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口座振替依頼書の書き方と落とし穴 — 国税は納期限までに出せば、引き落としが38日後でも延滞税はかからない

結論から言うと、口座振替依頼書は「引き落としてください」とお願いする紙ではありません。金融機関に対して「この支払いについては、私は通帳と払戻請求書を出しません」と先に約束しておく紙です。ふだん預金を動かすには本人が払戻しの手続きをしなければならないところ、それをあらかじめ免除することで、収納する側(税務署・年金事務所・事業者)が送ってきた金額をそのまま引き落とせるようにしています。この向きが分かっていると、あとで出てくる「残高不足でも連絡は来ない」「銀行の判断で解除されうる」といった約定が、なぜそう書いてあるのかまで筋が通ります。

そのうえで、実務でいちばん効くのは国税の話です。国税の振替納税は、納期限より1か月以上あとに引き落とされるのに、延滞税がかかりません。令和7年分の申告所得税は納期限が令和8年3月16日(月)で、振替日は令和8年4月23日(木)。38日の開きがあります。これは慣行でも運用でもなく、国税通則法34条の2第2項が「その納付は納期限においてされたものとみなして」と書いているからです。逆に言えば、この条文が届かないところには猶予もありません——予定納税と延納は納期限と振替日が同じ日で、1日の猶予もありません。

もう1つ、出す期限を間違えると1年分まるごと乗り遅れます。国税の振替依頼書は「利用したい国税の納期限まで」に出す必要があり、提出先は税務署でも金融機関でもかまいません。そして意外に知られていないのが、引っ越して所轄の税務署が変わると、それまでの依頼は効力を失うという点です。この記事では、様式に印刷された約定6か条まで含めて、実際の紙に何が書いてあるのかを読んでいきます。

口座振替依頼書とは — 「払戻請求をしません」という約束

口座振替は、当事者が3人います。払う人(預金者)・受け取る人(収納機関や事業者)・引き落とす人(金融機関)です。このうち依頼書に署名するのは払う人だけですが、その1枚が2つの相手に対して別々の約束をしています。

相手約束していること
金融機関この支払いについては、通帳と払戻請求書を出さない(=本人の手続きなしで引き落としてよい)
収納する側この口座から引き落としてよい。金額はそちらが決めてよい

国税の様式は、この構造がそのまま紙の形になっています。1枚の用紙が上下に分かれていて、上半分が「納付書送付依頼書」(税務署あて)、下半分が「預貯金口座振替依頼書」(金融機関あて)です。上は「私の納付書を、この銀行に送ってください」と税務署に頼み、下は「税務署から私名義の納付書が届いたら、そのとおり引き落としてください」と銀行に頼んでいます。2つの依頼が1枚に同居しているので、正式名称も「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」という長いものになります。

納税者 (預金者) 税務署 (収納する側) 金融機関 (引き落とす人) 上半分 納付書送付依頼書 下半分 預貯金口座振替依頼書 納付書を送る (施行規則1条の4) 引落し 国庫へ納付 領収証書は出ない
1枚の依頼書が、税務署あてと金融機関あての2つの依頼を兼ねている。国税の様式が「兼」でつながっているのはこのため。

国税の振替依頼書は「納付書送付依頼書」を兼ねている

なぜ「納付書を送ってください」という依頼が要るのか。ここは条文を読むと一発で分かります。国税通則法34条の2第1項は、口座振替そのものを許可する条文ではなく、「通知の依頼」を受けることができるという書き方をしています。

税務署長は、預金又は貯金の払出しとその払い出した金銭による国税の納付をその預金口座又は貯金口座のある金融機関に委託して行おうとする納税者から、その納付に必要な事項の当該金融機関に対する通知で財務省令で定めるものの依頼があつた場合には、その納付が確実と認められ、かつ、その依頼を受けることが国税の徴収上有利と認められるときに限り、その依頼を受けることができる。

その「財務省令で定めるもの」が何かは、国税通則法施行規則1条の4が定めています。1号はこうです。

納付書記載事項(国税を納付しようとする者の氏名又は名称、当該国税に係る税目及び税額その他の納付書に記載すべきこととされている事項をいう。以下同じ。)を記載した納付書又は納付書記載事項を記録した記録媒体を送付する方法

