賦課区分が3つから4つになった
国民健康保険料(税)は、いくつかの賦課区分ごとに保険料を計算して合算します。長らく医療分・後期高齢者支援金等分・介護分の3つでしたが、令和8年度から「子ども・子育て支援納付金賦課額」が加わって4つになりました(国民健康保険法施行令29条の7第1項1号〜4号)。
それぞれの区分について所得割(所得に率を掛ける)・均等割(被保険者1人あたり)・平等割(1世帯あたり)を計算します。ただし介護分は40歳以上65歳未満の被保険者だけが負担し(同項3号)、子ども・子育て支援金分の均等割は18歳以上の被保険者だけが負担します(同条5項3号)。区分ごとに「誰が負担するか」が違うのが、この制度のいちばん間違えやすいところです。
料率に全国共通の値は存在しない
施行令29条の7が全国共通で定めているのは賦課の組み立て方であって、料率そのものではありません。所得割率・均等割額・平等割額は市町村が条例で定めます。都道府県単位化の後も、賦課と徴収を行うのは市町村です。平等割をそもそも採らない市町村もあります(施行令は所得割・被保険者均等割・世帯別平等割・資産割の組み合わせ方を複数認めています)。
だからこの計算機は、料率を入力してもらう形にしています。それらしい平均値を既定値に置けば見た目は親切ですが、出てくる金額はどの市町村のものでもない数字です。保険料の計算機でいちばん困る誤り方は「もっともらしい額が出るが、納付通知書と合わない」ことなので、空欄のまま計算ボタンを押した場合は金額を出さずに入力を促します。
賦課限度額は区分ごとに個別にかかる
賦課限度額は医療分67万円・後期高齢者支援金等分26万円・介護分17万円・子ども・子育て支援金分3万円です(施行令29条の7第2項9号・3項・4項・5項)。合計すると113万円になりますが、条文に「113万円」という数字があるわけではありません。あくまで4つの上限を足しただけの数です。
この違いは実際の金額に出ます。たとえば所得が高く医療分だけが67万円に張り付き、他の3区分は上限に届いていない世帯を考えると、区分ごとに上限を当てる正しい計算では医療分の超過分だけが切り落とされます。ところが「合計に113万円の上限を1本かける」実装では、合計が113万円に届いていないので上限がまったく働かず、保険料を過大に出します。上限に張り付くのは高所得世帯なので、金額の差も大きくなります。
軽減されるのは均等割と平等割だけ
世帯の所得が低い場合、保険料が7割・5割・2割軽減されます(施行令29条の7第6項1号〜3号)。ここで急所になるのは、軽減されるのは均等割額と世帯別平等割額だけで、所得割額は軽減されないことです。所得割まで7割引にする実装は、低所得世帯の保険料を大きく過小に出します。
判定は次の式で行います。基準額は43万円+(給与所得者等の数−1)×10万円で、この加算は給与所得者等が2人以上のときだけ効きます(0人でも1人でも加算はゼロ)。
| 軽減割合 | 判定所得がこの額以下なら該当 |
|---|---|
| 7割軽減 | 基準額 |
| 5割軽減 | 基準額 + 31万円 × (被保険者数+特定同一世帯所属者数) |
| 2割軽減 | 基準額 + 57万円 × (被保険者数+特定同一世帯所属者数) |
判定所得は基礎控除を引く「前」
軽減判定に使う所得は基礎控除43万円を引く前の総所得金額等です(施行令29条の7第6項1号)。一方で所得割の課税標準は、同じ43万円を引いた後の額です(同条2項4号)。同じ43万円という数字が、別の役割で2回出てくるのがこの制度の罠で、判定に控除後の額を渡すと軽減が1段階ずつ甘い方へずれます。
もう1つの急所は誰の所得を数えるかです。判定所得には、被保険者本人だけでなく世帯主の所得と特定同一世帯所属者の所得が入ります。世帯主が国保に加入していない(=擬制世帯主の)場合でも、その所得は判定に算入されます。被保険者だけで判定すると、軽減が本来より甘く出ます。
なお、この43万円は地方税法314条の2第2項1号の基礎控除額です。所得税の基礎控除(令和7年分以降は58万円)とは別物なので取り違えないでください。
未就学児と18歳未満の減額
子どもに関する減額は2つあって、対象も割合も違います。
- 未就学児(6歳に達する日以後の最初の3月31日以前)— 均等割が5割減額(施行令29条の7第6項6号・7号)。★7割・5割・2割の軽減を当てた「後」の額に対して5割を減額します。条文が「その減額後の被保険者均等割額」と明記しているためで、順序を逆にすると7割軽減世帯の未就学児で減額が過大になります。
- 18歳未満(18歳に達する日以後の最初の3月31日以前)— 子ども・子育て支援金分の均等割が全額減額(同項10号・11号)。この区分の均等割はそもそも「十八歳以上被保険者均等割額」として18歳以上に賦課される建て付けなので(同条5項3号)、結果としてこの区分の均等割を負担するのは18歳以上だけになります。
どちらも均等割の話で、所得割は年齢に関係なく全員が対象です。アルバイト収入のある高校生など、所得のある18歳未満の被保険者には、子ども・子育て支援金分の所得割もかかります。
このツールが計算しない範囲
保険料は最終的に市町村が決定します。このツールは施行令29条の7の本文どおりの計算を行うもので、次のものは計算に入れていません。当てはまるかたは、出てくる金額が実際の納付額と変わります。「およそ当たっているはず」と黙って混ぜるより、入れていないものを名前で挙げるほうが役に立つと考えています。
- 産前産後期間の免除(第6項8号・9号)— 出産予定月の前月から翌々月までの4か月分(多胎妊娠は出産予定月の3月前から翌々月までの6か月分)。★他の減額と違って所得割も対象になります。
- 非自発的失業者の軽減— 倒産・解雇などで離職したかたの給与所得を100分の30とみなす措置。
- 資産割(第2項2号イ)— 固定資産税額に応じた賦課。採用している市町村は少数です。
- 市町村の条例による独自の減免(国民健康保険法77条)— 災害・所得の激減などに応じた減免。
- 年度途中の資格取得・喪失にともなう月割— このツールは年額(12か月分)を出します。
- 期別の割り振り— 実際の納付は8〜10期などに分割され、1期目だけ端数を寄せる市町村が多くあります。
- 保険料と保険税の別— 賦課の枠組みは同じですが、根拠が国民健康保険法76条(保険料)か地方税法703条の4(保険税)かで、時効や滞納処分の扱いが変わります。金額の計算はどちらも同じ形です。
