税金・経理・補助金ツールズ

業務委託の確定申告【令和8年分】源泉徴収の対象と税率・所得区分

所得区分は契約名ではなく実態で判断します。給与に当たる場合は給与所得として扱います。先に要点です。

この記事は、報酬を受け取る側に立って、令和8年分(2026年1月〜12月の所得)の条文で順に確かめます。申告義務の正確な要件は早見表の下に、副業の要件は会社員の副業の節にあります。

報酬を支払う側で外注費と給与の区分に迷っている場合は、外注費と給与の区分が対応する記事です。制度そのもの(誰が・何から・いつ引いて、どこへ納めるのか)は源泉徴収とはにまとめています。

受け取る側がやることは4つ — 令和8年分の早見表

業務委託で報酬を受け取る人がその年に確かめることは、突き詰めると「所得の区分」「経費」「申告と納税」「保険料」の4つです。金額はすべて令和8年分(住民税と保険料は令和8年度・令和9年度)を基準にしています。下の表は、その4つを9つの論点に分けたものです。

論点令和8年分の結論根拠
申告義務の線所得・所得控除・税額を確認し、申告不要制度も判定する(下の補足)所得税法120条1項・86条、措置法41条の16の2、国税通則法118条1項・119条1項
源泉徴収の対象204条1項の居住者への国内の対象報酬。給与・退職所得や支払者による除外は別に確認所得税法204条1項、同施行令320条
源泉徴収の税率報酬の種類・金額で異なる。原稿料の税率は下の号別表で確認する所得税法205条1号・2号、復興財確法13条・28条2項
支払調書本人への交付義務は無い。届かなくても自分の記録で申告する所得税法225条1項3号・2項
事業所得か雑所得か帳簿書類を保存していれば社会通念で判定。保存が無く収入300万円以下なら業務に係る雑所得所得税法27条1項・35条1項、所得税基本通達35-2
青色申告特別控除事業所得は承認・記帳等の要件により控除。業務に係る雑所得は対象外所得税法143条、措置法25条の2
開業届の期限国内で事業所得等を生ずべき事業を令和8年に開始した通常の居住者は、令和9年3月15日まで所得税法229条、令和5年法律第3号附則10条
消費税基準期間(個人は前々年)の課税売上高1,000万円以下は免税の基本条件ですが、課税選択・特定期間などの例外があります。ただしインボイス登録者は除かれる消費税法9条1項
国民年金保険料通常保険料は令和8年度で月17,920円。控除はその年の実払額等で判定日本年金機構、所得税法74条

申告義務は所得だけでは決まりません。所得控除後の所得から計算した税額と配当控除を比較するのが基本です。控除しきれない外国税額控除・源泉税・予納税額がある場合の除外や、給与等の申告不要制度もあります(所得税法120条・121条)。

この9行のうち、実務でいちばん結論がひっくり返るのは2行目です。源泉徴収の要否は、報酬が204条1項の列挙に当たるかに加え、同条2項の支払者等に関する適用除外も確認して判定します。次の節で、その列挙を条文から順に見ます。

源泉徴収は報酬の内容と支払者で判断する

源泉徴収の要否は契約書の表題ではなく、報酬の内容と支払者の条件で判断します。その対象を決めているのが所得税法204条1項です。給与・退職所得に該当する報酬は、各所得の規定で源泉徴収の要否を判定します(204条2項1号)。

同条1項の第1号から第8号までの8つが対象で、これは例示ではなく限定列挙です。号ごとに、業務委託でよく出てくる仕事に当てはめると次のようになります。政令で定めるものは所得税法施行令320条が具体的に書いており、そこまで含めた範囲です。

