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企業型DCは退職したらどうなるか — 6か月の起点は退職日ではなく、移換先は条文が5つ名指ししている

結論から言うと、企業型DC(企業型確定拠出年金)の「6か月以内に手続きを」という期限は、退職日から数えません。確定拠出年金法83条1項1号は「資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して六月以内」と書いています。月末退職なら実質7か月弱、月初退職でも6か月と数十日あるということです。

そして移換先は1つではありません。同じ83条1項1号が、期限までに移換されなかったものを自動移換の対象にする、という形で5つの条文を名指ししています。iDeCoへ移すのはそのうちの1本にすぎず、転職先の企業型DC・確定給付企業年金・企業年金連合会・中小企業退職金共済という行き先も条文上は並んでいます。

この記事は、退職・転職で企業型DCの加入者資格を失ったあとに何が起きるかを、確定拠出年金法とその施行令から順に追ったものです。掛金や拠出限度額の話ではなく資産の行き先と期限だけを扱います。制度そのものの枠組みは確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)の仕組みと税務、受け取るときの退職所得の計算は退職金にかかる税金にあります。

6か月の時計は退職日から回らない — 起点は「翌月」

退職して企業型年金加入者の資格を失うと、個人別管理資産(自分の名義で運用されている残高)は宙に浮きます。何もしないまま一定期間が過ぎると、国民年金基金連合会へ強制的に移されます。これが自動移換です。その期限を定めているのが確定拠出年金法83条1項1号です。

当該企業型年金の企業型年金加入者であった者であって、その個人別管理資産が当該企業型年金加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して六月以内に第五十四条の四、第五十四条の五、第八十条若しくは第八十二条又は中小企業退職金共済法第三十一条の三の規定により移換されなかったもの(当該企業型年金の企業型年金運用指図者及び次号に掲げる者を除く。)

読むべきは「資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して」の部分です。退職日そのものではなく、退職日の属する月が終わってから数え始めます。実際の日付で並べると差がはっきりします。

資格を喪失した日起算する月6か月が満了する日退職日からの日数
2026年4月1日2026年5月2026年10月31日213日
2026年4月30日2026年5月2026年10月31日184日
2026年9月30日2026年10月2027年3月31日182日

同じ「6か月」でも、月初に辞めた人と月末に辞めた人で実際に使える日数が1か月近く違います。逆に言えば、退職日から素朴に6か月を数えて「もう間に合わない」と諦める必要はありません。

資格喪失日は退職日の翌日になるのが一般的です

厚生年金や健康保険と同じく、企業型年金加入者の資格喪失日は退職した日の翌日になるのが通例です。月末退職なら翌月1日が喪失日となり、起算する月はさらに1か月後ろへずれます。自分の喪失日は、退職後に記録関連運営管理機関から届く通知で確認できます。

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 4/30 資格喪失 翌月(5月)から起算して6月=10月31日まで 退職日から数えると184日。「退職から6か月」ではない 確定拠出年金法83条1項1号の起算
自動移換までの期間は、資格喪失日の属する月の翌月から起算する。月末退職ほど猶予は長くなる。

移換先は5つ。条文がその5つを名指ししている

83条1項1号の引用をもう一度見ると、期限内に移換する根拠として5本の規定が並んでいます。「iDeCoに移すか、放っておくか」の二択ではありません。

根拠条文移換先成立の条件
確定拠出年金法80条1項転職先の企業型DC転職先の企業型年金加入者の資格を取得し、その記録関連運営管理機関等へ移換を申し出ること
確定拠出年金法82条1項iDeCo(個人型年金)連合会へ移換を申し出ること。同時にiDeCoの加入者または運用指図者になる申出をするか、既にそのいずれかであること
確定拠出年金法54条の4第1項確定給付企業年金その確定給付企業年金の規約に、あらかじめ移換を受けられる旨が定められていること
確定拠出年金法54条の5第1項企業年金連合会連合会の規約にあらかじめ定めがあること。企業型年金運用指図者は対象外
中小企業退職金共済法31条の3中小企業退職金共済確定拠出年金法83条1項1号が名指ししている移換の道