つまり法令上の口座振替納付は、「税務署が銀行に納付書(またはそのデータ)を送る」ことの依頼であって、引き落としの指図そのものではありません。だから様式の名前が「兼納付書送付依頼書」になっている——名前が長いのは、役所の癖ではなく条文の構造をそのまま写しているからです。

読み落としやすい一言: 「受けることができる」

34条の2第1項は「受けなければならない」ではなく「受けることができる」で終わっています。しかも「その納付が確実と認められ、かつ、その依頼を受けることが国税の徴収上有利と認められるときに限り」という条件付きです。振替納税は納税者の権利ではなく、税務署長の側に受けるかどうかの判断が残っている制度です。実務ではほぼ受け付けられますが、条文の建て付けはそうなっています。

振替日が38日後でも延滞税がかからない仕組み

ここが、この制度でいちばん誤解が多いところです。国税庁が公表している令和7年分・令和8年分の納期限と振替日を並べます。

税目・区分納期限(法定納期限)振替日開き
申告所得税 予定納税第1期(令和7年分)令和7年7月31日(木)令和7年7月31日(木)0日
申告所得税 予定納税第2期(令和7年分)令和7年12月1日(月)令和7年12月1日(月)0日
申告所得税 確定申告(令和7年分)令和8年3月16日(月)令和8年4月23日(木)38日
申告所得税 確定申告延納(令和7年分)令和8年6月1日(月)令和8年6月1日(月)0日
消費税及び地方消費税 確定申告(令和7年分・原則)令和8年3月31日(火)令和8年4月30日(木)30日
申告所得税 予定納税第1期(令和8年分)令和8年7月31日(金)令和8年7月31日(金)0日
申告所得税 予定納税第2期(令和8年分)令和8年11月30日(月)令和8年11月30日(月)0日
申告所得税 確定申告(令和8年分)令和9年3月15日(月)令和9年4月中旬〜下旬(未確定)

開きがあるのは確定申告分だけで、予定納税と延納は0日です。この表の形は、条文の適用範囲とぴったり一致します。国税通則法34条の2第2項はこう書いています。

期限内申告書の提出により納付すべき税額の確定した国税でその提出期限と同時に納期限の到来するものが、前項の通知に基づき、政令で定める日までに納付された場合には、その納付の日が納期限後である場合においても、その納付は納期限においてされたものとみなして、延納及び延滞税に関する規定を適用する。

条件を分解すると3つです。①期限内申告書の提出により税額が確定したもの②その提出期限と納期限が同時に到来するもの③政令で定める日までに納付されたもの。確定申告分は3月15日(休日なら翌日)が申告期限であると同時に納期限なので②を満たしますが、予定納税は申告書で確定するものではないので①に当たらず、延納は納期限が別に定められているので②に当たりません。だから予定納税と延納には猶予が付かない——国税庁の表と条文が、別々の資料でありながら同じことを言っています。

③の「政令で定める日」は国税通則法施行令7条です。

法第三十四条の二第二項(口座振替納付に係る通知等)に規定する政令で定める日は、同条第一項の通知が金融機関に到達した日から二取引日を経過した最初の取引日(災害その他やむを得ない理由によりその日までに納付することができないと税務署長が認める場合には、その承認する日)とする。

そして同条2項が「取引日」を定義しています。

前項に規定する取引日とは、金融機関の休日以外の日をいう。

暦日ではなく取引日で数えるのがポイントです。たとえば令和8年4月29日(水)は昭和の日で金融機関の休日なので、この日は取引日に数えません。祝日をまたぐと、暦の上では長く見えても取引日としては短い、ということが起こります。

3/16(月) 納期限=申告期限 4/20(月)ごろ 納付書が銀行へ到達 4/23(木) 振替日(引落し) 38日 通則法34条の2第2項「納期限においてされたものとみなして」→ 延滞税は生じない 施行令7条: 到達から2取引日を経過した最初の取引日まで
令和7年分の申告所得税の例。引落しは納期限の38日後だが、条文が納付日を納期限へ戻すので延滞税は生じない。「4/20ごろ」は振替日から施行令7条の枠を逆算した位置で、実際の送付日を国税庁が公表しているわけではない。
猶予されるのは「延滞税」であって「残高を用意する日」ではない