次は、居住者に国内で支払う報酬の代表例です。給与・退職所得は別の源泉徴収規定で判定し、支払者による除外と少額謝金等の例外は下の注で確認します。

号対象の代表例業務委託での例税率(205条)
1号1号の対象と非徴収区分は国税庁資料の表・注記で確認ライティング、イラスト、ロゴやバナーのデザイン、翻訳、セミナー講師、オンライン講座原稿料等の税額・少額非徴収区分は国税庁資料で確認
2号弁護士・税理士・司法書士等の業務報酬弁護士・税理士への依頼、中小企業診断士としてのコンサルティング司法書士等は所定額控除後に課税。その他は下の注の二段階税率
3号医療情報基盤・診療報酬審査支払機構からの診療報酬等医療機関が受け取る診療報酬その月分から20万円を引いた残額に10.21%
4号職業野球の選手・モデル・外交員等保険や不動産の外交員、モデル外交員等は所定額控除後に課税。控除・税率は職種により異なる
5号芸能・放送関係の対象・対象外区分は国税庁資料で確認俳優、演奏家など(対象となる芸能・放送の出演等)区分別の税率は下の説明。税額・非徴収の区分は国税庁資料で確認
6号バー等の経営者・派遣事業者からのホステス等の報酬(客払いは下の注)バー等の経営者・派遣事業者が支払う接待報酬計算期間の日数・給与額による所定額控除後に課税
7号役務の提供を約することにより一時に取得する契約金で政令で定めるもの専属契約の一時金同一人への1回支払の100万円以下部分10.21%、超過部分20.42%
8号事業の広告宣伝の金品等の賞金。金品と選べない役務は除外。競馬賞金は馬主が受ける金銭に限定キャンペーンの賞金広告宣伝・競馬の区分ごとに所定額控除後に課税

205条1号の報酬は1回100万円超の部分に20.42%、同条2号の報酬等は所定額控除後に10.21%など、種類・金額で計算が異なります。原稿料の少額謝金等の主な例外も確認します。税額・非徴収の区分は国税庁資料を参照してください。

この表は代表例で、全業務の一覧ではありません。表にない名称でも204条と施行令320条に照らして内容を確認します。純粋なプログラミング、配送、清掃など、列挙された報酬に当たらないものは対象外です。Web制作のデザイン部分、外交員に当たる営業代行、税理士等の報酬、映画等の編集は対象となり得るので、業務名で一括して除外しません。

デザインと施工を一括で請け負う場合も、対価を区分してデザイン部分の源泉徴収を判定します。請求書を分けること自体が要件ではありません。デザイン部分が極めて少額の場合の扱いもあります(源泉徴収のあらまし・報酬料金等)。

「業務委託契約」という契約類型は民法にありません。民法では仕事の完成を約する請負(632条)、法律行為の委託である委任(643条)、法律行為でない事務の委託である準委任(656条)を定めています。業務委託と呼ばれる契約も、その内容に応じて判断します。「業務委託契約書」という語は印紙税法施行令にもありますが、名称だけで所得税の源泉徴収対象は決まりません。

名目ではなく報酬の性質で判断する

謝礼・材料費・車賃等の名目でも、対象報酬の性質を持てば源泉徴収を判定します(所得税基本通達204-2)。

直接払いの旅費等には別の取扱いがあります。1号・2号・4号・5号の役務提供のための旅行等で、支払者から交通機関・ホテル等に直接払い、通常必要な範囲なら徴収しなくて差し支えありません(同204-4)。

もう1つ、列挙に入っていても源泉徴収されない場合があります。204条2項2号です。

前項第一号から第五号まで並びに第七号及び第八号に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第百八十三条第一項(給与所得に係る源泉徴収義務)の規定により給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるもの

読み替えると、給与を支払わない個人、又は常時2人以下の家事使用人だけに給与を払う個人から支払われる1号から5号まで・7号・8号の報酬は、源泉徴収されないということです(6号のホステス等の報酬は3号で別に扱われます)。

