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源泉徴収簿とは — 条文に名前の無い帳簿が、源泉徴収の法定義務を1枚でつなぐ。書き方・保存期間・賃金台帳との兼用

結論から言うと、源泉徴収簿は法律で作成を命じられた帳簿ではありません。「源泉徴収簿」という語は、所得税法にも所得税法施行規則にも一度も出てきません(e-Gov法令API v2 で現行の全文を検索して0件)。国税庁の手続案内にも「法令で定められたものではありません」「使用している給与台帳等であっても…それを利用して差し支えありません」と書かれています。正式名称は「給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿」で、国税庁が源泉徴収義務者の事務の便宜のために作って配っている様式です。

ところが、この帳簿が受け持っている仕事は全部が法定義務です。毎月の徴収と翌月10日の納付(所得税法183条)、税額表の甲欄・乙欄の当てはめ(185条)、年末調整(190条)、源泉徴収票の作成(226条)、そして従業員から受け取った扶養控除等申告書の7年保存(同法施行規則76条の3)。源泉徴収簿は、この5つを従業員1人につき1枚でつなぐ計算用紙兼記録簿です。この記事では、令和8年分の様式を上から順に読み、月々・賞与・年末の書き方、保存期間、労働基準法の賃金台帳と1冊にできる条件を、条文にあたって整理します。

源泉徴収簿とは — 条文に名前の無い帳簿

源泉徴収簿は、給与の支払者が従業員1人ごとに、扶養親族等の申告内容・毎月の給与額・控除した社会保険料・徴収した所得税額・年末調整の計算過程を記録する帳簿です。国税庁の手続案内「A2-2 給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿の作成」は、この帳簿の性格を次のように説明しています。

なお、この源泉徴収簿は、源泉徴収事務の便宜を考慮して作成したものであり、法令で定められたものではありませんので、源泉徴収義務者の皆様が使用している給与台帳等であっても、毎月の源泉徴収の記録などが分かり、年末調整のためにも使用できるものであれば、それを利用して差し支えありません。

つまり様式は任意です。国税庁のPDF(令和8年分は「給与所得に対する源泉徴収簿」と「退職所得に対する源泉徴収簿」の2種類、入力用PDFもある)を使っても、給与ソフトが出力する台帳でも、自作のエクセルでもかまいません。条件は2つだけ — ①毎月の源泉徴収の記録が分かること、②年末調整に使えること。

「法令に無い」の確かめ方所得税法(令和8年8月12日施行の現行版)と所得税法施行規則(令和8年5月22日施行版)の全文を e-Gov法令API v2 で取得し、「源泉徴収簿」という文字列を検索するとどちらも0件です。施行規則の第四編第一章「給与所得に係る源泉徴収」(73条〜76条の3)にあるのは、扶養控除等申告書などの申告書の記載事項と保存の規定であって、帳簿の規定ではありません。なお所得税法183条・185条・186条・187条・190条・194条・198条・226条は、令和8年12月1日施行の改正版でも本文が同一であることを両リビジョンの比較で確認しています。

なぜ「法令に無い帳簿」が要るのか — つないでいる5つの法定義務

作成義務が無いのに実務で必ず作るのは、源泉徴収簿の各欄がそのまま条文上の義務の計算過程になっているからです。

源泉徴収簿 法令の定め無し・国税庁の様式 (給与台帳等で代用可) 所得税法183条 支払の際に徴収・翌月10日までに納付 所得税法185条・186条 税額表の甲欄・乙欄/賞与の算出率 所得税法190条 年末調整(2,000万円以下・年最後の給与) 所得税法226条 源泉徴収票を各人別に2通・翌年1月31日 所得税法施行規則76条の3 受け取った申告書は7年保存 労働基準法108条 賃金台帳(こちらは法定・兼用できる)
源泉徴収簿そのものに法令の根拠は無いが、その欄が受け持つ5つの仕事(上段と下段左・中)はすべて法定義務。点線の賃金台帳は労働基準法上の法定帳簿で、源泉徴収簿と1冊にできる。

起点になる条文が、給与の源泉徴収義務を定めた所得税法183条1項です。

居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

「その支払の際」に徴収する税額は185条(賞与以外)と186条(賞与)で決まり、どちらも扶養控除等申告書を出しているか(甲欄か乙欄か)源泉控除対象配偶者・源泉控除対象親族の数で税額表の行が変わります。源泉徴収簿の右上「扶養控除等の申告・各種控除額」欄は、この判定に要る情報を1年分まとめて置く場所です。年末には190条の年末調整で1年分の過不足を精算し、その結果を226条の源泉徴収票に写します。

