配当金の確定申告 — 総合課税・申告分離・申告不要は「選べる単位」が違う
結論から言うと、配当金の課税方式は総合課税・申告分離課税・確定申告不要の3つで、上場株式の配当なら原則としてこの3つから選べます。ただし多くの解説が触れていない差があります。3つは「選べる単位」が違うのです。申告分離課税はその年に申告する上場株式等の配当所得の全部についてまとめて選び(租税特別措置法8条の4第2項)、確定申告不要は1回に支払を受けるべき配当等の額ごとに選べます(同8条の5第4項)。銘柄Aだけ総合課税、銘柄Bだけ申告分離、という取り方はできません。
有利不利の分岐点も、よく見る「900万円以下なら総合課税」より一段細かい所にあります。配当控除まで織り込んだ実効税率で比べると、課税総所得金額695万円(所得税の税率が20%から23%へ上がるところ)が境目です。税率23%の帯では総合課税の実効税率が20.47%となり、申告分離の20.315%を0.16ポイントだけ上回ります。
そして住民税。かつては「所得税は総合課税、住民税は申告不要」という組み合わせが使えましたが、令和6年度分の個人住民税から、この分離は廃止されました(地方税法32条13項・313条13項、令和4年法律第1号附則4条)。以下、条文を追いながら、3つの方式の選び方・配当控除の正確な計算・住民税の落とし穴を順に整理します。
3つの方式と、それぞれ選べる単位
まず全体像です。配当所得は所得税法上、原則として総合課税の対象ですが(所得税法22条・89条)、上場株式等の配当等については租税特別措置法が2つの逃げ道を用意しています。
| 方式 | 根拠条文 | 税率 | 配当控除 | 譲渡損失との通算 | 選べる単位 |
|---|---|---|---|---|---|
| 総合課税 | 所得税法22条・89条・92条 | 累進5〜45%+住民税10% | 使える | できない | 申告分離を選ばなかった分 |
| 申告分離課税 | 措置法8条の4 | 20.315% | 使えない | できる | その年の全部(8条の4第2項) |
| 確定申告不要 | 措置法8条の5 | 源泉徴収のまま | 使えない | できない | 1回の支払ごと(8条の5第4項) |
申告分離課税を選ぶと配当控除が使えないことは、条文にはっきり書かれています。措置法8条の4第1項の末尾です。
この場合において、当該上場株式等の配当等に係る配当所得については、同法第九十二条第一項の規定は、適用しない。
「同法」は所得税法、92条1項は配当控除の規定です。つまり申告分離課税と配当控除は排他で、どちらか一方しか取れません。ここが総合課税との最大の対立軸になります。
次に「選べる単位」です。申告分離課税については、同条2項が年単位・全部まとめてを要求しています。
居住者又は恒久的施設を有する非居住者がその年中に支払を受けるべき特定上場株式等の配当等に係る配当所得について所得税法第二十二条及び第八十九条又は第百六十五条の規定の適用を受けた場合には、その者がその同一の年中に支払を受けるべき他の特定上場株式等の配当等に係る配当所得については、同項の規定は、適用しない。
読み下すと、その年の特定上場株式等の配当のどれか1つでも総合課税で申告したら、同じ年の他の特定上場株式等の配当には申告分離課税を使えない、という規定です。国税庁も「申告分離課税の選択は、確定申告する上場株式等の配当所得の全額についてしなければなりません」と同じことを書いています(タックスアンサーNo.1330)。
一方、確定申告不要のほうは1回ごとに選べます。措置法8条の5第4項です。
第一項の居住者又は恒久的施設を有する非居住者が有する同項各号に掲げる利子等又は配当等についての同項の規定の適用は、その一回に支払を受けるべき利子等の額又は配当等の額ごとに行うことができる。
「一回に支払を受けるべき……額ごと」なので、同じ銘柄の中間配当は申告不要、期末配当は申告に含める、という取り方まで条文上は可能です。ただし例外が1つあり、源泉徴収選択口座(特定口座の源泉徴収あり)に受け入れた配当は口座単位になります。証券会社の口座内で譲渡損失との自動通算が回っているため、口座の中だけ切り出して申告することができないからです。特定口座側の詳しい仕組みは特定口座(源泉徴収あり)と確定申告の記事で扱っています。
どの配当がどの方式に乗るか
3つから選べるのは上場株式等の配当等だけです。非上場株式(一般株式等)の配当は原則として総合課税で、申告分離課税は選べません。源泉徴収の税率も違います。
