成

この21という数はどこから来ているのかというと、法律と政令の合成です。まず所得税法204条1項2号が、次の者を名指ししています。

弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金

ここで名指しされているのは12で、残りは「政令で定めるもの」に投げられています。受けている所得税法施行令320条2項が、次の者を足します。

計理士、会計士補、企業診断員(企業経営の改善及び向上のための指導を行う者を含む。)、測量士補、建築代理士(建築代理士以外の者で建築に関する申請若しくは届出の書類を作成し、又はこれらの手続を代理することを業とするものを含む。)、不動産鑑定士補、火災損害鑑定人若しくは自動車等損害鑑定人(自動車又は建設機械に係る損害保険契約(保険業法第二条第四項(定義)に規定する損害保険会社若しくは同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約又は同条第十八項に規定する少額短期保険業者の締結したこれに類する保険契約をいう。)又はこれに類する共済に係る契約の保険事故又は共済事故に関して損害額の算定又はその損害額の算定に係る調査を行うことを業とする者をいう。)又は技術士補(技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者を含む。)

この項が足しているのは9(末尾の技術士補を含む)で、12+9=21。納付書の欄に並ぶ21種類は、法律が名指しした12と、政令が足した9をそのまま並べたものでした。

納付書と計算書は、法令上べつの書類が1枚になったもの

まず納付書のほうです。国税を納めるときの手続を定めた国税通則法34条1項は、次のように書いています。

国税を納付しようとする者は、その税額に相当する金銭に納付書(納税告知書の送達を受けた場合には、納税告知書)を添えて、これを日本銀行(国税の収納を行う代理店を含む。)又はその国税の収納を行う税務署の職員に納付しなければならない。

この引用は34条1項のただし書を省いています。ただし書は、証券で納付すること、あらかじめ税務署長に届け出た場合に財務省令で定める方法(特定納付方法)で納付することを妨げないと定めています。

読みどころは添える向きです。納付書にお金を添えるのではなく、お金に納付書を添えると書かれています。納付書は、金銭の付属物として位置づけられています。

そのうえで、源泉徴収した所得税についてだけ、所得税法220条がもう一枚を要求します。

第一章から前章まで(源泉徴収)の規定により所得税を徴収して納付する者は、その納付の際、国税通則法第三十四条第一項(納付の手続)に規定する納付書に財務省令で定める計算書を添附しなければならない。

つまり金銭 → 納付書 → 計算書という三段の入れ子です。所得税徴収高計算書は、いちばん外側にある添付物の、さらに添付物にあたります。源泉所得税だけがこの計算書を要求されるのは、どの区分の支払で何人に総額いくら払い、いくら預かったかを税務署が用紙の上で確認しなければ、納めるべき金額が正しいかどうかを判断できないからです。

① 金銭(税額に相当する金銭) ② 納付書 ← 国税通則法34条1項「金銭に納付書を添えて」 ③ 所得税徴収高計算書 ← 所得税法220条「納付書に計算書を添附」 書式は所得税法施行規則80条 → 別表第三(一)〜(六)の6つ 実務で1枚に見えているのは、②と③が合体した用紙。国税庁の呼び名も「納付書兼所得税徴収高計算書」
源泉所得税の納付は三段の入れ子になっている。給与の支払があれば、納付税額0円でも所得税徴収高計算書の提出が必要である。

様式が10種類ある理由

計算書の書式を定めているのは、所得税法220条から委任を受けた所得税法施行規則80条です。

法第二百二十条(源泉徴収に係る所得税の納付手続)に規定する計算書の書式は、別表第三(一)から別表第三(六)までによる。

この別表第三の枝は6つです。ところが国税庁が実際に定めている様式は10種類あります。事務運営指針(平成20年6月23日付 課法8-3ほか)は、根拠として所得税法施行規則80条だけでなく、同規則107条と租税特別措置法施行規則18条の13の6・19条の4を並べて挙げており、別紙1から別紙10までの10様式を定めています。納付書の種類は、所得税法施行規則だけでは決まっていません。

手元の用紙と別表の書式が違っていても、間違いではない 所得税法施行規則104条は、国税庁長官が別表第三の書式について「所要の事項を付記すること又は一部の事項を削ること」ができると定めています。省令の別表と、税務署の窓口で配られる紙が一字一句同じでなくてよいことは、省令自身が認めています。

不納付加算税の根拠の条文

国税通則法67条2項・3項は、次のように定めています。

(2項)源泉徴収等による国税が納税の告知を受けることなくその法定納期限後に納付された場合において、その納付が、当該国税についての調査があつたことにより当該国税について当該告知があるべきことを予知してされたものでないときは、その納付された税額に係る前項の不納付加算税の額は、同項の規定にかかわらず、当該納付された税額に百分の五の割合を乗じて計算した金額とする。
(3項)第一項の規定は、前項の規定に該当する納付がされた場合において、その納付が法定納期限までに納付する意思があつたと認められる場合として政令で定める場合に該当してされたものであり、かつ、当該納付に係る源泉徴収等による国税が法定納期限から一月を経過する日までに納付されたものであるときは、適用しない。