一方、給与の源泉徴収義務がない個人からの原稿料は204条2項2号の適用除外に当たります。受け取る側から見ると、同じ仕事でも取引先によって手取りが変わるので、年末に源泉徴収税額を集計するときは取引先ごとに分けて数える必要があります。

原稿料などの少額謝金の例外を確認する

少額謝金の扱いは、金額だけでは決まりません。対象となる賞金・謝金と支払額、事前委嘱の取扱いは、源泉徴収のあらましの少額謝金の注記で確認します。

給与・退職所得は先に区分して別規定で確認報酬の種類と支払者の条件を確認少額謝金等の例外を確認して判定
居住者への国内の報酬についての確認順です。例外は上の注を参照してください。

報酬を受け取る側が内国法人の場合

内国法人が受け取る通常の原稿料・デザイン料・講演料や、弁護士法人への業務報酬は、個人が受け取る報酬と同じ源泉徴収の扱いにはなりません。内国法人の報酬・料金等として源泉徴収の対象に挙げられているのは、馬主である法人に国内で金銭で支払う競馬の賞金です。副賞の賞品は除きます。

ここでの説明は内国法人の報酬・料金等についてです。利子・配当や外国法人への支払は、それぞれ別の取扱いを確認します。

報酬の源泉税は前払い。年税額との差を申告で精算する

給与には年末調整という精算のしくみがありますが、報酬にはありません。204条の源泉徴収は年税額の前払いです。経費や所得控除を反映する年税額との差を申告で精算します。

以下は令和8年分の居住者の設例です。法人から国内で受ける令和8年分の通常の原稿料報酬を月25万円ずつ12回、消費税の別区分なしとします。必要経費は60万円で、青色控除65万円の全要件を満たし、他の所得・控除・税額控除・予納税はなく、社会保険料控除は実払50万円です。令和8年分の合計所得489万円以下の居住者として基礎控除104万円を使います。源泉税は支払者が納付済みで、確定申告による還付を受けるものとします。

段階金額計算
報酬の支払金額3,000,000円1年分の請求額の合計
源泉徴収された額306,300円250,000円 × 10.21% × 12回(各回100万円以下なので全額10.21%)
実際の入金2,693,700円3,000,000円 − 306,300円
事業所得2,400,000円3,000,000円 − 必要経費600,000円
青色申告特別控除後1,750,000円2,400,000円 − 650,000円
所得控除の合計1,540,000円基礎控除1,040,000円 + 社会保険料控除500,000円
課税総所得金額210,000円1,750,000円 − 1,540,000円(1,000円未満切捨て後も同額)
所得税10,500円210,000円 × 5%
復興特別所得税220円10,500円 × 2.1%(1円未満切捨て)
年税額10,720円10,500円 + 220円
申告による還付額295,580円306,300円 − 10,720円

この設例では、申告により前払いの過大額が還付されます。この報酬の設例で還付を受けるには申告が必要です。

報酬から引かれた源泉税所得・控除から年税額確定申告で比較し、追加納付または還付
報酬の源泉税と年税額は計算の基準が違います。支払者が源泉税を納付していない部分は、納付まで還付されません(所得税法138条)。

二段階税率は所得税法205条1号の対象報酬に適用します。

報酬に消費税が含まれている場合、原則は消費税込みの金額が源泉徴収の対象ですが、請求書で報酬額と消費税額が明確に区分されていれば、報酬額だけを対象にして差し支えないことになっています(国税庁No.2792)。インボイス制度が始まった後もこの扱いは変わっていません。

源泉徴収税額 計算機で、報酬額から10.21%・20.42%の源泉徴収額を確かめる

源泉徴収されない報酬でも、申告による納付や予定納税が必要な場合があります。前払いの有無だけで、最終的な税負担の大小は判断できません。

予定納税基準額が15万円以上なら、通常は7月と11月に予定納税を行います。基準額は前年税額から源泉税額を単純に引くとは限らず、譲渡・一時・雑所得や臨時所得等を除く調整があります。特別農業所得者は別扱いです(104条)。予定納税の対象になるかは基準額などで確認し、予定納税とはで仕組みを確かめておくと予定が立ちます。

