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従業員持株会の税金と経理 — 奨励金は給与、配当は組合員のもの、取得費の平均は直前の売却でリセットされる

法人格がない団体でも、人格のない社団等として収益事業を行う場合などは法人税の納税義務があります。持株会の組織形態の確認が前提です。

結論から言うと、従業員持株会そのものには税金がかかりません。持株会は会社でも信託でもなく、民法667条1項の組合だからです。民法上の組合として組合員に所得が帰属するため、組合自体に法人税を課さず、そこで生じた配当も売却益も、組合員一人ひとりの所得として直接課税されます。

そのため実務で問題になるのは「持株会の申告」ではなく、組合員の側で何がいつ課税されるかです。会社が上乗せする奨励金は給与として課税されます。配当は総額方式・中間方式では組合員の配当所得となり、純額方式では組合事業の主たる内容に従う所得となります。売却時の取得費は総平均法に準ずる方法で計算します。

この記事は、その3つの場面を条文の側から整理したものです。あわせて、持株会という同じ仕組みが、法律ごとに違う範囲で定義されていることも扱います。インサイダー取引規制の適用除外は役員を含むのに、法人税法の5%除外は使用人限定です。同じ持株会なのに、当たる条文によって役員が入ったり入らなかったりします。

持株会は会社ではなく「民法上の組合」 — だから税金は組合員にかかる

従業員持株会は、法律上は組合です。所得税基本通達36・37共-19の注1は、任意組合等を民法667条1項の組合契約により成立する組合などと定義していて、持株会はこの任意組合等に当たります。法人税法施行令4条の2第2項1号も、持株会を民法667条1項の組合契約による組合として書いています。

組合には法人格がありません。会社のように「持株会という納税者」がいるわけではないので、持株会の段階では課税されず、そこで生じた利益はそのまま組合員に流れます。これをパススルーと呼びます。根拠は所得税基本通達36・37共-19で、組合員の利益の額または損失の額は、組合の利益の額または損失の額のうち分配割合に応じた金額とされています。

もうひとつ、組合であることから来る効果があります。民法668条は、各組合員の出資その他の組合財産は総組合員の共有に属すると定めています。持株会が買った株は、持株会の所有物ではなく組合員全員の共有物です。だから配当も売却益も、はじめから組合員のものとして扱われます。

会社 (上場会社等) 従業員持株会 民法667条1項の組合 組合事業の損益は組合員に帰属 組合員(従業員) ここで課税される 株の交付・配当 毎月の拠出金 奨励金は給与として課税される(所得税法28条1項・183条1項) 配当は総額・中間方式なら組合員の配当所得(純額方式は主たる事業に従う所得) 組合員が受け取るものは3つあり、課税のタイミングも所得の種類も別々です。 ① 奨励金=給与所得(支給時)② 配当=総額・中間方式では配当所得、純額方式では主たる事業に従う所得③ 売却益=譲渡所得等(売却時) 持株会に置いたまま値上がりしても、その時点では課税されません。
持株会は器であって納税者ではない。組合員に関わる主な課税場面は、奨励金・配当・売却益の3種類です。

奨励金は株ではなく給与 — 買う前に課税されている

多くの持株会には、拠出金に会社が数%から10%程度を上乗せする奨励金があります。これは株の値引きではなく、給与です。

所得税法28条1項は、給与所得を、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得と定めています。奨励金は会社が従業員に対しその地位に基づいて支払うものなので、名称が何であれこの給与等に当たります。そして183条1項は、給与等の支払をする者は支払の際に所得税を徴収し、徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないと定めています。したがって奨励金は給与として源泉徴収の対象になります。

奨励金は会員の給与として課税される

毎月支給される奨励金は毎月の給与に加算し、年1回支給する奨励金は賞与として源泉徴収します。それでも課税上は「いったん給与としてもらい、そのお金で株を買った」と整理されます。株の購入に充てた金額は、売却益の計算で取得費の基礎になります。取得費は売却益の計算で差し引く額であり、奨励金が返金されるという意味ではありません。