みなし規定が働くのは引き落としが成功した場合だけです。国税庁は、振替納税による口座引落しができなかった場合は法定納期限の翌日から延滞税がかかると案内しています。振替日の翌日からではありません。失敗すると38日分さかのぼって延滞税が計算されるということなので、「振替日の前日までに残高を確認する」は形式的な注意ではなく、38日分の利息が乗るかどうかの分かれ目です。

「二取引日を経過した最初の取引日」を数える(営業日計算ツール)

使える税目と使えない税目

国税の振替納税はすべての国税で使えるわけではありません。国税庁が挙げている利用可能税目は2つだけです。

税目使える区分
申告所得税及び復興特別所得税期限内に申告された確定申告(3期)分および延納分、予定納税(1期、2期)分
消費税及び地方消費税(個人事業者)期限内に申告された確定申告分および中間申告分

裏返すと、次のものは振替納税の対象外です。名前が似ているので取り違えやすいところです。

対象外の税目を口座から払いたい場合、選択肢は2つに絞られます。継続して払うなら、上に出てきたダイレクト納付(事前に届出書を出しておき、即時または期日指定で引き落とす)。今回1回だけ払えばよいなら、納付書に印刷された番号をATMやインターネットバンキングに入力するペイジー(Pay-easy)です。ペイジーは事前の届出が要らない代わりに、金融機関から領収書が発行されない点と、コンビニの共用ATMでは使えない点が振替納税と大きく違います。支払った証拠をどう残すかを先に決めておかないと、あとで探すことになります。

出す期限と出し先 — 納期限まで・税務署でも銀行でもよい

国税庁は書面提出の手順をこう案内しています。

振替納税をご利用される国税の納期限までに、「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」(振替依頼書)を作成の上、納税地を所轄する税務署又は振替依頼書に記載した金融機関へ提出してください。

実務上おさえるべき点が3つあります。

  1. 期限は「納期限まで」。確定申告分に使いたいなら、その年の納期限(原則3月15日、休日なら翌日)までです。振替日の4月下旬までではありません
  2. 出し先は税務署でも金融機関でもよい。様式に「(金融機関経由印)」という欄があるのは、銀行経由で出されたときに銀行が押すためです
  3. 本人名義の口座に限る。国税庁は「振替依頼書は、納税者ご自身名義の預金口座のみご利用できます」と明記しています。家族名義の口座は使えません

オンライン提出もできます。e-Taxソフト(WEB版)から振替依頼書を送信する方法で、この場合は金融機関の届出印そのものが不要になります(本人確認の経路が違うため)。ただし対応していない金融機関・口座種別があります。

令和8年9月24日に様式が変わります

国税庁は、令和8年9月24日の国税システムの更改にあわせて「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」の様式を変更し、あわせて「振替納税の取りやめ申出書」を新設すると案内しています。これまで解約は税務署への連絡による扱いでしたが、以後は取りやめ申出書を所轄税務署に提出する形になります。この記事の公開日(2026年8月26日)は更改の29日前なので、いま印刷して手元に置いている用紙は、9月下旬以降は旧様式になります。年明けの確定申告期に使う予定なら、その時点でダウンロードし直してください。

様式に印刷された約定6か条を読む

ここが、他ではあまり読まれていない部分です。国税の振替依頼書には約定が6か条、小さな字で印刷されています。署名すると承認したことになるので、内容を知っておく価値があります。要点を先に言うと、「連絡はしない」「異議は言わない」という向きで揃っています

約定要旨実務での意味
1当座勘定規定・預貯金規定にかかわらず、小切手の振出や通帳・払戻請求書の提出をしないこれが口座振替の本体。本人の手続きなしで引き落とせるようにする
2振替日に残高が納付書の金額に満たないときは、通知することなく納付書を返却してよい残高不足でも連絡は来ない。気づかないまま延滞税が走る
3銀行が相当の事由により必要と認めた場合、通知なく契約を解除してよい解除されたことも自分では分からない
4解除するときは、預金者から金融機関と税務署の両方へ文書で連絡するやめるときは片方だけでは終わらない
5紛議が生じても、銀行の責によるものを除き銀行に迷惑をかけない引落しの当否をめぐる争いは原則として税務署との間の話になる
6銀行に対して領収証書の請求はしない領収証書は出ない(後述)

