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iDeCoの年末調整 — 事業主払込なら保険料控除申告書に書かない

結論から言うと、iDeCo(個人型確定拠出年金)の年末調整でいちばん間違えるのは、書く欄ではなく「書いてよいか」です。給与から天引きする事業主払込なら、給与所得者の保険料控除申告書には書きません。自分の口座から引き落とす個人払込なら、同じ申告書の「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」欄に書き、国民年金基金連合会が10月に送る小規模企業共済等掛金払込証明書を添付するか、提出の際に提示します。

根拠は所得税法196条1項2号の括弧書きです。この申告書に書く小規模企業共済等掛金は、「給与等から控除されるものを除く」と最初から限定されています。給与天引き分は、年末調整の計算式を定めた190条2号イが別に拾うので、申告書に足すと二重計上になります。契約が同じiDeCoでも、払い方で書類の流れが逆向きになる、というのがこの記事の核です。

保険料控除申告書の書式全体(証明書が要る8つの場合、提出期限、出したあとの行方)は給与所得者の保険料控除申告書が主題として持っています。確定拠出年金の拠出限度額や事業主掛金の税務は確定拠出年金とはの「本人の税務」節です。この記事は、iDeCo固有の年末調整の事務——欄の位置、証明書、事業主払込、転職した年、掛金を変えた年——に限定します。どの運用商品を選ぶか、掛金をいくらにするかは扱いません。

書く欄は「個人型年金加入者掛金」

iDeCoの掛金は生命保険料控除ではありません。所得税法75条1項が、支払った小規模企業共済等掛金の全額をその年分の総所得金額などから控除すると定めています。

居住者が、各年において、小規模企業共済等掛金を支払つた場合には、その支払つた金額を、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する。

対象になる掛金は同条2項に3つあり、2号が確定拠出年金法の企業型年金加入者掛金(マッチング拠出)と個人型年金加入者掛金(iDeCo)です。1号が小規模企業共済、3号が心身障害者扶養共済です。令和8年分の保険料控除申告書は、この3号構成をそのまま4つの記入行に落としています。

申告書の行(令和8年分様式)何を書くかiDeCoとの関係
独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約の掛金小規模企業共済の掛金別制度。ここにiDeCoは書かない
確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金企業型DCのマッチング拠出iDeCoではない。給与天引きならこの行も書かない
確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金iDeCoの掛金個人払込のときだけ、ここに年額を書く
心身障害者扶養共済制度に関する契約の掛金地方公共団体の当該制度別制度

様式の裏面は、証明書類の発行者を「独立行政法人中小企業基盤整備機構や国民年金基金連合会、地方公共団体」と書いています。iDeCoの証明書は国民年金基金連合会です。金額の多少にかかわらず、書いた分には証明書類が要る、とも明記されています。生命保険料の旧契約のような「9,000円以下なら省ける」例外は、小規模企業共済等掛金にはありません。

控除できる金額は、その年に実際に支払った掛金の全額です。上限のある生命保険料控除と違い、払った額がそのまま所得から落ちます。国税庁タックスアンサー No.1135 も同じ3区分を挙げ、控除額を「その年に支払った掛金の全額」としています。月12,000円を1年通して個人払込していれば、申告書に書くのは144,000円です。税率を掛けて税額を出す前の、所得の段階で144,000円が消える、という計算になります。税額がいくら動くかの試算はツールに任せます。

iDeCoの掛金で税額がいくら動くか、年収と掛金から試算する

事業主払込なら申告書に書かない

iDeCoの掛金の払い方は2つあります。自分の口座から国民年金基金連合会へ振り替える個人払込と、勤務先の給与から天引きして事業主が納付する事業主払込です。事業主払込の根拠は確定拠出年金法70条2項と71条1項です。第2号加入者(厚生年金の被保険者)は、事業主を介して納付でき、事業主は通貨で給与を支払うときに掛金を給与から控除できます。

年末調整の側では、この天引き分を申告書に書かせません。196条1項2号がこう書いています。

その年中に支払つた第七十四条第二項(社会保険料控除)に規定する社会保険料(給与等から控除されるものを除く。)の金額及び第七十五条第二項(小規模企業共済等掛金控除)に規定する小規模企業共済等掛金(給与等から控除されるものを除く。)の額

