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確定拠出年金とは — 2026年12月1日に限度額が一本化され、企業型DCは月6.2万円になる

結論から言うと、確定拠出年金は会社や本人がいくら払うかだけが決まっていて、いくら受け取れるかは運用しだい、という年金です。会社が掛金を出すのが企業型DC(企業型年金)、本人が自分で出すのがiDeCo(個人型年金)で、根拠法はどちらも確定拠出年金法という1本の法律です。

そして、いま最も知っておくべきなのは2026年12月1日に拠出限度額が全面的に書き換わることです。企業型DCは月5.5万円から6.2万円へ。iDeCoの会社員(第2号加入者)は、勤務先に企業年金があるかどうかで23,000円・20,000円に分かれていたものが月6.2万円に一本化され、20,000円と35,000円という2つの敷居が条文から消えます。自営業者(第1号加入者)は68,000円から75,000円へ。動かないのは第3号加入者の23,000円だけです。

もう1つ、すでに終わっている改正があります。マッチング拠出の「加入者掛金は事業主掛金を超えられない」という制限は、2026年4月1日に条文ごと削除済みです。この記事では、限度額の新旧を条文で並べたうえで、会社側の税務・経理と、選択制DCで実際に起きる不利益まで整理します。

確定拠出年金は2つある — 誰が掛金を出すかだけが違う

確定拠出年金法は、企業型年金とiDeCo(個人型年金)を1本の法律で定めています。制度の骨格は同じで、違うのは掛金を誰が出すか誰が制度を作るかです。

企業型DC(企業型年金)iDeCo(個人型年金)
制度を作る人事業主(厚生労働大臣の承認が要る)国民年金基金連合会
掛金を出す人事業主(=事業主掛金)本人(=個人型年金加入者掛金)
本人の上乗せマッチング拠出(企業型年金加入者掛金)
掛金の下限回数年1回以上、定期的に(法19条1項・3項、法70条1項)

企業型DCを始めるには、事業主が規約を作って厚生労働大臣の承認を受ける必要があります。しかもその前段に、従業員側の同意が要ります。

厚生年金適用事業所の事業主は、企業型年金を実施しようとするときは、企業型年金を実施しようとする厚生年金適用事業所に使用される第一号等厚生年金被保険者(第九条第二項第二号に該当する者を除く。以下この項、次条第三項(第五条第四項、第六条第二項及び第四十六条第三項において準用する場合を含む。)及び第四項、第五条第二項(第六条第二項において準用する場合を含む。)並びに第四十六条第一項において同じ。)の過半数で組織する労働組合があるときは当該労働組合、当該第一号等厚生年金被保険者の過半数で組織する労働組合がないときは当該第一号等厚生年金被保険者の過半数を代表する者の同意を得て、企業型年金に係る規約を作成し、当該規約について厚生労働大臣の承認を受けなければならない。

36協定などと同じ過半数代表の同意が要件になっている点は、実務では見落としやすいところです。しかも2か所以上の事業所で実施するなら、同意は事業所ごとに得なければなりません(法3条2項)。

事業主掛金の決め方には制約がある 規約の承認基準(法4条1項3号)は、事業主掛金について「定額又は給与に一定の率を乗ずる方法その他これに類する方法」で算定すると定められていることを求めています。役職や勤続で差を付けること自体は可能ですが、同項2号・施行令6条2号が「特定の者について不当に差別的なものでないこと」を要求しているので、恣意的な決め方はできません。また施行令6条3号により、事業主掛金は前納も追納もできません
掛金がどこを通るか(ここが税と社会保険の分かれ目) 会社の資金 事業主掛金 給与を通らない 資産管理機関 給与 マッチング拠出 給与を通る 本人の口座 iDeCo(本人が納付・事業主経由も可) 国民年金基金連合会 上の線だけが 給与所得を通らない =社会保険料の外側
事業主掛金だけが給与を経由しない。マッチング拠出と自分で払うiDeCoは、いったん給与・本人の手取りを通る。

拠出限度額は2026年12月1日に全部書き換わる

限度額は法律ではなく政令で決まっています。企業型DCが確定拠出年金法20条を受けた施行令11条、iDeCoが法69条を受けた施行令36条です。この2つの条文が、2026年12月1日施行の改正政令(令和7年政令第442号)で書き換わります。