ここで見落としやすいのが、54条の4と54条の5は「相手方の規約に定めがあるかどうか」で成否が決まることです。条文はこう書いています。

企業型年金の企業型年金加入者であった者(当該企業型年金に個人別管理資産がある者に限る。)は、確定給付企業年金の加入者の資格を取得した場合であって、当該確定給付企業年金の規約において、あらかじめ、当該企業型年金の資産管理機関からその個人別管理資産の移換を受けることができる旨が定められているときは、当該企業型年金の資産管理機関にその個人別管理資産の移換を申し出ることができる。

転職先が確定給付企業年金(DB)を実施していても、その規約に受け入れの定めがなければ、この道は最初から使えません。自分の意思や手続きの巧拙ではなく、相手方の規約で決まっている部分です。転職先の担当部署に「DCからの移換を受け入れる規約になっているか」を尋ねるのが、いちばん短い確認になります。

放置したときの行き先は1つではない — 転職先にDCがあるかで条文が変わる

「6か月放置すると国民年金基金連合会へ自動移換される」という説明は広く流通していますが、条文はそう単純ではありません。転職先にも企業型DCがある場合、確定拠出年金法80条2項が先に働きます。

前項第一号に掲げる者(企業型年金の障害給付金の受給権を有する者を除く。)が甲企業型年金の企業型年金加入者の資格を取得した場合であって、乙企業型年金の企業型年金加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して六月を経過してもなお乙企業型年金に個人別管理資産があるときは、乙企業型年金の資産管理機関は、当該個人別管理資産を甲企業型年金の資産管理機関に移換するものとする。

甲が転職先、乙が前職です。本人が何も申し出なくても、6か月を過ぎれば前職の資産管理機関が転職先の資産管理機関へ移すという規定です。行き先は国民年金基金連合会ではなく転職先の企業型DCで、運用は続きます。

つまり、放置したときの結末は次の2通りに分かれます。

状況働く条文資産の行き先その後
転職先にも企業型DCがあり、加入者資格を取得している80条2項転職先の企業型DCの資産管理機関運用が続く。加入者期間も途切れない
転職先に企業型DCがない/自営業・無職・専業主婦(主夫)になった83条1項国民年金基金連合会自動移換。以下のとおり運用も加入者期間も止まる
80条2項には除外があります

かっこ書きで「企業型年金の障害給付金の受給権を有する者を除く」とされています。障害給付金の受給権を持っている人は、この自動的な移換の対象になりません。また83条1項1号のかっこ書きも、その企業型年金の企業型年金運用指図者を除いています。前職の企業型DCに運用指図者として残っている人は、6か月で自動移換されるわけではありません。

自動移換されると、何が止まるのか

国民年金基金連合会へ自動移換されると、資産は現金のまま預けられている状態になります。運用の指図ができないこと自体は実務でよく指摘されますが、もう1つ条文から読み取れる不利益があります。老齢給付金をいつから受け取れるかを決める「通算加入者等期間」が、その間は積み上がらないことです。

通算加入者等期間の中身は確定拠出年金法33条2項が定義しています。

前項の通算加入者等期間とは、政令で定めるところにより同項に規定する者の次に掲げる期間(その者が六十歳に達した日の前日が属する月以前の期間に限る。)を合算した期間をいう。

続く各号が挙げるのは、企業型年金加入者期間・企業型年金運用指図者期間・個人型年金加入者期間・個人型年金運用指図者期間の4つだけです。自動移換された人はそのいずれでもないので、この4つに当たりません。

これが効いてくるのが、60歳以降いつから受け取れるかです。確定拠出年金法33条1項は、年齢ごとに必要な通算加入者等期間を段階的に定めています。

請求する時の年齢必要な通算加入者等期間
60歳以上61歳未満10年
61歳以上62歳未満8年
62歳以上63歳未満6年
63歳以上64歳未満4年
64歳以上65歳未満2年
65歳以上1月

