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業務委託の確定申告【令和8年分】源泉徴収10.21%の対象は8種類だけ

結論から言うと、業務委託で報酬を受け取る側は、その報酬を事業所得または雑所得として自分で計算します。確定申告の義務が生じるのは、所得の合計が所得控除の合計を超え、かつ、控除後の課税所得に税率を掛けて計算した所得税額が配当控除の額を超えるときです(所得税法120条1項)。所得が所得控除を上回るだけでは足りず、配当控除を差し引いても税額が残ることまでが条文の要件なので、配当控除で税額が消える人には義務が生じません。他に所得控除も税額控除もない人なら、令和8年分の基礎控除104万円が最初の線です。ただし課税標準は1,000円未満、確定金額は100円未満を切り捨てる(国税通則法118条1項・119条1項)ので、納める所得税が実際に残り始めるのは所得104万2,000円からです。会社員が本業のかたわら業務委託を受けている場合は、これとは別に121条1項1号の申告不要制度(給与と退職所得以外の所得が20万円以下)が乗ります。

そして、いちばん誤解が多いのがここです。「業務委託だから源泉徴収される」は誤りです。源泉徴収の対象になるのは、所得税法204条1項が第1号から第8号までに挙げた報酬・料金・契約金・賞金だけで、原稿・デザイン・講演・士業・外交員などは入りますが、システム開発、Webサイトの構築、軽貨物の配送、営業代行、清掃、経理代行といった多くの業務委託は入りません。逆に、10.21%を引かれた人にとってその10.21%は経費も所得控除も引く前の支払金額にかけた前払いなので、経費と所得控除を引いた後の年税額より前払いが多ければ、その差額は確定申告で戻ります。

この記事は、報酬を受け取る側に立って、源泉徴収の有無・10.21%の精算・支払調書が来ない理由・事業所得と雑所得の分かれ目・経費と家事按分・青色申告・開業届の期限の改正・消費税とインボイス・住民税と社会保険までを、令和8年分(2026年1月〜12月の所得)の条文で順に確かめます。報酬を支払う側で外注費と給与の区分に迷っている場合は、外注費と給与の区分が対応する記事です。

受け取る側がやることは4つ — 令和8年分の早見表

業務委託で報酬を受け取る人がその年に確かめることは、突き詰めると「所得の区分」「経費」「申告と納税」「保険料」の4つです。金額はすべて令和8年分(住民税と保険料は令和8年度・令和9年度)を基準にしています。

論点令和8年分の結論根拠
申告義務の線所得の合計が所得控除の合計を超え、かつ課税所得に税率を掛けた所得税額が配当控除額を超えたとき。他に控除がなければ基礎控除104万円が線で、納める所得税が残るのは所得104万2,000円から所得税法120条1項・86条、措置法41条の16の2、国税通則法118条1項・119条1項
源泉徴収の対象204条1項の第1号から第8号までに当たる報酬だけ。多くの業務委託は対象外所得税法204条1項、同施行令320条
源泉徴収の税率1回の支払が100万円以下は10.21%、超える部分は20.42%所得税法205条1号、復興財確法13条・28条2項
支払調書本人への交付義務は無い。届かなくても自分の記録で申告する所得税法225条1項3号・2項
事業所得か雑所得か帳簿書類を保存していれば社会通念で判定。保存が無く収入300万円以下なら業務に係る雑所得所得税法27条1項・35条1項、所得税基本通達35-2
青色申告特別控除事業所得なら最大65万円。雑所得では青色申告そのものができない所得税法143条、措置法25条の2
開業届の期限令和8年1月1日以後に始めた分は、その年分の確定申告期限まで(改正前は1か月以内)所得税法229条、令和5年法律第3号附則10条
消費税基準期間(個人は前々年)の課税売上高1,000万円以下なら免税。ただしインボイス登録者は除かれる消費税法9条1項
国民年金保険料令和8年度は月17,920円・年215,040円。全額が社会保険料控除日本年金機構、所得税法74条

この9行のうち、実務でいちばん結論がひっくり返るのは2行目です。源泉徴収されるかどうかは「業務委託かどうか」ではなく「その報酬が204条1項の列挙に入るかどうか」で決まります。次の節で、その列挙を条文から順に見ます。

