確定申告はいくらから必要?【令和8年分】副業・2か所給与・年金・個人事業主の判定を条文で整理
結論から言うと、所得税の確定申告が必要かどうかは「収入がいくら」では決まりません。原則は、所得の合計が所得控除の合計を超え、そこから計算した税額が配当控除などを超えるときに申告が必要です(所得税法120条1項)。給与所得・退職所得・公的年金等がある人には、条件を満たせば申告しなくてよい制度があります(121条)。
令和8年分(2026年1月〜12月の所得)の居住者で、所得控除が基礎控除だけ、税額控除や源泉徴収税額もない単純な例なら、目安は次のとおりです。
- 個人事業主・フリーランス:所得(収入−必要経費)が104万2,000円から所得税が残る
- 会社員(給与1か所):申告不要制度の対象・条件は会社員の節で確認
- 給与が2か所:従たる給与の収入と、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円以下などなら申告不要
- 年金受給者:公的年金等の収入400万円以下、年金以外の所得20万円以下などなら申告不要
- 学生・パート(給与だけ):確定申告で所得税が出るのは給与収入178万2,000円から
令和8年分の基礎控除は、合計所得金額489万円以下の居住者なら104万円です(施行日と準確定申告の扱いは基礎控除の節)。所得税の申告が不要でも住民税の申告が要ることがあり、納め過ぎがあれば義務がなくても還付申告で戻ります。
ケース別の境目の早見表(令和8年分・単純な例)
表の金額は、令和8年分の居住者(令和8年11月30日以前に提出する準確定申告を除く)の単純な例です。計算の前提は表の下にまとめました。
| ケース | 境目(申告義務・所得税が出る線) | 根拠 |
|---|---|---|
| 給与・年金がない個人事業主・フリーランス | 所得が104万円を超えると所得控除の線を越え、所得税が残るのは所得104万2,000円から | 所得税法120条1項・86条、措置法41条の16の2、国税通則法118条1項・119条1項 |
| 会社員(給与1か所) | 給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下なら申告不要。超えたら120条1項で判定 | 所得税法121条1項1号 |
| 給与が2か所 | 年末調整されなかった給与の収入と、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円以下なら申告不要。150万円の条件もある(2か所給与の節) | 所得税法121条1項2号イ・ロ |
| 公的年金等の受給者 | 年金収入400万円以下・全部が源泉徴収の対象・年金以外の所得20万円以下の3つを満たせば申告不要 | 所得税法121条3項 |
| 学生・パート(給与だけ) | 確定申告での所得税0円は給与収入178万1,999円まで。100円の所得税が出るのは178万2,000円から | 措置法29条の4、所得税法86条、国税通則法118条1項・119条1項 |
表の計算は、給与所得控除の最低額74万円と基礎控除104万円(合計所得金額489万円以下)を使い、ほかに所得控除がなく、税額控除・源泉徴収税額・予納税額もなく、所得は総合課税(税率5%)の所得だけとしています。会社員と給与2か所の行は、給与収入2,000万円以下で給与の全部が源泉徴収の対象の人が前提で、同族会社の役員が会社から賃料を受ける場合などは対象外です(会社員の節)。申告不要になるのは課税総所得金額・課税山林所得金額に係る申告で、退職所得は121条2項で別に判定します。
上の5行は別々の制度ではありません。120条1項の判定が原則で、給与所得がある人(121条1項)、退職所得がある人(同2項)、公的年金等の受給者(同3項)には、それぞれの条件を満たす場合に申告を要しない制度があります。121条のどの制度にも当たらなければ、120条1項で判定します。流れ図の順に確かめると、自分がどの行に当たるかが決まります。
給与・年金がない個人事業主・フリーランスは120条1項の条件で判定する
給与所得・退職所得・公的年金等がなく、事業所得などだけで暮らす人は121条の申告不要制度の対象にならないので、120条1項の条件をそのまま当てます。令和8年分・合計所得金額489万円以下の居住者で、源泉徴収・予定納税・税額控除がない例で並べます。
| 設例(白色申告) | 売上 | 必要経費 | 事業所得 | 所得控除の合計 | 申告義務 |
|---|---|---|---|---|---|
| A. 控除は基礎控除だけ | 300万円 | 190万円 | 110万円 | 104万円 | あり(課税所得6万円) |
| B. 国保・国民年金35万円を払っている | 300万円 | 170万円 | 130万円 | 139万円 | なし(所得が控除以下) |