期間が足りなければ、受け取れる年齢がその分だけ後ろへずれます。一方で同項にはただし書があり、期間がまったくない場合の受け皿も用意されています。

ただし、企業型年金加入者であった者であって六十歳以上七十五歳未満のものは、通算加入者等期間を有しない場合であっても、企業型年金加入者となった日その他の厚生労働省令で定める日から起算して五年を経過した日から企業型記録関連運営管理機関等に老齢給付金の支給を請求することができる。

なお、自動移換された資産をあとから動かす道は閉じていません。確定拠出年金法80条3項は、連合会に移換された人が新たに企業型年金加入者の資格を取得したときは、連合会がその資産を転職先の資産管理機関へ移換すると定めています。気づいた時点で就職すれば戻せます。ただし止まっていた期間は戻りません。

退職金の税金計算ツールで、受け取り時の手取りを試算する

脱退一時金は2本ある — 時計の起点も、金額の敷居も違う

「少額だから現金でもらって終わりにしたい」という場面で出てくるのが脱退一時金です。ここが実務でいちばん混乱するところで、確定拠出年金法には脱退一時金の規定が2本あります。附則2条の2(企業型年金の側から請求するもの)と、附則3条(連合会または個人型記録関連運営管理機関へ請求するもの)です。

2本は独立した制度で、時計の起点も、金額の敷居も違います。まず期限の条文を並べます。

最後に当該企業型年金加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して六月を経過していないこと。
最後に企業型年金加入者又は個人型年金加入者の資格を喪失した日から起算して二年を経過していないこと。

前者が附則2条の2第1項3号、後者が附則3条1項7号です。同じ法律の、同じ「資格を喪失した日」という出来事について、片方は「属する月の翌月から起算」、もう片方は「日から起算」と書き分けられています。うっかり読み替えると数か月ずれます。

金額の敷居も政令で別々に置かれています。

法附則第二条の二第一項第二号の政令で定める額は、一万五千円とする。
法附則第三条第一項第六号の政令で定める額は、二十五万円とする。
法附則第三条第一項第六号の政令で定める期間は、一月以上五年以下とする。

整理すると次のようになります。

 附則2条の2(企業型年金へ請求)附則3条(連合会等へ請求)
期限の起算資格喪失日の属する月の翌月から資格喪失から
期限の長さ6月2年
資産額の敷居1万5,000円以下25万円以下
期間による判定なし(金額のみ)通算拠出期間が1月以上5年以下なら金額を問わない
年齢条文に年齢要件なし60歳未満であること
iDeCoに入れる人62条1項各号に該当する者は不可
附則2条の2には入口が2つあります

同条1項は、請求できる者を「次の各号のいずれにも該当する企業型年金加入者であった者」又は「第一号及び第三号並びに次条第一項各号(第七号を除く。)のいずれにも該当する企業型年金加入者であった者」と、2通り並べて書いています。前者が1万5,000円以下のルート、後者は附則3条(次条)の要件を借りてきて、期限だけを6か月に差し替えるルートです。7号だけを除いているのは、期限を定める条文が附則2条の2第1項3号に入れ替わっているからです。1万5,000円を超えていても、附則3条の要件を満たせば企業型年金の側から請求できる余地があります。

手続きの順序にも決まりがあります。施行令60条6項は、附則3条の請求について次のように定めています。

企業型年金の企業型年金加入者であった者(当該企業型年金に個人別管理資産がある者に限る。)は、法附則第三条第一項の規定による支給の請求は、法第八十二条第一項の規定による個人別管理資産の移換の申出と同時に行わなければならない。

つまり「まず連合会へ移してから、あとで脱退一時金を請求する」という段取りにはできません。移換の申出と請求を同時に行う必要があります。

請求中は自動移換の時計が止まります

附則2条の2第5項は、脱退一時金を請求した場合の83条1項1号の読み替えを定めています。「六月以内」を「六月以内(当該企業型年金加入者であった者が附則第二条の二第一項の請求をした日の属する月の初日から同条第二項の裁定を受けた日の属する月の末日までの期間を除く。)」と読み替える、という規定です。請求してから裁定が出るまでの期間は6か月のカウントから除かれるので、審査に時間がかかっても、その間に自動移換されて請求が空振りになることはありません。

