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補助金に消費税はかかる?不課税でも「仕入控除税額」の返還がある

結論から言うと、補助金を受け取ったこと自体に消費税はかかりません。売上に立てて消費税を納める必要はなく、税区分は不課税(課税対象外)です。消費税法基本通達5-2-15が、補助金等は「資産の譲渡等の対価に該当しない」と明示しています。

ただし、話はここで終わりません。補助金で買った設備の消費税を仕入税額控除すると、その消費税分を国から二重に受け取った状態になります。そのため多くの補助金は、交付規程で「消費税等仕入控除税額」の報告を義務づけ、確定した額の返還を命ずると定めています。

ここで取り違えが起きます。これは税法上の義務ではなく、補助金の交付条件です。提出先は税務署ではなく補助金事務局で、期限も様式も交付規程の側にあります。「消費税の話だから」と税務申告だけで完結させると、報告そのものを落とします。以下、条文と実際の交付規程を読みながら整理します。

結論:もらうときは不課税、使ったあとに返還がある

補助金と消費税の関係は、受け取る局面と使う局面で分けて考えると整理できます。

局面消費税の扱い根拠
補助金を受け取った不課税。課税売上にならず、納税額は増えない消費税法2条1項8号/基本通達5-2-15
補助金で設備等を買った通常どおり課税仕入れ。仕入税額控除の対象消費税法30条
消費税の申告が終わった控除した分を補助金事務局へ報告し、返還各補助金の交付規程(補助金適正化法7条の交付条件)
① 補助金を受け取る 不課税(納税は増えない) ② 設備を買う(税込) 課税仕入れになる ③ 仕入税額控除をする 消費税が戻ってくる 補助金にも消費税分が含まれていた = 同じ消費税を二重に受け取っている ④ 事務局へ報告 → 返還を命じられる ※ ④の提出先は税務署ではなく補助金事務局。根拠は税法ではなく交付規程。 ※ 免税事業者・簡易課税なら③が起きないため、返還額は生じない。
補助金の受取は不課税。返還が生じるのは「仕入税額控除をしたから」であって、補助金に課税されるからではない。

なぜ消費税がかからないのか(消費税法2条1項8号)

消費税が課されるのは「資産の譲渡等」です。消費税法2条1項8号は、これを「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」と定義しています。鍵は対価を得ての部分です。

補助金には、この対価がありません。補助金適正化法2条1項は「補助金等」を、補助金・負担金・利子補給金・その他相当の反対給付を受けない給付金と定義しています。何かを引き渡したり役務を提供したりした見返りではないため、そもそも消費税の課税対象の枠に入りません。

この当てはめを明示しているのが、国税庁の消費税法基本通達5-2-15です。事業者が国や地方公共団体等から受ける奨励金・助成金等や、補助金適正化法2条1項に掲げる補助金等のように特定の政策目的の実現を図るための給付金は、資産の譲渡等の対価に該当しないと定めています。

同通達の注は、さらに踏み込んだ場合にも触れています。雇用調整助成金や職業転換給付金のように、休業手当・賃金・職業訓練費といった経費の支出をあらかじめ前提として手続きをとるタイプの助成金であっても、やはり資産の譲渡等の対価に該当しない、としています。「経費と紐づいているから対価では」という発想を、通達の側で先回りして否定している形です。

「不課税」は「非課税」ではない

実務でよく混同されますが、不課税と非課税は別物です。差が出るのは課税売上割合の計算です。

区分課税売上割合の分母
課税取引通常の売上入る(分子にも入る)
非課税土地の譲渡、住宅家賃、社会保険診療入る(分子には入らない=割合を下げる)
不課税補助金・助成金、受取配当金、保険金入らない(分母にも分子にも入らない)

補助金は資産の譲渡等に当たらないため、課税売上割合の計算式には現れません。つまり補助金を受け取っても課税売上割合は下がらず、控除できる仕入税額が目減りすることもありません。

これは実務上ありがたい性質ですが、同時に返還が必要になる理由でもあります。消費税法30条2項により、課税売上高が5億円以下かつ課税売上割合95%以上であれば課税仕入れの消費税は全額控除できます。補助金は割合を下げないので、多くの中小事業者はこの枠に収まったまま設備の消費税を満額控除できてしまうのです。