| C. Bと同じ控除で経費が少ない | 300万円 | 150万円 | 150万円 | 139万円 | あり(課税所得11万円) |
AとBを見比べると、所得が高いBの方に義務がありません。Bは社会保険料控除35万円の分だけ、所得控除の合計が大きいためです。「基礎控除を超えたら申告」は、所得控除が基礎控除だけの人の所得控除の線を言い表したもので、国民健康保険料・国民年金保険料の社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除がある人は、その分だけ所得控除の線が上にあります。
境目にはもう1段、端数処理が挟まります。確定申告で確定する所得税は、課税標準の1,000円未満を切り捨て(国税通則法118条1項)、確定金額の100円未満を切り捨てます(同119条1項)。所得控除が基礎控除104万円だけで、所得が総合課税(税率5%)の所得だけの例で、所得ごとに並べると次のとおりです。
| 所得 | 課税標準(118条1項) | 算出税額(税率5%) | 確定金額(119条1項) |
|---|---|---|---|
| 104万円ちょうど | 0円 | 0円 | 0円 |
| 104万1円〜104万999円 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 104万1,000円〜104万1,999円 | 1,000円 | 50円 | 0円 |
| 104万2,000円 | 2,000円 | 100円 | 100円 |
つまりこの設例では、104万円は所得控除を超える線で、納める所得税が実際に残る104万2,000円とは別です。1円単位で境目を出すなら、この2本を分けて数えるのが正確な言い方になります。
青色申告特別控除は期限内の申告が条件
青色申告の人は、ここに1つ循環があります。55万円(要件を満たせば65万円)の青色申告特別控除(措置法25条の2第3項・4項)を引けば所得が所得控除の合計を下回る、だから申告しなくてよい、という理屈は成り立ちません。同条6項が、この控除は期限内に確定申告書を提出した場合に限って適用すると定めているからです。電子情報処理組織を使う同条4項2号の要件による人は、同号が提出期限までの送信を要件にしています。
条文を読む(措置法25条の2第6項)
第三項(第四項の規定により、同項第二号に掲げる要件を満たしている者について適用する場合を除く。)の規定は、確定申告書に第三項の規定の適用を受けようとする旨及び同項の規定による控除を受ける金額の計算に関する事項の記載並びに同項に規定する帳簿書類に基づき財務省令で定めるところにより作成された貸借対照表、損益計算書その他不動産所得の金額又は事業所得の金額の計算に関する明細書の添付があり、かつ、当該確定申告書をその提出期限までに提出した場合に限り、適用する。
控除を使うために申告するのですから、55万円・65万円の控除で税額が0円になる人も、実務上は期限内に申告書を出すことになります。同条1項の10万円の控除にはこの要件が付いていませんが、赤字を翌年に繰り越す純損失の繰越控除も申告が前提です。事業の年は、義務の有無より先に「申告した方が得か」で考えた方が結論が早くなります。
青色申告の純損失(事業所得などの赤字を損益通算しても差し引ききれずに残る金額)は、通常、損失が生じた年の翌年以後3年間に繰り越し、各年分の所得から差し引けます(所得税法70条)。損失が生じた年分に青色申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出している場合に限ります。前年以前に控除した分と、繰戻し還付の計算の基礎にした分は除きます。主な例外として、特定非常災害による一定の純損失には繰越期間を延長する特例があります(国税庁No.2070)。
報酬から源泉徴収された人は還付を確認
もう1つ、報酬の源泉徴収があります。居住者に国内で支払う原稿料・講演料・デザイン料などの報酬は、所得税法204条により、原則として支払者が源泉徴収します。給与の源泉徴収義務がない個人からの支払など、源泉徴収を要しない場合もあり、対象の範囲は国税庁No.2795のとおりです。
国税庁No.2795の算式では、同じ人に1回に支払う源泉徴収の対象となる金額が100万円以下ならその金額×10.21%、100万円を超えるなら(その金額−100万円)×20.42%+102,100円で、1円未満は切り捨てます。請求書等で消費税等の額が明確に区分されていれば、その額を除いてよいとされています。
