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国民健康保険料はどう決まるか — 令和8年度から4区分になり、上限は合計113万円

結論から言うと、国民健康保険料は「全国一律に政令で決まっている部分」と「自治体が条例で決める部分」の二層構造です。「国保料は自治体ごとに違う」とよく言われますが、違うのは主に料率であって、賦課の区分・賦課限度額・軽減の判定基準は政令が全国共通で決めています。この切り分けは国民健康保険法81条が「政令で定める基準に従つて条例又は規約で定める」と書いていることに由来します。

そして令和8年度は、この政令側が大きく変わりました。従来3つだった賦課区分に「子ども・子育て支援納付金賦課額」が加わって4区分になり、賦課限度額は67万円・26万円・17万円・3万円の合計113万円になっています。基礎賦課額の限度が66万円だと書いている解説はすでに古い数字です。

この記事では、実際にいくらになるかの試算ではなく、どの数字が全国共通で、どこから先が自治体の裁量なのかを条文で確かめます。とくに、軽減の判定に使う所得が所得税の所得と計算が違うこと、世帯主が国保に入っていなくてもその所得が判定に入ること、そして「保険料」の自治体と「保険税」の自治体では遡って請求される年数が2年と5年で変わることは、実務で結論が変わる論点です。自分の自治体の料率を当てはめた金額の試算は国民健康保険料 計算機が担当します。

「保険料」か「保険税」かで、遡られる年数が2年と5年に変わる

最初に、多くの解説が触れないところから始めます。国民健康保険で市町村が徴収するお金には、法律上まったく別の2つの根拠があります。国民健康保険法に基づく「保険料」と、地方税法に基づく「国民健康保険税」です。どちらを採るかは市町村が選びます。

市町村は、当該市町村の国民健康保険に関する特別会計において負担する国民健康保険事業費納付金の納付に要する費用……その他の国民健康保険事業に要する費用に充てるため、被保険者の属する世帯の世帯主(当該市町村の区域内に住所を有する世帯主に限る。)から保険料を徴収しなければならない。

ただし、地方税法の規定により国民健康保険税を課するときは、この限りでない。

(国民健康保険法76条1項)

この「ただし書き」が分岐点です。地方税法703条の4を使って税として課すことを選んだ市町村では、国民健康保険法の徴収規定は適用されません。納付書に書かれている名前が「国民健康保険料」なのか「国民健康保険税」なのかは、この選択の結果です。

そして、名前が違うだけではありません。時効と遡及の期間が変わります。

保険料その他この法律の規定による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によつて消滅する。

(国民健康保険法110条1項)

地方団体の徴収金の徴収を目的とする地方団体の権利……は、法定納期限……の翌日から起算して五年間行使しないことによつて、時効により消滅する。

(地方税法18条1項)

賦課決定そのものの期間制限も同じ形で分かれています。保険料は「当該年度における最初の保険料の納期の翌日から起算して二年を経過した日以後においては、することができない」(国民健康保険法110条の2第1項)。税は「法定納期限……の翌日から起算して五年を経過した日以後においては、することができない」(地方税法17条の5第1項)。

同じ国保のお金でも、根拠法が違えば期間が違う
項目保険料の市町村保険税の市町村
根拠国民健康保険法76条地方税法703条の4
徴収権の消滅時効2年(法110条1項)5年(地方税法18条1項)
賦課決定・更正の期間制限2年(法110条の2第1項)5年(地方税法17条の5第1項)
実務でどう効くか

所得の修正申告をして国保の負担が遡って増える場合、保険料の自治体なら原則2年ぶんまでしか賦課決定できませんが、保険税の自治体では5年ぶんが対象になり得ます。逆に、払い過ぎていた場合に還付を求められる期間も同じ構造で変わります。「同じ制度なのに隣の市と扱いが違う」という話の多くは、ここが原因です。自分の自治体がどちらかは、納付書と条例の名称で判別できます。

なお、この2つは徴収の入口が違うだけで、賦課額の中身の作りはほぼ同じです。地方税法703条の4第2項も、後で見る国民健康保険法施行令29条の7と同じ4区分(基礎課税額・後期高齢者支援金等課税額・介護納付金課税額・子ども・子育て支援納付金課税額)で課税額を組み立てています。以下では保険料側の条文で説明しますが、税側にも対応する規定があります。

令和8年度から賦課は4区分になった

国民健康保険料はひとつの料率で計算される単一の保険料ではありません。用途の違う複数の「賦課額」を足し合わせたものです。令和8年度の現行政令は、次の4つを挙げています。