手取契約では手取額から税引前の報酬額を逆算する

税引後の手取額を約束する「手取契約」では、手取額に税率を掛けず、先に税引前の報酬額を逆算します。

次は、居住者への国内支払について、令和8年分の原稿料など、所定額の控除がない一般報酬の手取契約の計算です。消費税等を別に区分せず、手取額と源泉徴収税額の合計を報酬額とする場合に限ります。

1回の手取額税引前の報酬額の計算
897,900円以下手取額 ÷ 0.8979(税率10.21%の区分)
897,900円超(手取額 − 102,100円)÷ 0.7958(二段階税率の区分)

原稿料を手取契約で10万円支払う国税庁の例では、税引前の報酬額は111,370円、源泉徴収税額は11,370円です。逆算した報酬額と源泉徴収税額の端数は、いずれも1円未満を切り捨てます。

消費税等を区分した契約や、司法書士・外交員など所定額を差し引いて源泉徴収する報酬には、この式をそのまま当てはめません。

支払調書は来ないことがある。本人に渡す義務が条文に無いから

年が明けても支払調書が届かないことがあります。届かないこと自体は違法ではありません。報酬の支払調書は、所得税法225条1項3号により、支払う側が税務署長に提出する書類だからです。同条2項は「その支払を受ける者に交付しなければならない」と定めていますが、報酬の支払調書はその対象に入っていません。給与の源泉徴収票とは交付義務の規定が異なります(所得税法226条)。

支払調書の提出範囲には下限があり、報酬等の種類で異なります。居住者への報酬等についての代表例は次のとおりです(国税庁No.7431)。

支払調書が無くても申告書は書ける

報酬について収入金額と源泉徴収税額を確認し、申告書には必要経費を引いた所得金額、所得控除なども記載します。請求額と入金額の差には振込手数料等が含まれることもあるため、支払明細で源泉徴収額を確認します。

対象報酬の種類、100万円の境界、消費税の区分記載と端数処理も踏まえ、一律10.21%の逆算だけで確定しません。支払調書は照合のための補助資料であって、申告の要件ではありません。

「支払調書が来ていないから、税務署は自分の報酬を把握していない」と考えるのも誤りです。提出範囲を超える支払いなら、支払調書は本人に交付されなくても税務署へ提出されます。支払調書の提出範囲以下でも源泉徴収・納付が必要な場合があります。納期限と納期の特例は、国税庁No.2505で確認します。

支払調書の種類・提出範囲・交付義務の有無をまとめて確かめたい場合は、支払調書とはで225条1項の各号ごとに整理しています。

事業所得か雑所得かは社会通念上の実態で判定。帳簿保存の有無も確認

受け取った報酬をどちらの所得に入れるかで、利用できる制度が異なります。条文の定義は短く、次のとおりです。

どこからが「事業」かは条文に書かれていません。

その線を引いているのが、令和4年10月に改正された所得税基本通達35-2の注です。本文はこう始まります。

次に掲げるような所得は、事業所得又は山林所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する。

そのうえで、注が判定の順序を書いています。

事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。

ここを「収入300万円以下は雑所得」と読むのは誤りです。判定の第一段は社会通念で、300万円が出てくるのは帳簿書類の保存がない場合の話に限られます。括弧書きは、帳簿が無くても収入が300万円を超え、かつ事業と認められる事実があれば雑所得にしない、という救済の側です。表にすると次のようになります。

帳簿書類の保存その所得に係る収入金額役務報酬の所得区分
ある300万円以下社会通念上事業と称する程度なら事業所得
ある300万円超社会通念上事業と称する程度なら事業所得
ない300万円以下業務に係る雑所得
ない300万円超事業所得と認められる事実があれば事業所得の余地が残る