「業務委託だから源泉徴収」は誤り。対象は204条1項の8つの号だけ

そもそも「業務委託契約」という契約類型は民法にありません。民法にあるのは、仕事の完成を約する請負(632条)、法律行為の委託である委任(643条)、法律行為でない事務の委託である準委任(656条)で、実務で業務委託と呼ばれているものはこの請負か準委任のどちらかです。税法もこの呼び名を使っていないので、源泉徴収の要否は契約書の表題ではなく、支払われる報酬の中身で決まります。

その中身を決めているのが所得税法204条1項です。柱書はこう書いています。

居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

「次に掲げる」の中身が第1号から第8号までの8つで、これは例示ではなく限定列挙です。号ごとに、業務委託でよく出てくる仕事に当てはめると次のようになります。政令で定めるものは所得税法施行令320条が具体的に書いており、そこまで含めた範囲です。

条文が挙げるもの業務委託での例税率(205条)
1号原稿、さし絵、作曲、レコード吹込み、デザインの報酬、放送謝金、著作権・工業所有権の使用料、講演料。令320条1項で脚本・翻訳・通訳・校正・速記・投資助言業務、技芸やスポーツ・知識の教授も追加ライティング、イラスト、ロゴやバナーのデザイン、翻訳、セミナー講師、オンライン講座10.21%(100万円超は20.42%)
2号弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士など。令320条2項で企業診断員なども追加士業への依頼、中小企業診断士としてのコンサルティング10.21%(司法書士・土地家屋調査士・海事代理士は1回1万円を引いた残額に10.21%)
3号医療情報基盤・診療報酬審査支払機構から支払われる診療報酬医療機関が受け取る診療報酬その月分から20万円を引いた残額に10.21%
4号職業野球の選手、モデル、外交員、集金人、電力量計の検針人など。令320条3項でプロサッカー選手・プロゴルファーなども追加保険や不動産の外交員、集金業務、モデル外交員・集金人・検針人はその月中の支払から12万円を引いた残額に10.21%
5号映画、演劇、音楽、舞踊などの出演・演出・企画の報酬(不特定多数の者から受けるものを除く)俳優、演奏家、司会10.21%(100万円超は20.42%)
6号キャバレー、ナイトクラブ、バーなどのホステス等の報酬接客業務の報酬5,000円×計算期間の日数を引いた残額に10.21%
7号役務の提供を約することにより一時に取得する契約金で政令で定めるもの専属契約の一時金10.21%(100万円超は20.42%)
8号広告宣伝のための賞金、馬主が受ける競馬の賞金キャンペーンの賞金1回50万円を引いた残額に10.21%

この表に無い仕事は、契約書に「業務委託」と書いてあっても源泉徴収されません。システム開発・プログラミング、Webサイトの構築、軽貨物や宅配の配送、営業代行、清掃、警備、経理代行、データ入力、事務代行、家事代行、動画編集の作業部分などが典型です。境目にあるのは「デザイン」で、Webサイト制作の中でも画面デザインの対価として区分できる部分は1号のデザインの報酬に当たり、コーディングやサーバ構築の部分は当たりません。請求書を分けているかどうかで扱いが変わるので、支払う側と受け取る側で認識が食い違いやすいところです。

謝礼・車代・材料費という名目でも変わらない

所得税基本通達204-2は、1号・2号・4号から7号までの報酬や料金の性質を持つものは、謝礼・賞金・研究費・取材費・材料費・車賃・記念品代などの名義で支払っても204条1項が適用されると書いています。反対に、支払う側が交通機関やホテルへ直接支払った通常必要な範囲の交通費・宿泊費は、報酬に含めなくてよいことになっています(国税庁No.2792・No.2798)。

もう1つ、列挙に入っていても源泉徴収されない場合があります。204条2項2号です。

前項第一号から第五号まで並びに第七号及び第八号に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第百八十三条第一項(給与所得に係る源泉徴収義務)の規定により給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるもの

読み替えると、人を雇っていない個人事業主から支払われる1号から5号まで・7号・8号の報酬は、源泉徴収されないということです(6号のホステス等の報酬は3号で別に扱われます)。ライターが法人のメディアから受ける原稿料は10.21%を引かれるのに、同じ原稿料を一人で仕事をしている個人事業主から受けると全額が振り込まれる、という違いはここから来ています。受け取る側から見ると、同じ仕事でも取引先によって手取りが変わるので、年末に源泉徴収税額を集計するときは取引先ごとに分けて数える必要があります。

