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倒産防止共済(経営セーフティ共済)節税シミュレーター

掛金を経費にしたときの節税額だけでなく、多くの解説が省く解約手当金への課税(出口の税金)まで両方計算します。倒産防止共済は節税ではなく「課税の繰り延べ」——解約する年の所得しだいで、得にも損にもなります

倒産防止共済(正式名称は中小企業倒産防止共済制度、愛称は経営セーフティ共済)は、取引先の倒産に備える国の共済制度です。掛金は月5,000円〜20万円、累計800万円まで積み立てられ、個人事業主なら全額が事業所得の必要経費になります(租税特別措置法28条1項2号)。ここまでは多くの解説サイトに書いてあるとおりですが、解約手当金は受け取った年に全額課税されるため、この制度の税効果は節税ではなく「課税の繰り延べ」です。上の計算機は、入口(掛金の節税)と出口(解約時の増税)の両方を計算して差引を出します(一般的な計算方法の説明であり、個別の税務相談ではありません)。

使い方と前提

「解約する年の課税所得」が結果を大きく変えます 掛金を払う年の課税所得と、解約手当金を受け取る年の課税所得(受け取る前)を分けて入れられます。空欄なら同じ所得が続くものとして計算します。同じ所得のまま一括で解約すると、たいてい差引マイナスになります——解約手当金が1年分の所得にまとめて乗り、累進税率で高い段に押し込まれるからです。

このツールの前提

掛金を払う各年の課税所得は一定、解約する年には掛金を払わない、という前提で計算します。所得税は国税庁の速算表で計算し、経費や収入で税率の段をまたぐ場合も速算表の差をとって超過累進を正しく反映します。住民税の所得割は一律10%の概算、復興特別所得税(所得税額の2.1%)も含みます。掛金で下がり解約時に上がる国民健康保険料・個人事業税は含めていません(保険料率が市区町村ごとに違うため。向きは税金と同じで、入口で下がり出口で上がります)。

本ツールの結果は目安です。実際の税額は他の所得控除や税額控除、所得の変動によって変わります。まとまった金額の判断の前に税務署・税理士でご確認ください。

そもそも何の制度か — 掛金の10倍まで無利子で借りられる

倒産防止共済の本来の目的は節税ではなく、取引先の倒産による連鎖倒産の防止です。取引先が倒産して売掛金が回収できなくなったとき、回収困難額と掛金総額の10倍(最高8,000万円)のいずれか少ない額まで、無担保・無保証人・無利子で共済金を借りられます(中小企業倒産防止共済法9条・施行令2条)。

無利子ですが、タダではありません。共済金の貸付けを受けると、借入額の10分の1に相当する掛金が掛金総額から控除されます(同法11条4項)。8,000万円借りると掛金800万円が消える計算で、実質的には借入額の10%を掛金で前払いしているのと同じです。それでも取引先倒産という緊急時に、審査の速い資金繰りの命綱があることに意味があります。

加入できるのは引き続き1年以上事業を行っている中小企業者です(同法3条1項)。開業1年目は入れません。

掛金は「必要経費」— 所得控除とはここが違う

個人事業主が払った掛金は、租税特別措置法28条1項2号により事業所得の金額の計算上、必要経費に算入します。iDeCoや小規模企業共済の掛金が「所得控除」なのに対し、こちらは経費です。この違いは金額に効きます。

 倒産防止共済(必要経費)iDeCo・小規模企業共済(所得控除)
所得税・住民税下がる下がる
国民健康保険料下がる(事業所得そのものが減るため)下がらない(国保の所得割は所得控除を引く前の所得で計算)
個人事業税下がる下がらない
対象の所得事業所得のみ(不動産所得は不可)本人の所得全体
受け取るとき全額が事業所得の収入金額(総合課税)退職所得控除・公的年金等控除が使える
不動産所得の必要経費にはできません。条文が「事業所得の金額の計算上、必要経費に算入する」と事業所得に限定しているためで、中小機構も公式に注意喚起しています。不動産賃貸業のみの方は、掛金を払っても税金は下がりません。
明細書を添付しないと経費にできません 必要経費に算入するには、確定申告書に「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」の添付が必要です(措置法28条3項)。添付を忘れた場合でも、やむを得ない事情があると税務署長が認め、明細書を提出したときは適用が受けられます(同項ただし書)——ただし救済は例外なので、申告時に忘れず添付してください。

「節税」ではなく課税の繰り延べ — 数字で確かめる

掛金は払った年の経費になりますが、解約手当金は受け取った年の事業所得の収入金額になります(掛金を必要経費にしていた場合。中小機構公式FAQ)。つまり入口で減らした所得が、出口でまとめて戻ってくるだけです。しかも一括で戻るため、累進税率では高い段で課税されがちです。

課税所得500万円(所得税率20%)の個人事業主が、月10万円を40か月(掛金総額400万円)納付したケースで見てみます。

 ① 同じ所得のまま一括解約② 課税所得0円の年(廃業・赤字)に解約
入口: 掛金40か月の累計節税+1,216,800円+1,216,800円
出口: 解約手当金400万円への課税−1,279,591円(課税所得500万→900万円)−780,322円(課税所得0→400万円)
掛け捨て0円(40か月なので100%支給)0円
差引−62,791円の持ち出し+436,478円の得
40か月待って100%で受け取っても、出口を設計しないと損になります ①は支給率100%・掛け捨てゼロなのに、差引マイナス62,791円です。毎年24万円ずつ(月10万円×12か月=年120万円の経費×税率約30%)減らした税金より、400万円が1年にまとまって乗ったときの増税のほうが大きいからです。倒産防止共済の損得は「いつ・どんな年に解約するか」でほぼ決まります
解約手当金の支給率(任意解約・掛金総額に対する割合) 100% 50% 0% 〜11か月: 0% 12〜23: 80% 24〜: 85% 30〜: 90% 36〜: 95% 40か月〜: 100% 40か月の壁 ※ 12か月未満は1円も支給されません(法11条1項)。率は中小企業倒産防止共済法施行令4条。
任意解約の支給率の階段。100%になるのは納付40か月から(施行令4条2号)

