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確定申告の必要書類 — 添付が要るもの、提示でよいもの、出さずに手元に置くもの

結論から言うと、確定申告の必要書類は「一式まとめて出すもの」ではありません。所得税法120条は、書類を扱いの違う3つのグループに分けています。申告書に付けなければならないもの(添付)、付けても窓口で見せるだけでもよいもの(添付又は提示)、そして出さずに手元に置いておくもの(保存)です(期間は確定申告期限の翌日から5年、納める税額のない還付申告は提出日の翌日から5年で、更正の請求をすると延びることがあります)(法120条5項の対象は明細書に記載した医療費の領収書だけで、適格な医療費通知を添付し明細記載を省いた分は対象外です;通常は確定申告期限の翌日から5年、122条3項の所定の還付請求申告書(通則令26条1項の期限内申告書を除く)は提出日の翌日から5年;終了日前6か月以内に更正請求があれば請求日から6か月まで延びます;必要と認めた税務署長の要求時には提示又は提出します)。どれに当たるかで、原本を渡すのか、返してもらえるのか、捨ててよいのかが変わります。

いちばん実務で効くのは「出さなくてよいもの」の広さです。社会保険料控除で証明書の添付または提示が求められているのは、条文上は国民年金の保険料と国民年金基金の掛金だけで(所得税法120条3項1号の括弧書き)、国民健康保険料はここに入っていません。さらに、年末調整で控除された社会保険料(国民年金等)・小規模企業共済等掛金・生命保険料・地震保険料の証明書は、確定申告でもう一度出す必要がありません(所得税法施行令262条1項ただし書、会社に出しても年末調整で控除されなかった分は対象外)。医療費控除にいたっては、領収書は提出する書類ではなく、求められたら出せるよう手元に置いておく書類です(期間は後述)(法120条5項の対象は明細書に記載した医療費の領収書だけで、適格な医療費通知を添付し明細記載を省いた分は対象外です;通常は確定申告期限の翌日から5年、122条3項の所定の還付請求申告書(通則令26条1項の期限内申告書を除く)は提出日の翌日から5年;終了日前6か月以内に更正請求があれば請求日から6か月まで延びます;必要と認めた税務署長の要求時には提示又は提出します)。

なお、前年分の所得税の確定申告書を出すと、原則としてその提出日に住民税の申告書を出したものとみなされ、確定申告書の記載事項も住民税の申告書に記載されたものとみなされます(地方税法317条の3第1項・2項、政令で定める場合と、それより前に住民税の申告書を出していた場合は除かれます)(みなされる記載は住民税の対応事項と所定の付記事項で、総務省令で除く事項は含みません;全ての住民税項目が自動で埋まる制度ではありません)。市区町村には、こうした申告のほか、勤務先(所得税の源泉徴収義務がある給与の支払者)や年金の支払者が出す給与支払報告書・公的年金等支払報告書でも前年の所得が届き(317条の6第1項・3項・4項、年の途中で退職し、その勤務先からの給与がその年30万円以下だった人の分は、給与支払報告書の提出義務がありません=同条3項ただし書)、それをもとに課税証明書が発行されます(公的年金等の支払報告義務は、1月1日現在の支払者で支払の際に所得税法203条の2の源泉徴収義務がある者が対象です)。給与・年金の報告書も申告も無い年は、市区町村に所得の記録が無く、証明書が出ないことがあります。

以下、令和8年分の確定申告を前提に、条文で順に確かめます。納める税額がある確定申告(120条1項)の提出期間は令和9年2月16日から3月15日です。医療費控除などで還付を受けるための申告(122条)は条文上この期間に限られておらず、120条3項〜7項の書類の定めは122条3項で準用されます。ここでいう「必要書類」は、所得税法が申告書に付けることを求めている書類のことで、本人確認書類のように手続き上求められるものとは根拠が別である点にも触れます。