| 区分 | 所得税+復興特別所得税 | 住民税の源泉 | 選べる方式 |
|---|---|---|---|
| 上場株式等(大口株主等以外) | 15.315% | 5%(配当割) | 3つすべて |
| 上場株式等のうち大口株主等が受けるもの | 20.42% | なし | 総合課税(少額配当なら申告不要も) |
| 非上場株式(一般株式等) | 20.42% | なし | 総合課税(少額配当なら申告不要も) |
15.315%の内訳は、措置法9条の3が所得税法182条2号の「百分の二十」を「百分の十五」に読み替え、そこに復興特別所得税2.1%が乗って15×1.021=15.315%になったものです。住民税5%は配当割で、税率は地方税法71条の28に「配当割の税率は、百分の五とする。」と一文だけ置かれています。
3%の大口株主判定は、源泉徴収と申告とで条文が違う
「大口株主等」は、その会社の発行済株式または出資の総数・総額の3%以上を持つ人のことです。ここまでは1行で済むのですが、条文を2本並べると3%の数え方が2種類あることが分かります。
まず、申告方式を決めるほうの条文(措置法8条の4第1項1号)には、次のかっこ書きが入っています。
当該配当等の支払を受ける者で当該配当等の支払に係る基準日においてその者を判定の基礎となる株主として選定した場合に法人税法第二条第十号に規定する同族会社に該当することとなる法人と合算して当該内国法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の百分の三以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有することとなるものを含む。
つまり、本人の持分が3%未満でも、本人を判定の基礎とすると同族会社になる法人の持分と合算して3%以上なら、申告分離課税も確定申告不要も使えず総合課税になります。このかっこ書きは令和4年度改正で入り、令和5年10月1日以後に支払われる配当から適用されています(改正前の条文を e-Gov で取得して比較すると、このかっこ書きは存在しません)。
ところが、源泉徴収の税率を決めるほうの条文(措置法9条の3第1号)には、この合算のかっこ書きがありません。
その内国法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の百分の三以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する個人(次条第一項において「大口株主等」という。)以外の者が支払を受けるもの
本人が「有する個人」かどうかだけを見ています。実際に源泉徴収する支払の取扱者の条文(同9条の3の2第1項)も、20%の税率を適用するのは「大口株主等に対し交付をするもの」で、この定義を借りています。結果として次のズレが生じます。
| 持分 | 源泉徴収(9条の3第1号) | 申告方式(8条の4第1項1号) |
|---|---|---|
| 本人3%以上 | 20.42% | 総合課税 |
| 本人2%+同族会社2% | 15.315% | 総合課税 |
| 本人2%のみ | 15.315% | 3つから選べる |
真ん中の行が問題です。証券会社からは上場株式等と同じ15.315%+配当割5%で引かれた通知書が届くのに、申告では総合課税しか選べません。届いた書類の税率を見て「大口株主等ではないから申告分離も選べるはず」と判断すると外します。国税庁も、この合算に該当する場合は「大口株主等と同様、総合課税の対象となります」と注記しており(タックスアンサーNo.1330の注)、源泉徴収の軽減税率の対象からは外していません。同族会社を通じて自社株を持っているオーナー個人は、毎年ここを確認する必要があります。
配当控除は「10%と2.8%」では終わらない
総合課税を選んだときだけ使えるのが配当控除です。所得税法92条1項が定める税額控除で、「所得から引く」のではなく計算した所得税額から直接引くのが特徴です。よく「所得税10%・住民税2.8%」と紹介されますが、条文は3つの場合分けを持っています。
| 課税総所得金額 | 剰余金の配当等(所得税) | 証券投資信託の収益の分配(所得税) | 住民税(合計) |
|---|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | 5% | 2.8% |