たとえば原稿料・講演料など源泉徴収の対象となる金額200万円を1回で受け取ると、(200万円−100万円)×20.42%+102,100円=306,300円が源泉徴収されます。この人の事業所得が140万円、所得控除の合計が134万円なら、課税所得6万円に対する所得税は3,000円ほどで、源泉徴収税額の方がはるかに多い。120条1項の括弧書きにより申告義務は外れますが、放置すれば約30万円が戻りません。122条の還付申告で取り戻す例の典型です。
会社員の副業と20万円(所得税法121条1項1号の申告不要制度)
申告不要となるのは、給与1か所・年収2,000万円以下の居住者で、給与の全部が源泉徴収対象、給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下の場合です(例外は下の注)。不要になるのは課税総所得金額・課税山林所得金額に係る申告で、退職所得は同条2項で別に判定します。
この号の主語は同項の柱書が定める、その年中に支払を受けるべき給与等の金額が2,000万円以下の居住者で、給与収入が2,000万円を超える人は最初から対象外です(国税庁No.1900の1)。また、ただし書などにより、次の人も制度の対象外です(国税庁No.1900)。
- 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
- 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
この前提と対象外の人は、給与が2か所の人の制度(2号)でも同じです。
数えるのは給与所得・退職所得以外の所得の合計です。申告しないことを選んだ上場株式等の配当、源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収選択口座)の上場株式等の譲渡益、源泉分離課税の預貯金の利子などは含めません(国税庁No.1900)。
上の条件を満たす会社員で、ほかに給与所得・退職所得以外の所得がなければ、副業の収入26万円から必要経費8万円を引いた所得18万円は20万円以下で、1号の金額の条件を満たします。逆に副業1つ1つの所得が20万円以下でも、合計で20万円を超えれば、この申告不要制度は使えず、120条1項の条件で判定します。この制度の細部と落とし穴は、副業の確定申告と20万円ルールの記事に譲り、本記事では3点だけ押さえます。
- 20万円は非課税枠ではない。国税庁No.1900の質疑応答は、この規定は確定申告を要しない場合を定めたもので、確定申告を行う場合に20万円以下の所得を申告しなくてよいという規定ではないと明言しています。医療費控除やふるさと納税で申告するなら、18万円の副業所得も申告書に載せます。
- 住民税には20万円の制度がない。後述のとおり、所得税の申告をしない人でも、給与所得以外の所得があれば、原則として市区町村へ住民税の申告をします(地方税法317条の2第1項。条例で定める人などの例外あり)。
- 数える所得の合計が20万円を超えたら、全体で120条1項の物差しに戻る。副業の所得21万円だけなら申告不要制度は使えず、給与所得と合算した所得と税額で120条1項を判定します。申告するときは、年末調整で確定したはずの税額も申告書で計算し直します。
条文を読む(所得税法121条1項柱書・1号)
その年において給与所得を有する居住者で、その年中に支払を受けるべき第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この項において「給与等」という。)の金額が二千万円以下であるものは、次の各号のいずれかに該当する場合には、前条第一項の規定にかかわらず、その年分の課税総所得金額及び課税山林所得金額に係る所得税については、同項の規定による申告書を提出することを要しない。ただし、不動産その他の資産をその給与所得に係る給与等の支払者の事業の用に供することによりその対価の支払を受ける場合その他の政令で定める場合は、この限りでない。一 一の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第百八十三条(給与所得に係る源泉徴収義務)又は第百九十条(年末調整)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び雑所得の金額の合計額(以下この項において「給与所得及び退職所得以外の所得金額」という。)が二十万円以下であるとき。
満期保険金などの一時所得は、受取額で判定しない
保険料を負担した本人が一時金で受け取る満期保険金などは、原則として一時所得になります(例外は下の注)。一時所得は、その年の収入から、その収入を得るために直接要した支出と、年間で最高500,000円の特別控除を引いて求めます。
給与所得者の申告不要制度で使う20万円の判定では、その年の一時所得の金額を2分の1にして、ほかの給与所得・退職所得以外の所得金額と合算します。一時所得があるだけで申告義務が決まるわけではなく、上の申告不要制度と申告義務の条件で判定します。