条文は必要書類を3つに分けている

所得税法120条は1項で確定申告書に書く事項を定めたあと、3項から7項までで書類の話をしています。読み比べると、文末が3種類あることに気づきます。

条文対象の書類義務の形(要約)原本の行き先
120条3項雑損・社会保険料(国民年金の保険料と国民年金基金の掛金に限る)・小規模企業共済等掛金・生命保険料・地震保険料・寄附金の各控除の証明書、非居住者である親族に係る書類、専修学校・各種学校の生徒や認定職業訓練を受ける人の勤労学生の証明(年末調整で控除された分は施行令262条のただし書で不要) (その控除を申告する対象者に限ります;令262条1項2〜5号の年末調整で控除済みの保険料・掛金等、3・4項の所定の国外親族書類及び5項の勤労学生証明は各ただし書で再提出・提示を免除;国外親族の親族関係・留学関係の書類は扶養等申告時に提出・提示済みの所定分も除きます;旧生命保険料9,000円以下は金額による対象外(旧個人年金には及びません))添付、または提出の際に提示 (その控除を申告する対象者に限ります;令262条1項2〜5号の年末調整で控除済みの保険料・掛金等、3・4項の所定の国外親族書類及び5項の勤労学生証明は各ただし書で再提出・提示を免除;国外親族の親族関係・留学関係の書類は扶養等申告時に提出・提示済みの所定分も除きます;旧生命保険料9,000円以下は金額による対象外(旧個人年金には及びません))提示なら手元に残る
120条4項医療費控除の明細書、医療費通知 (対象となる控除を申告する居住者についての整理です;医療費は明細書が基本で、法120条4項2号の適格な医療費通知を添付した分は明細記載を省けます;5項の領収書は明細書記載分だけが要求対象;年末調整で控除済みの証明等は令262条のただし書で再提出免除です)添付のみ(提示は認められていない)申告書と一緒に出す
120条5項医療費の領収書 (法120条5項の対象は明細書に記載した医療費の領収書だけで、適格な医療費通知を添付し明細記載を省いた分は対象外です;通常は確定申告期限の翌日から5年、122条3項の所定の還付請求申告書(通則令26条1項の期限内申告書を除く)は提出日の翌日から5年;終了日前6か月以内に更正請求があれば請求日から6か月まで延びます;必要と認めた税務署長の要求時には提示又は提出します)提出しない。求められたら提示・提出 (法120条5項の対象は明細書に記載した医療費の領収書だけで、適格な医療費通知を添付し明細記載を省いた分は対象外です;通常は確定申告期限の翌日から5年、122条3項の所定の還付請求申告書(通則令26条1項の期限内申告書を除く)は提出日の翌日から5年;終了日前6か月以内に更正請求があれば請求日から6か月まで延びます;必要と認めた税務署長の要求時には提示又は提出します)求められたら出せるよう手元に置く(確定申告期限の翌日から5年。納める税額のない還付申告は提出日の翌日から5年。更正の請求で延びることがある) (法120条5項の対象は明細書に記載した医療費の領収書だけで、適格な医療費通知を添付し明細記載を省いた分は対象外です;通常は確定申告期限の翌日から5年、122条3項の所定の還付請求申告書(通則令26条1項の期限内申告書を除く)は提出日の翌日から5年;終了日前6か月以内に更正請求があれば請求日から6か月まで延びます;必要と認めた税務署長の要求時には提示又は提出します)
120条6項収支内訳書(総収入金額と必要経費の内容を記載した書類)。対象は白色申告の不動産・事業・山林所得の人と、前々年の業務の収入金額が1,000万円を超える雑所得の業務の人添付のみ(提示は認められていない)申告書と一緒に出す
120条7項その年に非永住者だった期間がある人の国籍等を記載した書類添付のみ(提示は認められていない)申告書と一緒に出す
確定申告で 必要になる書類 ① 添付し、又は提示 120条3項(各種の控除証明書) ② 添付のみ 120条4項・6項・7項 ③ 出さない。保存する 120条5項(医療費の領収書) 窓口で見せて持ち帰ってよい =原本を渡さなくてよい 見せるだけでは足りない。 申告書に付けて出す 求められたら出せるように 手元に置く(期間は後述)
所得税法120条3項〜7項の文末から整理したもの。①だけが「又は提示」を許している。6項(白色申告の不動産・事業・山林所得と、前々年の収入1,000万円超の雑所得の業務)と7項(その年に非永住者期間がある人)は対象者が限られる。 対象となる控除を申告する居住者についての整理です。医療費は明細書が基本で、法120条4項2号の適格な医療費通知を添付した分は明細記載を省けます。5項の領収書は明細書記載分だけが要求対象。年末調整で控除済みの証明等は令262条のただし書で再提出免除です。

対象の控除証明書は添付又は提示 — 年末調整済み等の免除もある

対象となる控除を申告する居住者についての整理です。医療費は明細書が基本で、法120条4項2号の適格な医療費通知を添付した分は明細記載を省けます。5項の領収書は明細書記載分だけが要求対象。年末調整で控除済みの証明等は令262条のただし書で再提出免除です。