逆に、収入が500万円あっても帳簿が無ければ、事業と認められる事実を自分で示さないかぎり雑所得に寄ります。取引を記録した帳簿書類を保存することが重要というのがこの通達の構造です。

紛らわしいのは、条文の側にも300万円と1,000万円が出てくることです。ただし数える対象も年も違います。

根拠金額数える年効果
所得税基本通達35-2(注)300万円その年(その所得に係る収入金額)役務報酬で保存なしの場合は原則業務雑所得。超過し事業の事実があれば除外
所得税法232条2項300万円前々年居住者で前々年の業務収入が300万円超なら、業務雑所得の現金預金取引等関係書類を保存
所得税法120条6項1,000万円前々年前々年の業務収入が1,000万円を超える居住者が120条1項の申告をする場合、業務に係る雑所得の収支内訳書を添付する

雑所得になったときに失うものは小さくありません。損益通算を定める69条1項が挙げる損失は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つで、雑所得の損失は他の所得から引けません。純損失の繰越控除を定める70条1項は「その年分の所得税につき青色申告書を提出している年に限る」と条件を付けており、後述のとおり雑所得では青色申告そのものができないため、赤字を翌年以降に持ち越せません。青色事業専従者給与(57条1項)も白色の事業専従者控除(57条3項)も、条文の対象は不動産所得・事業所得・山林所得です。

制度事業所得業務に係る雑所得根拠
青色申告の承認申請・記帳等の要件を満たせば受けられる受けられない所得税法143条
青色申告特別控除所定の要件を満たす額(下の青色申告の節)なし措置法25条の2
赤字の損益通算対象損失は通算可。生活に通常必要でない資産等の制限ありできない所得税法69条1項
青色申告による純損失の繰越控除繰越期間・申告要件・除外対象は根拠条文で確認できない所得税法70条1項
専従者給与・専従者控除専従親族・届出等の法定要件を満たす場合使えない所得税法57条1項・3項
必要経費認められる認められる所得税法37条1項
家内労働者等の特例家内労働者等に該当し、給与との調整・収入限度等を満たす場合左と同じ条件で対象措置法27条

家内労働者等の特例は所得区分だけでなく対象者・経費額等の要件を確認します。収入と所得の関係そのものを整理したい場合は収入と所得の違いを、白色申告のままで進めるときの手続は白色申告を参照してください。

必要経費は直接費と販売費・一般管理費等を確認する

必要経費の範囲と算入時期は所得税法37条1項で確認できます。業務委託の雑所得にも必要経費は認められます。

37条1項は不動産所得・事業所得・雑所得が対象ですが、山林の伐採・譲渡分と公的年金等の雑所得を除きます。

業務委託でよく出てくる支出を、勘定科目と考え方で並べると次のようになります。

支出科目の例考え方
ノートPC消耗品費少額資産の経費算入は所得税法施行令138条で要件を確認
自宅の家賃・電気代・通信費地代家賃・水道光熱費・通信費家事関連費の法定要件を満たす部分を経費にする(下の注)
取引先との打合せの飲食接待交際費業務上の必要性と、私用を兼ねる場合の算入要件を確認(下の注)
クラウドソーシングの手数料支払手数料報酬から差し引かれていても、収入は差引前の総額で計上する
国民年金・国民健康保険経費にしない居住者本人・生計同一親族の負担分をその年に実払等した額は社会保険料控除
所得税・住民税の本税経費にしない45条1項2号・4号が必要経費不算入と定めている

少額資産の特例は、取得時期による経過措置も含め、租税特別措置法28条の2・附則を確認してください。

クラウドソーシングのシステム手数料は落としやすい点です。10万円の案件で手数料2万円が引かれて8万円が振り込まれた場合、収入は10万円、支払手数料は2万円と両建てで記録します。8万円だけを収入にすると、支払調書や取引先の帳簿と突き合わせたときに金額が合いません。

