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高年齢雇用継続給付金とは — 最大10%・15%の区分と加入5年の条件

結論から言うと、高年齢雇用継続給付は60歳以後の各月の賃金が、60歳時点の賃金の75%未満に下がったときに、その月の賃金の一定割合が支給される雇用保険の給付です。支給率は最大10%ですが、一部の人は今も最大15%です。

上の区分は基本給付金のもので、再就職給付金は判定日が異なります。実際の率は賃金低下率で変わり、低下が小さい月は上の率より低くなります。給付は65歳になる月まで続くので、2つの支給率は2030年3月ごろまで並行します。

給付は2種類ある(基本給付金と再就職給付金)

「高年齢雇用継続給付」は総称で、中身は2つに分かれます。雇用保険法61条の高年齢雇用継続基本給付金と、61条の2の高年齢再就職給付金です。どちらも「60歳以後に賃金が下がった状態で働き続けること」に対する給付という点は同じですが、間に失業給付(基本手当)を受けたかどうかで分かれます。

 高年齢雇用継続基本給付金高年齢再就職給付金
条文雇用保険法61条雇用保険法61条の2
想定する場面離職せず、または基本手当を受けずに働き続ける基本手当を受けたあと、60歳以後に再就職した
比較する基準みなし賃金日額(60歳時点の賃金から算定)基本手当の算定基礎となった賃金日額
支給される期間60歳に達した月から65歳に達する月まで支給残日数200日以上なら2年、100日以上200日未満なら1年(65歳に達する月が限度)
固有の不支給要件—就職日の前日の支給残日数が100日未満のとき

支給率の考え方(10%か15%か、64%か61%か)は両方に共通します。61条の2第3項が61条5項・6項を準用しているためです。ただし新旧制度の判定日は異なります。

以下の60歳到達日による区分は基本給付金についての説明です。

支給の条件は「75%未満」「5年」「支給対象月」の3つ

基本給付金の支給要件は61条1項に書かれています。要点は3つです。

1つめは賃金の低下率です。支給対象月に支払われた賃金の額が、みなし賃金日額に30を乗じた額(以下「みなし賃金月額」)の75%に相当する額を下回ったときに支給されます。75%ちょうどでは支給されません。条文が「百分の七十五に相当する額を下るに至つた場合」と書いているためです。

2つめは被保険者であった期間が5年以上あることです。61条1項1号は、算定の基礎となる期間が5年に満たないときは支給しないとしています。ただしこれは「一生対象外」という意味ではなく、働き続けて5年に達した時点から対象になります。条文が「第一号に該当しなくなつた日」を基準日として読み替える構造を持っているためです。

3つめは支給対象月にあたることです。61条2項が定義しており、60歳に達した日の属する月から65歳に達する日の属する月までの月のうち、その月の初日から末日まで引き続いて被保険者であった月に限られます。入退社日だけでなく、月の初日から末日まで被保険者資格が続いているかを確認してください。

育児・介護休業との併給について、厚生労働省Q&A17は、月の初日から末日まで給付対象の休業をした月は対象外、月の一部のみが給付対象なら支給対象と説明しています。

「賃金が下がった」の比較相手は、今の会社の去年の賃金ではない

比較するのは60歳到達時の賃金から算定したみなし賃金月額です。ただし、その時点で被保険者期間が5年未満なら、5年に達した日を基準に算定します。算定の基礎となる賃金はその後の賃金変動で入れ替えませんが、適用される上限・下限は毎年改定されます。

したがって61歳・62歳と進むにつれて低下率が変わり、ある月から支給対象になったり外れたりします。毎月判定する給付だと理解しておくのが実務上は正確です。

最大10%・15%の区分 — 60歳到達日と加入5年到達日

ここがこの給付でいちばん間違えやすいところです。最大15%か最大10%かは、判定日が令和7年(2025年)4月1日より前か以後かで決まります。

60歳時点で被保険者期間5年以上なら、2025年3月の60歳到達者は最大15%、同年5月の到達者は最大10%の区分となり、実際の率は賃金低下率で変わります。給付は65歳の月まで続きますから、15%の世代は2030年3月ごろまで残ります。

