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退職所得の受給に関する申告書 — 出さないと所得税は取られすぎ、住民税は逆に足りなくなる

結論から言うと、この1枚を出し忘れたときの結果は、所得税と住民税で向きが逆になります。所得税は退職所得控除も2分の1も使わずに、支払額そのものに20.42%が掛かります。取られすぎるので、確定申告をして取り戻すことになります。

ところが住民税は、この申告書を出していなくても税率も控除も一切変わりません。地方税法50条の6第2項と328条の6第2項が、申告書が無い場合の税額を、ある場合と同じ条文で計算すると定めているためです。ではペナルティが無いのかというとそうではなく、前に受け取った退職金との通算ができなくなるので、その分だけ取られ足りないことがあります。足りない分は後から市町村が普通徴収で取りに来ます。様式の注意事項が「市町村民税及び道府県民税については、延滞金を徴収されることがあります」と書いているのは、この経路の話です。

もう一つ、多くの解説が書かない事実があります。この申告書の法律上の宛先は、会社ではありません。所得税法203条1項は、税務署長に提出しなければならないと書いています。会社はその通り道として名指しされているだけです。それでも紙が税務署に届かないのは、受理された瞬間に提出があったものとみなす規定と、会社が保存すると定める省令が別にあるからです。

この記事では、申告書という1枚の書類そのもの——誰に出し、いつまでに出し、どの欄に何を書き、何を添え、出したあとその紙がどこで何年残るのか——を条文と様式で確認します。退職金の税額そのものの計算は退職金の税金退職金の手取り計算機に譲ります。

宛先は会社ではない。税務署長と市町村長に、会社を経由して出す

実務では「会社に出す紙」として扱われますが、条文の書き方はそうなっていません。所得税法203条1項は次のように定めています。

国内において退職手当等の支払を受ける居住者は、その支払を受ける時までに、次に掲げる事項を記載した申告書を、その退職手当等の支払者を経由して、その退職手当等に係る所得税の第十七条(源泉徴収に係る所得税の納税地)の規定による納税地(第十八条第二項(納税地の指定)の規定による指定があつた場合には、その指定をされた納税地)の所轄税務署長に提出しなければならない。

提出先は所轄税務署長で、会社は「経由して」の位置にあります。ここが分かっていると、次の2つが自然に理解できます。ひとつは、会社が受け取った時点で本人の義務が果たされること。もうひとつは、その紙が税務署に届いていなくても不備ではないことです。前者を定めているのが同条3項です。

第一項の場合において、同項の規定による申告書がその提出の際に経由すべき退職手当等の支払者に受理されたときは、その申告書は、その受理された時に同項に規定する税務署長に提出されたものとみなす。

国税庁も手続の案内で「退職手当等の支払者は、税務署長から特に提出を求められた場合以外は、税務署への提出の必要はありません(退職手当等の支払者が保管することになっています。)。」としています。実際にどう保管されるのかは後述します。

そして住民税側には、まったく別の宛先を持つもう1つの申告書があります。地方税法50条の7第1項です。

退職手当等の支払を受ける者は、その支払を受ける時までに、第三百二十八条の七第一項の規定による申告書と併せて、次に掲げる事項を記載した申告書を、その退職手当等の支払者を経由して、その退職手当等の支払を受けるべき日の属する年の一月一日現在における住所所在地の市町村長に提出しなければならない。

こちらの宛先は市町村長で、しかも「その年1月1日現在における住所所在地」の市町村長です。退職後に引っ越していても、判定日はその年の1月1日です。さらに「第三百二十八条の七第一項の規定による申告書と併せて」とあるとおり、市町村民税分と道府県民税分は2つで1組として出すことになっています。

紙は1枚、申告書は3つ国税庁が様式を「退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)」と2つの名前を並べて呼んでいるのは、この構造の反映です。法律の側では、所得税法203条の申告書(宛先は税務署長)、地方税法328条の7の申告書(宛先は市町村長)、地方税法50条の7の申告書(宛先は同じ市町村長)の3つが、1枚の紙に載っています。書く欄が共通なので1枚で足りるだけで、義務は別々です。