① その報酬は204条1項の 8つの号のどれかに当たるか (原稿・デザイン・講演・士業ほか) 源泉徴収なし システム開発・配送 営業代行・清掃など ② 給与・退職手当ではないか (204条2項1号) 名目が謝礼・車代でも中身で見る 給与として徴収 183条の税額表で 毎月引かれる ③ 支払者は人を雇っているか (給与の源泉徴収義務がある者か) (204条2項2号・1号〜5号・7号・8号) 源泉徴収なし 人を雇っていない 個人からの支払い 源泉徴収される(205条) 1回100万円以下は10.21%・超える部分は20.42% はい いいえ はい いいえ はい いいえ ③の判定は6号(ホステス等の報酬)には及ばない。6号は204条2項3号が別に定める。 4号の外交員・集金人・検針人、6号、8号などは205条2号で控除額を引いた残額に課税。 10.21%は所得税10%に復興特別所得税2.1%を上乗せしたもの(復興財確法13条・28条2項)。
源泉徴収の要否は3つの関門を順に通る。①で外れる業務委託がいちばん多く、③で外れるのは取引先が人を雇っていない個人事業主のときです。

源泉徴収された10.21%は前払い。年税額との差は確定申告で精算する

給与には年末調整という精算のしくみがありますが、報酬にはありません。204条の源泉徴収は、経費も所得控除も引く前の支払金額にそのまま10.21%をかけているので、実際の年税額とはほとんど一致しません。確定申告で年税額を計算し、源泉徴収税額との差を精算します。

実数で見ます。ライティングの業務委託で毎月25万円を12回、合わせて年間300万円(すべて1号の原稿料)を受け取り、必要経費が60万円、国民年金保険料(令和8年度は月17,920円・年215,040円)と国民健康保険料で社会保険料控除が50万円、青色申告特別控除65万円を使う人を置きます。他に所得控除はないものとします。10.21%と20.42%の境目は年額ではなく1回の支払額なので(205条1号)、各回が100万円以下のこの人は全額が10.21%です。

段階金額計算
報酬の支払金額3,000,000円1年分の請求額の合計
源泉徴収された額306,300円250,000円 × 10.21% × 12回(各回100万円以下なので全額10.21%)
実際の入金2,693,700円3,000,000円 − 306,300円
事業所得2,400,000円3,000,000円 − 必要経費600,000円
青色申告特別控除後1,750,000円2,400,000円 − 650,000円
所得控除の合計1,540,000円基礎控除1,040,000円 + 社会保険料控除500,000円
課税総所得金額210,000円1,750,000円 − 1,540,000円(1,000円未満切捨て後も同額)
所得税10,500円210,000円 × 5%
復興特別所得税220円10,500円 × 2.1%(1円未満切捨て)
年税額10,720円10,500円 + 220円
還付される額295,580円306,300円 − 10,720円

源泉徴収された306,300円のうち、本当に税金として残るのは10,720円だけで、残りの295,580円は還付されます。1年を通して30万円近くを国に無利息で預けていたことになるので、申告を忘れると取り戻せるはずのお金がそのまま残ります。

収入300万円(月25万円×12回)・経費60万円・社保50万円・青色65万円 支払金額 3,000,000円 源泉徴収された 306,300円 の内わけ 実際の入金 2,693,700円 源泉徴収 306,300円(10.21%) 年税額 10,720円 還付 295,580円 帯の長さは金額に比例。年税額は源泉徴収額の3.5%しかない。
源泉徴収の10.21%は経費も所得控除も引く前の支払金額にかかるので、経費が多い人ほど、また所得控除が多い人ほど、申告で戻る割合が大きくなります。

1回の支払が100万円を超えるときは、超える部分だけ20.42%になります。150万円のデザイン報酬を1回で受け取ったなら、(1,500,000円 − 1,000,000円)× 20.42% + 102,100円 = 204,200円です。100万円は年間ではなく同一人に対し1回に支払われる金額で見るので、同じ150万円でも3回に分けて受け取れば全額が10.21%となり、源泉徴収額は153,150円になります。年税額は同じなので、変わるのは前払いの額と還付額だけです。

報酬に消費税が含まれている場合、原則は消費税込みの金額が源泉徴収の対象ですが、請求書で報酬額と消費税額が明確に区分されていれば、報酬額だけを対象にして差し支えないことになっています(国税庁No.2792)。33万円(本体30万円+消費税3万円)の請求書なら、区分していれば源泉徴収は30,630円、していなければ33,693円です。インボイス制度が始まった後もこの扱いは変わっていません。