まず企業型DCです。現行の施行令11条1号はこう書いています。

企業型年金加入者であって、次に掲げる者(次号、第三十四条の二第二号イ及び第三十六条第四号において「他制度加入者」という。)以外のもの五万五千円

これが2026年12月1日からは、次のようになります。

企業型年金加入者であって、次に掲げる者(以下「他制度加入者」という。)以外のもの六万二千円

確定給付企業年金などに同時に入っている人(他制度加入者)は、この額から他制度掛金相当額を引いた額が限度になります(同条2号)。引く仕組みは変わらず、引かれる前の枠が5.5万円から6.2万円に上がるという改正です。

大きく動くのはiDeCo側です。現行の施行令36条3号は、企業型DCに入っている会社員のiDeCo枠を次のように書いています。

第二号加入者であって、企業型年金加入者であるもの(次号に掲げる者を除く。)二万円(事業主掛金の拠出に係る月であって、当該事業主掛金の額が三万五千円を上回るときは、二万円から、当該事業主掛金の額から三万五千円を控除した額を控除した額)

2万円という上限があり、そのうえで事業主掛金が3.5万円を超えた分だけ2万円から削られる、という二段構えです。これが2026年12月1日からはこう変わります。

第二号加入者であって、企業型年金加入者であるもの(次号に掲げる者を除く。)六万二千円(事業主掛金の拠出に係る月にあっては、六万二千円から当該事業主掛金の額を控除した額)

2万円も3.5万円も消えました。残るのは「6.2万円から事業主掛金を引いた額」という一本の引き算だけです。読み方は単純で、企業型DCとiDeCoを合計して月6.2万円、その内訳は自由、ということになります。

区分現行(2026年11月30日まで)2026年12月1日から
企業型DC(他制度なし)55,000円62,000円
企業型DC(他制度あり)55,000円 − 他制度掛金相当額62,000円 − 他制度掛金相当額
iDeCo 第1号(自営業者等)・第4号68,000円(国民年金基金等の掛金を控除)75,000円(同上)
iDeCo 第2号(企業年金なし)23,000円62,000円
iDeCo 第2号(企業型DCあり)20,000円(事業主掛金が35,000円超なら減額)62,000円 − 事業主掛金
iDeCo 第2号(他制度あり)20,000円(他制度掛金相当額が35,000円超なら減額)62,000円 − 他制度掛金相当額
iDeCo 第3号(被扶養配偶者)23,000円23,000円(据え置き)
動かないのは第3号加入者だけ 改正後の施行令36条を1号から順に読むと、金額が上がっていない区分は6号の第三号加入者(23,000円)ただ1つです。厚生年金の被保険者に扶養されている配偶者は、この改正の対象外ということになります。iDeCoの拡充を「全員の枠が広がる」と読むと、ここだけ外れます。
月あたりの拠出限度額(現行 / 2026年12月1日から) 企業型DC 55,000 62,000 iDeCo 第1号 68,000 75,000 iDeCo 第2号 23,000 62,000 iDeCo 第3号 23,000 23,000(据え置き) 上段=現行/下段=2026年12月1日から。第2号は企業年金が無い場合。
第2号加入者の枠は23,000円から62,000円へ。唯一動かないのが第3号加入者。
iDeCoの掛金でいくら税金が減るか、年収と掛金から試算する

マッチング拠出の「事業主掛金を超えられない」は、もう条文に無い

マッチング拠出とは、企業型DCの加入者が事業主掛金に上乗せして自分でも掛金を出す仕組みです(法19条3項)。ここには長らく、加入者掛金は事業主掛金を超えてはならないという制限がありました。事業主掛金が月3,000円の会社では、本人がいくら出したくても3,000円までだったということです。

この制限は、確定拠出年金法4条1項の「三の二」という枝番号の号に住んでいました。2026年3月31日までの条文です。

前条第三項第七号の二に掲げる事項を定めた場合にあっては、各企業型年金加入者に係る企業型年金加入者掛金の額が当該企業型年金加入者に係る事業主掛金の額を超えないように企業型年金加入者掛金の額の決定又は変更の方法が定められていること。

この号は2026年4月1日に削除されました。現行の法4条1項は「一・二・三・四……」と続き、三の二はありません。号の数で言うと9個から8個に減っています。法令全文を機械的に検索しても、「事業主掛金の額を超えない」という表現は現行の確定拠出年金法に1か所も残っていません(2025年6月20日時点の版には1か所ありました)。