括弧書きの「給与等から控除されるものを除く」が、社会保険料と小規模企業共済等掛金の両方に付いています。除かれている理由は、190条2号が天引き分を、自分で払った分をで分けて拾うからです。イは会社が毎月の給与計算で把握しているので、申告書に書かせる必要がありません。国税庁の令和8年分保険料控除申告書の裏面も、同じ趣旨を地の文で繰り返しています。「給与から差し引かれた小規模企業共済等掛金は、改めてこの申告書によって申告するまでもなく控除の対象とされますから、記載する必要はありません。」

事業主払込では、払込証明書も発行されない

iDeCo公式サイトのFAQは、事業主払込の第2号加入者について、年末調整は事業主が毎月の源泉徴収で把握している納付済掛金額に基づいて行い、小規模企業共済等掛金払込証明書の発行はされない、と書いています。証明書が家に届かないのは漏れではなく、この払い方では最初から発行しない設計です。届かないから控除されない、ではありません。

同じFAQは、事業主払込についてもう1つ、実務で効く制約を書いています。年末調整のときにまとめて精算する取扱いは、法令上できない、というものです。天引きする月の給与で、社会保険料と小規模企業共済等掛金を差し引いた残額を給与等の支払額とみなして源泉徴収税額を計算する、というのが毎月の扱いです。11か月分を貯めて12月の年末調整で一度に落とす、というやり方は採れません。

国税庁「令和7年分 年末調整のしかた」(22〜29ページ、保険料控除申告書の受理と内容の確認)も、小規模企業共済等掛金を①毎月の給与から差し引かれるものと②本人が直接支払っているものに分け、②だけを保険料控除申告書の金額に基づいて控除する、と整理しています。証明書類が要るのも②だけです。

iDeCoの掛金 — 年末調整で何をするか 掛金の払い方は? 事業主払込か個人払込か 事業主払込(給与天引き) 申告書には書かない(196条1項2号) 証明書は発行されない 会社が190条2号イで拾う 個人払込(口座振替) 「個人型年金加入者掛金」欄に年額 10月の払込証明書を添付または提示 書いただけでは控除されない(190条2号ロ) マッチング拠出(企業型の加入者掛金)が給与天引きなら、iDeCoと同じく申告書には書かない。 個人払込のiDeCoと併用している年は、個人払込の年額だけを書く。
同じiDeCoでも、事業主払込なら書かず、個人払込なら書いて証明書を添える。根拠は所得税法196条1項2号と190条2号。

企業型DCのマッチング拠出も、給与から控除される小規模企業共済等掛金です。75条2項2号に企業型年金加入者掛金として入っています。給与天引きなら、iDeCoの事業主払込と同じ括弧書きの外にあり、申告書には書きません。個人払込のiDeCoとマッチングを同じ年に併用している場合、申告書に載せるのは個人払込のiDeCoの年額だけです。

申告書の書式そのもの、提出期限(「その年最後に給与等の支払を受ける日の前日まで」)、税務署に送られずに会社が7年保存する仕組みは、保険料控除申告書で条文を追っています。4種類の年末調整書類のどの紙に何を書くかは年末調整の書き方です。

10月に届く払込証明書 — 添付でも提示でもよい

個人払込の加入者には、毎年10月、国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が届きます。iDeCo公式サイトのFAQが、送付時期と使い道をこう書いています。確定申告や年末調整の際に添付する、という扱いです。

法律上の義務は「添付」に限られていません。196条2項は、その年に支払った小規模企業共済等掛金の額について、支払をした旨を証する書類を提出し、又は提示しなければならないと定めています。所得税法施行令319条本文も、「当該申告書に添付し、又は当該申告書の提出の際提示しなければならない」です。2号が、申告書に小規模企業共済等掛金の額を記載する場合に、その額を証する書類を求めます。金額の条件は無く、1円でも書けば証明書が要ります。

方法何が起きるか根拠
添付(提出)証明書が申告書と一緒に会社へ渡る。会社が保存する196条2項・所令319条本文
提示提出の際に見せて確認を受け、原本は手元に残る同じ
電磁的記録印刷書面電子証明書等の内容と二次元コードが付いた出力書面でも足りる所令319条本文
電子データで提供申告書を電磁的方法で出すときは、証明書類も電子データで足りる令和8年分様式裏面、所法198条5項

書いただけでは控除されません。190条2号ロが、年末調整で差し引ける自分払いの社会保険料と小規模企業共済等掛金を、申告書に記載されたもののうち、書類の提出または提示があったものに限ると切っています。小規模企業共済等掛金側の括弧書きは、次の書き方です。