源泉徴収税額 計算機で、報酬額から10.21%・20.42%の源泉徴収額を確かめる

反対に、源泉徴収されない業務委託では前払いがありません。同じ数字でシステム開発の業務委託を受けた人なら、源泉徴収税額が0円なので、確定申告で10,720円を納めることになります。確定金額は100円未満を切り捨てる(国税通則法119条1項)ので、実際に納付するのは10,700円です。年税額はどちらも10,720円で同じです。源泉徴収されている人は「税金を多く払っている」のではなく「先に預けている」だけで、されていない人は「得をしている」のではなく「後でまとめて払う」だけ、という関係になります。

なお、前年分の所得税額から源泉徴収税額を引いた予定納税基準額が15万円以上になると、その年の7月と11月に予定納税が生じます(所得税法104条1項)。源泉徴収されない業務委託で所得が伸びた人は、2年目以降にこれが来て資金繰りが動くので、予定納税とはで仕組みを確かめておくと予定が立ちます。

支払調書は来ないことがある。本人に渡す義務が条文に無いから

年が明けても支払調書が届かないことがあります。届かないこと自体は違法ではありません。報酬の支払調書は、所得税法225条1項3号により、支払う側が税務署長に提出する書類だからです。同条2項は「その支払を受ける者に交付しなければならない」と定めていますが、その対象は1号のオープン型証券投資信託の収益の分配と、2号のみなし配当の2つだけで、報酬の支払調書は入っていません。給与の源泉徴収票が226条1項で本人交付を義務づけられているのとは、条文の作りが違います。

提出範囲にも下限があります。国税庁No.7431によれば、弁護士・税理士等への報酬、原稿料、講演料などは同一人に対するその年中の支払金額の合計が50,000円を超えるもの、外交員・集金人・検針人・ホステス等の報酬と広告宣伝のための賞金は50万円を超えるものが提出範囲です。年間4万円の原稿料しか受け取っていない取引先には、税務署へ支払調書を提出する義務がありません(社内で作成するかどうかは支払う側の任意です)。

支払調書が無くても申告書は書ける

申告書に必要なのは、その年の収入金額と源泉徴収税額です。どちらも自分の請求書控えと通帳の入金額から復元できます。請求額と入金額の差が源泉徴収税額なので、10.21%で逆算して確かめられます。振込手数料が差し引かれている場合は、差額から手数料を除いてから逆算します。支払調書は照合のための補助資料であって、申告の要件ではありません。

「支払調書が来ていないから、税務署は自分の報酬を把握していない」と考えるのも誤りです。提出範囲を超える支払いなら、支払調書は本人に交付されなくても税務署へ提出されます。提出範囲以下の支払いでは税務署への提出義務もありませんが、その場合でも支払う側は源泉徴収した税額を翌月10日までに納付しています(204条1項)。支払調書の種類・提出範囲・交付義務の有無をまとめて確かめたい場合は、支払調書とはで225条1項の各号ごとに整理しています。

事業所得か雑所得かは帳簿で決まる。300万円は「帳簿が無いとき」の話

受け取った報酬をどちらの所得に入れるかで、使える制度がまるごと変わります。条文の定義は短く、事業所得は27条1項が「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得」と書き、雑所得は35条1項が「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得」と書くだけです。どこからが「事業」かは条文に書かれていません。

その線を引いているのが、令和4年10月に改正された所得税基本通達35-2の注です。本文はこう始まります。

次に掲げるような所得は、事業所得又は山林所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する。

そのうえで、注が判定の順序を書いています。

事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。

ここを「収入300万円以下は雑所得」と読むのは誤りです。判定の第一段は社会通念で、300万円が出てくるのは帳簿書類の保存がない場合の話に限られます。括弧書きは、帳簿が無くても収入が300万円を超え、かつ事業と認められる事実があれば雑所得にしない、という救済の側です。表にすると次のようになります。

帳簿書類の保存その所得に係る収入金額通達35-2の注による扱い
ある300万円以下社会通念上事業と称する程度なら事業所得
ある300万円超社会通念上事業と称する程度なら事業所得
ない300万円以下業務に係る雑所得
ない300万円超事業所得と認められる事実があれば事業所得の余地が残る

つまり、業務委託を始めたばかりで年間の収入が100万円でも、取引を記録した帳簿を付けて保存し、継続性と営利性があれば事業所得になり得ます。逆に、収入が500万円あっても帳簿が無ければ、事業と認められる事実を自分で示さないかぎり雑所得に寄ります。帳簿を付けるかどうかが、金額よりも先に効くというのがこの通達の構造です。