ちなみに、この書類の呼び名そのものも法律が決めています。所得税法203条6項です。

第一項の規定による申告書は、退職所得の受給に関する申告書という。

期限は「支払を受ける時までに」。退職日でも月末でもない

203条1項の期限はその支払を受ける時までです。年末調整の各種申告書が「その年最後に給与等の支払を受ける日の前日まで」であるのと違って、前日ではありません。退職日でもありません。基準はお金が動く日です。

退職金の支給が退職から2か月後という会社は珍しくありません。その場合、退職日を過ぎていても、支給日までに提出すれば20.42%の源泉徴収にはなりません。逆に、退職日に間に合っていても支給が先に済んでしまえば手遅れです。

そもそも対象外になる支払者がある所得税法203条2項は、200条により源泉徴収を要しないとされる退職手当等を、この申告書の対象から外しています。その200条は次のとおりで、個人が家事使用人だけを雇っているような場面を指します。会社が支払う退職金は当然に対象です。
常時二人以下の家事使用人のみに対し第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等の支払をする者は、前条の規定にかかわらず、その支払う退職手当等について所得税を徴収して納付することを要しない。

どの欄に何を書くか — 端数は切上げと切捨てが混在する

令和8年1月1日以後の様式は、番号の振られた欄が①から⑪まであります。国税庁の書き方に沿って整理すると次のようになります。

書くもの1年未満の端数
退職年月日。役員等の退職手当等で株主総会等の決議を要するものは、その決議により支払を受ける金額が具体的に定められた年月日
一般か障害かの別(障害なら状態や手帳の交付年月日等)と、その年1月1日現在で生活扶助を受けているかどうか
今回の退職手当等についての勤続期間と年数。内書として特定役員等勤続期間・短期勤続期間の有無切上げ
本年中に支払を受けた他の退職手当等についての勤続期間切上げ
③と④を、重複部分を二重に数えないよう通算した勤続期間切上げ
前年以前の退職手当等についての勤続期間(4年内・9年内・19年内のいずれか。下記)
③または⑤のうち、⑥と重複している期間切捨て
⑧⑨③または④の勤続期間のうち、そこに通算された前の退職手当等の勤続期間切捨て
③または⑤のうち、⑧⑨の期間だけからなる部分切捨て
⑦と⑩を、重複部分を二重に数えないよう通算した期間切捨て

端数処理が欄によって逆を向いているのは、書き間違いではありません。①から⑤までの「自分が働いた期間」は切上げ、⑦から⑪までの「前の退職金と重なっている期間」は切捨てと、国税庁の書き方が欄ごとに指定しています。

この非対称には意味があります。退職所得控除額は、勤続年数に40万円(20年超の部分は70万円)を掛けて求め、そこから前に受け取った退職金に対応する分を差し引いて計算します。勤続年数は切り上げると控除が増え、重複期間は切り捨てると差し引く額が減ります。つまりどちらの端数処理も、納税者に有利な向きに切ってあります。半端な月数が出たときに「不利な方に丸めるのでは」と迷う必要はありません。

⑥欄の年数が3種類あるのは、令和8年から10年ルールに変わったため

⑥欄に書く「前年以前」の範囲は一律ではなく、国税庁の書き方が3つに分けています。原則は前年以前4年内です。そのうえで、確定拠出年金法に基づく老齢給付金の一時金がからむ場合だけ、前年以前9年内前年以前19年内という長い窓が出てきます。

9年という数字が令和8年1月1日で区切られているのは、いわゆる5年ルールが10年ルールへ延びたためです。前年以前9年内という窓は、今年を含めて数えると10年になります。令和8年に受け取る人から、この長い窓が実際に効き始めます。控除額そのものの計算は退職金の税金で扱っています。