その年において支払の確定した給与等について、その給与等の支払を受ける者の各人別に源泉徴収票二通を作成し、その年の翌年一月三十一日まで(年の中途において退職した居住者については、その退職の日以後一月以内)に、一通を税務署長に提出し、他の一通を給与等の支払を受ける者に交付しなければならない。

源泉徴収票の「支払金額」「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」「源泉徴収税額」は、後述する年末調整欄の⑦・⑪・㉑・㉖をそのまま転記する数字です。源泉徴収簿を付けていないと、源泉徴収票が書けない、と言い換えてもかまいません。源泉徴収票側の読み方は源泉徴収票の見方で解説しています。

令和8年分の様式の読み方 — 表面は5つのブロック

国税庁の令和8年分「給与所得に対する源泉徴収簿」はA4横の両面で、表面が本体です。上から順に見ると、次の5ブロックに分かれます。

ブロック何を書くか対応する条文
① 見出し甲欄/乙欄の表示、所属・職名・住所・氏名・整理番号その人が甲欄適用か乙欄適用かをまず決める。氏名の下に生年月日185条(甲欄・乙欄)
② 前年からの繰越前年の年末調整に基づき繰り越した過不足税額/月別の還付又は徴収した税額/差引残高前年の年末調整で精算しきれなかった額を翌年の給与で還付・徴収する記録。前年の㉜・㉞とつながる190条
③ 給料・手当等(1〜12月)支給月日/総支給金額/社会保険料等の控除額/社会保険料等控除後の給与等の金額/扶養親族等の数/算出税額/年末調整による過不足税額/差引徴収税額毎月の給与ごとに1行。年の計が①②③183条・185条
④ 賞与等支給月日/総支給金額/社会保険料等の控除額/控除後の金額/税率(%)/算出税額賞与は月額表ではなく算出率で計算するので税率欄がある。計が④⑤⑥186条
⑤ 扶養控除等の申告・各種控除額と年末調整申告の有無・源泉控除対象配偶者・控除対象扶養親族・障害者・寡婦又はひとり親・勤労学生の人数と、年末調整欄⑦〜㉞右半分。申告書の内容を写し、年末にここで税額を計算する194条・190条

裏面には「給料・手当等の支給金額の内訳」(基本給・手当ごとの内訳欄)、災害減免法による徴収猶予の欄、そして賞与の特殊計算(前月中に通常の給与の支払を受けていなかった場合/賞与が前月給与の10倍を超える場合)の計算欄があります。

⑤の「各種控除額」の行には、1人当たりの控除額が万円単位で印字されています — 一般の控除対象扶養親族38・特定扶養親族63・老人扶養親族は同居老親等58・その他48、一般の障害者27・特別障害者40・同居特別障害者75、寡婦27・ひとり親35、勤労学生27。これは年末調整欄の⑲「扶養控除額及び障害者等の控除額の合計額」を人数から出すための早見表で、源泉控除対象配偶者の欄だけは斜線です(配偶者控除・配偶者特別控除は人数ではなく配偶者の合計所得金額で額が決まるので、⑰に別建てで書く)。

月々の書き方 — 甲欄・乙欄と「扶養親族等の数」

毎月の給与日ごとに③ブロックを1行埋めます。手順は6つです。

  1. 総支給金額 — 基本給・手当の合計(通勤手当の非課税分は含めない)。裏面の内訳欄を使うなら先にそちらを埋めて合計を転記する
  2. 社会保険料等の控除額 — 給与から天引きした健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の合計。天引きした小規模企業共済等掛金もここに入り、右端の注記欄に内数として書く
  3. 社会保険料等控除後の給与等の金額 — 1から2を引いた額。税額表はこの額で引く
  4. 扶養親族等の数 — 右上の申告欄から人数を持ってくる(下記)
  5. 算出税額 — 甲欄なら月額表の甲欄、乙欄なら乙欄で、3の額と4の人数が交わる税額。令和8年分の税額表は令和8年1月の給与から新しくなっているので、前年の表を使わないこと。表の引き方は源泉徴収税額表【令和8年分】の見方に早見表がある
  6. 差引徴収税額 — 年の途中は算出税額と同額。年末調整をする月だけ「年末調整による過不足税額」を足し引きした額になる