枝番号の号は、目で数えると飛ばす 「三の二」は、改正で号を挿し込むときに既存の号数を動かさないための立法上の作法です。裏を返せば、後から改正が入った条ほど枝番号を持ちます。条文を目で追って「9番目の号」と数えると、まず間違いなくずれます。号を数えるときは条文の木構造から数えるのが確実です。

削除の跡は、施行令6条4号ハにも残っています。この号は、加入者掛金は年1回しか変更できない、ただし例外がある、という規定で、その例外の中身が入れ替わりました。旧規定はこう書いていました。

企業型年金加入者掛金の額は、事業主掛金の額が引き下げられることにより当該事業主掛金の額が企業型年金加入者に係る当該企業型年金加入者掛金の額を下回ることとなる場合において、当該企業型年金加入者掛金の額が当該事業主掛金の額を超えないように変更する場合その他厚生労働省令で定める場合を除き、第十条の二に規定する企業型掛金拠出単位期間につき一回に限り変更することができるものであること。

現行はこうです。

企業型年金加入者掛金の額は、事業主掛金の額が引き上げられることにより当該事業主掛金の額と企業型年金加入者に係る当該企業型年金加入者掛金の額との合計額が法第二十条に規定する拠出限度額を超えることとなる場合において、当該合計額が当該拠出限度額を超えないように変更する場合その他厚生労働省令で定める場合を除き、第十条の二に規定する企業型掛金拠出単位期間につき一回に限り変更することができるものであること。

旧規定が想定していたのは、事業主掛金が引き下げられて、加入者掛金がそれを下回るようにする場面でした。現行が想定しているのは、事業主掛金が引き上げられて、合計が拠出限度額を超えるようにする場面です。基準が「事業主掛金」から「拠出限度額」へ移ったことが、例外規定の文言そのものに出ています。

会社が何もしないと、この改正は従業員に届かない マッチング拠出は規約で定めた範囲でしか行えません(法19条3項)。上限の制限が法律から消えても、規約が古いままなら加入者掛金は増やせません。制限の撤廃を実際に使うには、規約変更の手続きが要ります。この記事の公開時点で、上限撤廃から4か月以上が経っています。

会社の税務と経理 — 事業主掛金は給与ではない

経理の側でいちばん効くのは、事業主掛金が従業員の給与所得にならないという一点です。根拠は所得税法施行令64条1項です。

事業を営む個人又は法人が支出した次の各号に掲げる掛金、保険料、事業主掛金又は信託金等は、当該各号に規定する被共済者、加入者、受益者等、企業型年金加入者、個人型年金加入者又は信託の受益者等に対する給与所得に係る収入金額に含まれないものとする。

その4号が、企業型年金規約に基づいて企業型年金加入者のために支出した事業主掛金を挙げています。給与所得に係る収入金額に含まれないということは、源泉徴収の対象にもならず、年末調整でも何もしないということです。給与明細にも載りません。

法人側の損金算入は、法人税法施行令135条です。

内国法人が、各事業年度において、次に掲げる掛金、保険料、事業主掛金、信託金等又は信託金等若しくは預入金等の払込みに充てるための金銭を支出した場合には、その支出した金額(第二号に掲げる掛金又は保険料の支出を金銭に代えて株式をもつて行つた場合として財務省令で定める場合には、財務省令で定める金額)は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

3号が企業型DCの事業主掛金、4号がiDeCo+(中小事業主掛金)です。支出した金額がそのまま損金で、退職給付引当金のような繰入れの議論は入りません。仕訳としては、支払時に費用処理して終わりです。

場面借方貸方
事業主掛金を納付確定拠出年金掛金(福利厚生費)普通預金
マッチング拠出分を給与から控除給料手当預り金/普通預金
控除した加入者掛金を納付預り金普通預金
事業主掛金に社会保険料はかからない 事業主掛金は本人が受け取るものではなく、直接資産管理機関へ納付されます。給与所得に含まれない以上、標準報酬月額の計算にも入りません。会社にとっては、同じ金額を給与で払うより社会保険料の会社負担が発生しない分だけ安いということになります。ただし後述のとおり、給与を減らして掛金に振り替える設計にすると、従業員側に別の不利益が出ます。