判定日はいつか 60歳到達日。加入5年未満なら5年に達した日 判定日が令和7年4月1日より前 判定日が令和7年4月1日以後 従前の例(改正前) 61%以下 → 支給率 15% 61%超 75%未満 → 逓減 令和2年法律14号 附則3条1項 改正後(現行の条文) 64%以下 → 支給率 10% 64%超 75%未満 → 逓減 雇用保険法61条5項1号・2号 ※ 60歳時点で被保険者期間が5年に満たない人は、5年に達した日で判定する ※ 60歳到達日は誕生日の前日(年齢計算ニ関スル法律・民法143条2項) ※ %は「60歳時点の賃金(みなし賃金月額)に対する、その月の賃金の割合」
支給率の判定。基本給付金は60歳到達日(その時点で加入5年未満なら5年到達日)で最大15%・10%を区分し、実際の率は賃金低下率により逓減します。

60歳到達日は誕生日の前日

「達した日」は誕生日ではありません。年齢計算ニ関スル法律は1項で「年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス」と定め、2項で民法143条を準用しています。民法143条2項は、期間は「最後の……年においてその起算日に応当する日の前日に満了する」としています。出生日から起算するので、満60歳になるのは誕生日の前日(応当日がない年はその月の末日)です。

生年月日60歳に達した日適用される支給率
1965年3月31日2025年3月30日最大15%(60歳時点で加入5年以上)
1965年4月1日2025年3月31日最大15%(60歳時点で加入5年以上)
1965年4月2日2025年4月1日最大10%(賃金低下率により逓減)

60歳時点で被保険者期間5年以上の場合の比較例。みなし賃金月額400,000円、各月の賃金240,000円(60%)なら、新制度は64%以下なので10%で月24,000円、旧制度は61%以下なので15%で月36,000円です。同じ条件が12か月続く場合の差は144,000円です。60歳時点で加入5年未満なら、誕生日だけでは新旧区分を決められません。

60歳時点で加入5年未満の人は、5年に達した日で判定

60歳時点で被保険者であった期間が5年に満たなかった人は、この判定も5年に達した日で行います。附則3条1項が「六十歳に達した日(その日において雇用保険法第六十一条第一項第一号に該当する場合にあつては、同号に該当しなくなつた日)」と括弧書きで手当てしており、厚生労働省の説明も同じ整理です。

15%が今も残る根拠は改正法の附則

現在の条文には15%という数字がありません。ハローワークの案内では、賃金がみなし賃金月額の64%以下のとき支給率は10%です。法61条5項は64%ちょうどを2号側に含めますが、この点でも支給率は10%になります。実際に条文の全文(本則・附則あわせて)を検索しても「百分の十五」は0か所、「百分の六十一」も0か所で、残っているのは「百分の六十四」だけです。

では15%はどこへ行ったのか。改正法の附則に残っています。この改正は令和2年3月31日法律第14号によるものです。その附則3条1項は、改正後の61条5項を適用するのは「六十歳に達した日」が第6号施行日以後である被保険者に限っています。それより前に60歳に達した被保険者については「なお従前の例による」と定めています。そして同附則1条6号が、その施行日を令和7年4月1日と指定しています。

64%〜75%の間は逓減する(省令の計算式)

賃金の低下が64%以下まで届かず、64%超75%未満にとどまる場合は、支給率が10%から0%へ連続的に下がります。61条5項2号が「逓増する程度に応じ、百分の十から一定の割合で逓減するように厚生労働省令で定める率」と書いており、その率は雇用保険法施行規則101条の4が定めています。

次の式と表は、最大10%の区分のものです。賃金がみなし賃金月額に占める割合を r とすれば、支給率は次の形になります。

支給率 = (64 ÷ 110) × (0.75 − r) ÷ r

賃金がみなし賃金月額に占める割合支給率
50%10%(64%以下なので1号の定率)
64%10.0000%
70%4.1558%
74%0.7862%
75%0%(=支給されない)

この式に r=0.64 を入れると、ちょうど10%になります。r=0.75 では、ちょうど0%です。つまり61条5項1号の定率10%と、2号の逓減式は64%の点で段差なくつながっているということです。改正で61%から64%へ動いたのは、支給率を15%から10%へ下げたときに、この接続点を保つためだと読めます。逓減式の分子にある64という数字も、接続点の64%と一致しています。