甲欄と乙欄の分かれ目は、その会社に扶養控除等申告書を出しているかどうかです(185条1項1号と2号)。申告書は所得税法194条で「毎年最初に給与等の支払を受ける日の前日まで」に提出するもので、出していれば甲欄、出していなければ(2か所目以降の勤務先など)乙欄。見出しブロックの「甲欄/乙欄」はこの結果を示す印です。申告書の書き方は扶養控除等申告書の書き方を参照してください。

「扶養親族等の数」は、申告書に書かれた源泉控除対象配偶者と源泉控除対象親族の人数が基本で、本人が障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生に当たれば該当ごとに1人、同一生計配偶者や扶養親族に障害者・同居特別障害者がいれば該当ごとにさらに1人を加えます(187条)。右上の申告欄の一番右「従たる給与から控除する源泉控除対象配偶者と控除対象扶養親族の合計数」の列は、2か所で働く人が一部の扶養親族を別の勤務先に回している場合の人数で、その分は自社の数から外します。

源泉徴収税額 計算機 — 社会保険料控除後の金額と扶養親族等の数を入れると令和8年分の月額表から算出税額を返します

賞与欄の書き方 — 前月の給与で税率が決まる

④ブロックは賞与専用で、月給と違って「税率(%)」の欄があります。186条1項1号イのとおり、甲欄の人の賞与は前月中の通常の給与の金額(社会保険料等控除後)と扶養親族等の数で「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」から率を引き、賞与の社会保険料等控除後の金額にその率を掛けて税額を出します。だから源泉徴収簿の賞与行は、③ブロックの前月の行を見ながら書くことになります。

裏面の2つの計算欄が要るのは、この原則が使えないときです。

いずれも裏面の欄に計算過程を残す設計で、表面の賞与行にはその結果だけを書きます。賞与の源泉所得税の具体例は賞与の源泉所得税|前月給与がない・扶養人数が変わった場合にまとめています。

年末調整欄 ①〜㉞ — 源泉徴収簿は計算用紙でもある

右下の年末調整欄は、所得税法190条の計算をそのまま34の丸数字に分解したものです。190条は、扶養控除等申告書を出している人でその年の給与総額が2,000万円以下の人について、年最後の給与を払うときに1年分の徴収税額の合計(1号)と年税額(2号)の過不足を精算せよ、と命じています。源泉徴収簿の丸数字は次の順に流れます。

丸数字どこから来るか・注意点
①〜⑧給料・手当等の計(①金額・②社会保険料等・③税額)、賞与等の計(④⑤⑥)、その合計(⑦金額・⑧税額)③④ブロックの「計」行の転記。前職分がある人は前職の源泉徴収票の額を合算する(190条1号)
給与所得控除後の給与等の金額⑦を「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」(190条2号の別表第五)に当てる
⑩⑪所得金額調整控除額、調整控除後の金額⑩は(⑦−8,500,000円)×10%、1円未満切上げ、最高150,000円、マイナスなら0。適用の有無を右欄で明示する
⑫〜⑳社会保険料等(⑫給与天引き分=②+⑤、⑬申告分、⑭小規模企業共済等掛金)、⑮生命保険料、⑯地震保険料、⑰配偶者(特別)控除、⑱特定親族特別控除、⑲扶養控除・障害者等、⑳基礎控除⑬以降は保険料控除申告書・配偶者控除等申告書・特定親族特別控除申告書・基礎控除申告書から転記。⑲は前述の万円早見表×人数
所得控除額の合計額⑫〜⑳の合計。源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」になる
㉒㉓差引課税給与所得金額(⑪−㉑)と算出所得税額㉒は1,000円未満切捨て(190条2号)。㉓は㉒に税率表を当てた額
㉔㉕(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額、年調所得税額㉕=㉓−㉔、マイナスなら0
年調年税額㉕×102.1%(復興特別所得税込み)、100円未満切捨て。源泉徴収票の「源泉徴収税額」
差引超過額又は不足額㉖−⑧。プラスなら不足、マイナスなら超過(還付)
㉘〜㉞超過額の精算(㉘本年最後の給与から徴収する税額に充当、㉙未払給与の未徴収税額に充当、㉚差引還付額、㉛本年中に還付、㉜翌年に還付)、不足額の精算(㉝本年最後の給与から徴収、㉞翌年に繰り越して徴収)㉜と㉞が翌年の源泉徴収簿の「前年の年末調整に基づき繰り越した過不足税額」欄につながる