まず120条3項の柱書です。

次の各号に掲げる居住者が第一項の規定による申告書を提出する場合には、政令で定めるところにより、当該各号に定める書類を当該申告書に添付し、又は当該申告書の提出の際提示しなければならない。

文末は「添付し、又は当該申告書の提出の際提示しなければならない」です。つまり申告書にのりで貼って出す方法と、税務署の窓口で見せる方法のどちらでもよく、後者なら証明書の原本は自分の手元に残ります。生命保険料控除証明書のように再発行が面倒な書類ほど、この違いは効いてきます。

3項が挙げる居住者は4つです(4号)。

号どんな人か定められた書類
1号雑損控除・社会保険料控除(国民年金等に限る)・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除・寄附金控除を書く人控除額の計算の基礎となる金額等を証する書類 (その控除を申告する対象者に限ります;令262条1項2〜5号の年末調整で控除済みの保険料・掛金等、3・4項の所定の国外親族書類及び5項の勤労学生証明は各ただし書で再提出・提示を免除;国外親族の親族関係・留学関係の書類は扶養等申告時に提出・提示済みの所定分も除きます;旧生命保険料9,000円以下は金額による対象外(旧個人年金には及びません))
2号非居住者である親族に係る障害者控除・配偶者控除・配偶者特別控除を書く人 (非居住者かどうかは法85条2・3項の判定時の現況によります;通常は12月31日で、本人の死亡・出国はその時、判定対象の親族が既に死亡していればその死亡時です;申告提出時だけで判定しません)親族に該当する旨を証する書類+生計を一にすることを明らかにする書類 (その控除を申告する対象者に限ります;令262条1項2〜5号の年末調整で控除済みの保険料・掛金等、3・4項の所定の国外親族書類及び5項の勤労学生証明は各ただし書で再提出・提示を免除;国外親族の親族関係・留学関係の書類は扶養等申告時に提出・提示済みの所定分も除きます;旧生命保険料9,000円以下は金額による対象外(旧個人年金には及びません))
3号非居住者である親族に係る扶養控除・特定親族特別控除を書く人 (非居住者かどうかは法85条2・3項の判定時の現況によります;通常は12月31日で、本人の死亡・出国はその時、判定対象の親族が既に死亡していればその死亡時です;申告提出時だけで判定しません)上記に加え、30歳以上70歳未満の親族(障害者を除く)なら、留学で国内に住所・居所が無くなった者に当たる旨の書類か、38万円以上の生活費等の送金を受けていることを明らかにする書類 (38万円以上は、その申告をする居住者から当該年に生活費又は教育費に充てるため受けた支払です;各親族別に確認し、年末調整済み等の書類免除は令262条4項ただし書によります)
4号専修学校・各種学校の生徒、または認定職業訓練を受ける人として勤労学生控除を書く人(2条1項32号ロ・ハ) (ロは国・地方公共団体・学校法人等が設置する専修学校又は各種学校で政令所定の課程を履修する学生・生徒、ハは職業訓練法人の認定職業訓練で政令所定の課程を履修する者です;学校教育法1条の学校の全学生にこの証明義務を広げません)該当する旨を証する書類 (法190条2号により年末調整で勤労学生控除相当額を控除された者は、令262条5項ただし書で再提出・提示不要です)
ここに医療費控除は入っていない。1号の並びをよく見ると、雑損控除から寄附金控除まで並んでいるのに医療費控除だけがありません。医療費控除の書類は次の4項が別に定めており、そこには「又は提示」がありません。この差は後述します。

社会保険料控除で証明書が要るのは国民年金と国民年金基金だけ

1号の全文を見ると、社会保険料控除にだけ括弧書きが付いています。

第一項の規定による申告書に雑損控除、社会保険料控除(第七十四条第二項第五号(社会保険料控除)に掲げる社会保険料に係るものに限る。)、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除又は寄附金控除に関する事項の記載をする居住者

「第七十四条第二項第五号(社会保険料控除)に掲げる社会保険料に係るものに限る」。では74条2項5号は何かというと、こう書かれています。

国民年金法の規定により被保険者として負担する国民年金の保険料及び国民年金基金の加入員として負担する掛金

国民年金の保険料と、国民年金基金の掛金だけです。74条2項には1号から12号まで並んでいて、健康保険(1号)・国民健康保険(2号)・後期高齢者医療(2号の2)・介護保険(3号)・雇用保険(4号)・厚生年金(7号)なども社会保険料控除の対象ですが、証明書の添付・提示が条文上求められているのは5号だけです。