奨励金は社会保険の報酬か賞与か — 分かれ目は3か月

給与等に当たるとして、次に社会保険の扱いが問題になります。健康保険法3条5項は報酬を次のように定義しています。

この法律において「報酬」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。

続く6項は賞与を、同じ範囲のもののうち三月を超える期間ごとに受けるものと定義しています。つまり報酬と賞与を分けているのは金額でも名称でもなく、労働の対償であることを前提にした支給間隔(報酬からは臨時に受けるものも除外)です。

奨励金は通常、毎月の拠出に合わせて毎月支給されます。労働の対償として毎月定期的に受けるものは、健康保険法の報酬の定義に当たります。ただし、臨時に受けるものは報酬から除かれるため、支給実態を確認します。年2回という回数だけでは決まらず、労働の対償として三月を超える期間ごとに受けるものが健康保険法の賞与に当たります。

労働の対償・臨時性・支給間隔を確認

健康保険法3条5項も6項も、いかなる名称であるかを問わずと書き出しています。奨励金という名前は判定に一切関与しません。労働の対償か、臨時に受けるものか、三月を超える期間ごとの支給かを確認します。報酬に該当する奨励金の算入漏れは算定額に影響しますが、同じ等級内なら等級は変わらない場合もあります。

配当は持株会のものではない — 配当控除が使えるかは計算方法で決まる

配当は、会社から見れば持株会(理事長名義)に支払われます。所得税法181条1項により、支払の際に源泉徴収されます。総額方式・中間方式では、配当は各組合員の配当所得として扱います。純額方式では、組合事業の主たる内容に従う所得になります。総額方式・中間方式では、所得税法24条1項が定める配当所得を、組合員が持分に応じて直接得たものとして扱います。

ここで見落とされやすいのが、組合の所得をどう計算するかによって、組合員が使える制度が変わるという点です。所得税基本通達36・37共-20は、計算方法を3つ挙げています。原則は(1)で、(1)が困難と認められ、かつ継続して行っている場合に限り(2)または(3)が認められます。

計算方法何を分けるか配当控除源泉徴収税額の控除
(1) 総額方式収入金額・支出金額・資産・負債等を分配割合で分ける使える使える
(2) 中間方式収入金額・原価・費用・損失を分配割合で分ける使える使える
(3) 純額方式組合の利益または損失の額だけを分配割合であん分する使えない使えない

(2)については、通達が明示的に次のように書いています。

この方法による場合には、各組合員は、当該組合事業に係る取引等について非課税所得、配当控除、確定申告による源泉徴収税額の控除等に関する規定の適用はあるが、引当金、準備金等に関する規定の適用はない。

対して(3)については、非課税所得、引当金、準備金、配当控除、確定申告による源泉徴収税額の控除等に関する規定の適用はない、と書かれています。さらに(3)では、あん分された利益は組合事業の主たる事業の内容に従って不動産所得・事業所得・山林所得・雑所得のいずれか一つの所得になります。純額方式を採ると、配当が配当所得ですらなくなります。

計算方法によって配当控除の適用が異なる

配当控除を使いたい、源泉徴収された税額を確定申告で取り返したい、というときは、各組合員について通達の計算方法の要件を確認します。持株会の報告内容は計算可能性を左右しますが、持株会が一律に税務上の適用を決めるわけではありません。報告書に配当金額と源泉徴収税額が銘柄別にあっても、計算方式はそれだけでは確定しません。(1)の計算が困難か、(2)または(3)を継続適用しているかなど、通達36・37共-20の要件を確認します。利益の額しか書かれていないなら(3)の可能性があります。配当の申告方式そのものについては別記事(配当金の確定申告)で扱っています。

清算前に分割は求められない — 引き出しの根拠は法律ではなく規約

持株会に積み立てた株は、思い立ったときに自由に売れるわけではありません。法律上の理由は民法676条3項にあります。

組合員は、清算前に組合財産の分割を求めることができない。

持株会の株は総組合員の共有(民法668条)なので、組合員は自分の持分に相当する株をいつでも勝手に取り出す権利を持ちません。実務で「単元株に達したら引き出せる」「退会時に精算する」といった扱いになっているのは、法律がそう決めているからではなく、各社の持株会規約がそう決めているからです。