40か月の壁 — 解約手当金の支給率

解約手当金は「掛金総額 × 支給率」で計算され、支給率は掛金を納付した月数解約の種類で決まります(中小企業倒産防止共済法11条3項・施行令4条)。納付12か月未満はどの種類でも1円も支給されません(同法11条1項)。

掛金納付月数任意解約
自分の意思で解約
みなし解約
個人事業主の死亡・法人の解散・分割・事業の全部譲渡
機構解約
12か月分以上の掛金滞納・不正受給による解除
1〜11か月0%0%0%
12〜23か月80%85%75%
24〜29か月85%90%80%
30〜35か月90%95%85%
36〜39か月95%100%90%
40か月〜100%100%95%
機構解約は40か月以上でも95%止まりです。掛金を12か月分以上滞納すると中小機構側から解除され、支給率は任意解約より一段低くなります。資金繰りが苦しいときは、滞納で機構解約になる前に、掛金月額の減額(5,000円まで下げられます)や自分からの解約を検討したほうが手取りは残ります。

令和6年10月からの「再加入2年ルール」

かつては「40か月待って100%で解約 → すぐ再加入」を繰り返して経費化の枠を回す使い方が広まっていましたが、封じられました。2024年10月1日以後に共済契約を解約した場合、解約の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金は、再加入しても必要経費(法人は損金)に算入できません(租税特別措置法28条2項。この適用時期は令和6年3月30日法律第8号 附則30条が定めています)。

再加入そのものは禁止されていません。禁止されたのは「解約後2年間の掛金の経費算入」です。2年間は掛金を払っても税金が減らないだけで、貸付けの備えとして再加入する選択肢は残っています。なお、機構解約された場合は解除の日から1年間はそもそも再契約できません(中小企業倒産防止共済法3条3項1号)。

出口戦略 — 得になるのはこういうときだけ

上の表①②が示すとおり、倒産防止共済の損得は「掛金を払う年の税率」と「解約手当金を受け取る年の税率」の差で決まります。得になる典型は次のような年に解約を合わせられるときです。

逆に、利益が例年どおり出ている年に「なんとなく」解約するのが一番損です。また、老後資金づくりが目的なら、受取時に退職所得控除が使える小規模企業共済iDeCoのほうが出口の税制が圧倒的に有利です。倒産防止共済はあくまで「取引先倒産への備え+利益の平準化の道具」と考えるのが実態に合っています。

よくある質問

倒産防止共済の掛金は、個人事業主でも経費になりますか?

なります。ただし所得控除ではなく、事業所得の必要経費です(租税特別措置法28条1項2号)。iDeCoや小規模企業共済のような所得控除と違い、事業所得そのものが減るため、国民健康保険料や個人事業税の計算にも効きます。一方で条文が事業所得に限定しているため、不動産所得の必要経費にはできません。また、確定申告書に「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」を添付しないと適用されません。

解約手当金は、いつから100%戻りますか?

自分の意思で解約する任意解約では、掛金を40か月以上納付していれば100%です。個人事業主の死亡などによるみなし解約は36か月以上で100%になります。逆に納付12か月未満は1円も支給されず(中小企業倒産防止共済法11条1項)、12〜39か月は75〜95%なので、40か月未満の解約は掛金の一部または全部が掛け捨てになります。

倒産防止共済は本当に節税になりますか?

正確には税金の繰り延べです。掛金は払った年の経費になりますが、解約手当金は受け取った年の事業所得の収入金額として全額課税されます。課税所得500万円の人が月10万円を40か月払い、同じ課税所得のまま一括で解約すると、積み上げた節税約121.7万円より解約年の増税約128.0万円のほうが大きく、差引で約6.3万円のマイナスになります。得になるかは、解約する年の所得をどれだけ下げられるか(廃業年・赤字年・大きな設備投資の年など)で決まります。

令和6年10月の改正で何が変わりましたか?

2024年10月1日以後に共済契約を解約した場合、解約の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金は、再加入しても必要経費(法人は損金)に算入できなくなりました(租税特別措置法28条2項。適用時期は令和6年3月30日法律第8号 附則30条)。従来使われていた「40か月で解約→即再加入」の繰り返しを封じる改正です。解約自体はできますが、2年間は掛金を払っても税金は減りません。

掛金はいくらまで払えますか?

掛金月額は5,000円から20万円まで5,000円刻みで選べ(中小企業倒産防止共済法4条2項)、掛金総額800万円に達するまで納付できます(同法14条3項)。月20万円なら40か月=3年4か月で満額です。前納もでき、前納期間が1年以内の掛金は支払った年の必要経費にできるため、決算前に翌年分をまとめて払う使い方もあります。

取引先が倒産したら、いくら借りられますか?

回収が困難になった売掛金債権等の額と、掛金総額の10倍(最高8,000万円)のいずれか少ない額まで、無担保・無保証人・無利子で借りられます。ただし借入額の10分の1に相当する掛金が掛金総額から控除されます(中小企業倒産防止共済法11条4項)。つまり無利子でも、実質的に借入額の10%を前払いする形のコストがかかります。

出典