| 1,000万円を超える部分 | 5% | 2.5% | 1.4% |
ここで間違えやすいのが、1,000万円を超えたら全部が5%になるわけではないことです。92条1項3号は、剰余金の配当等について「当該課税総所得金額から千万円とロに掲げる配当所得の金額との合計額を控除した金額に達するまでの金額については百分の五を、その他の金額については百分の十を」と書いています。つまり1,000万円のラインをまたぐ配当は、下側が10%・上側が5%に割れます。課税総所得金額1,050万円で剰余金の配当が100万円あるなら、50万円分が5%、残り50万円分が10%です。
もう1つ、証券投資信託がある場合は1,000万円の判定から証券投資信託の配当所得を除いてから比べます(92条1項2号)。剰余金の配当と投資信託の分配金の両方がある年は、条文の順序どおりに計算しないと控除額がずれます。
住民税側の2.8%は地方税法本則ではなく附則5条にあり、しかも道府県民税と市町村民税で内訳が分かれています。おもしろいのは、政令指定都市に住んでいると内訳が入れ替わることです。
| 住所 | 道府県民税 | 市町村民税 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 一般の市町村 | 1.2% | 1.6% | 2.8% |
| 政令指定都市 | 0.56% | 2.24% | 2.8% |
政令指定都市では住民税所得割の税率配分そのものが道府県2%・市民税8%(一般は4%・6%)になっているため、配当控除の率も同じ比率でずらしてあります。合計は2.8%で変わらないので、納税者の手取りには影響しません。住民税の計算の全体像は住民税 計算機で確かめられます。
住民税 計算機で、配当を総合課税に含めたときの税額を試算する商品で率が違う — 投資信託・ETF・J-REIT・外国株
配当控除は「株の配当なら一律10%」ではありません。措置法9条が所得税法92条の適用を商品ごとに絞っており、そもそも配当控除が使えない商品もあります。
| 商品 | 所得税(1,000万円以下) | 住民税 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 国内株式の配当 | 10% | 2.8% | 所得税法92条1項1号イ |
| 特定株式投資信託(株式ETF) | 10% | 2.8% | 措置法9条3項(剰余金の配当等と同じ扱い) |
| 一般の証券投資信託 | 5% | 1.4% | 所得税法92条1項1号ロ |
| 一般外貨建等証券投資信託 | 2.5% | 0.7% | 措置法9条4項 |
| 特定外貨建等証券投資信託 | 0% | 0% | 措置法9条1項4号 |
| J-REIT(投資法人)の分配金 | 0% | 0% | 措置法9条1項7号 |
| 外国株価指数連動型特定株式投資信託 | 0% | 0% | 措置法9条1項3号 |
| 外国法人からの配当(米国株など) | 0% | 0% | 所得税法92条1項本文のかっこ書き |
実務でよく効くのは下の2つです。J-REITの分配金には配当控除が一切ありません。分配金利回りの高さから総合課税を検討したくなりますが、配当控除がない以上、総合課税にする理由は累進税率が20.315%を下回る場合に限られます。米国株など外国法人からの配当も同じく対象外で、これは92条1項の本文が、対象となる配当所得の定義そのものから外国法人より受けるものを除いているためです(ただしこの除外にはさらに例外があり、外国法人の国内にある営業所などに信託された証券投資信託の収益の分配は除外の対象外=配当控除が使えます)。外国で引かれた税金は配当控除ではなく外国税額控除で取り戻す、という役割分担になっています。
なお、法人が受け取る配当は個人の配当控除とはまったく別の制度(受取配当等の益金不算入)で処理します。区分ごとに不算入割合が違う点は受取配当等の益金不算入の記事を参照してください。自己株式の取得などで入金の一部が配当扱いになるみなし配当も、個人側では配当所得として同じ3方式の判断に乗ります。
どれが得か — 課税総所得金額695万円が分岐点
総合課税を選んだときの実効税率は、次の式で出せます。所得税・住民税とも配当控除が税額控除であることに注意してください。
実効税率 =(所得税の税率 − 配当控除10%)× 1.021 +(住民税10% − 配当控除2.8%)
1.021 は復興特別所得税2.1%を乗せる係数。課税総所得金額が1,000万円を超える部分は、配当控除が所得税5%・住民税1.4%になります。