業務に関して受ける生命保険の一時金は、一時所得から除かれます。一定の一時払養老保険・一時払損害保険等の差益等は源泉分離課税となり、確定申告はできません。
フリマで使っていた衣服や家具を売った場合
自分が使っていた衣服や家具など、生活に通常必要な動産をフリマで売った所得は非課税です(下記の貴金属などを除く)。この非課税の生活用動産の売却なら、年間の売上が20万円を超えたというだけで所得税の確定申告は要りません。
ただし、貴金属・宝石・書画・骨とうなどで、1個または1組の価額が300,000円を超えるものの売却所得は、この非課税から除かれます。仕入れて継続販売する転売や、販売用に作るハンドメイド品は、自分の生活用動産の処分と区別します。
給与が2か所の人の判定(所得税法121条1項2号のイ・ロ)
本業のほかにアルバイトの給与がある人は、121条1項2号のイとロの2段で判定します。給与収入2,000万円以下で給与の全部が源泉徴収の対象であることや、同族会社の役員などの例外は、1号と同じです。
イで足し合わせるのは、従たる給与については収入(給与等の金額)、それ以外については給与所得・退職所得以外の所得です。1号と違って、副業の給与は給与所得控除を引く前の額で数えます。本業400万円(年末調整済み)、アルバイト15万円(年末調整なし)、他の所得なしなら、15万円+0円=15万円でイに当たり申告不要。アルバイトが25万円なら、それだけで20万円を超えます。
ロは、イに当たらない人の救済です。その年の給与収入の合計が「150万円+次の12の所得控除の合計」以下で、かつ給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下なら申告不要です。
- 社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除・生命保険料控除・地震保険料控除
- 障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除
- 配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・特定親族特別控除
国税庁No.1900の(注)が同じ内容を、所得控除の合計額から雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除いた額として案内しています。
次の設例は、他の所得がなく、上の前提を満たす人の例です。
| 設例(他の所得なし) | 本業の給与 | 従たる給与 | イの判定額 | 結論 |
|---|---|---|---|---|
| 掛け持ちが少額 | 400万円 | 15万円 | 15万円 | 申告不要(イ) |
| 掛け持ちが20万円超 | 400万円 | 25万円 | 25万円 | イは不成立。給与の合計が150万円+12の所得控除の合計を超えればロも不成立で、120条1項で判定 |
| パートの掛け持ち | 100万円 | 40万円 | 40万円 | イは不成立。給与合計140万円が150万円以下ならロで不要 |
2行目で決まるのは、121条1項2号のイにもロにも当たらない、つまり申告不要制度を使えないということだけです。申告義務そのものは120条1項に戻り、条文の3段で判定します。社会保険料控除や生命保険料控除が大きい人、源泉徴収税額が年税額を上回る人は、そこで義務が外れることがあります。「イの20万円を超えたから申告義務あり」ではなく、「イにもロにも当たらなければ120条1項に戻る」が条文どおりの読み方です。
3行目のような人は、申告不要制度に当たっても申告した方が得なことが多い例です。令和8年分で他の所得がなく所得控除が基礎控除だけの居住者なら、給与の合計140万円の給与所得は66万円で基礎控除104万円以下、税額は0円です。給与から源泉徴収された税額のうち、年末調整(所得税法190条・191条)で精算されずに年税額を超えて残った分は、還付申告(同122条)で戻ります。
条文を読む(所得税法121条1項2号)
二 二以上の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第百八十三条又は第百九十条の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、イ又はロに該当するとき。イ 第百九十五条第一項(従たる給与についての扶養控除等申告書)に規定する従たる給与等の支払者から支払を受けるその年分の給与所得に係る給与等の金額とその年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が二十万円以下であるとき。ロ イに該当する場合を除き、その年分の給与所得に係る給与等の金額が百五十万円と社会保険料控除の額、小規模企業共済等掛金控除の額、生命保険料控除の額、地震保険料控除の額、障害者控除の額、寡婦控除の額、ひとり親控除の額、勤労学生控除の額、配偶者控除の額、配偶者特別控除の額、扶養控除の額及び特定親族特別控除の額との合計額以下で、かつ、その年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額が二十万円以下であるとき。