75%に近いと、計算はできても支給されないことがある

みなし賃金月額400,000円、その月の賃金297,000円(74.25%)のとき、逓減式で計算した支給率は約0.588%、支給額は約1,745円です。ところが61条6項は、算定された額が最低限度額(令和8年8月1日から2,562円)を超えないときは支給しないと定めています。したがってこの月は不支給です。低下率が75%ぎりぎりのケースは、計算上の金額が出ても支給されないことがあります。

最大15%の区分は61%超75%未満の範囲で逓減し、率が異なります。

省令の条文での書き方

条文の定義は、次の①〜③を使って(① −(② + ③))÷ ②を支給率とする、というものです。上の式は、これを r で整理した形です。

令和8年8月1日から変わった4つの金額

この給付には毎年8月1日に改定される金額が4つあります。令和8年8月1日からの金額は次のとおりで、令和8年8月1日以後の支給対象期間から適用されます。

区分令和7年8月1日〜令和8年8月1日〜意味
支給限度額386,922円397,369円その月の賃金がこの額以上なら支給されない
最低限度額2,411円2,562円算定額がこの額を超えないなら支給されない
60歳到達時の賃金月額の上限508,200円522,000円これを超える人はこの額で計算する
60歳到達時の賃金月額の下限90,420円96,090円これを下回る人はこの額で計算する

支給限度額には2つの効き方があります。

令和8年8月改定額での比較。みなし賃金月額の上限522,000円の75%は391,500円で、支給限度額397,369円を下回ります。対象賃金は75%未満であるため391,500円未満です。ただし、賃金と算定給付額の合計が支給限度額を超える場合の減額判定は別に必要です。

4つの金額の根拠条文と計算の突き合わせ

支給限度額の改定根拠は61条7項です。賃金月額の上下限には61条1項・3項、17条4項及び18条、最低限度額には61条6項、17条4項1号及び18条が関係します。

上限・下限の2つは、同時に公表されている基本手当日額の計算式とも一致します。60歳以上65歳未満の賃金日額の上限は17,400円で、30を乗じると522,000円。賃金日額の下限は3,203円で、30を乗じると96,090円です。最低限度額2,562円も、61条6項が「17条4項1号に掲げる額の80%」と定めているとおり、3,203円×0.8=2,562.4円と符合します。

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高年齢再就職給付金と再就職手当は、どちらか一方

60歳以後に基本手当を受けてから再就職した場合、高年齢再就職給付金と再就職手当(就業促進手当)の両方の要件を満たすことがあります。このとき両方はもらえません。61条の2第4項が、就業促進手当を受けたときは高年齢再就職給付金を支給せず、高年齢再就職給付金を受けたときは就業促進手当を支給しない、と明記しています。どちらを選ぶかは実際に金額を比べて決める場面で、実務上いちばん相談が多いところです。

性質が違うので単純比較はできません。再就職手当は支給残日数に応じた一時金で、原則として1回で完結します。高年齢再就職給付金は賃金が下がっている月ごとに支払われる継続的な給付で、支給残日数200日以上なら最長2年、100日以上200日未満なら最長1年続きます(いずれも65歳に達する月が限度)。選択には、各給付の要件と支給期間を確認し、同じ賃金・支給残日数等の条件で給付額を比較する必要があります。再就職手当の計算方法は再就職手当はいくらもらえるかで扱っています。

なお、支給残日数が100日未満のときは、そもそも高年齢再就職給付金は支給されません(61条の2第1項1号)。この場合は選択の問題になりません。

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よくある質問

2025年4月から支給率は10%になったと聞きましたが、15%のままの人がいるのはなぜですか?

基本給付金は、60歳到達日で新旧制度を区分するためです。この日が令和7年3月31日以前なら最大15%、令和7年4月1日以後なら最大10%の区分です。60歳時点で被保険者期間が5年未満の人は、5年以上となった日で区分します。60歳時点で加入5年以上あり令和7年3月に60歳に達した人は、65歳到達月の2030年3月までが支給対象期間です。したがって2つの支給率は数年間並行して存在します。

60歳に達した日は誕生日ではないのですか?