家事関連費は法定要件を満たす部分を経費にします。要件は所得税法施行令96条の各号で確認します。具体的な考え方は家事按分を参照してください。

家内労働者等の特例は対象者と給与との調整を確認する

対象者・経費額・給与との調整・収入限度は、租税特別措置法27条・同施行令18条の2で確認します。要件と落とし穴は家内労働者等の必要経費の特例にまとめています。

青色申告は対象業務と税務署の承認が必要

青色申告の入口は所得税法143条です。

不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行なう居住者は、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、確定申告書及び当該申告書に係る修正申告書を青色の申告書により提出することができる。

ここに雑所得は書かれていません。業務に係る雑所得については青色申告の対象になりません。事業所得に当たるだけで65万円控除が決まるわけではありません。65万円控除には、青色申告の承認、正規の簿記、決算書等の添付・期限内申告、e-Tax送信または所定の電子帳簿保存等の要件があり、現金主義の特例適用者は除かれます。

申請期限は所得税法144条で確認し、休日等による繰下げは国税通則法10条も確認します。

令和8年5月1日に事業所得等を生ずべき業務を新たに始め、その年から青色を希望する居住者の申請期限は令和8年7月1日です。期限を過ぎた場合も、翌年分の承認を希望するなら申請と承認が必要です。

控除額には対象所得金額による限度もあります。金額の分かれ目は青色申告特別控除で条文から確かめています。

青色申告特別控除シミュレーターで適用要件を確認する

開業届と青色申告の申請期限は別に確認する

令和8年中に国内で事業所得等を生ずべき事業を開始した通常の居住者の開業届期限は、令和9年3月15日です。雑所得となる業務委託の開始だけでは、この届出義務は生じません。

改正後の届出期限は、令和8年1月1日以後に国内で不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき事業を開始した場合等に適用されます。開業届の期限を定める所得税法229条は、令和5年法律第3号によって改正され、令和8年1月1日に施行されました。

改正前は「その事実があつた日から一月以内に」でした。

改正前の1か月は提出期限であり、期限を過ぎると提出できなくなるという意味ではありません。

改正法(令和5年法律第3号)の附則1条6号が229条改正の施行日を令和8年1月1日とし、附則10条が適用の境目を定めています。令和8年1月1日以後に生ずる事実について新しい期限が適用され、それより前に生じた事実には従前の1か月以内が残ります。

開業届と青色申告は別の手続き

青色申告を希望する場合は、前の節の申請期限を先に確認してください。青色事業専従者給与の届出も別に必要です(所得税法57条)。

開業届そのものの書き方と、屋号・給与等の支払の状況欄の埋め方は開業届の書き方にあります。なお、開業届を出さないと事業所得にならない、という決まりは条文にはありません。事業所得かどうかは前掲の27条と通達35-2で判定され、229条は届出の義務を定めているだけです。

消費税は免税の条件とインボイス登録を確認する

所得税の申告とは別に、消費税の申告義務があるかどうかも見ます。判定の入口は消費税法9条1項です。

事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者(適格請求書発行事業者を除く。)については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

個人事業者の基準期間は前々年です。令和8年の基準期間は令和6年で、課税売上高1,000万円以下は免税の基本条件です。他の事業も含めて基準期間の課税売上高がない新規開業者も、免税の基本条件を満たします。既存事業者が業務委託を始めても、過去の他事業の売上を除いて判定することはできません。

どちらの場合も、課税選択・インボイス登録・特定期間等の例外があります。

ただし、括弧書きの「(適格請求書発行事業者を除く。)」が効きます。インボイスの登録をすると、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも9条1項の免除から外れ、課税事業者になります。申告・納付の要否は計算結果等により確認します。登録するかどうかは、取引先が仕入税額控除を必要とする課税事業者かどうかで決まる商売上の判断で、税法が強制するものではありません。