国内株式の配当について、税率の帯ごとに計算するとこうなります。比較対象は申告分離課税と申告不要の20.315%です。
| 課税総所得金額 | 所得税の税率 | 総合課税の実効税率 | 20.315%との比較 |
|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 7.20% | 総合課税が有利 |
| 195万円超330万円以下 | 10% | 7.20% | 総合課税が有利 |
| 330万円超695万円以下 | 20% | 17.41% | 総合課税が有利 |
| 695万円超900万円以下 | 23% | 20.47% | 申告分離がわずかに有利 |
| 900万円超1,000万円以下 | 33% | 30.68% | 申告分離が有利 |
| 1,000万円超1,800万円以下 | 33% | 37.19% | 申告分離が有利 |
| 1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 44.34% | 申告分離が有利 |
| 4,000万円超 | 45% | 49.44% | 申告分離が有利 |
税率5%・10%の帯では、配当控除10%を所得税から引ききれないことがあります。引ききれない分は切り捨てで、還付されるわけではありません(92条2項は控除額が所得税額を超えるときは所得税額を限度とすると定めています)。上表はその前提で0%として計算しています。
境目は課税総所得金額695万円です。ここを1円でも超えると所得税の税率が23%に上がり、総合課税の実効税率20.47%が申告分離の20.315%を上回ります。差は0.16ポイントと小さいので、譲渡損失との通算や他の要素で簡単に逆転しますが、「900万円以下なら総合課税が有利」という説明は695万円超900万円以下の帯で結論を逆に導きます。
具体例で確かめます。課税総所得金額が400万円(うち国内株式の配当30万円)の人の場合です。
| 方式 | 所得税+復興 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 申告不要(源泉のまま) | 45,945円 | 15,000円 | 60,945円 |
| 申告分離課税 | 45,945円 | 15,000円 | 60,945円 |
| 総合課税 | 30,630円 | 21,600円 | 52,230円 |
総合課税の所得税は 30万円×20%=60,000円から配当控除30万円×10%=30,000円を引いて30,000円、これに復興特別所得税630円を加えて30,630円。住民税は30万円×10%=30,000円から配当控除30万円×2.8%=8,400円を引いて21,600円です。合計52,230円で、源泉徴収されている60,945円との差8,715円が還付されます。実効税率は17.41%で、上表の20%の帯と一致します。
住民税だけ別の方式を選ぶことはもうできない
令和5年度分までの個人住民税には、所得税と住民税で違う課税方式を選ぶという有名な節税の型がありました。所得税は総合課税で配当控除を取り、住民税は申告不要にして所得割10%も国民健康保険料への算入も避ける、という組み合わせです。
この道は塞がれています。改正前の地方税法32条13項は「特定配当等申告書」という住民税独自の申告書を受け皿にしていましたが、現行はこう書き換えられました。
前項の規定は、前年分の所得税に係る第四十五条の三第一項に規定する確定申告書に特定配当等に係る所得の明細に関する事項その他総務省令で定める事項の記載があるときは、当該特定配当等に係る所得の金額については、適用しない。
受け皿が所得税の確定申告書だけになりました。45条の3第1項は、所得税の確定申告書が提出された日に住民税の申告書も提出されたものとみなす規定なので、所得税の申告書に配当を書いた時点で住民税にも入るという一本道になります。市町村民税側の313条13項も同じ文言です。
適用時期は、改正法(令和4年法律第1号)附則4条が明示しています。
附則第一条第五号に掲げる規定による改正後の地方税法(以下「六年新法」という。)の規定中個人の道府県民税に関する部分は、令和六年度以後の年度分の個人の道府県民税について適用し、令和五年度分までの個人の道府県民税については、なお従前の例による。
