経営セーフティ共済(倒産防止共済)の掛金の仕訳 — 別表十(八)を付けないと損金にならない
結論から言うと、経営セーフティ共済の掛金は、払っただけでは損金になりません。申告書に明細書を添付してはじめて損金になります。根拠は租税特別措置法66条の11第3項で、「第一項の規定は、確定申告書等に同項に規定する金額の損金算入に関する明細書の添付がない場合には、適用しない」と書かれています。適用しない、つまり全額が損金不算入です。
これは経理の現場でいちばん取りこぼしやすい形をしています。掛金は口座から自動で引き落とされ、仕訳も通り、試算表にも損益計算書にも費用として載ります。帳簿の上ではどこにも異常が出ません。抜けるのは申告書の一枚だけで、しかもその一枚は「倒産防止共済」とも「経営セーフティ共済」とも呼ばれていません。年240万円を払っていれば、240万円がまるごと否認される話です。
この記事では、その明細書が具体的にどれなのか、仕訳をどう切るのが安全か、令和6年10月に入った「再加入2年ルール」がいつの何を見て効くのかを、条文の本文で確かめていきます。掛金をいくらにするといくら得か、40か月の壁で解約するとどうなるかという金額の計算は倒産防止共済 節税シミュレーターが担当します。ここは帳簿と申告書の側の話です。
払っただけでは損金にならない — 要件は明細書の添付
経営セーフティ共済(正式には中小企業倒産防止共済制度)の掛金を損金にする根拠は、法人税法ではなく租税特別措置法66条の11です。第1項の柱書はこうなっています。
法人が、各事業年度において、長期間にわたつて使用され、又は運用される基金又は信託財産に係る負担金又は掛金で次に掲げるものを支出した場合には、その支出した金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
「次に掲げるもの」の第2号が、経営セーフティ共済の掛金です。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済法の規定による中小企業倒産防止共済事業に係る基金に充てるための同法第二条第二項に規定する共済契約に係る掛金
ここまでは素直な条文です。問題は第3項で、この特例には手続要件が付いています。
第一項の規定は、確定申告書等に同項に規定する金額の損金算入に関する明細書の添付がない場合には、適用しない。ただし、当該添付がない確定申告書等の提出があつた場合においても、その添付がなかつたことにつき税務署長がやむを得ない事情があると認める場合において、当該明細書の提出があつたときは、この限りでない。
ただし書は救済のように読めますが、条件は「その添付がなかつたことにつき税務署長がやむを得ない事情があると認める場合」です。忘れていた、知らなかったは、条文が想定している事情ではありません。期待して運用するものではなく、最初から付けるものです。
添付するのは別表十(八)— 番号で探すと取り違える
では、その明細書はどれか。法人税法施行規則の別表様式を引くと、別表十(八)です。正式名称はこうなっています。
社会保険診療報酬に係る損金算入、農地所有適格法人の肉用牛の売却に係る所得の特別控除、特定の基金に対する負担金等の損金算入及び特定業績連動給与の損金算入に関する明細書
「倒産防止共済」も「経営セーフティ共済」も、様式名のどこにも出てきません。該当するのは3つ目の「特定の基金に対する負担金等の損金算入」で、これが措置法66条の11の見出し(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例)と対応しています。1枚の様式に、社会保険診療報酬・肉用牛・特定の基金・業績連動給与という互いに無関係な4つの特例が同居しているため、制度名で目次を探しても見つかりません。見落としが起きるのは、担当者の注意力の問題というより様式のこの作りに理由があります。
この様式番号は固定ではありません。施行規則の附則には、かつて「新規則別表十(七)Ⅴの書式は、法人が施行日以後に支出する租税特別措置法第六十六条の七第一項(特定の基金に対する負担金の損金算入の特例)に規定する負担金について適用する」という経過措置が置かれていた形跡があります。根拠条文が66条の7から66条の11へ、様式が別表十(七)から別表十(八)へと、どちらも過去に動いています。古い資料の番号をそのまま信じないほうがよい理由です。
仕訳は2通りある — 条文が損金経理を求めていないから
掛金を月20万円払っている法人の仕訳を考えます。実務で見かける形は2つあります。