特に2番は、そのまま引くとこう書かれています。

指定預貯金残高が振替日において、納付書の金額に満たないときは、私に通知することなく納付書を返却されても差し支えありません。

「私に通知することなく」を自分で承認しているのがポイントです。公共料金の引落し不能なら後日ハガキが来ることが多いので、同じ感覚でいると危険です。国税では、引き落とされなかったこと自体に気づかないまま、法定納期限までさかのぼった延滞税が積み上がります。

3番も同じ形です。

この口座振替契約は、貴店(組合)が相当の事由により必要と認めた場合には私に通知されることなく、解除されても異議はありません。

そして6番。振替納税では領収証書が発行されません。平成29年1月から送付そのものが取りやめられており、領収証書が必要なら金融機関の窓口で現金納付するしかありません。納税証明書で代替する場合も、国税庁は口座引落しから発行可能になるまで1週間程度かかる場合があるとしています。融資や入札で納税証明書の提出期限があるときは、振替日から逆算して余裕を見ておく必要があります。

貴店(組合)に対して領収証書の請求はいたしません。

なお、様式には振替納付日の定めも印刷されており、これが施行令7条の内容と一致しています。別々の資料が同じことを言っているので、読み違えていないことの確認になります。

納期の最終日(休日の場合は翌取引日)

引っ越すと効力が切れる — 継続の3つの方法

いったん出せば毎年自動で続く、というのは条件付きで正しい話です。国税庁は、口座の変更依頼や取りやめ依頼がない場合、および所轄の税務署が変更とならない場合に限り、自動的に次回以降も振替納税が行われるとしています。

転居等により、納税地を所轄する税務署が変更となる場合は、改めて預貯金口座振替依頼書を変更後の税務署に提出していただく必要があります。

引っ越しても口座は同じままなので、本人としては何も変わっていないつもりでいます。ところが依頼を受けているのは移転前の税務署長なので、所轄が変わると納付書を送る主体がいなくなります。個人事業者が事務所を移したとき、納税地の変更と一緒に見落とされがちな手続きです。

国税庁は、振替依頼書の再提出に代えて次のいずれかでもよいとしています。

  1. 申告書の「振替継続希望」欄に「○」を記載して提出する。申告所得税か消費税のどちらかの申告書に書けば、もう一方の税目についても継続されます
  2. 「所得税・消費税の納税地の異動または変更に関する申出書」を提出する
  3. 税務署から「納付書送付継続依頼書」が送られてきた場合は、それを提出する

1番がいちばん軽い方法です。引っ越した年の確定申告書を出すときに、欄に○を1つ書くだけで済みます。

社会保険料の口座振替 — 国民年金には割引がある

同じ「口座振替依頼書」でも、社会保険料は様式も出し方も違います。会社の経理が触るのは主に厚生年金保険・健康保険の側です。

厚生年金保険・健康保険(事業所)

使う様式は「保険料口座振替納付(変更)申出書」です。手順は日本年金機構が次のように案内しています。①口座振替可能金融機関一覧表に該当の金融機関があるか確認する ②申出書に必要事項を記入する ③口座振替を利用する金融機関の確認を受ける ④所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所へ郵送するか、年金事務所の窓口に提出する。

③があるのが国税との違いです。先に銀行を通してから年金事務所へ出すという一方通行で、国税のように「どちらへ出してもよい」ではありません。ただしインターネット専業銀行を使う場合は③を省略し、直接事務センターまたは年金事務所へ提出します。

納付期限は納付対象月の翌月末日(末日が休日なら翌日以降の最初の営業日)です。保険料額は毎月20日頃に「保険料納入告知書」で通知されます。令和8年度上期の実際の日程はこうです。

納付目的年月発送日納付期限
令和8年3月分4月20日(月曜)4月30日(木曜)
令和8年4月分5月21日(木曜)6月1日(月曜)
令和8年5月分6月18日(木曜)6月30日(火曜)
令和8年6月分7月21日(火曜)7月31日(金曜)
令和8年7月分8月20日(木曜)8月31日(月曜)
令和8年8月分9月16日(水曜)9月30日(水曜)

通知から納付期限まで10日前後しかありません。口座振替にしていない事業所は、告知書が郵便で届くのを待って窓口へ行くことになるので、月末の資金繰りが読みにくくなります。国税と違って納期限より後ろに引き落とされる仕組みはないので、末日に残高を用意しておく必要があります。