この欄を見ると、源泉徴収簿は1年で完結しない帳簿だと分かります。㉜・㉞の繰越額は翌年の用紙の最上段に転記され、翌年1月以降の給与で還付・徴収した額を月別に消し込んでいく。年をまたぐ精算の記録が、前年と翌年の2枚に分かれて残る設計です。年末調整の書類側の手順は年末調整の書き方|令和8年分、期限は年末調整はいつまで?で整理しています。

令和8年分で変わったところ⑱「特定親族特別控除額」は令和7年12月1日施行の改正で設けられた欄で、19歳以上23歳未満の親族(特定親族)の合計所得金額に応じた控除を書きます。⑳基礎控除額も令和8年分は所得に応じた段階制です。源泉徴収簿の欄の名前は同じでも、当てる表が前年と違うので、必ず令和8年分の表を使ってください。

賃金台帳と1冊にできるか — 労基則54条の8項目との差

源泉徴収簿と混同されやすいのが賃金台帳です。こちらは労働基準法108条で調製を命じられた法定帳簿で、こちらを作らないことは法律違反になります。

使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

記入事項は労働基準法施行規則54条1項が8つの号で定めています — 氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の労働時間数、基本給・手当その他賃金の種類ごとの額、控除額。様式は同規則55条で様式第二十号(日々雇い入れられる者は様式第二十一号)と決まっていますが、同じ事項が載っていれば自社様式でよいというのが一般的な運用です。詳しくは賃金台帳とは|記載項目・保存期間・給与明細との違いで解説しています。

国税庁が「給与台帳等であっても…利用して差し支えありません」と言っているのはここにつながります。賃金台帳の様式に源泉徴収簿の欄を足せば、2冊を1冊にできる。そのとき足りないものを突き合わせると、次の表になります。

項目賃金台帳(労基則54条)源泉徴収簿(国税庁様式)
氏名
性別×(生年月日はある)
賃金計算期間×(支給月日のみ)
労働日数・労働時間数×
時間外・休日・深夜の労働時間数×
基本給・手当の種類ごとの額△(裏面の内訳欄)
控除額○(賃金の一部を控除した額)○(社会保険料等の控除額・徴収税額)
扶養親族等の数・甲欄乙欄の別×
算出税額・年末調整の計算過程×

つまり、賃金台帳を源泉徴収簿として使うには扶養親族等の数・算出税額・年末調整欄を、源泉徴収簿を賃金台帳として使うには性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外等の時間数を、それぞれ足す必要があります。給与ソフトの「賃金台帳」出力の多くは両方を持っているので1冊で済みますが、国税庁の様式だけを使っている会社は賃金台帳が別に要ります。

保存期間 — 源泉徴収簿そのものを名指しする条文は無い

作成義務が法令に無いので、「源泉徴収簿」という名前を挙げて保存期間を定めた条文もありません。保存期間を考えるときは、源泉徴収簿に綴じ込む書類と、源泉徴収簿が兼ねている帳簿のそれぞれの条文を見ることになります。

対象期間起算根拠
扶養控除等申告書・保険料控除申告書・配偶者控除等申告書など、従業員から受け取った申告書7年提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日所得税法施行規則76条の3
賃金台帳(源泉徴収簿を兼ねていればその帳簿)5年、当分の間3年最後の記入をした日(賃金の支払期日が後ならその日)労働基準法109条・附則143条、同施行規則56条
法人の帳簿(給与の支払・源泉所得税の預り金を記録した帳簿として)7年帳簿閉鎖の日の属する事業年度終了の日の翌日から2月を経過した日法人税法施行規則59条
青色申告の個人事業主の帳簿7年帳簿閉鎖の日の属する年の翌年3月15日の翌日所得税法施行規則63条

申告書の7年は、施行規則76条の3が、受理した申告書等について税務署長が提出を求めるまでの間は保存するとしたうえで、ただし書で期限を区切っている構造です。

これらの規定に規定する税務署長が当該給与等の支払者に対しその提出を求めるまでの間、当該給与等の支払者が保存するものとする。…翌年一月十日の翌日から七年を経過する日後においては、この限りでない。

賃金台帳の方は労働基準法109条が「五年間」と書きながら、附則143条で当分の間「三年間」に読み替えています。

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。

そして法人の場合、法人税法施行規則59条1項1号は、仕訳帳・総勘定元帳だけでなく「当該青色申告法人の資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿」を7年の保存対象にしています。給与の支払と源泉所得税の預り金はどちらも負債に影響する取引なので、それを各人別に記録した源泉徴収簿はこの「その他の帳簿」に当たると読むのが自然です。