| 処理 | 仕訳 | 損益計算書 |
|---|---|---|
| 費用処理 | (借)保険料 200,000 /(貸)普通預金 200,000 | 費用に載る |
| 資産計上 | (借)保険積立金 200,000 /(貸)普通預金 200,000 | 載らない(貸借対照表に残る) |
ここで効いてくるのが、66条の11の条文に「損金経理」という言葉が一度も出てこないことです。第1項は「その支出した金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する」と書くだけで、帳簿上で費用として経理していることを条件にしていません。条件として書かれているのは、第3項の明細書の添付だけです。
これは他の規定と比べると性格がはっきりします。たとえば租税の損金算入時期を定めた法人税基本通達9-5-1(2)は、原則(賦課決定のあった日)以外の時期を選ぶ場合に損金経理をしていることを条件に置いています(この対比は不動産取得税の仕訳と勘定科目で扱っています)。66条の11にはその条件がありません。
費用処理を選ぶ場合の勘定科目は「保険料」でも「共済掛金」でも「支払保険料」でも、継続して使う限り差し支えありません。科目名は税額に影響しません。影響するのは、資産計上を選んだときに申告調整を忘れないことと、どちらを選んでも明細書を付けることの2点です。
個人事業主も明細書が要る(措置法28条3項)
個人事業主の場合、根拠条文は措置法28条に変わります。第1項は「その支出した金額は、その支出した日の属する年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入する」と定め、第2号で法人と同じく倒産防止共済の掛金を挙げています。
そして第3項が、法人とまったく同じ構造で置かれています。
第一項の規定は、確定申告書に同項に規定する金額の必要経費に関する明細書の添付がない場合には、適用しない。
個人事業主にも明細書の添付要件があります。ここは法人以上に見落とされやすいところです。青色申告決算書の経費欄に掛金を書き込めば必要経費になる、と思われがちですが、条文はそう書いていません。決算書に書くこととは別に、必要経費算入に関する明細書を確定申告書に添付する必要があります。
令和6年10月からの2年ルール — 効くのは「解除の日」
令和6年度の改正で、解約して再加入した場合の掛金が一定期間損金にならなくなりました。措置法66条の11第2項です。
前項(第二号に係る部分に限る。)の規定は、法人の締結していた同号に規定する共済契約につき解除があつた後同号に規定する共済契約を締結した当該法人がその解除の日から同日以後二年を経過する日までの間に当該共済契約について支出する同号に掲げる掛金については、適用しない。
個人側の28条2項もまったく同じ文言です。40か月で解約して満額を受け取り、すぐ入り直してまた損金を作る、という回し方を封じる規定です。
実務で効くのは起算点がどこかです。条文は「その解除の日から同日以後二年を経過する日までの間に……支出する」掛金と書いています。再契約した日でも、掛金を払った日でもなく、前の契約を解除した日から2年です。そして適用開始も解除の日で決まります。改正法(令和6年法律第8号)の附則第53条はこうです。
新租税特別措置法第六十六条の十一第二項の規定は、法人の締結していた同項に規定する共済契約につき令和六年十月一日以後に解除があった後同項に規定する共済契約を締結した当該法人が当該共済契約について支出する同項に規定する掛金について適用する。
個人については附則第30条が、28条2項について同じ内容を定めています。
なお、この2年ルールが打ち消すのは第1項の損金算入だけです。共済契約そのものが結べなくなるわけではなく、貸付けを受けられる立場も維持されます。損金にならない掛金を払い続けることになるので、解約と再加入を検討している場合は、解除日を決める前にこの2年を織り込む必要があります。
掛金の上限は条文の2回の割り算で決まる
掛金月額は5,000円から20万円、掛金総額は800万円まで——という数字は広く知られていますが、中小企業倒産防止共済法にこの金額は書かれていません。条文は割り算の式で書いています。法4条2項です。
掛金月額は、五千円以上であつて五千円に整数を乗じて得た額とする。ただし、第九条第二項ただし書の政令で定める額の十分の一に相当する額(以下「掛金納付制限額」という。)の四十分の一に相当する額を超えてはならない。
「第九条第二項ただし書の政令で定める額」は、施行令2条が定めています。