だから実務では「国民健康保険料は納付額を自分で集計して書けばよく、証明書を付ける必要がない」と言われます(本人がその年に支払った、本人又は生計を一にする配偶者その他親族の負担すべき保険料を集計します;未払分・生計が別の親族の分を含めず、給与天引き額と二重に数えません(所得税法74条1項))。その根拠は、通達でも運用でもなく、この括弧書きです。所得税法施行令262条1項2号も、同じ限定を繰り返しています。

確定申告書に社会保険料控除(法第七十四条第二項第五号に掲げる社会保険料に係るものに限る。)に関する事項を記載する場合にあつては、当該申告書に記載した当該社会保険料の金額を証する書類又は当該書類に記載すべき事項を記録した電子証明書等に係る電磁的記録印刷書面

末尾の「電磁的記録印刷書面」にも意味があります。保険会社や日本年金機構から、電子署名とその電子証明書が付いた電磁的記録(施行令262条2項の「電子証明書等」)で受け取った控除証明書を、国税庁長官の定める方法で印刷したもの——いわゆる二次元コード付きの証明書——が、紙の証明書と同じ扱いになる、と条文が明示しています。電子署名の無いデータを印刷したものは、これに当たりません。

年末調整で控除された分の証明書は、もう一度出さなくてよい

会社員が医療費控除やふるさと納税のために確定申告するとき、いちばん多い疑問がこれです。「生命保険料控除の証明書は、去年の秋に会社へ出してしまった。確定申告でまた要るのか」。

年末調整で控除された分なら要りません。所得税法施行令262条1項には長いただし書があり、2号から5号までの書類のうち、年末調整(所得税法190条2号)で給与所得控除後の給与等の金額から控除された保険料等に係るものについては、この限りでないと定めています。2号から5号は、社会保険料(国民年金の保険料・国民年金基金の掛金)・小規模企業共済等掛金・生命保険料・地震保険料の証明書です。年末調整で処理された分は、確定申告で二重に出す必要がない設計になっています。会社に証明書を出していても、年末調整で控除されなかった分はこのただし書に当たらないので、確定申告で控除を受けるなら添付か提示が要ります(別の金額例外として旧生命保険料9,000円以下は証明書対象外です;この例外は旧個人年金保険料には適用されません(令262条1項4号ロ・ホ))。

1号(雑損控除)と6号(寄附金控除)は、ただし書の対象外。ただし書は「第二号から第五号まで」と範囲を切っており、1号の雑損控除の領収書と6号の寄附金控除の書類は入っていません。どちらも年末調整で受けられない控除なので、会社に出しているはずがない——という筋が通っています。ただし書の範囲は「年末調整でできる控除かどうか」で引かれています。

同じ構造は非居住者親族の書類にもあり、262条3項・4項・5項にも「法第百九十条第二号の規定により……控除された」場合を外すただし書が置かれています(3・4項は国外親族の書類、5項は法2条1項32号ロ・ハに係る所定の勤労学生の証明を扱います;国外親族には親族関係・生計・留学又は当年の本人からの38万円以上支払の区分があり、親族関係・留学関係の所定書類は扶養等申告時に提出・提示済みでも免除されます)。勤労学生控除(5項)も同じです。

もう一つ、細かいけれど条文にはっきり書かれていることがあります。生命保険料控除のうち旧生命保険料については、施行令262条1項4号の括弧書きが証明書の対象をこう絞っています。

(ロに掲げる金額に係るものにあつては、当該金額が九千円を超える法第七十六条第六項に規定する旧生命保険契約等(ロにおいて「旧生命保険契約等」という。)に係るものに限る。)

旧生命保険料(平成23年12月31日以前の旧生命保険契約等に係るもの)が9,000円以下なら、証明書は要りません(9,000円以下の例外は旧生命保険料(令262条1項4号ロ)だけで、旧個人年金保険料(ホ)には及びません)。新契約側にはこの金額の絞りがなく、金額にかかわらず証明書の対象です(ただし年末調整で控除済みの保険料については令262条1項ただし書により再提出・提示不要です)。同じ生命保険料控除の中で、契約の新旧によって書類の要否が分かれています。