なお個人事業主が従業員のために支出した場合は、所得税法施行令64条2項により、その支出した日の属する年分の事業所得等の計算上必要経費に算入されます。法人と個人で扱いは揃っています。

本人の税務 — 小規模企業共済等掛金控除と、給与天引きの事務

本人が出す掛金は、小規模企業共済等掛金控除になります。所得税法75条1項です。

居住者が、各年において、小規模企業共済等掛金を支払つた場合には、その支払つた金額を、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。

対象になる掛金は同条2項に列挙されており、その2号が確定拠出年金です。企業型年金加入者掛金(マッチング拠出)とiDeCoの個人型年金加入者掛金の両方が入っています。小規模企業共済の掛金と同じ枠に入るということです。

ここに非対称があります。事業主掛金は最初から収入にならないので控除の対象になりようがなく、実際に75条2項2号にも挙がっていません。一方マッチング拠出は、いったん給与として支払われた中から出すので、給与所得にはなり、そのうえで所得控除されるという順序になります。所得税の負担はどちらも同じように軽くなりますが、社会保険料の計算では扱いが分かれます。マッチング拠出は給与を通るので、標準報酬月額から外れません。

iDeCoの掛金は、本人が口座振替で払うほかに、会社の給与から天引きして払うこともできます。根拠は法70条2項と71条1項です。

第七十条第二項の規定により個人型年金加入者掛金の納付を行う厚生年金適用事業所の事業主は、第二号加入者に対して通貨をもって給与を支払う場合においては、個人型年金加入者掛金を給与から控除することができる。

会社側にとって重要なのは、この天引きを正当な理由なく拒否できないことです(法70条3項)。また控除したときは計算書を作成して本人に通知する義務があります(法71条2項)。天引きにした場合、その掛金は年末調整で処理できるので、本人が控除証明書を出す手間はなくなります。

年末調整で扱えるかは、払い方で決まる 給与天引き(事業主払込)にしているiDeCoは、会社が金額を把握しているので年末調整で小規模企業共済等掛金控除に反映できます。本人が口座振替で払っている場合は、国民年金基金連合会から届く控除証明書を本人が申告書に添えて提出する必要があります。同じ掛金でも、書類の流れが違います。欄の位置、10月の払込証明書、転職した年・掛金を変えた年の扱いはiDeCoの年末調整に分けてあります。

選択制DCの落とし穴 — 標準報酬月額が下がる

「選択制DC」と呼ばれる設計があります。給与の一部を減らし、その分を事業主掛金として拠出するかどうかを従業員に選ばせるものです。事業主掛金は給与所得に含まれないので、所得税・住民税だけでなく社会保険料も減るのが売り文句になります。

厚生労働省の確定拠出年金Q&A(2026年4月1日現在)は、この設計の可否を正面から扱っています。回答は「給与や賞与の減額の可否については、給与規程の問題である」としたうえで、社会保険・雇用保険等の給付額にも影響する可能性を含めて事業主が従業員に正確な説明を行う必要があるとしています。そして、説明すべき内容をこう書いています。

説明すべき内容として挙げられているのは、「給与や賞与が減額されることで、社会保険・雇用保険等の保険料負担が軽減される可能性があることだけではなく、厚生年金保険・健康保険の標準報酬月額や雇用保険の基礎手当日額等が引下げられること等により、これらを用いて算定される社会保険・雇用保険等の給付が減額する可能性があることを説明する必要がある」という一文です。同省はさらに「具体的な事例を用いて説明することが望ましい」と付け加えています。

保険料が下がるということは、その保険料で買っていた給付も下がるということです。標準報酬月額が下がれば、将来の老齢厚生年金だけでなく、傷病手当金・出産手当金・障害厚生年金・遺族厚生年金の額も下がります。雇用保険の基本手当日額も同じです。「手取りが増える」だけを見て選ぶと、保障を削っていることに気づけません。

給与から控除して事業主掛金にすることはできない 同じQ&Aは、「事業主掛金について事業主が拠出せず、給与から控除する等により加入者に負担させることは認められない」と明記しています。選択制DCが認められるのは、あくまで給与規程そのものを変えて給与額を下げ、事業主が自分の掛金として拠出する形だからです。給与の額はそのままで、天引きしたお金を事業主掛金として納付する運用は、この線を越えます。同じ「選択制」という言葉で語られていても、設計の中身は別物です。