免税事業者であっても、課税資産の譲渡等に当たる役務の提供なら、報酬に消費税相当額を含めて請求することはできます。9条1項が免除しているのは納める義務であって、取引が課税の対象であること自体は変わらないからです。

インボイス登録をした人も、特例を使えるとは限りません。2割特例の対象期間・適用除外・申告への付記は、国税庁の2割特例の概要で確認します。

後継の3割特例も対象者・課税期間・申告付記の要件があります(国税庁の令和8年度税制改正資料)。

翌課税期間も課税事業者を続ける場合は、適用可能な特例・本則課税・簡易課税を確認します。切り替えの段取りはインボイスの2割特例はいつまでで整理しています。

消費税計算で、税抜・税込と端数処理を請求書の形に合わせて確かめる

住民税・国民健康保険・国民年金は所得税と別の物差しで動く

住民税と社会保険料も、課税・加入条件に応じて確認します。所得税とは計算の基準が異なります。

令和8年分の所得と住民税・保険料等の時期
制度令和8年分の所得がどう効くかいつ来るか
住民税業務委託の事業所得・雑所得は、令和8年分の所得に対して令和9年度分が課される徴収方法により異なるため、自治体・勤務先の案内を確認
国民健康保険料令和8年の総所得金額等から国保算定用の基礎控除を引いて令和9年度分を算定(控除は下の注)令和9年6月ごろに決定通知
国民年金保険料通常保険料は令和8年度で月17,920円。免除・猶予・前納割引等あり毎月(前納制度あり)
個人事業税法定業種は地方税法72条の2、所得計算等は72条の49の12〜14で確認通常は翌年の条例所定の納期。年途中の廃業は別扱い

国保算定用の基礎控除は合計所得2,400万円以下なら43万円、超過すると29万円・15万円と逓減し、2,500万円超はゼロです。

所得税の確定申告書を出せば、地方税法317条の3により、政令で定める場合を除き、住民税申告書も提出されたものとみなされます。提出日の扱いには既に住民税を申告済みの場合の例外があります。

所得税の申告義務がなくても、副業所得などについて住民税申告が必要な場合があります。317条の2に20万円の例外は無いためで、この非対称は副業の確定申告と20万円ルールで詳しく扱っています。給与以外の所得がない場合や条例による非課税者等の申告免除もあるため、市区町村で確認します。

会社を辞めて業務委託に切り替えた年は、負担の順番が入れ替わることに注意が必要です。会社員のときは住民税が給与から特別徴収されていましたが、退職後の残額の徴収方法は、勤務先と自治体に確認します。翌年の住民税や国民健康保険料も、課税・加入条件に応じて見込んでおきます。

個人事業税は法定業種に当たるかどうかで有無が変わるので、自分の仕事がどこに入るかは個人事業税で確かめられます。国民健康保険料は令和8年度から賦課が4区分になっており、金額の目安は国民健康保険料 計算機で確かめられます。

国民年金保険料と国民健康保険料は、居住者本人または生計同一親族の負担分をその年に実際に支払った額等が、所得税法74条の社会保険料控除の対象です。前掲の設例は、対象保険料の実払額を仮定しています。控除証明書の扱いや前納したときの取り方は社会保険料控除にまとめています。

会社員の副業は給与の申告不要制度を確認する

給与の申告不要制度を使える場合があります。居住者で給与1か所・給与収入2,000万円以下・給与全部が源泉徴収対象、給与・退職以外の所得合計20万円以下の場合です(勤務先への事業用資産提供の対価等がある場合を除く)。ほかにも区分と除外があるため、所得税法121条で確認します。