令和6年度分の個人住民税は令和5年分の所得に対して課されます。したがって、令和5年分の確定申告(令和6年3月申告分)から、住民税だけ別方式という選択はできません。令和8年分の申告でも当然この扱いです。
天引きされた配当割5%は、控除して余れば還付される
上場株式等の配当から住民税5%(配当割)が引かれている状態で総合課税や申告分離を選ぶと、住民税を二重に払うことになりそうに見えます。そうならないように、地方税法は配当割額控除を用意しています(37条の4・314条の9)。
配当割として納めた額を、翌年度の住民税所得割から差し引く仕組みで、道府県民税から5分の2、市町村民税から5分の3に割り振られます。所得割が小さくて引ききれない場合は捨てられるのではなく、還付されます。
前項の規定により控除されるべき額で同項の所得割の額から控除することができなかつた金額があるときは、市町村は、政令で定めるところにより、同項の納税義務者に対しその控除することができなかつた金額を還付しなければならない。
「還付しなければならない」と義務の形で書かれています。したがって、配当を申告に含めた場合の住民税の実質負担は「所得割 − 配当控除 − 配当割額控除」で計算します。先の400万円の例でいえば、住民税21,600円に対して配当割15,000円が控除され、差引6,600円の負担になる、という順序です。
非上場の少額配当 — 所得税は申告不要でも住民税は残る
非上場株式の配当にも確定申告不要の道があります。措置法8条の5第1項1号の少額配当です。
少額配当の基準 = 10万円 × 配当計算期間の月数 ÷ 12
配当計算期間は、前回の配当の基準日の翌日から今回の基準日までの期間。月数は暦に従って計算し、12月を超えるときは12月、1月に満たない端数は1月に切り上げます(措置法8条の5第3項)。
年1回配当(計算期間12か月)なら10万円以下、中間配当を含めて年2回(各6か月)なら1回あたり5万円以下が基準です。端数を1月に切り上げるので、計算期間が11か月と10日なら12か月分=10万円で判定します。
ここに大きな落とし穴があります。少額配当の申告不要は所得税だけの制度で、住民税には対応する規定がありません。
理由は条文の構造にあります。住民税で配当を総所得金額から除外する地方税法32条12項の対象は「特定配当等」で、その定義(23条1項15号)は措置法8条の4第1項の上場株式等の配当等と9条の3第1号の配当等に限られています。非上場株式の配当はどちらにも当たらないので、除外されません。そもそも配当割5%が天引きされていないのですから、住民税はまだ1円も納めていません。
結果として、給与所得者が非上場株式の少額配当を受け取り、所得税で申告不要を選んだ場合、その配当について住民税の申告書を提出する義務が残ります。地方税法317条の2第1項本文は3月15日までの申告を義務づけており、ただし書が免除しているのは、給与または公的年金等の支払を受けている人のうち前年中に給与所得以外の所得(公的年金等を受けている人なら公的年金等に係る所得以外の所得)が無かった人に限られるためです。配当があればこの免除には乗りません。
よくある質問
Q. A社の配当は総合課税、B社の配当は申告分離にできますか?
A. できません。措置法8条の4第2項は、その年に支払を受けるべき特定上場株式等の配当のどれか1つでも総合課税で申告すると、同じ年の他の特定上場株式等の配当には申告分離課税を適用しないと定めています。申告分離課税は、その年に申告する上場株式等の配当所得の全額についてまとめて選ぶ必要があります。
Q. 申告不要を選んだ配当の源泉徴収税額は、他の所得の税額から引けますか?
A. 引けません。措置法8条の5第1項は、申告不要を選んだ配当を所得の計算から除外したうえで所得税法の規定を適用する構造なので、その配当に係る源泉徴収税額も申告書の計算から外れます。国税庁も「確定申告不要制度を選択した配当所得に係る源泉徴収税額は、その年分の所得税額から差し引くことはできません」と明記しています。
Q. 配当控除を使うと、所得税がゼロになった分は還付されますか?
A. 配当控除自体からは還付されません。所得税法92条2項は、控除すべき金額がその年分の所得税額を超えるときは所得税額に相当する金額を限度とすると定めており、余った控除額は切り捨てです。ただし配当から源泉徴収されていた税額は、申告に含めれば納付すべき税額との差額が精算され、納め過ぎなら還付されます。住民税側で配当割を引ききれない場合は、地方税法314条の9第2項により還付されます。