医療費控除だけ「提示」の選択肢がない

120条4項の柱書です。3項と読み比べてください。

第一項の規定による申告書に医療費控除に関する事項の記載をする居住者が当該申告書を提出する場合には、次に掲げる書類を当該申告書に添付しなければならない。

提示で代える道が書かれていません。3項の文末が「添付し、又は当該申告書の提出の際提示しなければならない」だったのに対し、4項は「当該申告書に添付しなければならない」で終わっています。医療費控除の明細書は、窓口で見せて持ち帰る扱いができません。

4項が挙げる書類は2つです。明細書(1号)を添付するのが基本で、医療費通知(2号)を添付した場合は、通知に記載された分を明細書から除けます(ここでいう通知は保険者・後期高齢者医療広域連合等が発行し、法120条4項2号と省令の発行者・記載事項の要件を満たすものです;要件を満たさない通知の分は明細書に記載します)。通知に載っていない医療費があれば、通知と明細書の両方を添付します(ここでいう通知は保険者・後期高齢者医療広域連合等が発行し、法120条4項2号と省令の発行者・記載事項の要件を満たすものです;要件を満たさない通知の分は明細書に記載します)。

2号の医療費通知(「医療費のお知らせ」など)のうち、控除適用医療費の額等の記載があるものを添付すれば、そこに記載された分は明細書に個別に書き出さなくてよい、という関係です。記載が足りない通知では、この扱いになりません。

医療費控除の還付額を計算する(医療費控除 計算機)

医療費の領収書は通常添付不要。明細記載分は要求時に提示・提出する

申告時の通常の添付は不要ですが、法120条5項の対象となる明細書記載分は、必要と認めた税務署長の要求があれば提示又は提出します。適格通知で明細記載を省いた分はこの要求の対象外です。

では病院や薬局の領収書はどうするのか。4項の書類ではありません。提出しない書類です(申告時の通常の添付は不要ですが、法120条5項の対象となる明細書記載分は、必要と認めた税務署長の要求があれば提示又は提出します;適格通知で明細記載を省いた分はこの要求の対象外です)。根拠は120条5項で、税務署長の側の権限として書かれています。

当該申告書に係る確定申告期限の翌日から起算して五年を経過する日(同日前六月以内に国税通則法第二十三条第一項(更正の請求)の規定による更正の請求があつた場合には、当該更正の請求があつた日から六月を経過する日)までの間、前項第一号に掲げる書類に記載された医療費につきこれを領収した者のその領収を証する書類の提示又は提出を求めることができる。

読み取れることが3つあります。

還付申告の読替えは122条3項にあります。

この場合において、同条第五項中「確定申告期限」とあるのは「確定申告期限(当該申告書が国税通則法第六十一条第一項第二号(延滞税の額の計算の基礎となる期間の特例)に規定する還付請求申告書である場合には、当該申告書の提出があつた日)」と、「国税通則法」とあるのは「同法」と読み替えるものとする。

還付請求申告書は、還付を受けるための申告書のうち、正しく計算すると納付すべき税額がないもので、期限内申告書以外のものです(国税通則法施行令26条1項)。源泉徴収された税金が戻ってくるだけの医療費控除の申告は、これに当たります。

① 納める税額がある確定申告(120条1項) 令和9年3月15日 確定申告期限 令和14年3月15日 5年を経過する日 期限の翌日から5年(早く出しても同じ) ② 還付を受けるだけの申告(還付請求申告書・122条3項) 令和9年1月20日 提出した日(例) 令和14年1月20日 5年を経過する日 提出日の翌日から5年 どちらも、5年を経過する日の前6か月以内に更正の請求をすると、請求の日から6か月を経過する日まで延びる
令和8年分の場合。納める税額がある確定申告は確定申告期限の翌日(令和9年3月16日)から、還付を受けるだけの申告は申告書を提出した日の翌日から数える(所得税法120条5項・122条3項)。 法120条5項の対象は明細書に記載した医療費の領収書だけで、適格な医療費通知を添付し明細記載を省いた分は対象外です。通常は確定申告期限の翌日から5年、122条3項の所定の還付請求申告書(通則令26条1項の期限内申告書を除く)は提出日の翌日から5年。終了日前6か月以内に更正請求があれば請求日から6か月まで延びます。必要と認めた税務署長の要求時には提示又は提出します。

具体的に数えてみます。納める税額がある令和8年分の確定申告なら、確定申告期限は令和9年3月15日(月曜日)で、土日に当たらないため繰り下がりません。起算日はその翌日の令和9年3月16日、そこから5年を経過する日は令和14年3月15日です。これに対し、医療費控除で還付を受けるだけの申告書を令和9年1月20日に出した人は、起算日が翌日の1月21日になり、5年を経過する日は令和14年1月20日です。