この判定で数えるのは収入ではなく、経費を引いた所得です。副業の所得額だけで提出不要とは決めず、給与等の条件も合わせて確認します。

ただし、この制度には3つの引っかかりがあります。

  1. 源泉徴収されている場合:源泉徴収税額が年税額から控除しきれず還付要件を満たす人は、申告義務がなくても122条の還付申告ができます。源泉徴収があっただけで還付になるとは限りません。
  2. 申告する以上は20万円以下の所得も含めて計算する:医療費控除や住宅ローン控除の初年度で申告書を出すなら、副業の19万円も載せます。
  3. 住民税:前節のとおり20万円の例外は住民税にはありません。

この3点と、給与が2か所の場合・年金がある場合を含めた申告義務の全体像は、確定申告はいくらから必要かに条文ベースで整理してあります。判定だけを確かめたい場合はそちらが近道です。申告が必要と分かった後の書類・作成・提出・納税の手順は確定申告のやり方にあります。

会社に副業を知られたくない、という相談について

業務委託による給与・公的年金等以外の所得分は、住民税を普通徴収とする希望を申告書に記載できます。給与分は原則特別徴収で、法定の例外があります(地方税法321条の3)。実際の処理は市区町村に確認します。就業規則との関係は税務とは別の問題です。

よくある質問

業務委託の報酬は必ず源泉徴収されるのですか?

されません。居住者への国内の報酬は内容と支払者で判定し、給与・退職所得は別規定で確認します。対象の代表例と主な例外は源泉徴収の節を参照してください。

源泉徴収されているので確定申告しなくてよいですか?

給与の年末調整のような精算のしくみが報酬にはないので、源泉徴収されていても年税額は確定しません。源泉徴収税額は報酬の種類と金額で異なり、一律10.21%ではありません。経費・所得控除等を反映した年税額と比較して精算するため、追加納付にも還付にもなり得ます。還付申告の要件と留保の例外は、精算の節の注を確認してください。

支払調書が届きません。どうすればよいですか?

届かなくても申告できます。自分の請求書と通帳の入金額から集計し、源泉徴収額は請求書控えの差引額で確かめます。報酬の支払調書は225条1項3号の税務署提出書類です。同条2項の本人交付の対象は、所定のオープン型証券投資信託(公社債投資信託を除く)の収益分配と、みなし配当に係るものです。報酬の支払調書には同項による本人交付義務がないので、来ないことがあります。

収入が300万円以下なら雑所得になるのですか?

そうとは限りません。所得税基本通達35-2の注は、まず社会通念上事業と称する程度かで判定すると書いています。300万円が出てくるのは帳簿書類の保存がない場合の話で、保存がなく、かつ収入が300万円以下なら業務に係る雑所得になります。帳簿を付けて保存していれば、収入が300万円以下でも事業所得になり得ます。

業務委託で開業届はいつまでに出すのですか?

その年分の確定申告期限までです。令和8年以後に国内で事業所得等を生ずべき事業を開始する場合が対象で、雑所得の業務委託開始だけでは届出義務は生じません。青色申告の申請は別期限のため、青色申告の節を確認してください。

会社員が副業で業務委託を受けた場合はどうなりますか?

申告不要制度を使える場合があります。居住者で、給与1か所・給与収入2,000万円以下・年末調整済みで、給与・退職以外の所得が20万円以下なら申告不要制度があります。ただし勤務先への事業用資産の提供による対価等を受ける場合は除外されます(121条1項)。20万円で数えるのは収入ではなく所得です。なお、住民税にこの申告不要制度はありません。判定の詳細は確定申告はいくらから必要かの記事にまとめています。

業務委託でも消費税を請求してよいのですか?

課税資産の譲渡等に当たる役務の提供なら、免税事業者でも消費税相当額を含めて請求できます。消費税法9条1項は基準期間の課税売上高1,000万円以下を免税の基本条件としていますが、課税選択・特定期間等の例外があります。またインボイス登録者は免税対象から除かれます。

次に読む

出典

所得税法・所得税法施行令・租税特別措置法(令和8年12月1日施行版)・消費税法・国税通則法・所得税基本通達・国税庁タックスアンサーを参照しています。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

この内容をXで共有