★公的年金を受けているかたは、判定所得の取り扱いがこのツールと異なる場合があります。確定した金額は必ず納付通知書か市町村の窓口でご確認ください。
よくある質問
Q. 国民健康保険料は全国共通ではないのですか?
A. 共通なのは「組み立て方」だけで、料率そのものは市町村がそれぞれ条例で定めます。所得割率・均等割額・平等割額は市町村ごとに違い、平等割を採らない市町村もあります。したがって全国共通の料率という数字は存在しません。この計算機が料率を入力してもらう形になっているのはそのためで、推測の数字で埋めると、それらしい金額が出るのに実際の納付額と合わないという最も困る誤り方をします。料率は納付通知書か市町村のサイトに載っています。
Q. 令和8年度から何が変わったのですか?
A. 賦課区分が3つから4つになりました。従来の医療分(基礎賦課額・限度額67万円)・後期高齢者支援金等分(26万円)・介護分(17万円)に加えて、子ども・子育て支援納付金賦課額(3万円)が新設されています(国民健康保険法施行令29条の7第1項4号)。限度額の合計は113万円です。世に出回っている解説や計算機は3区分のままのものが多く、その場合は新設分をまるごと落とすことになります。
Q. 子どもの分の保険料はどうなりますか?
A. 減額が2つあります。未就学児(6歳に達する日以後の最初の3月31日以前)は、医療分・後期高齢者支援金等分の均等割が5割減額されます(施行令29条の7第6項6号)。7割・5割・2割の軽減に該当する世帯では、その軽減を当てた「後」の額に対して5割を減額します。もう1つは子ども・子育て支援金分で、この区分の均等割は18歳以上の被保険者にだけ賦課され、18歳未満の分は全額減額されます(同項10号・11号、同条5項3号)。所得割は年齢に関係なく全員が対象です。
Q. 軽減の判定に使う所得は、確定申告の課税所得ですか?
A. 違います。軽減判定に使うのは基礎控除43万円を引く「前」の総所得金額等で、社会保険料控除や扶養控除といった所得控除も引きません(施行令29条の7第6項1号)。一方で所得割の課税標準は基礎控除43万円を引いた「後」の額です。同じ43万円という数字が別の役割で2回出てくるため、判定に控除後の額を渡すと軽減が1段階ずつ甘い方へずれます。また判定所得には世帯主(国保に入っていない擬制世帯主でも)と特定同一世帯所属者の所得が加わります。
Q. 賦課限度額の113万円を超えたら、そこで頭打ちですか?
A. 113万円という上限が1本あるのではなく、医療分67万円・後期高齢者支援金等分26万円・介護分17万円・子ども・子育て支援金分3万円という上限が区分ごとに個別にかかります。113万円はその4つを足した数字にすぎず、条文にその金額があるわけではありません。実際には医療分だけが上限に張り付いて他の区分は届いていない、という世帯がふつうに生じます。合計にだけ上限を当てる実装は、そうした世帯で保険料を過大に出します。
出典
- 国民健康保険法施行令(昭和33年政令第362号) — 29条の7(市町村の保険料の賦課に関する基準)。1項1号〜4号(賦課4区分)/2項4号(基礎控除後の総所得金額等)・2項9号(医療分67万円)/3項(後期高齢者支援金等分26万円)/4項(介護分17万円)/5項(子ども・子育て支援金分3万円)・5項3号(十八歳以上被保険者均等割額)/6項1号〜3号(軽減の判定と7割・5割・2割)・6項6号7号(未就学児の5割減額)・6項8号9号(産前産後の免除)・6項10号11号(18歳未満の子ども・子育て支援金分均等割の全額減額)
- 地方税法(昭和25年法律第226号) — 314条の2第2項1号(基礎控除43万円)/703条の4・703条の5(国民健康保険税の場合の賦課と減額)
- 国民健康保険法(昭和33年法律第192号) — 76条(保険料)/77条(条例による減免)
条文は e-Gov 法令API v2 で取得した現行版を逐語で確認しています(施行令=2026年6月25日施行版/地方税法=2026年6月5日施行版)。★現行版かどうかは施行日で判定しています(API の current_revision_status は現行版でも PreviousEnforced を返すため)。料率は市町村の条例によりますので、確定した金額は納付通知書または市町村の窓口でご確認ください。