「明細書を出したから領収書は捨ててよい」ではありません。明細書の提出(4項)と領収書の保存(5項)は別の条項の別の話です。明細書を出すことで領収書の添付が不要になっただけで、手元に置く必要はなくなっていません(法120条5項の対象は明細書に記載した医療費の領収書だけで、適格な医療費通知を添付し明細記載を省いた分は対象外です;通常は確定申告期限の翌日から5年、122条3項の所定の還付請求申告書(通則令26条1項の期限内申告書を除く)は提出日の翌日から5年;終了日前6か月以内に更正請求があれば請求日から6か月まで延びます;必要と認めた税務署長の要求時には提示又は提出します)。

収支内訳書が要るのは、事業所得の人だけではない

白色申告で収支内訳書を付ける根拠は120条6項です。ここに、見落とされやすい対象者が書かれています。

その年において不動産所得、事業所得若しくは山林所得を生ずべき業務を行う居住者が第一項の規定による申告書を提出する場合(当該申告書が青色申告書である場合を除く。)又はその年において雑所得を生ずべき業務を行う居住者でその年の前々年分の当該業務に係る収入金額が千万円を超えるものが同項の規定による申告書を提出する場合には、財務省令で定めるところにより、これらの所得に係るその年中の総収入金額及び必要経費の内容を記載した書類を当該申告書に添付しなければならない。

前半は不動産所得・事業所得・山林所得(青色申告書である場合を除く)(いずれも所得税法120条1項等の申告書を提出する居住者が対象です;6項は不動産・事業・山林所得の業務(青色申告は除く)又は前々年の業務雑所得の収入1,000万円超、7項は当該年に非永住者期間がある場合で、収入減少や年末時点だけで免除されません)。ここまでは知られています。問題は後半で、雑所得を生ずべき業務を行う人で、その年の前々年分のその業務に係る収入金額が1,000万円を超えるものも対象になっています(いずれも所得税法120条1項等の申告書を提出する居住者が対象です;6項は不動産・事業・山林所得の業務(青色申告は除く)又は前々年の業務雑所得の収入1,000万円超、7項は当該年に非永住者期間がある場合で、収入減少や年末時点だけで免除されません)。

ここでの落とし穴は基準になる年がずれていることです。判定するのは申告する年の収入ではなく、前々年の収入です。令和8年分の申告なら、見るのは令和6年の雑所得の業務に係る収入金額です。

雑所得に当たる副業の業務で、令和6年の収入が1,000万円を超えていれば、令和8年に収入が減っていても収支内訳書の添付義務があります。逆に令和8年に初めて1,000万円を超えた人には、雑所得の業務としては令和8年分では義務が生じません(前々年=令和6年で判定するため)。副業が事業所得・不動産所得・山林所得に当たるなら、収入金額にかかわらず、白色申告では6項前段により添付が要ります。雑所得については、この収入金額の基準で帳簿書類の保存義務なども段階的に分かれています(いずれも所得税法120条1項等の申告書を提出する居住者が対象です;6項は不動産・事業・山林所得の業務(青色申告は除く)又は前々年の業務雑所得の収入1,000万円超、7項は当該年に非永住者期間がある場合で、収入減少や年末時点だけで免除されません)。

もう一つ、7項には対象者の狭い規定があります。

その年において非永住者であつた期間を有する居住者が第一項の規定による申告書を提出する場合には、その者の国籍、国内に住所又は居所を有していた期間その他の財務省令で定める事項を記載した書類を当該申告書に添付しなければならない。

申告する年(令和8年分なら令和8年)に非永住者だった期間がある人は、国籍と国内に住所・居所を有していた期間などを記載した書類の添付が必要です(いずれも所得税法120条1項等の申告書を提出する居住者が対象です;6項は不動産・事業・山林所得の業務(青色申告は除く)又は前々年の業務雑所得の収入1,000万円超、7項は当該年に非永住者期間がある場合で、収入減少や年末時点だけで免除されません)。これも「添付しなければならない」で、提示では代えられません。

e-Taxの「添付省略」は「捨ててよい」ではない

e-Taxで送信する場合、控除証明書などは記載内容を入力して送信すれば添付を省略できます。根拠は所得税法ではなく、国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令5条3項です。