同項に規定する書類の提出又は提示のあつたものに限る

「同項」は196条2項です。生命保険料や地震保険料は、同じ号のなかで条番号を書き起こしています。括弧書きの置き方は少し違いますが、効いている限定は同じです。金額を書いて証明書を出さないと、その控除は年末調整の計算から落ちます。

10月以降に初めて掛金を納めた人は、10月便が来ない

iDeCo公式サイトのFAQは、初回の掛金の納付が10月以降の加入者について、払込証明書の発行は納付月の翌月(本年11月から翌年1月)になると書いています。社内の年末調整締切に間に合わないときは、確定申告で控除を受ける流れになります。事業主払込の人にはこの遅れは起きません。証明書自体が発行されないからです。

証明書を紛失したときの再発行手続は、所得税法にも確定拠出年金法にも書かれていません。届かない・なくしたときは、加入している運営管理機関(口座を開いた金融機関)へ問い合わせることになります。再発行が社内締切に間に合わないときは、次の節のとおり確定申告で控除を受ける流れです。

国税庁「年末調整のしかた」は、生命保険料・地震保険料・国民年金の証明書について、交付を請求中で確認できない場合でも翌年1月末日までの提出または提示を条件に年末調整してよい、と書いています。小規模企業共済等掛金の項には、この1月末日の猶予を繰り返していません。iDeCo公式が10月以降の初回納付について「年末調整に間に合わない場合は、確定申告が必要です」と書いているのも、この差と整合します。

ただし、記事が出典にしている令和8年分の保険料控除申告書(2026bun_04.pdf)の裏面左欄外は、控除の種類を分けていません。見出しは「証明書類の添付箇所」で、生命保険料・社会保険料・小規模企業共済等掛金の表の外に、様式全体向けの注記としてこう書いています。「証明書類の交付が遅延したことなどのために添付ができないときは、令和9年2月1日までに提出することを条件として控除を受けることができます。」「年末調整のしかた」の小規模の項とiDeCo公式は確定申告へ寄せ、様式の欄外は証明書の交付遅延なら2月1日までの提出を条件に控除できる、と書く。どちらも条文が保証した期限ではなく、会社がこの日付まで待つかは社内の運用です。待ってもらえなければ、次の節のとおり確定申告で拾えます。

年の途中で転職した年

転職した年に迷うのは、前の勤務先で天引きしていた分と、あとの勤務先(または個人払込)で払った分を、どこで足すかです。足す場所は申告書ではなく、前の勤務先の源泉徴収票です。

国税庁「年末調整のしかた」は、社会保険料等の集計について、本年中に他から転職してきた人は、前の勤務先で扶養控除等申告書を提出して支払を受けた給与から差し引かれた社会保険料等も含めて集計する、と書いています。確認は、転職前の勤務先から交付を受けた本年分の給与所得の源泉徴収票で行います。同じ箇所の注で、特定の小規模企業共済等掛金は毎月の給与から社会保険料と併せて控除されるため、源泉徴収簿ではこれらの金額を合計して「社会保険料等」と記入する、と説明しています。

源泉徴収票の「社会保険料等の金額」欄は、給与から天引きした社会保険料、申告した社会保険料、小規模企業共済等掛金を1つの額に合算した欄です。iDeCoなどの掛金は内書きされます。欄の読み方は源泉徴収票の見方です。新しい勤務先が年末調整するときは、この源泉徴収票を受け取って前職分を通算します。前職の事業主払込を、新しい勤務先の保険料控除申告書に書き写す必要はありません。書くと、源泉徴収票経由の通算と二重になります。

その年の払い方新しい勤務先の年末調整で一般に起きること
前職も現職も事業主払込前職分は源泉徴収票の「社会保険料等の金額」で通算。現職分は現職の給与計算。申告書には書かない
前職は事業主払込、退職後に個人払込へ切替え前職分は源泉徴収票で通算。退職後の個人払込だけ申告書に書き、証明書を添える
年を通して個人払込(転職の前後で払い方は変わらない)年額を申告書に書き、10月の証明書(または遅れ便)を添える。勤務先が変わっても証明書は1枚
退職してその年は再就職しない年末調整の対象にならない。確定申告で75条の控除を受ける

事業主払込は、退職しただけでは自動的に止まりません。iDeCo公式サイトのFAQは、加入者資格喪失等の届出が無ければ国民年金基金連合会は退職を把握できず、掛金の口座振替を続ける、と書いています。事業主払込の事業所では、退職者に係る掛金引落停止依頼書(K-012)を国民年金基金連合会へ出す扱いになっています。退職日が月末かどうかで、提出月と引落停止月がずれます。年末調整の計算とは別の事務ですが、転職した年に天引きが1か月余計に走る原因になります。