名義書換え・退会時の処理は規約も確認

引き出しの単位・回数・手数料・退会後の端株の扱いは、関係法令に加えて持株会規約と証券会社の事務手続を確認します。自社の持株会規約で不明な点は、事務局や委託先の証券会社に確認してください。この記事では、課税関係・インサイダー規制のほか、組合財産の共有や分割に関する民法も挙げています。

売ったときの取得費 — その平均は一生の平均ではない

引き出した株を売ると譲渡所得等になります。問題は取得費です。毎月ちがう株価で買っているので、1株いくらで買ったのかが一意に決まりません。

所得税法48条3項は、2回以上にわたって取得した同一銘柄の有価証券について、取得費に算入する金額を政令で定めるところにより計算すると定め、受けた所得税法施行令118条1項が計算方法を書いています。

当該有価証券を最初に取得した時(その後既に当該有価証券の譲渡をしている場合には、直前の譲渡の時。以下この項において同じ。)から当該譲渡の時までの期間を基礎として、当該最初に取得した時において有していた当該有価証券及び当該期間内に取得した当該有価証券につき第百五条第一項第一号(総平均法)に掲げる総平均法に準ずる方法によつて算出した一単位当たりの金額により計算した金額とする。

読み飛ばされやすいのは、かっこ書きの部分です。平均を取る期間の起点は最初に取得した時ですが、すでに一度売っていれば、起点は直前の譲渡の時に置き換わります。つまりこの平均は買い始めてからの一生の平均ではなく、売るたびにリセットされる区間の平均です。

数字で見ます。毎月10,000円を拠出し、会社が1,000円の奨励金を上乗せしている人を考えます。

時期できごと株数金額
2020年〜2024年毎月11,000円で買付(60回)600株660,000円
この区間の1株当たり—1,100円
2025年1株1,600円で売却△200株320,000円
売却分の取得費(200株×1,100円)—220,000円
譲渡益—100,000円
2025年末残っている株(600株-200株)400株440,000円
2026年買付を継続(株価が上がった年)200株340,000円
2027年次に売るときの1株当たり600株1,300円

2026年は毎月11,000円の12回分132,000円に追加拠出208,000円を加え、合計340,000円で200株を取得した例です。2027年の単価は、2025年の売却後に残った400株の440,000円と追加取得200株の340,000円の合計780,000円を600株で割った1,300円です。

ここで、買い始めてからの全部を平均してしまうと結果が変わります。買付総額は660,000円+340,000円=1,000,000円、買付株数は800株なので1,250円。50円低く出ます。600株では取得費に30,000円の差が出て、その分だけ譲渡益を多く計算してしまいます。追加納付額はこの差に20.315%を掛けただけでは確定せず、所得税・付加税と住民税をそれぞれ計算し、申告納税額の端数処理等を行います。

2020年 2025年(売却) 2027年(売却) この区間の平均=1,100円 新しい区間の平均=1,300円 ▲ ここで平均がリセットされる(施行令118条1項のかっこ書き) 起点は「最初に取得した時」ではなく「直前の譲渡の時」 全期間を平均すると1,250円。600株で30,000円ぶん譲渡益を多く申告することになる。
総平均法に準ずる方法の平均は、売却のたびに区切り直される。
奨励金の分も取得費に入る

上の例で取得費の元になっているのは、自分が拠出した600,000円ではなく、持株会が実際に払った660,000円です。所得税法48条3項が基礎にするのはそれぞれの取得に要した金額だからです。奨励金の60,000円はすでに給与として課税済みなので、ここで取得費に入れなければ同じ金額に二度課税されてしまいます。同じ銘柄を持株会の外で取得・譲渡していなければ、報告書の取得価額を計算の基礎にできます。会の外の取引がある場合は、それも含めて総平均法に準ずる方法で計算します。