結論として、源泉徴収簿は綴じ込む申告書と同じ7年で保存するのが実務上の標準で、労働基準法の3年(当分の間)で処分すると税法側が欠けます。7年の起算日は条文ごとに違い(申告書は翌年1月10日の翌日、法人の帳簿は事業年度終了日の翌日から2月経過日)、いちばん遅いものに合わせておけば安全です。保存期間の横断的な整理は賃金台帳の記事給与明細の見方の保管の節も参照してください。

マイナンバーは書かなくてよい

源泉徴収簿には従業員の個人番号(マイナンバー)を書く欄がありません。国税庁の「源泉所得税関係に関するFAQ」Q3-2も、次のとおり明言しています。

源泉徴収簿には従業員のマイナンバー(個人番号)を記載する必要はありません。

個人番号が要るのは、税務署に出す源泉徴収票・法定調書と、従業員から受け取る扶養控除等申告書の側です。所得税法198条4項には、給与の支払者が源泉控除対象配偶者等の氏名・住所・個人番号などを記載した帳簿を備えていれば、申告書側の個人番号の記載を省略できる仕組みがあり、この帳簿の記載事項(氏名・住所・個人番号、申告書の提出を受けた年月と名称など)は施行規則76条の2第5項が定めています。これは源泉徴収簿とは別の機能の帳簿なので、源泉徴収簿に個人番号を足してそれを兼ねさせる場合は、特定個人情報として安全管理措置の対象になる点に注意が要ります。法定調書側の扱いは法定調書合計表の書き方で整理しています。

よくある質問

Q. 源泉徴収簿は税務署に提出しますか?

A. 提出しません。提出を命じる条文が無く、そもそも作成自体が法令で定められていません。税務署に出すのは源泉徴収票(所得税法226条・翌年1月31日まで)と法定調書合計表で、源泉徴収簿はそれらを作るための社内の記録です。ただし給与の支払と徴収の記録として、調査の際に確認の対象になることはあります。

Q. 給与ソフトの台帳やエクセルで代用できますか?

A. できます。国税庁の手続案内が「給与台帳等であっても、毎月の源泉徴収の記録などが分かり、年末調整のためにも使用できるものであれば、それを利用して差し支えありません」と明記しています。条件はこの2つだけで、様式の指定はありません。

Q. 源泉徴収簿と賃金台帳は何が違いますか?

A. 根拠法と目的が違います。賃金台帳は労働基準法108条で調製を命じられた法定帳簿で、労働日数・労働時間数・時間外労働時間数など労務管理の項目を持ちます。源泉徴収簿は法令の定めの無い国税庁様式で、扶養親族等の数・算出税額・年末調整の計算過程を持ちます。両方の項目を載せれば1冊にできます。

Q. 源泉徴収簿は何年保存しますか?

A. 源泉徴収簿を名指しした保存規定はありませんが、綴じ込む扶養控除等申告書などは提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年(所得税法施行規則76条の3)、法人の帳簿は7年(法人税法施行規則59条)なので、実務では7年で揃えるのが標準です。賃金台帳を兼ねている場合、労働基準法側は当分の間3年ですが、税法側の7年が上回ります。

Q. 年の途中で入社した人の源泉徴収簿はどう書きますか?

A. 入社月から自社分を記録し、年末調整では前職の源泉徴収票の支払金額・社会保険料・源泉徴収税額を合算して①〜⑧を作ります。所得税法190条1号は、その年に他の支払者を経由して扶養控除等申告書を出していた場合、その支払者からの給与等を含めて計算すると定めています。

Q. 年の途中で退職した人はどうなりますか?

A. 退職月までの記録で止め、年末調整はしません。源泉徴収票は退職の日以後1か月以内に作成・交付します(所得税法226条1項)。退職金を払ったときは、給与の源泉徴収簿とは別に「退職所得に対する源泉徴収簿」の様式があります。

Q. 扶養控除等申告書を出していない人の源泉徴収簿も作りますか?

A. 作ります。その人は乙欄適用になり(所得税法185条1項2号)、見出しの「乙欄」に印を付けて毎月の算出税額を乙欄で記録します。年末調整は行わないので右下の年末調整欄は空欄のままです。

Q. 源泉徴収簿にマイナンバーは書きますか?

A. 書きません。国税庁のFAQ Q3-2が「源泉徴収簿には従業員のマイナンバー(個人番号)を記載する必要はありません」としています。個人番号が要るのは源泉徴収票・法定調書と扶養控除等申告書の側です。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の税務相談ではありません。個別のケースについては税理士等の専門家にご相談ください。

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