市町村による法第七十六条第一項の保険料の賦課額は、次に掲げる額の合算額とする。

一 ……基礎賦課額……

二 ……後期高齢者支援金等賦課額……

三 ……介護納付金賦課額……

四 ……子ども・子育て支援納付金賦課額……

(国民健康保険法施行令29条の7第1項)

4号の子ども・子育て支援納付金賦課額が、令和8年度から加わった区分です。子ども・子育て支援法に基づく子ども・子育て支援納付金の財源を、医療保険料に上乗せして集める仕組みで、国民健康保険法76条1項の費用の列挙にも「子ども・子育て支援納付金」が入っています。

4区分は、それぞれかかる人の範囲が違います。とくに介護納付金賦課額は全員にかかるわけではありません。

前二項の規定による保険料のうち、介護納付金の納付に要する費用に充てるための保険料は、介護保険法第九条第二号に規定する被保険者である被保険者について賦課するものとする。

(国民健康保険法76条3項)

介護保険法9条2号の被保険者とは、いわゆる第2号被保険者、つまり40歳以上65歳未満の人です。世帯の中で40歳になった人がいる年度から介護分が乗り、65歳になると国保の介護分は外れて介護保険料を別に払う形に変わります。年度の途中で保険料が上がったり下がったりする原因の多くはこれです。

令和8年度の賦課は4区分。限度額は区分ごとに別々に当たる 区分(施行令29条の7第1項) 賦課限度額 かかる人 1号 基礎賦課額 医療給付そのものの財源 67万円 被保険者全員 2号 後期高齢者支援金等賦課額 後期高齢者医療への支援金 26万円 被保険者全員 3号 介護納付金賦課額 介護保険への納付金 17万円 40歳以上65歳未満 だけ(法76条3項) 4号 子ども・子育て支援納付金賦課額 令和8年度から加わった区分 3万円 均等割は18歳未満 が全額減額(6項10号) 4区分の限度額の合計 113万円 1世帯あたりの年額 限度額は「合計113万円」で頭打ちになるのではなく、区分ごとに独立して当たる。 基礎が67万円に張り付いた後も、支援金分・介護分・子育て支援分はそれぞれ上限まで増え続ける。
令和8年度の賦課区分と賦課限度額。金額は国民健康保険法施行令29条の7第2項9号・第3項8号・第4項8号・第5項10号による。

賦課限度額は区分ごとに別々に当たる(合計113万円)

賦課限度額は、所得がどれだけ高くてもこれ以上は取らないという上限です。ここは政令が全国一律に決めており、自治体が独自に引き上げることはできません。4つの条文はいずれも同じ言い回しで書かれています。

第三号の基礎賦課額は、六十七万円を超えることができないものであること。

(国民健康保険法施行令29条の7第2項9号)

第三号の後期高齢者支援金等賦課額は、二十六万円を超えることができないものであること。

(同条3項8号)

第三号の介護納付金賦課額は、十七万円を超えることができないものであること。

(同条4項8号)

第三号の子ども・子育て支援納付金賦課額は、三万円を超えることができないものであること。

(同条5項10号)

ここで実務上いちばん誤解されるのが、この上限が「合計113万円」という1本の天井ではないことです。条文はそれぞれの区分について別々に「超えることができない」と書いています。つまり、

66万円と書いてある解説に注意

基礎賦課額の限度額は段階的に引き上げられてきた経緯があり、令和8年8月1日時点の現行政令は67万円です。66万円としている記事は改正前の数字です。年度が変わる時期の解説記事は、根拠にしている政令の版がいつのものかを確かめる必要があります。この記事の数字はいずれもe-Gov法令API v2で取得した令和8年8月1日施行の版によります。

全国一律の部分と、自治体が決める部分

「国保料は自治体ごとに違う」は正しいのですが、何が違って何が同じかを分けておかないと、他の自治体向けの解説を読んで自分のケースを誤ります。切り分けの根拠は次の条文です。

第七十六条から前条までに規定するもののほか、賦課額、保険料率、納期、減額賦課その他保険料の賦課及び徴収等に関する事項は、政令で定める基準に従つて条例又は規約で定める

(国民健康保険法81条)