現金にする代償 — 通算加入者等期間が消える

脱退一時金には、条文に明記された代償があります。附則2条の2第4項です(附則3条5項も同じ文言です)。

脱退一時金の支給を受けたときは、その支給を受けた者の支給を受けた月の前月までの企業型年金加入者期間及び企業型年金運用指図者期間並びに個人型年金加入者期間及び個人型年金運用指図者期間は、第三十三条第二項の規定にかかわらず、同条第一項の通算加入者等期間に算入しない。

「支給を受けた月の前月まで」の期間が、まるごと通算加入者等期間から外れます。これは今の資産についてだけの話ではありません。将来ふたたび企業型DCやiDeCoに加入したとき、それまで積み上げた期間はゼロから数え直しになります。

具体的に見ます。30歳で7年間の加入期間を持つ人が脱退一時金を受け取り、35歳で再び加入して60歳まで25年拠出したとします。通算加入者等期間は7年+25年の32年ではなく、25年です。この場合は10年を超えているので60歳から請求できますが、たとえば55歳で再加入したなら期間は5年となり、上の表では62歳以上63歳未満の6年に届かず、63歳まで受け取れません。数万円の脱退一時金と引き換えに、受給開始が3年遅れる形です。

なお通算拠出期間を数えるとき、施行令60条5項は、同じ月が企業型年金加入者期間と個人型年金加入者期間の両方の算定基礎になる場合は、そのどちらか一方についてのみ算定の基礎とすると定めています。企業型DCとiDeCoに同時に入っていた月を二重に数えることはできません。5年以下という敷居の判定では、この重複の扱いが効いてきます。

受け取る額は請求日の残高ではない — 最大3か月ぶれる

脱退一時金をいくら受け取れるかも政令が決めています。施行令59条3項です。

法附則第二条の二第三項の政令で定める額は、同条第一項の請求をした者の当該請求をした日以後の企業型年金規約で定める日(その支給を請求した日から起算して三月を経過する日までの間に限る。)における当該企業型年金の個人別管理資産額とする。

金額の基準日は請求日ではなく「規約で定める日」で、それは請求日から3か月を経過する日までのどこかです。附則3条についても施行令60条4項が同じ構造で定めています。

これは実務上、次のことを意味します。請求したあとも資産は運用され続けるため、受け取る額は請求時点の残高から動きます。相場が下がれば減り、上がれば増えます。1万5,000円以下という敷居の判定に使う額(施行令59条1項)と、実際に支払われる額(同条3項)は別々の日で計算されるということでもあります。

敷居の判定に使う額の計算も、単純な「今の残高」ではありません。施行令59条1項は、請求日が属する月の前月末日の個人別管理資産の額に、資格喪失日までに拠出することになっていた未拠出の掛金の額などを足し、規約により事業主に返還される額や、他制度へ移換することになっている額を差し引く、という組み立てになっています。未納の掛金がある人は、画面上の残高より判定額が大きくなりえます。

会社の説明義務は、5つの移換先のうち3つしかカバーしていない

退職者に対して、会社の側にも義務があります。確定拠出年金法施行令25条2項です。

事業主は、その実施する企業型年金において、その加入者の資格の喪失又は当該企業型年金の終了が見込まれるときは、厚生労働省令で定めるところにより、法第五十四条の四第二項若しくは第五十四条の五第二項又は中小企業退職金共済法第三十一条の三第一項の規定による個人別管理資産の移換に関する事項について、当該加入者の資格の喪失又は当該企業型年金の終了が見込まれる日までに、当該加入者の資格を喪失することが見込まれる者又は当該企業型年金が終了することとなる日において当該企業型年金の企業型年金加入者等である者に説明しなければならない。

期限が「見込まれる日までに」=退職日より前である点も実務上重要ですが、それ以上に目を引くのは説明の対象として挙げられている条文です。54条の4(確定給付企業年金へ)・54条の5(企業年金連合会へ)・中退共法31条の3(中退共へ)の3本しかありません。