公的年金等の受給者の申告不要制度(所得税法121条3項)の条件
公的年金等を受けている居住者には、所得税法121条3項の申告不要制度があります。
居住者についての条件は次の3つです。
- 公的年金等の収入が400万円以下
- その公的年金等の全部が源泉徴収の対象(例外は下の段落)
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得(退職所得は含まない)が20万円以下
①は収入で、③は所得で数える点が、会社員の20万円と同じ構造です。国税庁No.2020は、年金額が少なくて源泉徴収を要しないとされている年金でも、扶養親族等申告書の提出先の年金なら②の対象に含めると案内しています。給与所得もある人は、121条1項の申告不要制度に当たるかを別に確かめます。
②では、所得税法203条の7で源泉徴収を要しない年金と、消滅時効を援用せずに支払われる年金(措置法41条の15の4)は除いて考えます。源泉徴収の対象とされない外国の年金などがあれば、②を満たしません。
③の20万円に効くのが、パートの給与です。給与所得と公的年金等に係る雑所得の両方があり、その合計額が10万円を超える居住者は、③の所得のうち給与所得を、給与所得の金額から所得金額調整控除(租税特別措置法41条の3の11第2項)を引いた残額で数えます(同条6項)。
次の表は、令和8年分の公的年金等だけを受ける居住者の例です。公的年金等の年齢判定はその年の12月31日時点で65歳以上とし、年の途中で死亡・出国した人はその時の年齢で判定します。
| 設例(65歳以上の居住者・令和8年分) | 年金収入 | 年金の雑所得 | 年金以外の所得 | 申告義務 |
|---|---|---|---|---|
| 年金だけ | 240万円 | 130万円 | 0円 | 年金の全部が源泉徴収の対象なら121条3項で不要(退職所得は別に判定) |
| 年金450万円 | 450万円 | この表では計算しない | 0円 | 121条3項の対象外。120条1項で判定 |
400万円を超えた人も、超えたら自動的に義務があるのではなく、120条1項の物差しに戻ります。所得の合計が所得控除の合計を超え、税額が配当控除を超えれば申告義務があります(控除しきれない源泉徴収税額などがある場合は外れます。条文の3段)。年金の源泉徴収は扶養親族等申告書に基づく概算なので、医療費控除や生命保険料控除がある年は、義務がなくても還付申告で戻る例が多い層です(国税庁No.1600の注1)。
条文を読む(所得税法121条3項)
その年において第三十五条第三項(雑所得)に規定する公的年金等(以下この条において「公的年金等」という。)に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入金額が四百万円以下であるものが、その公的年金等の全部(第二百三条の七(源泉徴収を要しない公的年金等)の規定の適用を受けるものを除く。)について第二百三条の二(公的年金等に係る源泉徴収義務)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、給与所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額、一時所得の金額及び公的年金等に係る雑所得以外の雑所得の金額の合計額をいう。)が二十万円以下であるときは、前条第一項の規定にかかわらず、その年分の課税総所得金額又は課税山林所得金額に係る所得税については、同項の規定による申告書を提出することを要しない。
学生・パート(給与だけを受ける人)の所得税と申告の判定
令和8年分・令和9年分の給与所得控除は、給与収入220万円以下なら租税特別措置法29条の4第1項の特例で最低74万円です(給与収入が74万円に満たないときは、その収入金額)。
給与以外に所得がなく、所得控除が基礎控除だけの居住者なら、令和8年分は収入178万円で給与所得は178万円−74万円=104万円、基礎控除104万円を引くと課税所得は0円です。同じ条件で、令和7年分は最低額65万円と基礎控除95万円で160万円でした(国税庁No.1800)。令和2年分〜令和6年分の同じ条件の103万円(55万円+48万円)から2年で75万円上がっています。
| 年分 | 給与所得控除の最低額 | 基礎控除(居住者の最大) | 所得税0円の給与収入 |