法第九条第二項ただし書の政令で定める額は、八千万円とする。
これは共済金の貸付限度額です。ここから2回割ると掛金の上限が出てきます。
総額800万円が「上限」として効く根拠は法14条3項です。上限という言い方ではなく、納付できないと書かれています。
共済契約者は、掛金を納付することにより第十一条第四項の規定の例により算定される掛金総額が掛金納付制限額を超えることとなるときは、その超えることとなる額につき掛金を納付することができない。
あわせて法14条4項に、実務でよく使われる規定があります。掛金総額が掛金月額の40倍に達した共済契約者は、機構に通知して掛金を納付しないことができます。月20万円なら40か月で800万円に達し、そこから先は払わずに契約だけ維持できるということです。掛金を止めても契約が切れるわけではない、という点はここが根拠です。
もうひとつ、経理の段取りに直接効くのが法14条2項の一文です。「掛金は、分割して納付することができない。」月々の掛金をさらに分けて払うことはできません。
解約したときは全額が収益になる
掛金を損金にしてきた以上、返ってくるときは収益です。共済契約が解除され、掛金の納付月数が12か月以上あるときに支給されるのが解約手当金で(法11条1項)、法人なら益金、個人事業主なら事業所得の総収入金額になります。掛金を損金にしてきた分だけ、受け取った年度の課税所得が一度に増えます。経営セーフティ共済が「節税」ではなく課税の繰り延べと言われるのはこのためです。
支給率は一律ではありません。施行令4条は、解除の種類によって3つの表を用意しています。法7条の整理と対応させると次のようになります。
| 解除の種類(法7条) | 12〜24月未満 | 24〜30月未満 | 30〜36月未満 | 36〜40月未満 | 40月以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 機構による解除(2項/掛金の滞納など) | 75% | 80% | 85% | 90% | 95% |
| 任意解約(3項/契約者がいつでもできる) | 80% | 85% | 90% | 95% | 100% |
| みなし解除(4項/死亡・解散・分割・事業全部の譲渡) | 85% | 90% | 95% | 36月以上で100% | |
よく言われる「40か月の壁」は、このうち任意解約の行の話です。みなし解除なら36か月で100%に届き、機構による解除では40か月以上でも95%までしか戻りません。相続や会社の解散で契約が終わった場合と、自分で解約した場合とで、同じ納付月数でも戻る割合が違うということです。
よくある質問
Q. 経営セーフティ共済の掛金の勘定科目は何ですか?
A. 費用処理する場合は「保険料」「支払保険料」「共済掛金」などを継続して使えば差し支えありません。資産計上する場合は「保険積立金」を使います。租税特別措置法66条の11は勘定科目を指定しておらず、また損金経理を要件としていないため、どちらの処理でも掛金を損金にできます。ただしどちらを選んでも、確定申告書等に損金算入に関する明細書を添付しなければ同条第3項により第1項が適用されず、損金不算入になります。
Q. 掛金を払ったのに損金にならないことがあるのですか?
A. あります。租税特別措置法66条の11第3項は「第一項の規定は、確定申告書等に同項に規定する金額の損金算入に関する明細書の添付がない場合には、適用しない」と定めているため、明細書を添付していないと掛金の全額が損金不算入になります。ただし書により、添付がなかったことについて税務署長がやむを得ない事情があると認め、かつ明細書の提出があったときは救済されますが、失念はこの事情として想定されているものではありません。個人事業主も同法28条第3項で同じ添付要件が課されています。
Q. 添付する明細書は別表十(七)ですか、別表十(八)ですか?
A. 法人税法施行規則の現行の別表様式では別表十(八)です。正式名称は「社会保険診療報酬に係る損金算入、農地所有適格法人の肉用牛の売却に係る所得の特別控除、特定の基金に対する負担金等の損金算入及び特定業績連動給与の損金算入に関する明細書」で、このうち「特定の基金に対する負担金等の損金算入」の部分が措置法66条の11に対応します。現行の別表十(七)は「特定事業活動として特別新事業開拓事業者の株式の取得をした場合の特別勘定の金額の損金算入に関する明細書」であり別の様式です。様式番号は過去に変更されているため、番号ではなく明細書の名称で確認するのが確実です。