Q. 上場株式の配当を申告分離課税にすると、譲渡損失と通算できるのはなぜですか?
A. 措置法8条の4第1項が上場株式等の配当所得を他の所得と区分して「上場株式等に係る配当所得等の金額」という独立した課税標準にするためです。同法37条の12の2が、上場株式等の譲渡損失をこの金額から控除できると定めており、両者が同じ土俵に乗ることで通算が可能になります。総合課税を選ぶと配当所得は総所得金額に戻るため、この通算はできません。
Q. J-REITの分配金でも総合課税を選ぶ意味はありますか?
A. 配当控除は使えません(措置法9条1項7号)。それでも、課税総所得金額が330万円以下で所得税の税率が10%以下なら、配当控除ゼロでも総合課税の実効税率は10×1.021+10=20.21%となり、20.315%をわずかに下回ります。ただし総所得金額が増えることによる国民健康保険料や扶養判定への影響のほうが金額として大きくなりやすいので、差の小ささを踏まえて判断することになります。
Q. 同族会社と合算して3%になる場合、証券会社は20.42%で源泉徴収してくれますか?
A. しません。源泉徴収の税率を決める措置法9条の3第1号の「大口株主等」は本人単独で3%以上を有する個人を指し、同族会社との合算は含まれていません。したがって15.315%+配当割5%で天引きされたうえ、申告では総合課税しか選べない、という組み合わせになります。天引きされた税額は申告で精算されます。
出典
- e-Gov法令検索「所得税法」(昭和四十年法律第三十三号・
340AC0000000033)。API v2 で取得したリビジョン340AC0000000033_20260812_508AC0000000064(施行日2026年8月12日=現行)により、24条(配当所得の定義と、収入金額から負債利子を控除する計算)、92条(配当控除。1項1号の課税総所得金額1,000万円以下=剰余金の配当等100分の10・証券投資信託の収益の分配100分の5、1項2号の証券投資信託の配当所得を控除して1,000万円以下となる場合、1項3号の1,000万円超の場合に「達するまでの金額については百分の五を、その他の金額については百分の十を」乗じる旨、2項の控除しきれない金額は所得税額を限度とする旨、3項の「配当控除」という名称)、182条2号(配当等の源泉徴収税率100分の20)を確認した(2026年8月27日確認)。★令和8年12月1日施行のリビジョン340AC0000000033_20261201_508AC0000000012でも本則の24条・25条・92条・181条・182条を木構造から抽出して比較し、両リビジョンで同一であることを確かめた - e-Gov法令検索「租税特別措置法」(昭和三十二年法律第二十六号・
332AC0000000026)。API v2 で取得したリビジョン332AC0000000026_20260812_508AC0000000064(施行日2026年8月12日=現行)により、8条の4(上場株式等に係る配当所得等の課税の特例。1項の100分の15の分離課税と所得税法92条1項を適用しない旨、1項1号の大口株主等の除外と同族会社との合算のかっこ書き、2項の「その同一の年中に支払を受けるべき他の特定上場株式等の配当等に係る配当所得については、同項の規定は、適用しない」=年単位・全部まとめての選択、4項・5項の支払通知書の交付期限)、8条の5(確定申告を要しない配当所得等。1項1号の少額配当=10万円に配当計算期間の月数を乗じて12で除した金額以下、3項の月数の計算=暦に従い12月を超えるときは12月・1月に満たない端数は1月、4項の「その一回に支払を受けるべき……額ごとに行うことができる」)、9条(配当控除の特例。1項3号の外国株価指数連動型特定株式投資信託・1項4号の特定外貨建等証券投資信託・1項7号の投資法人からの配当等について所得税法92条1項を適用しない旨、3項の特定株式投資信託を剰余金の配当等と同様に扱う読替え、4項の一般外貨建等証券投資信託に100分の2.5を乗じる読替え)、9条の3第1号(上場株式等の配当等に係る源泉徴収税率等の特例。100分の20を100分の15とする旨と、100分の3以上を有する個人=大口株主等の定義。★同族会社との合算のかっこ書きは無い)、9条の3の2第1項(支払の取扱者による源泉徴収。