|---|---|---|---|
| 令和2年分〜令和6年分 | 55万円 | 48万円 | 103万円 |
| 令和7年分 | 65万円 | 95万円 | 160万円 |
| 令和8年分・令和9年分 | 74万円 | 104万円 | 178万円 |
ほかに所得控除も税額控除もない居住者が確定申告で税額を確定させる場合、給与収入178万1,999円までは所得税は0円で、178万2,000円(所得104万2,000円・課税標準2,000円)から100円が出ます(国税通則法119条1項)。年末調整で徴収する所得税は、国税通則法119条2項と同法施行令40条2項2号により1円未満切捨てで、確定申告のこの線とは別です。
条文を読む(措置法29条の4第1項)
令和八年又は令和九年において、その年中の所得税法第二十八条第一項に規定する給与等(以下この項及び次項において「給与等」という。)の収入金額が二百二十万円以下である場合には、当該給与等に係る同条第三項に規定する給与所得控除額は、同項第一号の規定にかかわらず、七十四万円(当該収入金額が七十四万円に満たない場合には、当該収入金額に相当する金額)とする。
申告不要の線は、この税額の線とは別です。給与の税額が生じても、会社員の申告不要制度の対象なら申告は不要です。掛け持ちなら同2号の条件で判定します。年の途中で辞めて年末調整を受けていないときなどは、引かれた源泉徴収税額が年税額より多ければ、その差を還付申告で取り戻せます。
要件を満たす居住者の学生には勤労学生控除27万円(所得税法82条)があります。勤労学生は、同法2条1項32号イ〜ハの学校・課程の学生などで給与などの勤労による所得があり、合計所得金額89万円以下、そのうち勤労による所得以外が10万円以下の人です(令和8年12月1日施行の改正後)。
ただし令和8年分の所得税では、基礎控除104万円が勤労学生の合計所得金額の上限89万円より大きいので、勤労学生控除を引く前に課税所得が0円になります。控除が実際に効くのは、基礎控除が43万円と低い住民税の側です。勤労学生控除シミュレーターは、この所得税と住民税の効き目の差を年分ごとに計算します。
勤労学生控除シミュレーターで、所得税と住民税への効き目を計算するここまでの線は所得税だけの数字です。住民税がかからない線は所得税とは別に決まり、社会保険の扶養は年収130万円という被扶養者の基準で別に判定します。よく並べて語られる短時間労働者への社会保険の適用拡大は、自分が勤め先の健康保険・厚生年金に加入するかどうかの話で、130万円の被扶養者基準とは別の制度です。給与の壁が何本あるかは年収の壁 早見表にまとめています。
所得税の申告が不要でも住民税の申告が要ることがある
ここまでの「申告不要」はすべて所得税の話です。住民税の申告義務は、市町村民税については地方税法317条の2第1項、道府県民税については同法45条の2第1項が別に定めていて、20万円や400万円の制度はありません。317条の2第1項は、市町村に住所がある個人は3月15日までに申告書を提出しなければならないと定めたうえで、ただし書で申告しなくてよい人を挙げています。主なものは次の2種類です。
- 給与支払報告書・公的年金等支払報告書を市町村へ出す義務がある勤め先・年金の支払者から1月1日現在で給与・公的年金等を受けていて、前年中に給与所得以外の所得(年金の人は公的年金等に係る所得以外の所得)がなかった人。年金の人は、社会保険料控除(一部を除く)・生命保険料控除などを受けるときは対象外です。
- 所得割の納税義務がないと認められる人のうち、その市町村の条例で定める人。
裏返すと、副業所得18万円の会社員や、年金以外に雑所得15万円がある年金受給者は、所得税の申告が121条の条件を満たして不要でも、給与・年金以外の所得を持っているので、上の条例で定める人などを除き、原則として住民税の申告が要ります。そして所得税の確定申告書を提出した人は、政令で定める場合と先に住民税の申告書を提出していた場合を除き、地方税法317条の3第1項により住民税の申告書も提出したものとみなされます。
1つ目の人(同条1項・2項で申告義務がある人を除く)でも、医療費控除・雑損控除などを受けるには同条3項の申告が要り、寄附金税額控除を受けるには寄附金の種類に応じて同条3項または5項の申告が要ります。支払報告書が1月31日までに提出されず、市町村長が必要と認めて指定した人は、同条2項により指定された期限までに申告書を出します。
条文を読む(地方税法317条の3第1項)
第二百九十四条第一項第一号の者が前年分の所得税につき所得税法第二条第一項第三十七号の確定申告書(以下本条において「確定申告書」という。)を提出した場合(政令で定める場合を除く。)には、本節の規定の適用については、当該確定申告書が提出された日に前条第一項から第四項までの規定による申告書が提出されたものとみなす。ただし、同日前に当該申告書が提出された場合は、この限りでない。