給与収入がその年2,000万円を超える人は、190条本文により年末調整の対象外です。この申告書を出しても、iDeCoの控除は確定申告側で行います。

掛金を変更した年

iDeCoの掛金額は、1年に1回に限り変更できます。公式FAQの書き方は、「12月分の掛金から翌年11月分の掛金の間」に1回、です。変更届は、加入手続を取った運営管理機関へ出します。企業型DCの事業主掛金や中小事業主掛金の変動に伴う変更(自動減額を含む)は、この1回に数えません。

年末調整で使う金額は、変更後の月額×12ではありません。その年に実際に支払った合計です。75条1項の「その支払つた金額」であり、国税庁「年末調整のしかた」の注意事項も、「本人が本年中に支払ったものだけを控除の対象としているかどうか。未払のものや前払したものが含まれていないかどうか」と確認するよう求めています。

個人払込なら、10月の払込証明書に印字された金額が、その年の1月から証明書作成時点までの納付済み額です。証明書の発行後に引き落とされる11月・12月分の扱いは、証明書の記載(見込額か確定額か)に従います。国税庁の生命保険料の証明書類では、月払契約について1月から9月までの状況が分かれば足りる、という整理がありますが、iDeCoの払込証明書に同じ例外を置いた条文はありません。印字された金額と、その後に実際に引き落とされた額が食い違うときは、証明書の発行者(国民年金基金連合会)か運営管理機関の案内が正本です。

計算例として、個人払込で1月から6月まで月10,000円、7月以後は月20,000円になった年を置くと、その年に支払った額は10,000円×6+20,000円×6=180,000円です。申告書の「個人型年金加入者掛金」欄に書くのは180,000円で、変更後の月額20,000円×12=240,000円ではありません。未納の月があれば、その月は足しません。

事業主払込で掛金を変えた年は、加入者から事業主への報告が要ります。公式FAQは、給与天引きの関係上、運営管理機関へ出す届書の写しを給与担当へ出す、といった事業所内のルールを置く例を挙げています。会社が天引き額を更新しないと、源泉徴収の毎月計算が古い月額のまま動き、190条2号イで拾う金額もずれます。ずれを12月の年末調整でまとめて直す取扱いは、前述のとおり採れません。

掛金を前納して前納減額金の支払を受けているときは、支払った掛金の額からその前納減額金を差し引いた残額が控除の対象です。国税庁「年末調整のしかた」の小規模企業共済等掛金の注意事項3です。iDeCoで年単位拠出(まとめて拠出)を使っている場合も、控除の対象は「その年に支払った金額」で、証明書の年額が申告書に載る数字です。

書き忘れた・証明書が間に合わないとき

個人払込なのに申告書へ書かなかった、書いたのに証明書が無かった、という場合、その年のiDeCoは年末調整では控除されません。190条2号ロの「書類の提出又は提示のあつたものに限る」が、証明書の無い自己払い分を計算から外すからです。落ちるのはその控除だけで、申告書全体や他の控除が無効になるわけではありません。書いたのに証明書の交付が遅れて社内締切に間に合わない場合、前の節で引いた様式の裏面欄外は、令和9年2月1日までの提出を条件に控除を受けられると書いています。会社が年末調整をやり直すかは社内の運用で、応じてもらえなければ確定申告で拾えます。「書き忘れた」は交付遅延ではないので、この注記の対象ではありません。

落ちた分は確定申告で拾えます。所得税法120条3項1号が、確定申告書に小規模企業共済等掛金控除を書く人に、計算の基礎を証する書類の添付または提示を求めています。受けている政令が施行令262条1項3号です。ただし、年末調整(190条2号)ですでに給与から控除された小規模企業共済等掛金については、確定申告で重ねて証明書を出す必要はありません(同項ただし書)。事業主払込で年末調整済みの分は、確定申告に証明書を付け直さなくてよい、という構造です。

確定申告で改めて出す場合の書類の要否は、確定申告の必要書類が主題です。年末調整そのものの期限と、会社が再計算に応じる余地は年末調整はいつまでかです。

個人事業主や、給与以外の所得だけで年末調整を受けない人は、もともとこの申告書の名宛人ではありません。75条の控除は確定申告で行います。証明書は同じ「小規模企業共済等掛金払込証明書」です。