大口株主等に交付するものは100分の20)、37条の11の6(源泉徴収選択口座内配当等に係る所得計算及び源泉徴収等の特例)を確認した(2026年8月27日確認)。★措置法は改正で条番号が別の制度に付け替わることがあるため、令和8年12月1日施行のリビジョン332AC0000000026_20261201_508AC0000000012も取得して8条の4・8条の5の全文を機械で突き合わせ、両リビジョンで1文字も違わないことを確認した。★あわせて令和5年10月1日より前のリビジョン332AC0000000026_20230701_505AC0000000003を取得し、8条の4第1項1号に同族会社との合算のかっこ書きが存在しないことを確認して、このかっこ書きが令和4年度改正で加わったものであることを裏づけた - e-Gov法令検索「地方税法」(昭和二十五年法律第二百二十六号・
325AC0000000226)。API v2 で取得したリビジョン325AC0000000226_20260731_508AC0000000002(施行日2026年7月31日=現行)により、23条1項15号(特定配当等の定義。イ=措置法8条の4第1項の上場株式等の配当等、ロ=同9条の3第1号の配当等)、32条12項・13項(道府県民税。特定配当等に係る所得を総所得金額から除外する旨と、所得税の確定申告書に記載があるときは適用しない旨)、313条12項・13項(市町村民税の同旨)、45条の3(所得税の確定申告書が提出された日に住民税の申告書が提出されたものとみなす旨)、71条の28(配当割の税率は100分の5)、37条の4・314条の9(配当割額の控除。道府県民税5分の2・市町村民税5分の3と、控除できなかった金額の還付義務)、317条の2第1項(市町村民税の申告義務と、給与所得以外の所得を有しなかった者に係るただし書)、附則5条(個人の道府県民税及び市町村民税の配当控除。1項1号の道府県民税100分の1.2〈指定都市100分の0.56〉と1,000万円超部分の100分の0.6〈同0.28〉、3項1号の市町村民税100分の1.6〈指定都市100分の2.24〉と1,000万円超部分の100分の0.8〈同1.12〉、各2号の証券投資信託、各3号の一般外貨建等証券投資信託)を確認した(2026年8月27日確認)。★本則の32条と附則の32条は別物のため、木構造から本則(MainProvision)側であることを確認して引用した - e-Gov法令検索「地方税法」に収録された令和4年法律第1号(地方税法等の一部を改正する法律)附則。1条5号(32条13項・15項、313条13項・15項ほかの改正規定の施行日を令和6年1月1日とする旨)および4条1項(「六年新法」の個人の道府県民税に関する部分は令和6年度以後の年度分について適用し、令和5年度分までは従前の例による旨)を確認した。あわせて改正前のリビジョン
325AC0000000226_20220301_503AC0000000087を取得し、旧32条13項が「特定配当等申告書」を受け皿としていたこと(=住民税独自の申告書で別の課税方式を選べたこと)を確認した(2026年8月27日確認) - 国税庁タックスアンサーNo.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」(令和7年4月1日現在法令等)。上場株式等の配当等は15.315%+地方税5%・それ以外は20.42%(地方税なし)で源泉徴収される旨、申告分離課税の選択は確定申告する上場株式等の配当所得の全額についてしなければならない旨、確定申告不要制度は1回に支払を受けるべき配当等の額ごと(源泉徴収選択口座内の配当等については口座ごと)に選択できる旨、申告不要を選択した配当に係る源泉徴収税額は所得税額から差し引けない旨、少額配当の計算式、および令和5年10月1日以後に支払われる上場株式等の配当等について同族会社と合算した株式等保有割合が3%以上となる場合は大口株主等と同様に総合課税の対象となる旨を確認した。curl で生テキストを取得して照合(2026年8月27日確認)
この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談や、特定の金融商品・銘柄の取得を勧めるものではありません。どの課税方式が有利かは、他の所得の金額、加入している医療保険、扶養の状況、譲渡損益の有無によって変わります。実際の申告にあたっては税理士・所轄の税務署・市区町村の窓口にご確認ください。