住民税は基礎控除の額も所得税と別です。令和8年分の所得に対する令和9年度の住民税の基礎控除は、前年の合計所得金額が2,400万円以下なら、地方税法314条の2第2項1号で43万円です。
当該納税義務者の前年の合計所得金額が二千四百万円以下である場合四十三万円
令和8年分の所得税で基礎控除104万円が使える人なら、住民税の基礎控除43万円との差は61万円あります。所得税がかからなくても、住民税の所得割が生じる場合があります。非課税となるかは、市区町村の案内で別に確認してください。所得税の申告要否だけを見て「税金の手続は何もない」と決めないための2段目の確認です。市区町村ごとの様式・期限と、給与から天引きされる特別徴収への影響は、住民税非課税のボーダーと住民税の特別徴収の記事で扱っています。
住民税 計算機で、所得税が0円でも住民税の所得割が出るかを年収と家族構成から確かめる納め過ぎがあれば義務がなくても還付申告で戻る代表的な4つの場面
所得税法122条1項は、源泉徴収税額・予納税額・外国税額控除が税額から控除しきれない居住者が、確定損失申告(123条)ができる場合を除き、還付を受けるための申告書を提出できると定めています。義務ではなく権利で、国税庁No.2030によれば、確定申告期間とは関係なく翌年1月1日から5年間提出できます。
ただし青色申告特別控除55万円・65万円など、法定申告期限までの提出が要件の特例を受けるときは、還付申告でも期限までに提出します。典型は次の4つです。
| 場面 | なぜ納め過ぎになるか | 戻る額の目安 |
|---|---|---|
| 1. 年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎ | 年末調整を受けていないため、源泉徴収された所得税額と、年間の所得金額について計算した所得税額との差が精算されていない | 源泉徴収税額の合計が年税額を上回る差額 |
| 2. 原稿料・講演料などの報酬から源泉徴収を受け、その源泉徴収税額が年税額より多いフリーランス・副業 | 所得ではなく支払額(源泉徴収の対象となる金額)に対して引かれるので、経費や所得控除を反映していない | 源泉徴収の対象となる原稿料・講演料など200万円を1回で受け取り、年税額3,000円の例で約30万円(源泉306,300円−税額3,000円) |
| 3. 医療費控除・寄附金控除・雑損控除があり、源泉徴収税額などが年税額を上回る | 年末調整ではできない控除。ふるさと納税はワンストップ特例を使えない人 | 納めた源泉徴収税額などが、控除を引いた後の年税額を上回る差額 |
| 4. 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の初年度で、納めた所得税がある | 初年度は確定申告で受ける | 納めた源泉徴収税額などが、控除を引いた後の年税額を上回る差額 |
4は、住宅のほか本人の所得・居住・借入金の要件を含む、住宅ローン控除の適用要件を満たす人の場合です。
1は、源泉徴収票の源泉徴収税額が年税額を上回っていれば、その差が戻ります。2は、源泉徴収税額が年税額を上回って控除しきれない場合に120条1項の括弧書きで義務が外れる人の典型で、義務がないことと戻らないことは別です。
3と4は、控除を使うために自分で申告する場面です。3の控除はどれも所得控除なので、年税額が減る目安は控除額×税率(5%〜45%)です。医療費控除がいくらから受けられるか(10万円は下限ではない)は医療費控除はいくらからで、還付申告と通常の申告の期限の違いは確定申告はいつまでで扱っています。医療費控除 計算機を使えば、申告する前に戻る額の見当がつきます。同じ表の3にある雑損控除は、所得税法72条1項が数えるのが災害・盗難・横領の3つだけで、詐欺や恐喝の被害は入りません。対象の範囲は雑損控除で扱っています。
医療費控除 計算機で、還付申告をする前に「いくら戻るか」を令和8年分の税率で試算する還付申告をするときに忘れやすいのが、前述の20万円以下の所得です。申告書を出す以上、給与所得だけでなく、申告不要制度で省けたはずの副業所得も載せます。その結果、還付額が数千円減ることはありますが、載せずに出した申告書は所得を過少に記載したものになります。
反対に、申告した方が得とは限らない場面もあります。申告不要を選べる上場株式等の配当や特定口座(源泉徴収あり)の譲渡益は、申告不要を選べば合計所得金額に含まれず、申告すると含まれます。合計所得金額が増えると、基礎控除の額や配偶者控除・扶養控除の所得要件、国民健康保険料に影響することがあります。還付額だけでなく、合計所得金額がどこまで増えるかを見てから決める場面です。