3項の「政令で定める場合」は、国税通則法施行令27条の2第2項が次のように定めています。

法第六十七条第三項(不納付加算税)に規定する法定納期限までに納付する意思があつたと認められる場合として政令で定める場合は、同項に規定する納付に係る法定納期限の属する月の前月の末日から起算して一年前の日までの間に法定納期限が到来する源泉徴収等による国税について、次の各号のいずれにも該当する場合とする。
一 法第三十六条第一項(第二号に係る部分に限る。)(納税の告知)の規定による納税の告知(法第六十七条第一項ただし書に該当する場合における納税の告知を除く。)を受けたことがない場合
二 法第三十六条第一項(第二号に係る部分に限る。)の規定による納税の告知を受けることなく法定納期限後に納付された事実(法第三十四条第二項(納付の手続)の場合においてその源泉徴収等による国税が第六条の三(電子情報処理組織を使用する方法による納付の手続に係る法定納期限の特例)に規定する日までに納付された事実並びにその源泉徴収等による国税に相当する金銭が法定納期限までに法第三十四条の三第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定による委託に基づき納付受託者に交付されていた場合及びその源泉徴収等による国税について法定納期限までに同項(第二号に係る部分に限る。)の規定により納付受託者が委託を受けていた場合並びに法第六十七条第一項ただし書に該当する場合における法定納期限後に納付された事実を除く。)がない場合

よくある質問

「納付書」と「所得税徴収高計算書」は、同じものですか?

実務で手に取る紙は1枚ですが、法令上は別の書類です。国税通則法34条1項が定める納付書は、納める金銭に添える書類です。所得税法220条は、源泉徴収した所得税を納めるときに、その納付書へさらに財務省令で定める計算書を添付するよう求めています。この計算書が所得税徴収高計算書にあたります。

その月の源泉徴収税額が0円でした。納付書は出さなくてよいですか?

給与の支払があり、その給与の納付税額が0円の場合は提出が必要です。国税庁は、納付税額が0円となる場合でも、書面による場合と同様に合計額を0円と入力した徴収高計算書データを作成して e-Tax に送信するよう案内しています(e-Tax のよくある質問・更新日 令和6年5月20日)。金額が0円だと金融機関の窓口では受け付けられませんので、e-Tax で送信するか、所轄の税務署に提出することになります。納付が不要であることと、提出が不要であることは別だと整理してください。

納期の特例の承認を受けています。毎月使っていた用紙のままでよいですか?

納期の特例の適用を受ける分は用紙が変わります。国税庁の事務運営指針は、給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書について、別紙3を一般用、別紙4を納期特例分として別の様式に定めています。納期特例分の用紙では、納期等の区分の欄に期間の最初と最後の支払年月を書き、人員は各区分ごとに各月の実人員の支給月分の合計を書きます。日雇労務者の賃金の人員や未払の役員賞与の扱いは、欄ごとの書き方にまとめました。

納期限の10日が土曜日のときは、いつまでに納めればよいですか?

期限は休日明けの日になります。国税通則法10条2項は、期限が日曜日・祝日・その他一般の休日・政令で定める日に当たるときは、これらの日の翌日を期限とみなすと定めています。受けている国税通則法施行令2条2項が、政令で定める日を土曜日と12月29日・30日・31日としています。したがって10日が土曜なら、日曜を飛ばし、月曜も祝日等ならさらに繰り下げて休日明けの日が期限になります。納期の特例の1月20日も、土日・祝日等に当たれば休日明けの日まで繰り下がります。

1日遅れて納めてしまいました。不納付加算税はいくらになりますか?

条件によってはゼロになります。税務署の告知を受ける前に、調査による告知を予知することなく自分で納めた場合で、次の2つを満たすときは、不納付加算税は適用されません(国税通則法67条3項)。1つ目は、法定納期限から1か月を経過する日までに納付したことです。2つ目は、その法定納期限の属する月の前月の末日から遡る1年間に、納税の告知を受けたことがなく、告知を受けずに法定納期限後に納付した事実もないことです。休日の扱いや除外は遅れたときの条件で確認できます。実際の適用は税務署の判断になりますので、通知が届いたときは内容を確認してください。

行政書士への報酬は「税理士等の報酬」欄に書きますか?

一般にはこの欄には当たりません。「税理士等の報酬」欄の対象は、所得税法204条1項2号が名指しする12種類と、所得税法施行令320条2項が加える9種類の合計21種類で、行政書士はこの列挙に含まれていません。ただし施行令320条2項のかっこ書により、建築に関する申請・届出の書類作成や手続の代理を業とする者の報酬・料金は、資格名にかかわらず建築代理士の業務として含まれます。また同じ人が別の資格で行う業務や、原稿料など204条1項1号に当たる報酬は扱いが変わりますので、支払の内容ごとに確認してください。

令和8年9月下旬以降に用紙が変わる予定と聞きました。今ある納付書は使えなくなりますか?

すぐには使えなくなりません。国税庁は、旧様式(整理番号欄がある複写式)の所得税徴収高計算書について、令和10年9月頃まで使用することができる予定としています。令和8年9月下旬以降に税務署の窓口で配付する用紙について、A4三つ折り程度の複写式からA4単票式への変更が予定されています。なお年末調整の時期に税務署から送付される分は、引き続き複写式の様式が予定されています。単票式は複写ではないため記載事項を各片に3回書く必要があり、国税庁は印字用のツールを提供しています。

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出典

国税通則法・所得税法・両法の施行令と施行規則をe-Gov法令検索で確認し、様式と記載要領は国税庁の事務運営指針の原文で確認して作成。

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。どの様式を使うか、どの欄に書くか、加算税や延滞税が実際にいくらになるかは事実関係によって変わりますので、実際の判断については所轄の税務署または税理士にご確認ください。

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