紛らわしいのは、条文の側にも300万円と1,000万円が出てくることです。ただし数える対象も年も違います。

根拠金額数える年効果
所得税基本通達35-2(注)300万円その年(その所得に係る収入金額)帳簿の保存が無いときに、事業所得か業務に係る雑所得かを分ける
所得税法232条2項300万円前々年業務に係る雑所得で、現金預金取引等関係書類の保存義務が生じる
所得税法120条6項1,000万円前々年業務に係る雑所得で、収支内訳書の添付義務が生じる

雑所得になったときに失うものは小さくありません。損益通算を定める69条1項が挙げる損失は不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の4つで、雑所得の損失は他の所得から引けません。純損失の繰越控除を定める70条1項は「その年分の所得税につき青色申告書を提出している年に限る」と条件を付けており、後述のとおり雑所得では青色申告そのものができないため、赤字を翌年以降に持ち越せません。青色事業専従者給与(57条1項)も白色の事業専従者控除(57条3項)も、条文の対象は不動産所得・事業所得・山林所得です。

制度事業所得業務に係る雑所得根拠
青色申告の承認受けられる受けられない所得税法143条
青色申告特別控除最大65万円なし措置法25条の2
赤字の損益通算できるできない所得税法69条1項
純損失の3年繰越青色ならできるできない所得税法70条1項
専従者給与・専従者控除使える使えない所得税法57条1項・3項
必要経費認められる認められる所得税法37条1項
家内労働者等の特例使える使える措置法27条

必要経費と家内労働者等の特例だけは、どちらでも使えます。収入と所得の関係そのものを整理したい場合は収入と所得の違いを、白色申告のままで進めるときの手続は白色申告を参照してください。

経費は「直接に要した費用」。家事関連費は45条1項1号の例外として通る

必要経費の範囲は所得税法37条1項が定めていて、総収入金額を得るため直接に要した費用と、その年の販売費・一般管理費その他その業務について生じた費用です。事業所得でも雑所得でも同じ条文が適用されるので、雑所得だから経費が認められないということはありません。

業務委託でよく出てくる支出を、勘定科目と考え方で並べると次のようになります。

支出科目の例考え方
ノートPC(税込10万円未満)消耗品費取得価額が10万円未満なら、その年の必要経費
ノートPC(税込35万円)消耗品費(特例を使う場合)青色申告者は令和8年4月1日以後に取得したものなら40万円未満まで全額を経費にできる(措置法28条の2)
自宅の家賃・電気代・通信費地代家賃・水道光熱費・通信費業務に使った部分を区分できれば、その部分だけ経費(家事按分)
取引先との打合せの飲食接待交際費業務に関連することを説明できる範囲
クラウドソーシングの手数料支払手数料報酬から差し引かれていても、収入は差引前の総額で計上する
国民年金・国民健康保険経費にしない必要経費ではなく所得控除(社会保険料控除)で引く
所得税・住民税経費にしない45条1項2号・4号が必要経費不算入と定めている

2行目は令和8年度改正で線が動いたところです。中小事業者の少額減価償却資産の特例(措置法28条の2第1項)の上限は長らく取得価額30万円未満でしたが、令和8年法律第12号によって40万円未満に引き上げられ、令和8年4月1日に施行されました。同改正法附則35条が「施行日以後に取得又は製作若しくは建設をする」ものに適用すると定めているので、令和8年3月31日までに買ったPCは30万円未満、4月1日以後に買ったPCは40万円未満が線になります。同じ令和8年分の申告書の中で、買った日によって基準が変わります。年間の合計300万円までという上限と、確定申告書に明細書を添付することが要件である点(同条3項)は変わっていません。

クラウドソーシングのシステム手数料は落としやすい点です。10万円の案件で手数料2万円が引かれて8万円が振り込まれた場合、収入は10万円、支払手数料は2万円と両建てで記録します。8万円だけを収入にすると、支払調書や取引先の帳簿と突き合わせたときに金額が合いません。

自宅で仕事をしている人にとって大きいのが家事按分です。45条1項1号は「家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの」を必要経費に算入しないと定めており、家事関連費は原則として経費になりません。経費として通るのは、この不算入の例外として施行令96条が定める範囲、つまり業務の遂行上必要な部分を明らかに区分できる場合です。割合の大小ではなく区分できるかどうかが分かれ目で、その理由と50%という数字の出どころは家事按分の考え方で条文と通達から追っています。