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特定口座には入れられる。ただし入れられる先は決まっている

持株会から引き出した株を特定口座に入れるには、措置法施行令25条の10の2の受入類型・振替等の要件を満たす必要があります。取得経緯を証明できることだけで受入れが決まるわけではありません。持株会はその例外として、租税特別措置法施行令25条の10の2第14項23号に名指しで書かれています。

この号は、持株会契約等に基づき取得した上場株式等を、持株会等口座から特定口座への振替の方法により受け入れることを認めています。ただし条件があり、受入先の特定口座は、その持株会等口座を扱っている金融商品取引業者等(またはその他財務省令で定める金融商品取引業者等)の営業所に開設されているものに限られます。好きな証券会社の特定口座へ直接入れられるわけではありません。

取得日は、持株会が買った日ではなく振り替えた日になる

同令13項は、持株会の株について、持株会等口座から特定口座に振替の方法により受け入れた日を11項2号ロの取得日とみなすと定めています。同じ13項が挙げている他の類型(株式交換で取得した株、貸株から返還された株など)は、いずれも元の株を取得した日に遡ってみなすのに、持株会だけが振替日を使います。ここは取得日の話であって取得費の話ではありません(取得費は同条11項2号イで別に証明されます)が、証券会社間で特定口座を移すときの記録がこの取得日で作られます。

インサイダー規制の適用除外 — 1回200万円未満、そして買付けだけ

持株会は毎月機械的に買い付けるので、たまたま重要事実を知っている月にも買付が起きます。これがインサイダー取引になっては制度が成り立たないため、金融商品取引法166条6項12号が、重要事実を知る前に決定された計画の実行として売買等をする場合を適用除外とし、その具体的な場合を内閣府令に委ねています。

受けているのが有価証券の取引等の規制に関する内閣府令59条1項で、その4号が従業員持株会です。

当該買付けが一定の計画に従い、個別の投資判断に基づかず、継続的に行われる場合(各役員又は従業員の一回当たりの拠出金額が二百万円に満たない場合に限る。同号において同じ。)

読み取るべき点が3つあります。

条文の言葉実務上の意味
一定の計画に従い、個別の投資判断に基づかず、継続的に一定の計画に従い、個別の投資判断に基づかず継続して買い付けることが前提で、毎月同額に限定されません。相場を見て今月だけ増額する行為は、この要件を外す方向に働く
一回当たりの拠出金額が二百万円に満たない上限は年額でも月額でもなく1回あたり。賞与時の増額拠出をまとめて出す場合はここに当たる
買付けを行う場合適用除外の対象は買付けだけ。引き出した株を売る行為はこの号に入らない
売却は買付けの適用除外とは別に確認

59条1項4号は買付けについて書かれた規定です。持株会から引き出した株を売却する場面は、この適用除外には乗りません。重要事実を知っている状態で売れば、それは通常のインサイダー取引の問題になります。「持株会の株だから大丈夫」という理解は、買うときにしか成り立ちません。

同じ59条1項には、似て非なる号が並んでいます。数字の単位が号によって違うので、自社の仕組みがどれに当たるかを確かめる必要があります。

号対象金額の要件
1項4号上場会社等の役員・従業員が共同して自社株を買う(従業員持株会・役員持株会)1回当たり200万円未満
1項5号信託を使う持株会(役員・従業員が信託業を営む者に買付けを指図する)金額要件なし。ただし他の役員・従業員の信託財産と合同運用されることが条件
1項6号関係会社の役員・従業員が関係先の上場会社等の株を共同買付け(4号に該当する場合を除く)1回当たり200万円未満
1項8号取引関係者が共同して買う(取引先持株会)1回当たり200万円未満
1項9号累積投資契約による買付け1銘柄につき1月当たり200万円未満

4号・6号・8号は1回当たり、9号だけが1月当たりです。月2回に分けて拠出する仕組みなら、4号では1回ずつ200万円で判定し、9号では合計で判定することになります。