国民年金(個人)— 口座振替にすると保険料そのものが安くなる

国民年金は、口座振替の振替方法によって納付額が変わります。令和8年度の実額は次のとおりです。割引額は、納付書により毎月納付した場合と比較した額です。

振替方法1回あたりの納付額割引額振替日
2年前納/2年前納(4月開始)417,150円17,370円4月末日
1年前納210,530円4,510円4月末日
6カ月前納106,300円1,220円4月末日および10月末日
当月末振替(早割)17,860円60円納付対象月の当月末日
翌月末振替17,920円納付対象月の翌月末日

早割は1か月早く引き落とされるかわりに60円安くなるという仕組みで、年間では720円です。金額としては小さいものの、手続きは口座振替の申込時に振替方法を選ぶだけで、あとから毎月何かする必要はありません。前納の割引は桁が変わり、2年前納なら17,370円です。

注意点も一次資料に書かれています。保険料が一部免除された方は翌月末振替のみで早割・前納は選べません。また一部のインターネット専業銀行では口座振替が使えません。前納は申込時期に締切があり、直近の4月から2年前納を始めたい場合は2月末(必着)までに申出書を提出する必要があります。振替日が土日祝・年末年始(12月31日、1月2日および1月3日)に当たるときは、翌月最初の金融機関等の営業日が振替日になります。

社会保険料控除の年をまたぐ

早割や前納を選ぶと、引き落とされる年が変わります。社会保険料控除は原則としてその年に実際に支払った額で計算するので、12月分を12月末に引き落とす早割と、翌年1月末に引き落とす翌月末振替では、控除に入る年が1年ずれます。切り替えた年だけ、その年の控除額が11か月分または13か月分になることがあります。詳しくは社会保険料控除の記事で扱っています。

書き方でつまずく5か所

記入そのものは難しくありませんが、返送されて出し直しになる原因はだいたい決まっています。

  1. 届出印がいちばん多い。依頼書に押すのは認印ではなく口座を作ったときの届出印です。国税庁の記載要領は「印影が不鮮明な場合は、横に押印し直してください」と案内しており、日本年金機構も「金融機関届出印や口座名義人氏名等に誤りがあると、手続きが間に合わない場合があります」と注意しています。届出印が分からないときは、依頼書を書く前に金融機関へ確認するのが早道です
  2. ゆうちょ銀行は書き方が違う。国税の様式は、ゆうちょ銀行以外は「預金の種類・口座番号」、ゆうちょ銀行は「記号・番号」を書く欄が分かれています。他行用の欄に記号番号を書くと処理できません
  3. 使わない税目は二重線で消す。国税の様式は申告所得税と消費税の両方が印刷されており、片方だけ使うなら不要な側を二重線で抹消します。この場合の訂正印は不要です。逆に、両方とも振替納税を使うなら何も書かずにそのまま出します
  4. 氏名は口座名義と1字も違えない。屋号付きの口座か個人名義かで通らなくなることがあります。フリガナの欄も口座の登録どおりに書きます
  5. 日付の意味を取り違えない。国税の様式には「令和 年 月 日以降納期が到来するもの」を書く欄と、提出日を書く欄の2つがあります。前者は利用を開始したい日付(提出日以降)で、後者は提出日です
会計処理は「いつ費用か」と「いつ現金が出るか」を分ける

口座振替にしても、費用の計上時期は動きません。たとえば社会保険料は、月末に引き落とされる前に給与から預かった従業員負担分(預り金)と会社負担分(法定福利費)が発生しています。口座振替が変えるのは支払手段だけで、いつの費用かは変わりません。引落日にまとめて費用処理してしまうと、決算をまたぐ月で期ずれが起きます。振込手数料の勘定科目と同じで、支払方法と勘定科目の判断は別に持っておくのが安全です。

よくある質問

Q. 口座振替依頼書はどこに出せばよいですか?

A. 国税の振替依頼書は、納税地を所轄する税務署か、依頼書に記載した金融機関のどちらに出してもかまいません。厚生年金保険・健康保険の口座振替申出書は、先に金融機関の確認を受けてから、事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所に提出します。ただしインターネット専業銀行を使う場合は金融機関の確認を省略し、直接事務センターまたは年金事務所へ提出します。国税はどちらでもよく、社会保険は原則として金融機関が先という違いがあります。