1社から継続して仕事を受けているなら、家内労働者等の特例を確かめる

租税特別措置法27条は、家内労働者・外交員のほか「特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする者」(措置法施行令18条の2第1項)について、実際の必要経費が69万円に満たないときでも69万円までを必要経費にできると定めています。令和8年分の額は69万円です。1社の業務委託で年150万円を受け取り、経費が20万円しかない人なら、経費を69万円として計算できます。給与もある人は69万円から給与所得控除額を引いた残額が上限になります。要件と落とし穴は家内労働者等の必要経費の特例にまとめています。

青色申告は事業所得なら使える。雑所得では条文上使えない

青色申告の入口は所得税法143条です。

不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行なう居住者は、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、確定申告書及び当該申告書に係る修正申告書を青色の申告書により提出することができる。

ここに雑所得は書かれていません。業務に係る雑所得として申告する人は、どれだけきちんと帳簿を付けていても青色申告の承認を受けられません。前節の通達35-2で事業所得と雑所得のどちらに寄るかを決めることが、そのまま青色申告特別控除65万円を使えるかどうかを決めています。

承認の申請期限は144条で、その年の3月15日まで、その年1月16日以後に新たに業務を開始した場合はその業務を開始した日から2か月以内です。国税通則法10条1項1号が期間の初日を算入せず、同項3号が起算日に応当する日の前日に満了すると定めているので、令和8年5月1日に業務委託を始めた人の期限は令和8年7月1日です。これを過ぎると令和8年分は白色、青色は令和9年分からになります。控除額が65万円・55万円・10万円のどれになるかは帳簿の付け方と提出方法で決まり、令和9年分から55万円が条文から消えるという改正も入っています。金額の分かれ目は青色申告特別控除で条文から確かめています。

青色申告特別控除シミュレーターで、65万円・55万円・10万円のどれになるかを判定する

65万円を使えたときの効き方は、前掲の実数例で確かめられます。所得税の税率5%の帯にいる人でも、住民税の所得割10%が課税標準に乗るので、65万円の控除は所得税32,500円・復興特別所得税682円・住民税65,000円の合わせておよそ9万8,000円の差になります。所得が増えて税率20%の帯に入れば、差はさらに大きくなります。

開業届の期限は令和8年1月1日から「その年分の確定申告期限まで」に変わった

ここは、令和8年に業務委託を始めた人だけが直面する新しい話です。開業届の期限を定める所得税法229条は、令和5年法律第3号によって改正され、令和8年1月1日に施行されました。現在の条文はこうなっています。

居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し、若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、税務署長に提出しなければならない。

改正前は「その事実があつた日から一月以内に」でした。改正法(令和5年法律第3号)の附則1条6号が229条改正の施行日を令和8年1月1日とし、附則10条が適用の境目を定めています。令和8年1月1日以後に生ずる事実について新しい期限が適用され、それより前に生じた事実には従前の1か月以内が残ります。令和8年中に業務委託を始めた人の開業届の期限は、令和9年3月15日です。「1か月を過ぎたからもう出せない」という説明を見かけたら、令和7年以前の話だと思ってください。

変わったのは開業届だけ。青色申告の2か月は動いていない

144条の青色申告承認申請の期限(1月16日以後に業務を開始した場合は2か月以内)と、57条2項の青色事業専従者給与に関する届出書の期限(同じく2か月以内)は改正されていません。開業届だけが後ろへ動いた結果、この3つの期限がずれました。令和8年5月1日に業務委託を始めた人なら、青色申告承認申請は令和8年7月1日まで、開業届は令和9年3月15日までです。青色を使うつもりなら、実務上は従来どおり早めに両方をまとめて出すことになります。

開業届そのものの書き方と、屋号・給与等の支払の状況欄の埋め方は開業届の書き方にあります。なお、開業届を出さないと事業所得にならない、という決まりは条文にはありません。事業所得かどうかは前掲の27条と通達35-2で判定され、229条は届出の義務を定めているだけです。

消費税は2年前の課税売上高1,000万円。登録した瞬間に免税は外れる

所得税の申告とは別に、消費税の申告義務があるかどうかも見ます。判定の入口は消費税法9条1項です。

事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者(適格請求書発行事業者を除く。)については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