「政令で定める基準に従つて」条例で定める、という二段構えです。政令=国民健康保険法施行令29条の7が枠を決め、その枠の中で市町村が条例を作ります。

全国共通のものと、自治体ごとに違うもの
内容根拠
全国共通賦課の4区分施行令29条の7第1項
全国共通賦課限度額(67/26/17/3万円)同条2項9号・3項8号・4項8号・5項10号
全国共通軽減の判定所得の計算方法と、判定に使う43万円・31万円・57万円同条6項1号〜3号
全国共通賦課期日=当該年度の初日国民健康保険法76条の2
自治体ごと所得割・均等割・平等割・資産割の料率と金額条例(法81条の委任)
自治体ごと賦課方式(平等割や資産割を課すかどうか)条例
自治体ごと納期の回数と時期条例
自治体ごと保険料か保険税か法76条1項ただし書き/地方税法703条の4

賦課期日が全国共通で「当該年度の初日」=4月1日である点は、実務でよく効きます。

市町村による前条第一項の保険料の賦課期日は、当該年度の初日とする。

(国民健康保険法76条の2)

年度の途中で加入・脱退があった場合は月割で調整されますが、その年度の保険料を組み立てる基準日は4月1日です。前年の所得を基礎にするため、退職した翌年度の保険料が高く出るのはこの仕組みによります。

7割・5割・2割の軽減判定は、所得税の所得と計算が違う

所得が低い世帯は、均等割と平等割が減額されます。よく「7割・5割・2割軽減」と呼ばれるもので、判定の基準も政令が全国一律に決めています。

前二号の規定に基づき減額する額は、当該市町村の当該年度分の保険料に係る当該被保険者均等割額及び十八歳以上被保険者均等割額又は世帯別平等割額にイからハまでに掲げる世帯の区分に応じ、それぞれイからハまでに定める割合を乗じて得た額であること。

イ ……地方税法第三百十四条の二第二項第一号に定める金額……を超えない世帯 十分の七

ロ ……当該世帯に属する被保険者の数と特定同一世帯所属者の数の合計数に三十一万円を乗じて得た金額を加算した金額を超えない世帯(イに掲げる世帯を除く。) 十分の五

ハ ……五十七万円を乗じて得た金額を加算した金額を超えない世帯(イ又はロに掲げる世帯を除く。) 十分の二

(国民健康保険法施行令29条の7第6項3号)

基準になる「地方税法314条の2第2項1号に定める金額」は43万円です。

市町村は、前年の合計所得金額が二千五百万円以下である所得割の納税義務者については、……次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める金額を控除するものとする。

一 当該納税義務者の前年の合計所得金額が二千四百万円以下である場合 四十三万円

(地方税法314条の2第2項1号)

したがって、判定のしきい値は次のように積み上がります。「被保険者等の数」は、世帯の被保険者数と特定同一世帯所属者(国保から後期高齢者医療に移った人など)の数の合計です。

軽減の判定所得のしきい値(令和8年度)
軽減割合判定所得の上限被保険者等1人の世帯3人の世帯
7割43万円43万円43万円
5割43万円+31万円×人数74万円136万円
2割43万円+57万円×人数100万円214万円

給与所得者等(給与収入55万円超の給与所得者、および公的年金等の収入が65歳未満で60万円超・65歳以上で110万円超の人)が世帯に2人以上いる場合は、43万円に「(給与所得者等の数−1)×10万円」が加算されます(同項1号)。上表はこの加算がない場合です。

軽減の判定所得(被保険者等3人の世帯の場合) 軽減割合 判定所得がこの額を超えなければ該当 3人なら 7割 43万円 (人数に関係なく一定) 43万円 5割 43万円 + 31万円 × 3人 136万円 2割 43万円 + 57万円 × 3人 214万円 判定に使う所得は所得税の所得ではない。青色事業専従者給与・事業専従者控除は「適用しない」で計算し(6項2号)、 世帯主が国保に入っていなくても、その世帯主の所得は判定に加える(6項1号)。
軽減判定のしきい値。割合と金額は国民健康保険法施行令29条の7第6項3号、43万円は地方税法314条の2第2項1号による。

専従者給与は「なかったもの」として判定される

ここが、この記事でいちばん実務に効く一段です。軽減判定に使う所得は、確定申告書に出てくる所得の金額をそのまま使うわけではありません。

前号の場合における地方税法第三百十四条の二第一項に規定する総所得金額若しくは山林所得金額又は他の所得と区分して計算される所得の金額は、同法第三百十三条第三項、第四項又は第五項の規定を適用せず、所得税法第五十七条第一項、第三項又は第四項の規定の例によらないものとして計算するものであること。