また6号の関係会社は同条2項が定義していて、上場会社等を除き、被支配会社等のほか、上場会社等に対する前事業年度の売上高がその会社の売上高の総額の50%以上である会社、上場会社等からの前事業年度の仕入高がその会社の仕入高の総額の50%以上である会社が含まれます。資本関係がなくても所定の取引集中度で関係会社に該当し得ますが、上場会社等は除かれます。

同じ持株会なのに、法律ごとに範囲が違う

ここまでで、持株会を名指ししている条文が3本出てきました。3本とも、誰が組合員でありうるかの書き方が違います。

条文何を決めるか組合員の範囲
有価証券の取引等の規制に関する内閣府令59条1項4号インサイダー規制の適用除外上場会社等の役員又は従業員(被支配会社等の役員・従業員を含む)
租税特別措置法施行令25条の10の2第14項23号特定口座への受入れ会社の役員、従業員その他財務省令で定める者
法人税法施行令4条の2第2項1号完全支配関係の判定から株式を除く使用人のみ(組合員となる者が使用人に限られていること)

3本目だけが役員を含みません。条文はこう書かれています。

当該法人の使用人が組合員となつている民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項(組合契約)に規定する組合契約(当該法人の発行する株式を取得することを主たる目的とするものに限る。)による組合(組合員となる者が当該使用人に限られているものに限る。)の当該主たる目的に従つて取得された当該法人の株式

法人税法施行令4条の2第2項は、完全支配関係を判定するとき、自己株式を除いた発行済株式の総数のうちこれらの株式を合計した数の割合が5%に満たない場合には、その株式を発行済株式等から除くという構造になっています。持株会が数%を持っていても、親会社が残り全部を持っていれば完全支配関係が成立しうるのはこのためです。グループ法人税制の側の詳しい効果は グループ法人税制 で扱っています。

役員を入れている持株会は、この号の書き方に当たらない

条文は、組合員となる者が使用人に限られているものに限る、とかっこ書きで重ねて限定しています。役員も加入できる規約になっている持株会は、この1号の書き方をそのままは満たしません。インサイダー規制の側(府令59条1項4号)は役員を明示的に含めているので、同じ持株会でも当たる条文によって扱いが分かれます。実際に完全支配関係の判定をする場面では、規約の組合員資格を条文と突き合わせて確認する必要があります。

まとめ

  • 持株会は民法667条1項の組合。法人格がないので、課税は組合員に直接起きる
  • 奨励金は所得税法28条1項の給与等。源泉徴収・年末調整の対象で、健康保険法3条5項・6項により毎月支給なら報酬、3か月超の間隔なら賞与
  • 配当は総額・中間方式では組合員の配当所得、純額方式では主たる事業に従う所得です。ただし配当控除と源泉徴収税額の控除が使えるかは、持株会がどの計算方法を採っているかで決まる(所得税基本通達36・37共-20)
  • 取得費は総平均法に準ずる方法。平均の起点は直前の譲渡の時にリセットされる(所得税法施行令118条1項)
  • インサイダー規制の適用除外の要件は類型ごとに異なり、4号の共同買付けは各人1回200万円未満、5号の信託型に同じ金額制限はなく、9号は1銘柄1月当たり200万円未満です。売却は対象外
  • 持株会の定義は法律ごとに違い、法人税法施行令4条の2第2項1号だけは使用人限定

よくある質問

持株会は確定申告が必要ですか?

持株会そのものは申告しません。持株会は民法667条1項の組合で法人格がなく、法人税の納税義務者にならないためです。所得税基本通達36・37共-19により、組合の利益や損失は分配割合に応じて組合員に帰属し、組合員の側で課税されます。組合員が申告するかどうかは、その人の他の所得や、配当を申告不要にするかどうかで決まります。

奨励金には税金がかかりますか?