⑥欄には例外の書き方がある前年以前の退職手当等の収入金額が、その退職手当等についての退職所得控除額に満たなかったときは、勤続期間をそのまま書きません。国税庁の書き方は、その収入金額を800万円以下なら40万円で割り、800万円超なら800万円を引いた額を70万円で割って20を足した数(小数点以下切捨て)だけ、勤続期間の初日から経過する日までを書くとしています。前の退職金が小さかった人ほど、書く期間が短くなる仕組みです。

そして令和8年1月1日以後の様式で新しく効いてくるのがE欄の「老齢給付金」です。国税庁の書き方11は、支払を受けた退職手当等が確定拠出年金法に基づく老齢給付金として支給される一時金である場合に「○」を記載する欄だと説明しています。この1つの丸が、あとで見るとおり会社の保存年数まで変えます

退職金の手取りを計算する(勤続年数・役員在任年数から自動計算)

添えるものは源泉徴収票。親切ではなく条文の義務

その年のうちに他の退職手当等を受け取っている場合、源泉徴収票を添えます。これは運用上のお願いではなく、203条1項の後段が定めた義務です。

この場合において、第二号に規定する支払済みの他の退職手当等がある旨を記載した申告書を提出するときは、当該申告書に当該支払済みの他の退職手当等につき第二百二十六条第二項(源泉徴収票)の規定により交付される源泉徴収票を添付しなければならない。

様式の注意事項も、Bの退職手当等がある人は「その退職手当等についての退職所得の源泉徴収票(特別徴収票)又はその写しをこの申告書に添付してください。」としています。写しでよいことと、住民税側の特別徴収票でもよいことが明記されている点は実務上ありがたいところです。

添付が必要になるのは、④欄に金額を書いたときです。そのとき何を書くかは所得税法施行規則77条1項4号が定めています。

法第二百三条第一項第二号に規定する支払済みの他の退職手当等がある場合には、当該支払済みの他の退職手当等の支払者の氏名又は名称、当該支払済みの他の退職手当等につき法第百九十九条(源泉徴収義務)の規定により徴収された所得税の額及びその支払を受けた年月日

支払者の名前・そこで源泉徴収された所得税の額・支払を受けた年月日の3点です。金額だけでは足りません。源泉徴収票が要るのは、この3点を裏づけるためです。

なお住民税側の特別徴収票は、会社が作って本人に渡すものです。地方税法50条の9が定めています。

分離課税に係る所得割の特別徴収義務者は、総務省令で定めるところにより、その年において支払の確定した退職手当等について、その退職手当等の支払を受ける者の各人別に特別徴収票二通を作成し、その退職の日以後一月以内に、第三百二十八条の十四の特別徴収票とあわせて、一通を市町村長に提出し、他の一通を退職手当等の支払を受ける者に交付しなければならない。

2通作り、退職の日以後1か月以内に、1通を市町村長へ、1通を本人へ、という組み立てです(同条にはただし書があり、総務省令が定める場合は除かれます)。前の会社の分が手元に無いときは、この特別徴収票の再交付を頼むという道もあります。

出さないとどうなるか — 所得税と住民税で向きが逆

ここが本題です。所得税側の条文は所得税法201条3項です。

退職手当等の支払を受ける居住者がその支払を受ける時までに退職所得の受給に関する申告書を提出していないときは、第百九十九条の規定により徴収すべき所得税の額は、その支払う退職手当等の金額に百分の二十の税率を乗じて計算した金額に相当する税額とする。

「その支払う退職手当等の金額」に20%です。退職所得控除を引く前、2分の1にする前の金額そのものに掛かります。ここに復興特別所得税が乗って20.42%になります。

いっぽう住民税側は、地方税法50条の6第2項(道府県民税)と328条の6第2項(市町村民税)です。

退職手当等の支払を受ける者がその支払を受ける時までに退職所得申告書を提出していないときは、第四十一条第一項の規定により特別徴収義務者が徴収すべき分離課税に係る所得割の額は、その支払う退職手当等の金額について第五十条の三及び第五十条の四の規定を適用して計算した税額とする。