もう1つ、条文側の制約もあります。法4条1項3号は事業主掛金を「定額又は給与に一定の率を乗ずる方法その他これに類する方法」で算定するよう求めており、施行令6条2号は不当に差別的でないことを求めています。個人ごとに好きな額を選べる制度を、この枠内で設計しなければならないということです。

2026年12月1日、60歳以上70歳未満の「第五号加入者」ができる

限度額と同じ日に、iDeCoの加入できる人の範囲も広がります。現行の法62条1項は、iDeCoに入れる人を国民年金の第1号・第2号・第3号被保険者と任意加入被保険者の4つに限っています。改正後は5号目が加わります。

前各号に掲げる者に該当しない六十歳以上七十歳未満の者であって、申出の日の前日において個人型年金加入者であったもの若しくは個人型年金運用指図者であったもの

つまり国民年金の被保険者でなくなった後も、60歳以上70歳未満なら継続できるようになります。厚生労働省の資料によれば、施行日から3年を経過する日までの経過措置として、この条件に該当しない60歳以上70歳未満の人も加入が可能とされています。

あわせて、加入できなくなる条件も変わります。現行の法62条2項2号は「老齢を支給事由とする年金……の受給権を有する者」を除外していますが、改正後は「国民年金法の規定による老齢基礎年金を受ける権利の裁定を受けた者」に変わります。受給権が発生しただけでは外れず、実際に裁定を受けたところで外れるという組み立てです。

会社の事務にも波及します。給与天引きの規定である法71条1項が、次のように書き換わります。

第七十条第二項の規定により個人型年金加入者掛金の納付を行う厚生年金適用事業所の事業主は、第二号加入者及び第五号加入者のうち厚生年金保険の被保険者に対して通貨をもって給与を支払う場合においては、個人型年金加入者掛金を給与から控除することができる。

「及び第五号加入者のうち厚生年金保険の被保険者」が足されました。法70条2項の事業主経由の納付も同じく拡張されます。継続雇用で働いている高齢の従業員から「iDeCoを給与天引きにしてほしい」と言われる場面が、2026年12月1日から現実に発生するということです。天引きを正当な理由なく拒否できない点(法70条3項)は変わりません。

実務の落とし穴

① 「マッチングは事業主掛金まで」と書いてある資料は古い。この制限は2026年4月1日に削除済みです。制度を説明する社内資料や、外部の解説記事が更新されていないことがあります。

② 制限が消えても、規約が変わらなければ何も起きない。マッチング拠出は規約の定めの範囲でしか行えません。上限撤廃を使うには規約変更が要ります。

③ 2026年12月1日は「予定」から「政令」になっている。限度額の引き上げは、確定拠出年金法施行令の改正政令として既に公布され、施行日が2026年12月1日と定まっています。条文はe-Gov法令検索で現行版と並べて読めます。

④ 第3号加入者だけ据え置き。被扶養配偶者の23,000円は動きません。

⑤ 選択制DCは「保険料が減る」ではなく「保障も減る」。厚生労働省は、給付が減額する可能性の説明を事業主の義務としています。具体的な事例を用いて説明することが望ましいとも書かれています。

⑥ 退職・転職したときの期限は、退職日から数えない。企業型年金加入者の資格を失うと、個人別管理資産は一定期間内に移換しないと国民年金基金連合会へ自動移換されます。その期限を定める確定拠出年金法83条1項1号は、起算点を「資格を喪失した日が属する月の翌月から」としており、退職日からの6か月ではありません。移換先も同じ号が5つ名指ししていて、iDeCoはそのうちの1本です。詳細は企業型DCは退職したらどうなるかで扱っています。

⑥ 受け取るときの税金は、この記事の範囲外で決まる。確定拠出年金の給付は、一時金なら退職所得、年金なら雑所得です。退職金と同じ年に受け取ると、勤続年数の重複調整が入ります。退職金にかかる税金の記事で、この重複調整のルールを扱っています。

よくある質問

Q. 確定拠出年金と確定給付企業年金は何が違いますか?

A. 確定拠出年金は掛金の額があらかじめ決まっていて、受け取る額は運用の結果で変わります。確定給付企業年金はその逆で、受け取る額が先に約束されていて、必要な掛金は運用状況に応じて変動します。運用がうまくいかなかったときに不足を埋める責任が、確定給付では事業主側にあり、確定拠出では加入者側にあるという違いです。なお両方に同時に加入することもでき、その場合の企業型DCの拠出限度額は、確定拠出年金法施行令11条2号により、限度額から他制度掛金相当額を控除した額になります。