80条(転職先の企業型DCへ)と82条(iDeCoへ)は、この説明義務の列挙に入っていません。実際にはいちばん多く選ばれるであろう2つが、条文上の説明義務の外にあるということです。会社から渡される退職時の案内に、iDeCoへの移換や転職先DCへの移換の具体的な手順が薄くても、それ自体は義務違反ではありません。

行き先を自分で決めなければならない、ということ

ここは「会社が教えてくれるはず」と待っていると6か月が過ぎる箇所です。退職が決まった時点で、①転職先に企業型DCがあるか、②なければiDeCoの口座を用意するか、③確定給付企業年金や中退共への移換が使えるか、を自分で確認するのが現実的な順序になります。iDeCoへ移すには金融機関を選んで口座を開く時間が要るので、6か月の後半に動き始めると間に合わないことがあります。

なお2026年12月1日施行の改正で、確定拠出年金法62条1項に第5号が新設され、60歳以上70歳未満の人でも、82条1項の個人別管理資産の移換の申出をした者などはiDeCoの加入者になれるようになります。60歳を過ぎて退職した人の移換先が広がる改正です。制度の中身は確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)の仕組みと税務で扱っています。

税金 — 老齢給付金の一時金と脱退一時金は、別の箱に入っている

移換そのものには課税されません。資産が制度から出ずに移動しているだけだからです。課税が問題になるのは、現金として受け取るときです。ここで老齢給付金の一時金と脱退一時金は、所得税法の側でも別の扱いになっています

まず老齢給付金の一時金は、退職手当等とみなす一時金を並べた所得税法施行令72条3項の7号に入っています。

確定拠出年金法第四条第三項(承認の基準等)に規定する企業型年金規約又は同法第五十六条第三項(承認の基準等)に規定する個人型年金規約に基づいて同法第二十八条第一号(給付の種類)(同法第七十三条(企業型年金に係る規定の準用)において準用する場合を含む。)に掲げる老齢給付金として支給される一時金

名指しされているのは28条1号の老齢給付金だけです。同条は給付の種類を老齢給付金・障害給付金・死亡一時金の3つとしており、脱退一時金はそもそも28条の給付ではありません(附則に置かれた別の制度です)。したがって脱退一時金は72条3項7号に入りません。

では脱退一時金はどこに現れるかというと、所得税法施行令351条です。同条は「生命保険金に類する給付等」として支払調書の対象を列挙する規定で、その7号がこう書いています。

確定拠出年金法附則第二条の二第二項及び第三条第二項(脱退一時金)に規定する脱退一時金

351条の柱書は、給与等・退職手当等・公的年金等に該当するものをかっこ書きで除いたうえで列挙しています。脱退一時金がこの列挙に置かれていること自体が、退職手当等としては扱われていないことの現れです。実際の所得区分と申告の要否は、支払時に交付される書類の記載や他の所得との関係で決まるため、受け取った書類を持って税務署または税理士に確認するのが確実です。

ここから先は法令の外です

自動移換されている間に差し引かれる手数料の額、移換の申出書の様式、金融機関ごとの処理日数は、確定拠出年金法にも施行令にも規定がありません。国民年金基金連合会・記録関連運営管理機関・各金融機関の事務手続で定められている部分です。金額や日数を知りたい場合は、勤務先または移換先の金融機関に直接確認する必要があります。

退職金と企業型DCの一時金を近い時期に受け取る場合は、退職所得控除の重複調整(いわゆる9年ルール・19年ルール)が働きます。こちらは受け取り方の話なので、退職金にかかる税金で扱っています。「退職所得の受給に関する申告書」の書き方は退職所得の受給に関する申告書にあります。

よくある質問

Q. 「退職から6か月以内」と聞きましたが、いつまでですか?

A. 退職日からではありません。確定拠出年金法83条1項1号は「資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して六月以内」と定めています。たとえば2026年4月30日に資格を喪失したなら、起算するのは2026年5月で、満了は2026年10月31日です。退職日から数えると184日あることになります。資格喪失日は退職日の翌日になるのが一般的なので、月末退職ならさらに1か月後ろへずれます。