前二項の申請等を行う者は、これらの規定にかかわらず、当該申請等につき規定した法令の規定に基づき添付すべきこととされている書面等(以下この条において「添付書面等」という。)に記載されている事項又は記載すべき事項(以下この条において「添付書面等記載事項」という。)を次に掲げる方法(前項の申請等を行う場合には、第二号に掲げる方法)により送信し、又は提出することをもって、当該添付書面等の提出に代えることができる。

ここで終わりではありません。同じ条の5項が、省略した書類の行き先を定めています。

第三項(第一号に係る部分に限る。)の場合において、国税庁長官が定める添付書面等に記載されている事項又は記載すべき事項を送信するときは、税務署長等は、国税庁長官が定める期間、当該送信に係る事項の確認のために必要があるときは、当該添付書面等を提示又は提出させることができる。

「入力して送信する」方法(3項1号)を選んだ場合だけ、後から提示・提出を求められる余地が残ります。つまり添付省略は「出さなくてよい」であって「持たなくてよい」ではありません。医療費の領収書と同じ構造が、控除証明書の側にも用意されているわけです。

一方、同じ3項でも3号の方法——保険会社などから提供を受けた電子データ(電子署名付き)をそのまま送信する方法——は5項の対象に入っていません。電子データをそのまま送るか、内容を手入力して送るかで、その後に手元に置く必要があるかどうかが変わります。

医療費通知の発行元の名称が新しくなっている(令和8年10月1日施行版)

最後に、令和8年分の申告に関わる条文の変化を1つ。120条4項2号は医療費通知の発行元を列挙していますが、e-Gov法令検索の令和8年8月12日施行版と令和8年10月1日施行版を比べると、そのうち1つの名称が変わっています。

条文の版120条4項2号が挙げる発行元(抜粋)
令和8年8月12日施行版保険者/後期高齢者医療広域連合/社会保険診療報酬支払基金/国民健康保険団体連合会
令和8年10月1日施行版(現行)保険者/後期高齢者医療広域連合/医療情報基盤・診療報酬審査支払機構/国民健康保険団体連合会

令和8年10月1日施行版の条文は次のとおりです。

高齢者の医療の確保に関する法律第七条第二項(定義)に規定する保険者若しくは同法第四十八条(広域連合の設立)に規定する後期高齢者医療広域連合又は医療情報基盤・診療報酬審査支払機構若しくは国民健康保険法第四十五条第五項(保険医療機関等の診療報酬)に規定する国民健康保険団体連合会の当該居住者が支払つた医療費の額を通知する書類として財務省令で定める書類で、控除適用医療費の額等の記載があるもの

令和8年分の確定申告をするときに条文を引くと、新しい名称の側が現行です。それより前に保存した条文には旧名称が残っているため、条文を確かめるときは施行日を確かめて開く必要があります。実務上の書類そのものが変わるわけではありませんが、条文の文言を根拠として示すときには施行日を添えるのが安全です。

よくある質問

確定申告に必要な書類を1つにまとめた一覧はありますか?

所得税法120条は書類を扱いごとに3つに分けているため、1つの一覧にまとめると誤解が生じます。3項の書類は添付でも窓口での提示でもよく、4項の医療費控除の明細書と6項の収支内訳書と7項の非永住者の書類は添付のみが認められ、5項の医療費の領収書は提出せず手元に保存します(各書類は、その控除・所得区分を申告する居住者だけが対象です;年末調整済み証明等は令262条の再提出免除、適格医療費通知添付分は明細記載の省略があり、領収書は明細記載分だけが120条5項の要求対象です;6・7項は事業等・前々年の業務雑収入1,000万円超・当年の非永住者期間という区分を満たす人の添付です)。まず自分がどの控除を使うかを決め、その控除がどの項に置かれているかを確かめる順序が確実です。

国民健康保険料の控除証明書が届きません。確定申告に必要ですか?

所得税法120条3項1号は、証明書の添付または提示が必要な社会保険料控除を「第七十四条第二項第五号(社会保険料控除)に掲げる社会保険料に係るものに限る」と限定しています。74条2項5号は国民年金の保険料と国民年金基金の掛金であり、国民健康保険料は同項2号に位置しているためこの限定に入りません。したがって国民健康保険料については、条文上、証明書の添付や提示は求められていません。納付した金額を自分で集計して申告書に記載する取扱いになります(本人がその年に支払った、本人又は生計を一にする配偶者その他親族の負担すべき保険料を集計します;未払分・生計が別の親族の分を含めず、給与天引き額と二重に数えません(所得税法74条1項))。

生命保険料控除の証明書は、年末調整で会社に出しました。確定申告でも必要ですか?