ここで呼ばれている50条の3は課税標準を「その年中の退職所得の金額」とし、その金額は所得税法30条2項の計算の例によると定めています。退職所得控除も2分の1も、そのまま入ります。50条の4の税率は4%、市町村民税側の328条の3は6%で、合わせて10%。申告書を出した場合とまったく同じです。

では住民税は無傷なのかというと、そうではありません。50条の6第1項2号(申告書がある場合)は、支払済みの他の退職手当等と合算してから計算し、既に徴収された分を差し引く仕組みを置いています。申告書が無い第2項にはこの通算がありません。結果として徴収額が本来より小さくなることがあり、その差額を市町村が取りに来ます。地方税法50条の8です。

その年において退職手当等の支払を受けた者が第五十条の六第二項に規定する分離課税に係る所得割の額を徴収された又は徴収されるべき場合において、その者のその年中における退職手当等の金額について第五十条の三及び第五十条の四の規定を適用して計算した税額が当該退職手当等につき第四十一条第一項の規定によつてその例によることとされる第三百二十八条の五第二項の規定により徴収された又は徴収されるべき分離課税に係る所得割の額をこえるときは、第四十一条第一項の規定によつて市町村長が普通徴収の方法によつて徴収すべき税額は、そのこえる金額に相当する税額とする。

「こえる金額」を普通徴収で徴収する、つまり後から納付書が届きます。様式の注意事項1が「この申告書は、退職手当等の支払を受ける際に支払者に提出してください。提出しない場合は、所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額は、支払を受ける金額の 20.42%に相当する金額となります。また、市町村民税及び道府県民税については、延滞金を徴収されることがあります。」と書いているのは、この普通徴収の経路のことです。

申告書を出さなかったとき 所得税・復興特別所得税 支払額 × 20.42%(控除なし・2分の1なし) → 取られすぎ。確定申告で取り戻す 住民税(道府県4% + 市町村6%) 税率も退職所得控除も2分の1も同じ → ただし前の退職金と通算されない 足りない分を市町村が普通徴収(50条の8) → 後から納付書。延滞金がつくことがある 還付は自動では来ない。自分で申告する 期限は翌年から5年以内
出し忘れの結果は、所得税では過大徴収、住民税では過少徴収という逆向きになる。動くのは所得税の税率と、住民税の通算の有無。
出したあとに確定申告をするなら、退職所得も書く国税庁は、この申告書を提出した人であっても、その年分について医療費控除や寄附金控除の適用を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合には、退職所得の金額を含めて申告する必要があるとしています。申告書を出したから退職金は書かなくてよい、ではありません。

出した紙は会社に7年。確定拠出年金がからむと10年

受理された時点で税務署長に提出したものとみなされる(203条3項)のに、紙は会社に残ります。その根拠が所得税法施行規則77条6項です。

法第二百三条第一項に規定する退職手当等の支払者がその退職手当等の支払を受ける居住者から同項の規定による申告書を受理した場合には、当該申告書(同条第四項の規定の適用により当該退職手当等の支払者が提供を受けた当該申告書に記載すべき事項を含む。次項において同じ。)を、同条第一項に規定する税務署長が当該退職手当等の支払者に対しその提出を求めるまでの間、当該退職手当等の支払者が保存するものとする。ただし、当該申告書に係る同項に規定する提出期限の属する年の翌年一月十日の翌日から七年(当該退職手当等が令第七十二条第三項第七号(退職手当等とみなす一時金)に掲げる一時金に該当する場合には、十年)を経過する日後においては、この限りでない。

読みどころが3つあります。

1つめは起算日です。「提出期限の属する年の翌年一月十日の翌日から」であって、提出した日からではありません。令和8年3月31日に退職金を受け取った人の申告書なら、令和9年1月11日から数えて令和16年1月10日までです。年末に近い退職でも起算日は同じなので、支給月によって保存の終わりがずれることはありません。