返還を求めるのは税務署ではなく補助金事務局

返還の根拠は税法ではありません。補助金適正化法7条1項は、各省各庁の長が交付決定にあたり交付の目的を達成するため必要な条件を附すると定めています。消費税分の返還は、この交付条件として各補助金の交付規程に書かれています。

実際の条文を見ます。独立行政法人中小企業基盤整備機構の「中小企業新事業進出促進補助金 交付規程」21条は、次の構造になっています。

内容
21条1項消費税等仕入控除税額が生じる場合は、消費税及び地方消費税の申告により額が確定した後に、様式第10により速やかに報告しなければならない
21条2項報告がなされた場合、中小機構は当該消費税等仕入控除税額の全部又は一部の返還を命ずる

読み落としやすいのが順序です。報告は消費税の申告で額が確定した後と定められています。補助事業が完了した時点や、実績報告の時点ではありません。事業年度をまたぐことが多く、補助事業の完了報告を出してから半年〜1年後に、もう一度手続きが残っている形になります。ここが忘れられやすい理由です。

また2項は「返還させることができる」ではなく「返還を命ずる」と書かれています。報告した以上、額が出れば返還は前提です。実際、補助金の公式ポータルであるjGrantsにも、過年度に交付を受けた事業者向けに仕入控除税額報告の受付を案内している事業が掲載されています。制度上の建前ではなく、現に動いている手続きです。

返還額の計算:補助率を乗せるのを忘れない

交付規程21条1項は、消費税等仕入控除税額を次のように定義しています。補助対象経費に含まれる消費税及び地方消費税相当額のうち、消費税法の規定により仕入れに係る消費税額として控除できる部分の金額(および、その金額に地方消費税の税率を乗じて得た金額)の合計額に、補助率を乗じて得た金額です。

ポイントは末尾の「補助率を乗じて得た金額」です。控除した消費税の全額ではなく、そのうち補助金が負担していた割合だけを返します。数字で確認します。

項目金額
補助対象経費(税込)1,100万円(本体1,000万円+消費税100万円)
補助率1/2
補助金額550万円
控除できる消費税額(課税売上割合95%以上・課税売上高5億円以下)100万円(全額)
消費税等仕入控除税額=返還額100万円 × 1/2 = 50万円

この例では、よく紹介される簡便式「補助金額 × 10/110」(550万円 × 10/110 = 50万円)と一致します。補助対象経費の全額が課税仕入れで、その消費税を全額控除できる場合は、どちらで計算しても同じ答えになるためです。

簡便式が合わなくなる場合

一致しなくなるのは、補助対象経費に消費税を含まない支出が混ざっているときです。人件費・賃金・法定福利費・租税公課などは課税仕入れではありません。

項目金額
補助対象経費の内訳物品購入 880万円(税込・うち消費税80万円)+ 人件費 220万円
補助対象経費 合計1,100万円
補助率/補助金額1/2 / 550万円
簡便式で計算すると550万円 × 10/110 = 50万円
規程の定義どおり計算すると80万円 × 1/2 = 40万円

人件費には消費税が含まれていないため、控除できる消費税もその分だけ小さくなります。簡便式をそのまま当てると10万円多く返還することになります。補助対象経費に人件費が含まれる補助金では、規程の定義に戻って計算する必要があります。

もう一つ、課税売上高が5億円超または課税売上割合95%未満の事業者は、消費税法30条2項により個別対応方式か一括比例配分方式で控除額を計算します。この場合は控除できる消費税額そのものが小さくなるため、返還額も連動して小さくなります。

補助金の圧縮記帳・特別勘定を計算する

返還が生じない場合(免税事業者・簡易課税)

返還は「仕入税額控除をしたから」生じます。控除をしていなければ、返す消費税もありません。

事業者の区分仕入税額控除消費税等仕入控除税額
免税事業者行わない生じない
簡易課税を選択(消費税法37条)みなし仕入率で計算し、実際の課税仕入れに基づく控除をしない生じない
本則課税行う生じる

ただし「返還額が0円だから何もしなくてよい」とは限りません。交付規程21条1項の文言は「生じる場合は…報告しなければならない」ですが、補助金の事務局によっては返還額0円であることの報告様式の提出を求める運用があります。免税事業者や簡易課税を選択している場合でも、交付を受けた補助金の手引きで報告の要否を確認するのが安全です。