(国民健康保険法施行令29条の7第6項2号)

所得税法57条は、青色事業専従者給与(1項)、事業専従者控除(3項)、およびその控除額を専従者の給与所得に係る収入金額とみなす規定(4項)です。これらを「例によらないものとして計算する」と書かれているので、軽減判定では専従者給与を必要経費に入れない状態に戻して事業主の所得を数えます。同時に、専従者側で受け取った給与も判定所得には算入しません。

具体的には、事業所得が確定申告上は50万円でも、配偶者に専従者給与を年150万円払っていれば、軽減判定上の所得は200万円として扱われます。所得税・住民税の計算では専従者給与が効いているのに、国保の軽減判定では効かないという、ねじれた結果になります。

「所得は少ないのに軽減にならない」の典型例

個人事業主で家族に専従者給与を出している世帯は、確定申告の所得だけを見て「7割軽減に入るはず」と考えると外れます。専従者給与を戻した額で判定されるためです。同じ2号が適用を外している地方税法313条3項〜5項も、住民税側の青色事業専従者給与(3項)・事業専従者控除(4項)と、その控除額を専従者の給与収入とみなす規定(5項)です。所得税側と住民税側の両方から専従者の規定を外しているので、どちらの申告書を根拠にしても結論は変わりません。

7割・5割・2割は、実は全国一律とも言い切れない

ここまで「軽減の割合は政令が全国一律に決めている」と書いてきましたが、政令自身が例外を用意しています。

前号の規定による減額を行うことが困難であると認める市町村においては、同号の規定にかかわらず、……イ又はロに掲げる世帯の区分に応じ、それぞれイ又はロに定める割合を乗じて得た額の減額を行うことができること。

イ 前号イに掲げる世帯 十分の六  ロ 前号ロに掲げる世帯 十分の四

(国民健康保険法施行令29条の7第6項4号)

さらに5号は、それも困難な市町村について十分の五・十分の三を認めています。つまり条文上は、7割・5割の組み合わせのほかに6割・4割5割・3割という選択肢が存在します。「国保の軽減は7割5割2割」という説明は実務上ほぼ正しいものの、政令の建て付けとしては一律ではありません

世帯主の所得は、世帯主が国保でなくても判定に入る

国民健康保険料は世帯単位で計算し、世帯主が納付義務者になります。先に引いた76条1項は「被保険者の属する世帯の世帯主……から保険料を徴収しなければならない」と書いており、世帯主自身が国保の被保険者であることを要件にしていません。会社員で健康保険に入っている人や、後期高齢者医療に移った人が世帯主でも、その世帯に国保の被保険者がいれば、世帯主が保険料を納めます。これがいわゆる擬制世帯主です。

保険税を採用している市町村にも、同じ結論の規定があります。

被保険者である資格がない世帯主の属する世帯内に被保険者がある場合には、当該世帯主を第一項の被保険者である世帯主とみなして国民健康保険税を課する。

(地方税法703条の4第38項)

そして、納付義務者になるだけでは終わりません。軽減の判定所得にも、世帯主の所得が入ります。

世帯主並びに当該世帯主の世帯に属する被保険者及び特定同一世帯所属者につき算定した地方税法第三百十四条の二第一項に規定する総所得金額及び山林所得金額……の合算額が……

(国民健康保険法施行令29条の7第6項1号)

条文は「世帯主並びに当該世帯主の世帯に属する被保険者及び特定同一世帯所属者」と、世帯主を被保険者とは別に並べて書いています。つまり世帯主が国保に加入していなくても、その所得は判定の合算額に入ります。

親と同居して国保に入っている人が引っかかる点

たとえば会社員の親(健康保険)と同居し、自分だけが国保という場合、自分の所得がどれだけ低くても、世帯主である親の所得が高ければ軽減は受けられません。「自分は無収入なのに7割軽減にならない」という相談の多くはこれです。世帯を分けるかどうかは住民票上の事実の問題であり、保険料を下げる目的だけで判断できるものではありません。取扱いは市区町村の国民健康保険窓口にご確認ください。

産前産後・未就学児・18歳未満の減額は重ねがけされる

所得に関係なく適用される減額も、政令が全国一律で定めています。しかも所得による軽減を適用した後の額にさらに乗るという構造になっています。

未就学児は均等割が半額(6項6号・7号)