令和8年分のiDeCo年末調整 — 要点
  • 所得控除の種類は小規模企業共済等掛金控除(所法75条)。生命保険料控除の欄ではない。
  • 個人払込だけ、保険料控除申告書の「個人型年金加入者掛金」欄にその年の支払額を書く。
  • 事業主払込(給与天引き)は書かない。190条2号イが拾う。証明書も発行されない。
  • 個人払込の証明書は10月に国民年金基金連合会から届く。添付でも提示でもよい(196条2項・所令319条2号)。
  • 初回納付が10月以降なら証明書は翌月以降。間に合わなければ確定申告。
  • 転職した年の前職・事業主払込は、前職の源泉徴収票の「社会保険料等の金額」で通算する。
  • 掛金を変えた年は、変更後月額×12ではなく、その年に支払った合計を書く。

よくある質問

Q. 給与天引き(事業主払込)のiDeCoも、保険料控除申告書に書くのですか?

A. 書きません。所得税法196条1項2号が、この申告書に書く小規模企業共済等掛金を「給与等から控除されるものを除く」と括弧書きで限定しているためです。天引き分は年末調整の計算式を定めた190条2号イが別に拾うので、会社が給与計算から反映します。iDeCo公式サイトも、事業主払込では払込証明書を発行せず、毎月の源泉徴収で把握した納付済額に基づいて年末調整すると説明しています。書くのは個人払込の年額だけです。

Q. 小規模企業共済等掛金払込証明書は、会社に渡すのですか、見せるだけでもよいのですか?

A. どちらでも足ります。所得税法196条2項は「提出し、又は提示しなければならない」と定めており、所得税法施行令319条本文も「当該申告書に添付し、又は当該申告書の提出の際提示しなければならない」です。添付すれば会社が保存し、提示すれば原本は手元に残ります。電子証明書等に係る電磁的記録印刷書面(二次元コード付きの出力書面)でも足り、申告書を電磁的方法で出すときは証明書類も電子データで提供できます。

Q. 10月にiDeCoを始めて、まだ証明書が届きません。年末調整で控除できますか?

A. 個人払込で初回の掛金納付が10月以降の場合、iDeCo公式サイトのFAQは、払込証明書の発行は納付月の翌月(本年11月から翌年1月)になると書いています。社内締切に間に合わないときは、確定申告で控除を受ける流れです。令和8年分の保険料控除申告書の裏面欄外は、証明書類の交付が遅延したことなどで添付できないときは令和9年2月1日までに提出することを条件として控除を受けられる、と控除の種類を分けずに書いています。会社がこの日付まで待つかは社内の運用です。事業主払込なら証明書はもともと発行されず、会社が天引き額を把握しているので、この遅れは起きません。書いただけでは控除されない点は、190条2号ロが「書類の提出又は提示のあつたものに限る」と限定しているためです。

Q. 年の途中で転職しました。前の会社で天引きしていたiDeCoはどうなりますか?

A. 前の勤務先の給与から差し引かれた小規模企業共済等掛金は、前職の源泉徴収票の「社会保険料等の金額」に含まれます。国税庁「年末調整のしかた」は、転職してきた人の社会保険料等を前職の源泉徴収票で確認して集計するよう求めており、小規模企業共済等掛金は社会保険料と合計して「社会保険料等」と記入するとしています。新しい勤務先の保険料控除申告書に前職の天引き分を書き写す必要はありません。退職後に個人払込へ切り替えた分だけ、申告書に書いて証明書を添えます。

Q. 掛金を年の途中で増やしました。申告書には新しい月額の12倍を書くのですか?

A. 書きません。所得税法75条1項が控除するのは「その支払つた金額」であり、国税庁「年末調整のしかた」も本年中に支払ったものだけを対象とし、未払や前払が混ざっていないかを確認するよう求めています。個人払込なら、国民年金基金連合会の払込証明書に印字された年額を書きます。計算例として、1月から6月まで月10,000円、7月以後は月20,000円なら、その年の支払額は180,000円です。変更後の月額20,000円×12=240,000円ではありません。

Q. iDeCoは生命保険料控除の欄に書くのですか?

A. 書きません。iDeCoの掛金は所得税法75条2項2号の個人型年金加入者掛金として、小規模企業共済等掛金控除の対象です。生命保険料控除は76条で、保険契約の保険料が対象です。令和8年分の保険料控除申告書では、「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」の行がiDeCoの欄です。生命保険料の一般・介護医療・個人年金のどの区分にも入りません。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の控除の可否や申告の要否については、所轄の税務署または税理士にご確認ください。運用商品の選定や掛金額の決め方は扱っていません。

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