所得税法施行令262条1項のただし書は、2号から5号までの書類のうち、所得税法190条2号の年末調整により給与所得控除後の給与等の金額から控除されたものについては、添付または提示を要しないとしています。生命保険料の証明書は4号に当たるため、年末調整で処理済みの分は確定申告で改めて出す必要がありません。同じただし書には社会保険料(国民年金)・小規模企業共済等掛金・地震保険料も含まれています。

医療費の領収書は申告書に付けて出すのですか?

付けません。所得税法120条4項が添付を求めているのは医療費控除の明細書(適格な医療費通知の添付分は記載省略)で、領収書は挙げられていません(基本は明細書を添付し、法120条4項2号の適格医療費通知を添付した部分だけ明細記載を省く関係です;常に両方が必須という意味ではありません)。領収書については同条5項が、税務署長が必要があると認めるときに提示または提出を求めることができると定めており、求められたときに出せるよう手元に保存しておく形になります(法120条5項の対象は明細書に記載した医療費の領収書だけで、適格な医療費通知を添付し明細記載を省いた分は対象外です;通常は確定申告期限の翌日から5年、122条3項の所定の還付請求申告書(通則令26条1項の期限内申告書を除く)は提出日の翌日から5年;終了日前6か月以内に更正請求があれば請求日から6か月まで延びます;必要と認めた税務署長の要求時には提示又は提出します)。明細書を提出したことによって領収書を処分してよいという意味にはなりません。

医療費の領収書は何年持っておけばよいですか?

所得税法120条5項は、確定申告期限の翌日から起算して5年を経過する日までの間としています(対象は明細書記載分の領収書です;所定の還付請求申告書(期限内申告書を除く)は提出日の翌日から数え、終了日前6か月以内に更正請求があれば請求日から6か月を経過する日まで延長します)。ただし医療費控除などで還付を受けるだけの申告(納付すべき税額がない還付請求申告書)は、122条3項の読替えで、申告書を提出した日の翌日が起算日になります。納める税額がある令和8年分の確定申告なら、確定申告期限が令和9年3月15日、起算日が令和9年3月16日、5年を経過する日が令和14年3月15日で、早く提出しても変わりません(対象は明細書記載分の領収書です;所定の還付請求申告書(期限内申告書を除く)は提出日の翌日から数え、終了日前6か月以内に更正請求があれば請求日から6か月を経過する日まで延長します)。還付を受けるだけの申告を令和9年1月20日に出した場合は、5年を経過する日が令和14年1月20日です(対象は明細書記載分の領収書です;所定の還付請求申告書(期限内申告書を除く)は提出日の翌日から数え、終了日前6か月以内に更正請求があれば請求日から6か月を経過する日まで延長します)。なお5年を経過する日の前6か月以内に更正の請求をした場合には、その請求の日から6か月を経過する日まで延びます。

副業が雑所得です。収支内訳書は必要ですか?

所得税法120条6項は、雑所得を生ずべき業務を行う居住者のうち、その年の前々年分のその業務に係る収入金額が1,000万円を超えるものについて、総収入金額と必要経費の内容を記載した書類の添付を求めています。判定の基準になるのは申告する年ではなく前々年である点が重要で、令和8年分の申告では令和6年の収入金額を見ます。前々年の収入が1,000万円以下であれば、この規定による添付義務は生じません。

e-Taxで添付を省略した控除証明書は捨ててよいですか?

国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令5条5項は、同条3項1号の方法つまり記載事項を入力して送信する方法をとった場合に、税務署長等が国税庁長官の定める期間、確認のために必要があるときはその添付書面等を提示または提出させることができると定めています。添付を省略できることと手元に置かなくてよいことは別であり、入力送信を選んだ場合には保管が前提になります。保険会社等から提供を受けた電子データをそのまま送信する3項3号の方法は、5項の対象に含まれていません。

マイナンバーカードや本人確認書類は必要書類に含まれますか?

所得税法120条3項から7項までが定める書類には含まれていません。本人確認に関する書類は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律に基づく本人確認の措置として求められるもので、根拠となる法律が別です。同じ「必要書類」という言葉でまとめられていても、添付義務の性質や、提示で足りるかどうかの扱いは条文ごとに異なります。

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出典

所得税法・所得税法施行令・国税関係法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する省令の条文(e-Gov法令検索、令和8年8月20日時点の施行版および令和8年10月1日施行版)と国税通則法施行令で確認して作成。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

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