かかります。所得税法28条1項の給与等に当たるため、183条1項により支払の際に源泉徴収され、年末調整の対象にもなります。現金として振り込まれず株の買付に回るので気づきにくいのですが、課税上はいったん給与を受け取ってそのお金で株を買ったものとして扱われます。その分は売却時の取得費に含まれるので、二重に課税されるわけではありません。

奨励金は社会保険料の計算に入りますか?

健康保険法3条5項は報酬を労働の対償として受けるすべてのものとし、三月を超える期間ごとに受けるものを除いています。同6項はそれを賞与としています。したがって毎月支給される奨励金は報酬の側に入り、標準報酬月額の算定基礎に含まれることになります。賞与時のみ拠出する持株会で奨励金も年2回しか出ないなら、賞与の側で判定します。名称は問わず、労働の対償か、臨時に受けるものか、支給間隔が三月を超えるかを確認します。

持株会の配当で配当控除を受けられますか?

持株会がどの方法で組合の所得を計算しているかによります。所得税基本通達36・37共-20の(1)または(2)の方法なら配当所得として扱われ、配当控除も確定申告による源泉徴収税額の控除も適用があります。(3)の純額方式では、これらの規定の適用はなく、あん分された利益は組合事業の主たる事業の内容に従って一つの所得に区分されます。持株会から配られる報告書に銘柄ごとの配当金額と源泉徴収税額が載っているかどうかが手がかりになります。

引き出した株を売るとき、取得費はどう計算しますか?

所得税法48条3項と同法施行令118条1項により、総平均法に準ずる方法で計算した1単位当たりの金額を使います。注意すべきは平均を取る期間で、起点は最初に取得した時ですが、すでに一度売っている場合は直前の譲渡の時に置き換わります。買い始めてからの全期間を平均するのではありません。取得費の元になる金額は持株会が実際に払った買付代金なので、会社が上乗せした奨励金の分も含まれます。

持株会の株を特定口座に入れられますか?

入れられます。租税特別措置法施行令25条の10の2第14項23号が、持株会契約等に基づき取得した上場株式等を持株会等口座から特定口座への振替の方法で受け入れることを認めています。ただし受入先の特定口座は、その持株会等口座を扱っている金融商品取引業者等などの営業所に開設されているものに限られます。任意の証券会社の特定口座へ直接入れられるわけではありません。

重要事実を知っている時期に持株会の買付が行われても問題ありませんか?

有価証券の取引等の規制に関する内閣府令59条1項4号の要件を満たしていれば適用除外になります。59条1項本文の、重要事実を知る前に締結した契約または決定した計画が前提です。4号では役員・従業員の共同買付けで、一定の計画に従い個別判断によらず継続し、各人の1回の拠出が200万円未満であることが必要です。会社法156条1項等による会社の買付株券以外を買う場合は、金融商品取引業者への委託等も必要です。ただしこの号は買付けについての規定なので、引き出した株を売る場面には及びません。売却は通常どおり規制の対象です。

持株会が株を持っていると、グループ法人税制の完全支配関係は成立しませんか?

成立しうるとされています。法人税法施行令4条の2第2項は、一定の持株会が保有する株式などの合計が自己株式を除いた発行済株式の総数の5%に満たない場合、その株式を発行済株式等から除いて判定する構造になっています。ただし同項1号は、組合員となる者が当該使用人に限られているものに限ると書いており、役員も加入できる規約の持株会はこの書き方をそのままは満たしません。

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出典

民法・所得税法・同施行令・法人税法施行令・租税特別措置法施行令・金融商品取引法・有価証券の取引等の規制に関する内閣府令・健康保険法をe-Gov法令検索で確認し、所得税基本通達は国税庁の原文で確認。

この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談や、特定の株式・持株会への加入・脱退を勧めるものではありません。引き出しの単位、退会の手続、手数料、端株の精算方法は各社の持株会規約と証券会社の事務手続によって定められており、法令には規定がありません。自社の持株会規約と、持株会から交付される報告書の記載内容をご確認ください。実際の申告や、完全支配関係・インサイダー規制の判定にあたっては、税理士・所轄の税務署・自社の法務またはコンプライアンス部門にご確認ください。

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