世帯に六歳に達する日以後の最初の三月三十一日以前である被保険者がある場合においては、当該世帯の世帯主に対して賦課する被保険者均等割額(……前各号に規定する基準に従い当該被保険者均等割額を減額するものとした場合にあつては、その減額後の被保険者均等割額……)を減額するものであること。

(国民健康保険法施行令29条の7第6項6号)

減額する額は「当該被保険者均等割額に十分の五を乗じて得た額」(同項7号)です。括弧書きの「その減額後の」が重要で、7割軽減が適用されている世帯では、残った3割部分にさらに2分の1が乗ります。結果として未就学児の均等割は元の額の15%まで下がります。

18歳未満は子ども・子育て支援納付金分の均等割が全額(6項10号・11号)

令和8年度に加わった4号の区分には、独自の減額があります。

世帯に十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日以前である被保険者(以下この号において「十八歳未満被保険者」という。)がある場合においては、当該世帯の世帯主に対して賦課する被保険者均等割額(十八歳未満被保険者につき前項第六号の規定に基づき算定した被保険者均等割額……)を減額するものであること。

(国民健康保険法施行令29条の7第6項10号)

そして11号は「前号の規定に基づき減額する額は、当該市町村の当該年度分の保険料に係る当該被保険者均等割額であること」とだけ書いています。割合を乗じる文言がないので、全額(10割)減額です。「前項第六号」は子ども・子育て支援納付金賦課額の均等割を指すため、子育て支援分の均等割は18歳未満にはかかりません。政令の中に「十八歳以上被保険者均等割額」という新しい用語が登場するのは、この区分けのためです。

産前産後は所得割まで免除される(6項8号・9号)

産前産後の免除は、均等割だけの話だと説明されることが多いのですが、条文は所得割額も対象に挙げています

世帯に出産する予定の被保険者又は出産した被保険者……がある場合においては、当該世帯の世帯主に対して賦課する所得割額……並びに被保険者均等割額及び十八歳以上被保険者均等割額……を減額するものであること。

(国民健康保険法施行令29条の7第6項8号)

前号の規定に基づき減額する額は、……出産被保険者の出産の予定日(厚生労働省令で定める場合には、出産の日)の属する月(以下この号において「出産予定月」という。)の前月(多胎妊娠の場合には、三月前)から出産予定月の翌々月までの期間に係る額を基準として算定した額であること。

(同項9号)

産前産後の免除期間
始まり終わり期間
単胎出産予定月の前月出産予定月の翌々月4か月
多胎妊娠出産予定月の3月前出産予定月の翌々月6か月

免除の対象は世帯全体ではなく出産する被保険者本人に係る部分です。所得割まで含むため、働きながら出産する人にとっては均等割だけの場合より効果が大きくなります。

非自発的な離職なら、給与所得を30%とみなす

会社都合で退職して国保に入る場合、前年の給与所得がそのまま保険料の基礎になると負担が跳ね上がります。これに対応する特例が、施行令に独立した条として置かれています。

……当該給与所得については、同条第二項の規定によつて計算した金額の百分の三十に相当する金額によるものとする。

(国民健康保険法施行令29条の7の2第1項)

給与所得を30%として、所得割の計算にも軽減判定にも使います。給与所得400万円なら120万円として扱われるので、所得割が下がるだけでなく、軽減の判定基準を下回って均等割の軽減まで届くことがあります。

対象者は次のように限定されています。

前項に規定する特例対象被保険者等とは、……次の各号のいずれかに該当する者(これらの者の雇用保険法……第十四条第二項第一号に規定する受給資格……に係る同法第四条第二項に規定する離職の日の翌日の属する年度の翌年度の末日までの間にある者に限る。)をいう。

一 雇用保険法第二十三条第二項に規定する特定受給資格者

二 雇用保険法第十三条第三項に規定する特定理由離職者

(同条2項)

ポイントは3つです。

国民健康保険料 計算機で自分の自治体の料率を当てはめて試算する

よくある質問

国民健康保険料の上限は113万円ですか、それとも96万円ですか。

どちらもあり得ます。賦課限度額は区分ごとに別々に定められており、基礎賦課額67万円(施行令29条の7第2項9号)、後期高齢者支援金等賦課額26万円(同条3項8号)、介護納付金賦課額17万円(同条4項8号)、子ども・子育て支援納付金賦課額3万円(同条5項10号)です。介護納付金賦課額は国民健康保険法76条3項により介護保険法9条2号の被保険者(40歳以上65歳未満)についてのみ賦課されるため、世帯にその年齢層がいなければ介護分の17万円は乗らず、上限は96万円になります。40歳以上65歳未満の被保険者がいる世帯では113万円が上限です。