誕生日の前日(応当日がない年はその月の末日)です。年齢計算ニ関スル法律が年齢を出生の日から起算すると定め、民法143条2項により期間は起算日に応当する日の前日に満了するためです。60歳時点で加入5年以上なら、1965年4月1日生まれの60歳到達日は2025年3月31日で最大15%の区分、4月2日生まれは2025年4月1日で最大10%の区分です。4月1日生まれだけが前の年度側に入る、いわゆる早生まれの扱いと同じ仕組みです。

支給率が10%になる「64%以下」の64%は、何を分母にした割合ですか?

みなし賃金月額です。実務上は60歳到達時の賃金をもとにした金額です。60歳に達した日を離職の日とみなして17条を適用したときに算定される賃金日額に、30を乗じた額です。60歳時点で被保険者期間が5年未満の場合は、5年に達した日を基準に算定します。上限と下限があり、令和8年8月1日からは上限522,000円・下限96,090円です。60歳到達時の賃金がこれを超える場合や下回る場合は、上限額または下限額を用いて算定します。

支給対象月に該当しないのはどんな月ですか?

月の初日から末日まで引き続いて被保険者でなかった月です。雇用保険法61条2項が、支給対象月をその月の初日から末日まで引き続いて被保険者であった月に限っています。厚生労働省Q&A17では、育児・介護休業給付の対象となる休業が月初から月末まで続く月は対象外と説明しています。同Q&Aは月の一部のみが給付対象の休業なら支給対象としています。法61条2項の休業・休暇の除外規定との個別の適用関係はハローワークに確認してください。

令和8年8月1日から金額が変わったと聞きました。何が変わりましたか?

厚生労働省の公表資料によると4つです。支給限度額が386,922円から397,369円に、最低限度額が2,411円から2,562円に、60歳到達時等の賃金月額の上限額が508,200円から522,000円に、下限額が90,420円から96,090円に変わりました。いずれも令和8年8月1日以後の支給対象期間から適用されます。それぞれの金額の意味は4つの金額の表にまとめています。

賃金が60歳時点の74%まで下がりました。いくらもらえますか?

最大10%の区分なら、支給率は約0.7862%です。74%は64%超75%未満の範囲なので、定率10%ではなく逓減した率になります。みなし賃金月額400,000円の74%は296,000円で、算定額は約2,327円です。算定された給付額が令和8年8月1日からの最低限度額2,562円以下なので、この月は支給されません。最大15%の区分は逓減率が異なります。実際の支給の可否はハローワークが判定します。

高年齢再就職給付金と再就職手当は両方もらえますか?

両方は受けられません。雇用保険法61条の2第4項により、同一の就職について両方の要件を満たす場合、一方を受けるともう一方は支給されません。再就職手当は支給残日数に応じた一時金で原則1回です。高年齢再就職給付金は賃金が下がっている月ごとの給付で、支給残日数200日以上なら最長2年、100日以上200日未満なら最長1年続きます。高年齢再就職給付金は、65歳に達する月が限度です。支給残日数が100日未満の場合は、高年齢再就職給付金は支給されません。

60歳時点で雇用保険の加入期間が5年ありません。もう対象外ですか?

その時点では支給されませんが、働き続けて5年に達すれば対象になります。被保険者であった期間が5年に達した日から、支給対象月の判定が始まります。厚生労働省も、60歳時点で加入期間が5年に満たない場合は5年となるに至った月から支給対象期間になると説明しています。この場合、支給率が10%か15%かの判定も、60歳に達した日ではなく5年に達した日で行います。

出典

雇用保険法・同法施行規則の条文(e-Gov法令検索)と、厚生労働省が公表した令和8年8月1日からの支給限度額の資料で確認。

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。本記事で確認したのは雇用保険法・同法施行規則・年齢計算ニ関スル法律・民法の条文と、厚生労働省が公表している令和8年8月1日からの金額の記載までです。ある人のみなし賃金日額がいくらになるかの算定、被保険者であった期間が5年以上あるかどうかの判定、ある月が支給対象月にあたるかどうかの評価、高年齢再就職給付金と再就職手当のどちらが有利かの個別判断までは含みません。実際の支給額と支給の可否はハローワークが賃金台帳等に基づいて判定します。個別の取扱いについては、事業所を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)または社会保険労務士にご確認ください。

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