2つめは7年と10年の分かれ目です。括弧書きが指す施行令72条3項7号は、確定拠出年金法の企業型年金規約または個人型年金規約に基づいて老齢給付金として支給される一時金です。つまりiDeCoや企業型DCの一時金として支払われた退職手当等については、同じ申告書でも保存期間が3年長くなります。前節で触れたE欄の「老齢給付金」の丸が、この分岐と直結しています。

3つめは「求めるまでの間」です。税務署長が提出を求めれば出すことになるので、社内に無い、という状態は許されません。保存は義務です。

会社側の実務メモeラーニングや退職金規程とは別に、退職者ごとに支給日と申告書をひも付けて保管しておくと、あとで年数を数え直さずに済みます。確定拠出年金の一時金を支払った分だけは10年の箱に入れる、という分け方が現実的です。

受け取った会社側にも1つ作業があります。施行規則77条7項です。

法第二百三条第一項の規定による申告書を受理した同項に規定する退職手当等の支払者は、当該申告書に、当該退職手当等の支払者の個人番号又は法人番号を付記するものとする。

本人が書いて出しただけでは完成していません。受け取った側が自社の法人番号を書き足して、はじめて様式が埋まります。

電子で出す・マイナンバーを省く

紙でなくても構いません。所得税法203条4項は、会社が電磁的方法による記載事項の提供を適正に受けられる措置を講じているなど政令で定める要件を満たす場合に、申告書の提出に代えて記載事項を電磁的方法で提供できるとしています。同条5項は、その場合の3項の読み替えを置き、会社が提供を受けた時に税務署長へ提出したものとみなしています。住民税側も地方税法50条の7第3項・4項が同じ構造の規定を持っています。

マイナンバーについては、書かなくてよい場合があります。施行規則77条2項です。

法第二百三条第一項の規定による申告書の提出を受ける同項の退職手当等の支払者(次項及び第四項において「退職手当等の支払者」という。)が、当該申告書に記載されるべき当該申告書の提出をする居住者の氏名及び個人番号その他の事項を記載した帳簿(当該申告書の提出の前にその居住者から法第百九十八条第四項各号(給与所得者の源泉徴収に関する申告書の提出時期等の特例)に掲げる申告書の提出を受けて作成されたものに限る。)を備えているときは、その居住者は、前項第一号の規定にかかわらず、当該退職手当等の支払者に提出する法第二百三条第一項の規定による申告書には、当該帳簿に記載されている個人番号の記載を要しないものとする。

会社が所定の帳簿を備えているときは、本人はマイナンバーを書かなくてよい、という仕組みです。ただし条件が細かく、その帳簿はこの申告書を受け取る前に、扶養控除等申告書などの提出を受けて作られたものに限られます。退職時に慌てて作った帳簿では要件を満たしません。この扱いを使えるかどうかは会社側の準備で決まるので、本人の側から「書かなくてよいはず」と決めることはできません。同条2項ただし書は、申告書に書かれるべき氏名や番号が帳簿と違うときは省略できないとしています。

よくある質問

Q. 退職金をもらう前に出し忘れました。もう間に合いませんか?

A. 20.42%の源泉徴収は避けられませんが、税金として取られたままにはなりません。所得税法201条3項が20%の源泉徴収を定めているのは「その支払を受ける時までに」提出していない場合なので、支払が済んだ後に会社へ出しても、その支払についての源泉徴収額は変わりません。取り戻すには自分で確定申告をします。退職所得は分離課税ですが、確定申告書に退職所得の金額と源泉徴収された税額を記載すれば、退職所得控除と2分の1を適用した正しい税額との差が還付されます。還付のための申告は、その年の翌年1月1日から5年以内であればできます。会社に頼んで源泉徴収をやり直してもらう方法ではない、という点だけ注意してください。