個人事業者の基準期間は前々年です。令和8年分の判定に使うのは令和6年の課税売上高で、それが1,000万円以下なら納税義務は免除されます。業務委託を始めて1年目・2年目は基準期間の課税売上高が無い(またはゼロ)ので、原則として免税事業者です。

ただし、括弧書きの「(適格請求書発行事業者を除く。)」が効きます。インボイスの登録をすると、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも9条1項の免除から外れ、課税事業者として消費税の申告と納税をすることになります。登録するかどうかは、取引先が仕入税額控除を必要とする課税事業者かどうかで決まる商売上の判断で、税法が強制するものではありません。

免税事業者であっても、課税資産の譲渡等に当たる役務の提供なら、報酬に消費税相当額を含めて請求することはできます。9条1項が免除しているのは納める義務であって、取引が課税の対象であること自体は変わらないからです。

令和8年分は、インボイス登録をした小規模事業者にとって節目の年です。2割特例(納付税額を売上税額の2割にできる措置)を適用できるのは令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間で、個人事業者の課税期間は暦年なので、令和8年分(2026年分)が2割特例を使える最後の年になります。令和9年分と令和10年分は、個人事業者である適格請求書発行事業者に限り、納付税額を課税標準額に対する消費税額の3割にできる3割特例が新設されました(国税庁リーフレット「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」)。法人はこの3割特例を使えないので、令和8年9月30日を含む課税期間で本則課税か簡易課税に戻ります。切り替えの段取りはインボイスの2割特例はいつまでで整理しています。

消費税計算で、税抜・税込と端数処理を請求書の形に合わせて確かめる

住民税・国民健康保険・国民年金は所得税と別の物差しで動く

所得税の申告が終わっても、業務委託で受け取ったお金にかかる負担はそれで終わりません。順に別の制度が動きます。

制度令和8年分の所得がどう効くかいつ来るか
住民税令和8年分の所得に対して令和9年度分が課される(前年所得課税)令和9年6月ごろに納税通知書
国民健康保険料令和8年分の基礎控除後の総所得金額等(総所得金額等から43万円を引いた額)で令和9年度分を算定令和9年6月ごろに決定通知
国民年金保険料所得に連動しない定額。令和8年度は月17,920円毎月(前納制度あり)
個人事業税地方税法が定める法定業種に当たる場合に、事業の所得から290万円の事業主控除(72条の49の14第1項)を引いた額に課税令和9年8月ごろから

所得税の確定申告書を出せば、地方税法317条の3により、政令で定める場合を除いて、確定申告書が提出された日に住民税の申告書が提出されたものとみなされます。したがって住民税の申告を別に出す必要はありません。逆に、所得税の申告義務がなかった人(会社員の副業で20万円以下だった人など)は、住民税の申告が別に残ります。317条の2に20万円の例外は無いためで、この非対称は副業の確定申告と20万円ルールで詳しく扱っています。

会社を辞めて業務委託に切り替えた年は、負担の順番が入れ替わることに注意が必要です。会社員のときは住民税が給与から特別徴収されていましたが、退職後は前年の給与に対する住民税を自分で納めることになり、業務委託の収入から払うことになります。さらに翌年には、業務委託の所得に対する住民税と国民健康保険料が乗ります。個人事業税は法定業種に当たるかどうかで有無が変わるので、自分の仕事がどこに入るかは個人事業税で確かめられます。国民健康保険料は令和8年度から賦課が4区分になっており、金額の目安は国民健康保険料 計算機で確かめられます。

国民年金保険料と国民健康保険料は、どちらも所得税法74条の社会保険料控除の対象で、全額が所得から引けます。前掲の実数例で社会保険料控除50万円としたのは、令和8年度の国民年金保険料215,040円に国民健康保険料を合わせた額を置いたものです。控除証明書の扱いや前納したときの取り方は社会保険料控除にまとめています。

会社員の副業で受ける業務委託は20万円で判定が変わる

本業が給与で、副業として業務委託を受けている場合は、ここまでの判定に所得税法121条1項1号が重なります。給与の支払者が1か所、その年の給与等が2,000万円以下、給与の全部について源泉徴収または年末調整を受けている人は、給与所得および退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告書の提出を要しません。

この20万円で数えるのは収入ではなく所得です。業務委託の報酬が年28万円で必要経費が9万円なら所得は19万円なので、他に所得が無ければ提出は要りません。報酬が28万円で経費が5万円なら所得23万円で、120条1項の判定に戻ります。