Q. 転職先にも企業型DCがあります。何もしないとどうなりますか?

A. 確定拠出年金法80条2項により、6か月を過ぎると前職の資産管理機関が転職先の資産管理機関へ移換します。国民年金基金連合会への自動移換ではなく転職先の企業型DCへ移るので、運用は続きます。ただし障害給付金の受給権を有する者はこの規定の対象から除かれています。手続きが自動で進むとしても、運用商品の選択は自分で行う必要があるため、待たずに申し出るほうが確実です。

Q. iDeCo以外に移換先はありますか?

A. 確定拠出年金法83条1項1号が名指ししている移換の根拠は5本あります。転職先の企業型DC(80条)、iDeCo(82条)、確定給付企業年金(54条の4)、企業年金連合会(54条の5)、中小企業退職金共済(中小企業退職金共済法31条の3)です。ただし54条の4と54条の5は、移換を受ける側の規約にあらかじめ受け入れの定めがあることが条件になっています。

Q. 残高が少ないので現金で受け取りたいのですが、できますか?

A. 脱退一時金の規定は2本あります。確定拠出年金法附則2条の2は資産額が1万5,000円以下であることを求め、期限は資格喪失日の属する月の翌月から6月です。附則3条は60歳未満であることなどに加えて、通算拠出期間が1月以上5年以下であるか資産額が25万円以下であることを求め、期限は資格喪失日から2年です。附則2条の2には附則3条の要件を借りるルートもあるため、1万5,000円を超えていても道が閉じているとは限りません。

Q. 脱退一時金を受け取ると、あとで不利になりますか?

A. 確定拠出年金法附則2条の2第4項および附則3条5項により、支給を受けた月の前月までの加入者期間・運用指図者期間が通算加入者等期間に算入されなくなります。将来ふたたび加入した場合も、それまでの期間はゼロから数え直しです。同法33条1項は60歳から受け取るには10年の通算加入者等期間を求めているため、期間が足りないと受給開始が61歳・62歳と後ろへずれることになります。

Q. 脱退一時金の金額は、請求した日の残高で決まりますか?

A. 決まりません。確定拠出年金法施行令59条3項は、支払われる額を「請求をした日以後の企業型年金規約で定める日」における個人別管理資産額とし、その日を請求日から3か月を経過する日までの間に限っています。請求後も運用が続くため、実際に受け取る額は請求時点の残高から動きます。附則3条の脱退一時金についても、施行令60条4項が同じ構造で定めています。

Q. 会社は退職時に移換の説明をしてくれますか?

A. 確定拠出年金法施行令25条2項が事業主に説明義務を課しており、その期限は資格喪失が見込まれる日までとされています。ただし説明の対象として挙げられているのは54条の4・54条の5・中小企業退職金共済法31条の3の3本で、転職先の企業型DCへの移換(80条)とiDeCoへの移換(82条)は列挙に入っていません。実際に選ばれることの多い2つが説明義務の外にあるため、行き先は自分で確認する前提で動くのが安全です。

Q. 自動移換されてしまいました。もう戻せませんか?

A. 戻せます。確定拠出年金法80条3項は、83条1項により連合会へ移換された人が企業型年金加入者の資格を取得したときは、連合会がその資産を転職先の資産管理機関へ移換すると定めています。iDeCoへ移す道も残っています。ただし自動移換されていた期間は同法33条2項が挙げる4つの期間のいずれにも当たらないため、その分の通算加入者等期間は戻りません。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談や、特定の移換先・金融機関を勧めるものではありません。自動移換中に差し引かれる手数料の額、移換の申出書の様式、処理に要する日数は法令に規定がなく、国民年金基金連合会・記録関連運営管理機関・各金融機関の事務手続によって定められています。ご自身の資格喪失日、個人別管理資産の額、通算加入者等期間は、退職後に記録関連運営管理機関から届く通知でご確認ください。実際の手続きや所得区分の判断にあたっては、勤務先の担当部署・移換先の金融機関・税理士・所轄の税務署にご確認ください。

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