Q. いつまでに出せば、今年の確定申告分から使えますか?

A. 国税庁は、振替納税を利用する国税の納期限までに提出するよう案内しています。申告所得税の確定申告分であれば原則として3月15日、休日に当たる場合はその翌日です。引き落とされる振替日は4月下旬ですが、提出の期限はそこではありません。振替日までに出せばよいと考えていると1年分乗り遅れます。

Q. 振替日が納期限よりあとなのに、延滞税はかからないのですか?

A. かかりません。国税通則法34条の2第2項が、期限内申告書の提出により税額が確定し、その提出期限と納期限が同時に到来する国税について、政令で定める日までに納付されたときは、納付の日が納期限後であってもその納付は納期限においてされたものとみなすと定めているためです。政令で定める日は、国税通則法施行令7条により、通知が金融機関に到達した日から二取引日を経過した最初の取引日とされています。

Q. 残高不足で引き落とせなかったら、いつから延滞税が計算されますか?

A. 法定納期限の翌日からです。振替日の翌日ではありません。みなし規定は納付が実際に行われた場合の扱いなので、引き落とせなかったときは猶予が消え、本来の納期限までさかのぼって計算されます。令和7年分の申告所得税であれば、納期限の令和8年3月16日と振替日の令和8年4月23日で38日離れているため、その分もさかのぼることになります。

Q. 引き落とせなかったとき、銀行から連絡は来ますか?

A. 国税の振替依頼書の約定2は、振替日に指定預貯金の残高が納付書の金額に満たないときは、通知することなく納付書を返却されても差し支えないという内容になっています。署名した時点でこれを承認しているため、連絡が来ることは前提にできません。振替日の前日までに自分で残高を確認し、同じ口座から他の公共料金等の引落しが重なっていないかも見ておく必要があります。

Q. 法人でも振替納税は使えますか?

A. 使えません。国税庁が挙げる利用可能税目は申告所得税及び復興特別所得税と、消費税及び地方消費税のうち個人事業者の分に限られています。法人が口座から自動で納付する仕組みとしては、e-Taxを使うダイレクト納付が用意されており、こちらは届出書の名称も「国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書」と別のものです。

Q. 引っ越したら手続きは要りますか?

A. 要ります。国税庁は、転居等により納税地を所轄する税務署が変更となる場合は、改めて預貯金口座振替依頼書を変更後の税務署に提出する必要があるとしています。口座が変わっていなくても必要です。これに代えて、申告所得税か消費税の申告書の振替継続希望欄に「○」を記載して提出する方法、または所得税・消費税の納税地の異動または変更に関する申出書を提出する方法もあります。

Q. 領収証書はもらえますか?

A. 発行されません。国税庁は平成29年1月から振替納税の領収証書を送付しておらず、様式の約定6も金融機関に対して領収証書の請求はしないという内容になっています。領収証書が必要な場合は、最寄りの金融機関の窓口で現金により納付する方法をとることになります。納税証明書で代える場合は、口座引落しから発行が可能になるまで1週間程度かかる場合があるとされています。

Q. 国民年金の口座振替で安くなるのは、いくらですか?

A. 令和8年度の金額で、当月末振替(早割)は1回あたり17,860円で、納付書により毎月納付する場合と比べて60円の割引です。前納にすると割引が大きくなり、6カ月前納は106,300円で1,220円、1年前納は210,530円で4,510円、2年前納は417,150円で17,370円の割引になります。保険料が一部免除された方は翌月末振替のみの利用となります。

Q. 口座振替の依頼書に収入印紙は要りますか?

A. 国税の振替依頼書および日本年金機構の口座振替申出書について、公表されている手続案内に収入印紙を貼るという記載はありません。金銭の受取書ではなく依頼・申出の書面だからです。ただし民間の契約に付随する書面については、その書面全体が課税文書に当たるかどうかで判断が変わるため、個別の様式については一次資料で確かめてください。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・社会保険についての助言ではありません。様式・取扱い・金額は改定されることがあり、国税庁は令和8年9月24日に振替依頼書の様式を変更すると案内しています。実際の手続きは所轄の税務署・年金事務所および取引金融機関に、税額の判断は税理士にご確認ください。

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