ただし、この制度には3つの引っかかりがあります。1つ目は、源泉徴収されている場合です。原稿料や講演料で10.21%を引かれている人は、申告義務が無くても122条の還付申告ができ、多くは戻ります。2つ目は、申告する以上は20万円以下の所得も含めて計算することです。医療費控除や住宅ローン控除の初年度で申告書を出すなら、副業の19万円も載せます。3つ目は住民税で、前節のとおり20万円の例外は住民税にはありません。

この3点と、給与が2か所の場合・年金がある場合を含めた申告義務の全体像は、確定申告はいくらから必要かに条文ベースで整理してあります。判定だけを確かめたい場合はそちらが近道です。申告が必要と分かった後の書類・作成・提出・納税の手順は確定申告のやり方にあります。

会社に副業を知られたくない、という相談について

住民税の徴収方法は、確定申告書第二表の住民税に関する事項で給与から差引き(特別徴収)か自分で納付(普通徴収)かを選べる様式になっています。ただし、給与所得や公的年金等以外の所得について自分で納付を選べるかどうか、また実際にその通り処理されるかは市区町村の運用によります。副業が給与である場合は、そもそも自分で納付を選べません。就業規則との関係は税務とは別の問題です。

よくある質問

Q. 業務委託の報酬は必ず源泉徴収されるのですか?

A. されません。源泉徴収の対象は所得税法204条1項が挙げる8つの号に当たる報酬だけで、原稿・デザイン・講演・士業・外交員などが入ります。システム開発、Webサイトの構築、軽貨物の配送、営業代行、清掃、経理代行のような業務委託は、この列挙に当たらないので源泉徴収されません。さらに、支払う側が人を雇っていない個人事業主なら、列挙に当たる報酬でも源泉徴収されないことがあります。

Q. 源泉徴収されているので確定申告しなくてよいですか?

A. 給与の年末調整のような精算のしくみが報酬にはないので、源泉徴収されていても年税額は確定しません。10.21%は経費も所得控除も引く前の支払金額に一律にかけた前払いなので、経費や所得控除を引いた後の年税額とは一致しません。所得税法120条1項で申告義務がない人でも、122条の還付申告で納め過ぎを取り戻せます。

Q. 支払調書が届きません。どうすればよいですか?

A. 届かなくても申告できます。報酬の支払調書は所得税法225条1項3号で税務署へ提出する書類で、同条2項が本人への交付を義務づけているのは証券投資信託の収益の分配とみなし配当の2つだけです。報酬の支払調書は交付義務の対象外なので、来ないことがあります。自分の請求書と通帳の入金額から集計し、源泉徴収額は請求書控えの差引額で確かめます。

Q. 収入が300万円以下なら雑所得になるのですか?

A. そうとは限りません。所得税基本通達35-2の注は、まず社会通念上事業と称する程度かで判定すると書いています。300万円が出てくるのは帳簿書類の保存がない場合の話で、保存がなく、かつ収入が300万円以下なら業務に係る雑所得になります。帳簿を付けて保存していれば、収入が300万円以下でも事業所得になり得ます。

Q. 業務委託で開業届はいつまでに出すのですか?

A. 令和8年1月1日以後に事業を始めた分は、所得税法229条が改正され、その年分の所得税の確定申告期限までになりました。従来の1か月以内ではありません。ただし青色申告の承認申請は144条のままで、1月16日以後に業務を始めた場合は開始の日から2か月以内です。開業届の期限だけが後ろに動いたので、青色を使うなら2か月の側で動くことになります。

Q. 会社員が副業で業務委託を受けた場合はどうなりますか?

A. 給与が1か所・2,000万円以下・年末調整済みで、給与と退職所得以外の所得の合計が20万円以下なら、所得税法121条1項1号で所得税の確定申告書の提出は要りません。20万円で数えるのは収入ではなく所得です。ただし住民税にこの20万円はなく、源泉徴収されている人は還付申告ができます。判定の詳細は確定申告はいくらから必要かの記事にまとめています。

Q. 業務委託でも消費税を請求してよいのですか?

A. 課税資産の譲渡等に当たる役務の提供なら、免税事業者でも消費税相当額を含めて請求できます。納税義務が免除されるのは消費税法9条1項で基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合ですが、同項の括弧書きが適格請求書発行事業者を除いているので、インボイス登録をすると売上高にかかわらず課税事業者になります。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

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