Q. 事業主掛金は給与明細に載りますか。源泉徴収は必要ですか?

A. 載りませんし、源泉徴収も不要です。所得税法施行令64条1項が、企業型年金規約に基づいて企業型年金加入者のために支出した事業主掛金は給与所得に係る収入金額に含まれないと定めているためです。給与所得にならない以上、源泉徴収の対象にも年末調整の対象にもなりません。標準報酬月額の算定にも入りません。ただしマッチング拠出による企業型年金加入者掛金は、いったん給与として支払われたものから拠出するため給与所得に含まれ、そのうえで所得税法75条の小規模企業共済等掛金控除の対象になります。

Q. 2026年12月1日から、企業型DCとiDeCoは合計でいくらまで拠出できますか?

A. 企業型年金加入者である第2号加入者の場合、改正後の確定拠出年金法施行令36条3号により、iDeCoの限度額は月62,000円から事業主掛金の額を控除した額になります。企業型DC側の限度額も同令11条1号で月62,000円ですから、合計は月62,000円が上限ということになります。現行制度にあった、iDeCoは20,000円までという上限と、事業主掛金が35,000円を超えた分だけ削るという調整の、2つの敷居は改正後の条文には出てきません。確定給付企業年金などに同時に加入している場合は、他制度掛金相当額を控除した額が枠になります。

Q. マッチング拠出は、いまも事業主掛金の額までしか出せないのですか?

A. その制限は2026年4月1日に廃止されています。制限を定めていた確定拠出年金法4条1項三の二は、同日施行の改正で号ごと削除されました。現行の同項は8つの号で構成されており、三の二はありません。ただし拠出限度額そのもの、すなわち事業主掛金と加入者掛金の合計が限度額を超えられないという制約は法20条に残っています。また、マッチング拠出は企業型年金規約で定めた範囲でしか行えないため、実際に上乗せ額を増やすには勤務先の規約が改正に合わせて変更されている必要があります。

Q. 選択制DCで給与を下げると、将来の年金はどうなりますか?

A. 厚生年金保険の標準報酬月額が下がるため、それを基礎に計算される老齢厚生年金の額は下がります。厚生労働省の確定拠出年金Q&Aは、保険料負担が軽減される可能性だけでなく、標準報酬月額や雇用保険の基本手当日額が引き下げられることにより社会保険・雇用保険等の給付が減額する可能性があることを、事業主が従業員に説明する必要があると述べています。傷病手当金・出産手当金・障害厚生年金・遺族厚生年金も標準報酬月額を用いて算定されるため、同じ影響を受けます。

Q. 60歳を過ぎた社員からiDeCoの給与天引きを頼まれたら、断れますか?

A. 2026年12月1日以降、第五号加入者のうち厚生年金保険の被保険者である人については断れません。確定拠出年金法70条3項が、事業主を介した納付について正当な理由なく拒否してはならないと定めており、改正後の同条2項が第五号加入者のうち厚生年金保険の被保険者を対象に含めるためです。控除した場合は、同法71条2項により計算書を作成して本人に通知する義務があります。それ以前の時点では、事業主経由の納付の対象は第二号加入者に限られています。

Q. 中小企業でも企業型DCを導入できますか?

A. 導入できます。ただし規約について厚生労働大臣の承認が必要で、その前提として、実施しようとする事業所に使用される第一号等厚生年金被保険者の過半数で組織する労働組合、それが無い場合は過半数を代表する者の同意を得る必要があります。事業所が2か所以上ある場合、この同意は事業所ごとに得なければなりません。企業型DCを実施せず、従業員のiDeCoに事業主が上乗せする中小事業主掛金納付制度、いわゆるiDeCo+という選択肢もあり、この掛金も法人税法施行令135条4号で損金に算入されます。

出典

条文はいずれも e-Gov 法令API v2 で全文を取得し、引用は原文と逐語で照合しています。2026年12月1日施行の内容は同日施行のリビジョンを取得して現行版と条単位で突き合わせたものです。号の個数は条文の木構造から数えています。施行日前の改正内容は今後さらに変更される可能性があります。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は顧問税理士・社会保険労務士、および加入している確定拠出年金の運営管理機関にご確認ください。

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