なお、簡易課税を選ぶかどうかは補助金の返還だけで決める話ではありません。判断材料は消費税の簡易課税制度の記事にまとめています。

公益法人等だけに来る「特定収入」の調整

ここは対象者を取り違えやすいところです。消費税法60条4項には特定収入に係る仕入控除税額の調整という規定があり、補助金のような対価以外の収入が一定割合以上あると、控除できる仕入税額を減らす計算をします。

ただしこの規定の対象は限定されています。条文が挙げているのは、国・地方公共団体(特別会計を設けて事業を行う場合)、消費税法別表第三に掲げる法人(公益社団法人・公益財団法人、社会福祉法人、学校法人、特定非営利活動法人など)、公益信託の受託事業者、人格のない社団等です。

事業者消費税法60条4項の調整補助金の消費税分はどう精算されるか
株式会社・個人事業主など一般の事業者適用されない満額控除できるので、交付規程に基づき事務局へ返還
公益法人・社会福祉法人・NPO法人など適用される税法側で控除税額が調整される

つまり、一般の株式会社や個人事業主に60条4項は来ません。税法側で調整されないからこそ、補助金の側が交付条件で返還を求めるという役割分担になっています。「補助金をもらったら消費税の計算が変わる」という解説を読んで自社に当てはめようとすると、ここでずれます。

あわせて、60条4項は「第三十七条の規定の適用を受ける場合を除き」と書かれています。別表第三の法人などであっても、簡易課税を選択している課税期間はこの調整の対象外です。

間違えやすい点

税務の話だと思い込み、税理士への相談だけで完結させる

返還の根拠は税法ではなく交付規程です。消費税の申告そのものは通常どおり行い、そのうえで補助金事務局へ報告します。提出先・様式・期限は交付規程と事務局の手引きにあります。

補助金を課税売上として計上する

雑収入に計上すること自体は問題ありませんが、税区分は不課税(対象外)です。課税売上にすると納める消費税が増えるうえ、課税売上割合も実態とずれます。

「補助金額 × 10/110」を機械的に当てる

補助対象経費に人件費など消費税を含まない支出が入っていると、この式は過大になります。規程の定義は控除できる消費税額 × 補助率です。

補助対象経費が税抜か税込かを確認しない

補助金によって扱いが違います。今回引用した中小機構の交付規程でも、様式は「補助事業に要する経費(税込み)」と「補助対象経費(税抜き)」を別欄で書かせる作りになっています。補助金に消費税相当額が乗っているかどうかは、自分が受けた補助金の公募要領と様式で確認する必要があります。

補助事業の完了報告と同時に済ませようとする

21条1項は消費税の申告により額が確定した後と定めています。完了報告の時点では確定していないのが通常で、手続きは後日あらためて残ります。

財産処分の制限を忘れる

消費税とは別に、補助金適正化法22条は、補助事業により取得し又は効用の増加した政令で定める財産について、各省各庁の長の承認を受けないで、交付の目的に反して使用・譲渡・交換・貸付け・担保に供してはならないと定めています。補助金で買った設備を売却・転用する前に確認が要ります。

よくある質問

Q. 補助金を受け取ったら消費税を納める必要がありますか?

A. 必要ありません。補助金は不課税で、消費税法基本通達5-2-15により資産の譲渡等の対価に該当しないとされています。

Q. 補助金は課税売上割合を下げますか?

A. 下げません。不課税は非課税と異なり、課税売上割合の分母にも分子にも入りません

Q. 消費税等仕入控除税額の報告はいつ行いますか?

A. 交付規程では、消費税及び地方消費税の申告により額が確定した後に速やかに報告するとされています。補助事業の完了時点ではありません。

Q. 免税事業者や簡易課税でも報告は必要ですか?

A. 仕入税額控除をしないため返還額は生じませんが、事務局によっては0円での報告を求める運用があります。受けた補助金の手引きで確認するのが安全です。

Q. 返還額は補助金額の10/110で計算してよいですか?

A. 補助対象経費の全額が課税仕入れで全額控除できる場合は一致します。人件費など消費税を含まない経費が含まれる場合は、控除できる消費税額 × 補助率で計算します。

Q. 雇用調整助成金も不課税ですか?

A. 基本通達5-2-15の注が、雇用調整助成金や職業転換給付金のように経費の支出を前提に手続きするものも資産の譲渡等の対価に該当しないとしています。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税理士または所轄の税務署、補助金の事務局にご確認ください。

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