確定申告の所得は少ないのに、軽減の対象になりませんでした。なぜですか。

軽減判定の所得は所得税の所得と同じではありません。施行令29条の7第6項2号は、地方税法313条3項〜5項を適用せず、所得税法57条1項・3項・4項の例によらないものとして計算すると定めています。所得税法57条は青色事業専従者給与(1項)と事業専従者控除(3項)、およびその控除額を専従者の給与収入とみなす規定(4項)であり、地方税法313条3項〜5項も住民税側の同じ内容です。したがって専従者給与を支払っていても必要経費に入れない状態で判定され、専従者が受け取った側も判定所得には入りません。加えて同項1号により、世帯主本人が国保の被保険者でなくてもその所得が合算されます。判定の根拠となる所得の内訳は市区町村の国民健康保険窓口で確認できます。

「国民健康保険料」と「国民健康保険税」は何が違いますか。

根拠法が違います。保険料は国民健康保険法76条1項、保険税は地方税法703条の4に基づき、どちらを採用するかは市町村が選びます。76条1項ただし書きが「地方税法の規定により国民健康保険税を課するときは、この限りでない」として切り分けています。実務上の違いが出るのは期間で、徴収権の消滅時効は保険料が2年(法110条1項)、保険税が5年(地方税法18条1項)です。賦課決定・更正の期間制限も保険料は2年(法110条の2第1項)、税は5年(地方税法17条の5第1項)です。賦課額の区分の作りは両者ともほぼ同じです。

未就学児の均等割が半額になるのは、軽減を受けている世帯でも同じですか。

施行令29条の7第6項6号の括弧書きは、対象となる被保険者均等割額を「前各号に規定する基準に従い当該被保険者均等割額を減額するものとした場合にあつては、その減額後の被保険者均等割額」としています。したがって所得による7割・5割・2割の軽減を適用した後の額に対して、同項7号の十分の五が乗ります。7割軽減の世帯であれば残る3割にさらに2分の1が乗るため、一般に元の均等割額の15%相当まで下がる計算になります。

産前産後の免除は均等割だけですか。

いいえ。施行令29条の7第6項8号は、減額の対象として被保険者均等割額および十八歳以上被保険者均等割額に加えて所得割額を明記しています。期間は同項9号により、出産予定月の前月から出産予定月の翌々月までの4か月、多胎妊娠の場合は出産予定月の3月前から翌々月までの6か月です。対象は出産する被保険者本人に係る部分で、届出が必要かどうかや届出時期は市区町村により異なるため、国民健康保険窓口にご確認ください。

会社都合で退職しました。いつまで保険料が軽くなりますか。

施行令29条の7の2第2項は、対象者を雇用保険法23条2項の特定受給資格者または13条3項の特定理由離職者であって、離職の日の翌日の属する年度の翌年度の末日までの間にある者に限るとしています。したがって離職日が属する年度と、その翌年度の末日までが対象期間です。この間、同条1項により給与所得は100分の30として所得割の計算と軽減判定に用いられます。事業所得など給与以外の所得は減額されません。適用には離職票などによる届出が必要になるのが一般的で、手続は市区町村の国民健康保険窓口にご確認ください。

出典

本記事の確認範囲は、国民健康保険法76条の徴収義務と保険税との切り分け・76条の2の賦課期日・81条の条例委任・110条および110条の2の期間制限、同法施行令29条の7第1項の賦課区分、同条2項9号・3項8号・4項8号・5項10号の賦課限度額、同条6項1号〜11号の減額賦課の基準、同令29条の7の2の特例対象被保険者等、地方税法17条の5・18条の期間制限、314条の2第2項の控除額、703条の4第1項・第2項・第38項の記載です。各市町村の条例が定める所得割率・均等割額・平等割額・資産割率、賦課方式の選択、納期、減免(法77条)の要件、特別徴収の対象と方法、産前産後免除や非自発的失業者軽減の届出手続、および実際の保険料額は確認していません。都道府県が定める国民健康保険事業費納付金の算定方法、保険者努力支援制度、法定外繰入の状況も本記事の範囲外です。

この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の保険料額と軽減の適用可否は、お住まいの市区町村の条例、世帯構成、前年中の所得の内訳などの具体的な事実によって決まります。保険料の算定・軽減・減免・届出については市区町村の国民健康保険窓口へ、所得の計算については税務署または税理士へご確認ください。

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