Q. 同じ年に2社から退職金をもらいます。2枚出すのですか?

A. それぞれの支払者に1枚ずつ出します。2社目に出す申告書では、1社目の退職金を「支払済みの他の退職手当等」として書きます。所得税法施行規則77条1項4号が、その支払者の氏名または名称、そこで徴収された所得税の額、支払を受けた年月日を記載事項としています。あわせて所得税法203条1項後段により、1社目の退職所得の源泉徴収票を添付しなければなりません。写しでも構いません。2社目の源泉徴収税額は、両方を合計して計算した税額から1社目で徴収された額を差し引いた残額になります(所得税法201条1項2号)。この差し引きは申告書を出した場合の扱いなので、出さなければ2社目は支払額に20.42%を掛けた額になります。

Q. 前に受け取ったiDeCoの一時金は、いつまで書く必要がありますか?

A. 令和8年1月1日以後に支払を受けた確定拠出年金の老齢給付金一時金であれば、国税庁の書き方は前年以前9年内までを⑥欄に書くとしています。従来の4年内より長い窓です。逆に、本年中に確定拠出年金の老齢給付金一時金を受け取る場合は、前年以前19年内に受け取った退職手当等を書きます。どちらに当たるかで書く範囲が変わるので、先に、今回もらうのが確定拠出年金の一時金なのか会社の退職金なのかを確かめてください。なお令和8年1月1日前に受け取った退職手当等については、9年内の枠に該当する場合でも4年内で見ます。控除額がどう減るかの計算は、退職金の税金の記事で扱っています。

Q. 会社に提出したのに、税務署に届いていないと言われました。

A. 届いていないのが通常です。所得税法203条3項が、会社に受理された時に税務署長へ提出されたものとみなすと定めており、実際の紙は所得税法施行規則77条6項により、税務署長が提出を求めるまでの間は会社が保存することになっています。国税庁も手続の案内で、退職手当等の支払者は税務署長から特に提出を求められた場合以外は税務署への提出の必要はない、と明記しています。したがって税務署に照会しても控えは出てきません。自分の控えが必要なときは、提出前にコピーを取っておくか、会社に保存されている分の写しを依頼することになります。

Q. 引っ越したのですが、住民税はどの市町村に納めるのですか?

A. 退職手当等の支払を受けるべき日の属する年の1月1日現在の住所地の市町村です。地方税法50条の7第1項が申告書の提出先をそう定めており、課税権そのものも50条の2と328条が同じ日で決めています。3月に引っ越して6月に退職金を受け取った場合、住民税は引っ越し前の市町村に入ります。申告書に書く住所も、この判定に合うように記載します。退職後に住民票を移しても、その年の退職金にかかる住民税の帰属先は動きません。

Q. 障害者になって退職しました。申告書のどこに書きますか?

A. ②欄です。国税庁の書き方は、在職中に障害者となったことに直接基因して退職した人は「障害」を丸で囲み、括弧内に障害の状態や身体障害者手帳等の交付年月日等を記載するとしています。この記載は所得税法203条1項4号が求める記載事項で、30条6項3号に当たるかどうかとその事実を書く欄です。該当すると退職所得控除額に100万円が加算されます。②欄にはもう1つ、その年1月1日現在で生活保護法による生活扶助を受けているかどうかの有無を丸で囲む部分があります。こちらは住民税側で使う情報です。

Q. パートやアルバイトにも退職金を出しました。申告書は要りますか?

A. 退職手当等として支払うのであれば、雇用形態にかかわらず必要です。所得税法203条1項の対象は「国内において退職手当等の支払を受ける居住者」で、正社員に限る文言はありません。対象外になるのは、同条2項が指す200条の場合、すなわち常時2人以下の家事使用人のみに給与を支払う者が支払う退職手当等だけです。少額であっても、申告書が無ければ201条3項により支払額の20.42%を源泉徴収することになります。20万円の退職金なら40,840円です。額が小さいときほど手続を省きたくなりますが、省くと本人の手取りが減ります。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の記載方法や還付の可否については、所轄の税務署または税理士にご確認ください。

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