Q. 解約してすぐ再加入すると掛金は損金になりませんか?
A. 令和6年10月1日以後に解除があった場合は、その解除の日から2年を経過する日までの間に支出する再契約の掛金は損金になりません(租税特別措置法66条の11第2項、個人は同法28条第2項)。起算点は再契約の日ではなく前の契約を解除した日です。適用の有無も解除の日で決まり、改正法である令和6年法律第8号の附則第53条(個人は附則第30条)が、令和6年10月1日以後に解除があった場合に限ってこの規定を適用すると定めています。したがって令和6年9月30日以前に解除した契約については、その後に再契約しても2年ルールの適用はありません。
Q. 掛金の上限はいくらですか?
A. 掛金月額は5,000円以上で5,000円の整数倍、上限は20万円です。掛金総額の上限は800万円で、これを超えることとなる額は納付できません(中小企業倒産防止共済法14条3項)。これらの金額は条文に直接書かれておらず、中小企業倒産防止共済法施行令2条が共済金の貸付限度額を8,000万円と定め、同法4条2項がその10分の1を掛金納付制限額(800万円)、さらにその40分の1を掛金月額の上限(20万円)としていることから導かれます。また掛金総額が掛金月額の40倍に達した場合は、機構に通知して掛金を納付しないことができます(同法14条4項)。
Q. 解約手当金はいつでも100%戻りますか?
A. 戻りません。掛金の納付月数が12か月未満のときはそもそも支給されず(中小企業倒産防止共済法11条1項)、支給率は解除の種類によって3つに分かれます(同法施行令4条)。契約者による任意解約は納付月数40か月以上で100%になりますが、40か月未満は80%から95%です。死亡・解散・分割・事業の全部の譲渡によるみなし解除は36か月以上で100%に達します。掛金の滞納などにより機構が解除した場合は、40か月以上でも95%が上限です。
出典
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(昭和32年法律第26号)第66条の11第1項〜第3項(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例)、第28条第1項〜第3項(特定の基金に対する負担金等の必要経費算入の特例)
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」附則(令和6年3月30日法律第8号)第53条(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例に関する経過措置)、第30条(同 必要経費算入の特例に関する経過措置)、第1条第3号(施行期日・令和6年10月1日)
- e-Gov法令検索「法人税法施行規則」(昭和40年大蔵省令第12号)別表十(八)、別表十(七)
- e-Gov法令検索「中小企業倒産防止共済法」(昭和52年法律第84号)第2条第2項、第4条第2項、第7条、第9条第2項、第11条第1項〜第4項、第14条第2項〜第4項
- e-Gov法令検索「中小企業倒産防止共済法施行令」(昭和53年政令第31号)第2条(共済金の貸付限度額)、第4条(解約手当金の算定)
本記事の確認範囲は、上記の各条文および令和6年法律第8号の附則の本文です。国税庁の通達(租税特別措置法関係通達を含む)、別表十(八)の記載要領および実際の様式の記入欄、掛金を前納した場合の損金算入時期、掛金に係る消費税の取扱い、共済契約を結べる中小企業者の範囲の詳細(業種別の資本金・従業員数の基準)、加入手続・必要書類、一時貸付金の制度、不動産所得のみを有する個人の取扱い、別表五(一)の具体的な記入方法は確認していません。とくに前納した掛金をいつの事業年度の損金とするかは、条文が「支出した場合には、その支出した金額は、当該事業年度の……損金の額に算入する」と支出を基準に書いている一方で通達上の取扱いがあり得るため、本記事では結論を示していません。仕訳例に用いた月額20万円は説明のための数値です。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。費用処理と資産計上のどちらを選ぶか、解約や再加入の時期をいつにするかの判断は、会社の会計方針や決算の状況によって適切な処理が異なります。個別の判断については税務署または税理士へご確認ください。