申告が必要と分かった後の準備・作成・提出・納税の流れは、確定申告のやり方にまとめています。年の途中で亡くなった人に所得税の申告義務がある場合は、相続人が準確定申告をします。
申告義務があるのに期限を過ぎた場合
所得税の申告義務がある人が申告期限を過ぎて申告すると、期限後申告として扱われます。申告内容などによっては、本来納める税金に加えて無申告加算税が課されます。
無申告加算税には不適用の要件があり、税務署からの調査の事前通知や調査による決定を予知していたかによって税率も異なります。期限後申告により納める税金には、納付の日までの延滞税がかかる場合があります(国税庁No.2024)。申告義務がなく、納め過ぎた税金を返してもらう還付申告だけをする場合とは分けて考えます。
申告義務の条文(所得税法120条1項)が求める条件
所得税の申告義務を定めるのは所得税法120条1項です。条文に金額は書いてなく、義務が生まれる条件は次の3段です。
- 所得の合計が所得控除の合計を超えること。ここでいう所得は総所得金額・退職所得金額・山林所得金額で、収入ではありません。所得控除は雑損控除から基礎控除までの全部の合計です。
- 超えた部分に税率を掛けた税額が配当控除の額を超えること。年末調整で住宅借入金等特別控除を受けた人は、配当控除とその控除額との合計額と比べます(措置法41条の2の2第6項)。
- 外国税額控除・源泉徴収税額・予納税額(予定納税額など)が税額から控除しきれない人は、義務から外れます。納め過ぎの人に申告を強制しない、という設計です。この人は、確定損失申告(123条)ができる場合を除き、122条の還付申告で取り戻せます。
確定損失申告(123条)の申告書を出す場合も、この義務から外れます。令和8年12月1日施行版の第1項本文は次のとおりです。
条文を読む(所得税法120条1項)
居住者は、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が第二章第四節(所得控除)の規定による雑損控除その他の控除の額の合計額を超える場合において、当該総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額からこれらの控除の額を第八十七条第二項(所得控除の順序)の規定に準じて控除した後の金額をそれぞれ課税総所得金額、課税退職所得金額又は課税山林所得金額とみなして第八十九条(税率)の規定を適用して計算した場合の所得税の額の合計額が配当控除の額を超えるとき(第三号に掲げる所得税の額の計算上控除しきれなかつた外国税額控除の額がある場合、第四号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた同号に規定する源泉徴収税額がある場合又は第五号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた予納税額がある場合を除く。)は、第百二十三条第一項(確定損失申告)の規定による申告書を提出する場合を除き、第三期(その年の翌年二月十六日から三月十五日までの期間をいう。以下この節において同じ。)において、税務署長に対し、次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
つまり「いくらから」は、所得控除の合計や源泉徴収税額などによって人ごとに変わります。収入が同じ300万円でも必要経費が違えば所得が違い、国民健康保険料や生命保険料の控除がある人とない人では所得控除の合計が違います。この記事のケース別の数字は、所得控除が基礎控除だけで、税額控除も、控除しきれない源泉徴収税額・予納税額・外国税額控除もない居住者を仮定した目安です。
収入と所得の言葉の違いそのものは、収入と所得の違いの記事で10種類の所得区分と4段階の計算を整理しています。本記事では、その所得を申告義務の物差しに当てる部分だけを扱います。
令和8年分の基礎控除は居住者の合計所得金額の段階で決まる
令和8年分の基礎控除は、本体62万円(所得税法86条1項1号)に措置法41条の16の2の加算を足した額で、居住者の合計所得金額によって段階があります。合計所得金額489万円以下なら62万円+42万円=104万円、489万円超655万円以下なら62万円+5万円=67万円です。どちらも令和8年度改正(令和8年法律第12号)によるもので、令和8年12月1日に施行されます。
令和8年11月30日以前に提出する令和8年分の準確定申告(死亡・出国)は、改正前の額です(国税庁No.1199の注2)。令和7年分も同じで、令和7年12月1日より前に提出した令和7年分の準確定申告は改正前の額です。この記事の「令和7年分」「令和8年分」の額は、これらの準確定申告を除いたものです。
年分ごとの居住者の額は次のとおりです。
| 合計所得金額 | 令和2年分〜令和6年分 | 令和7年分 | 令和8年分・令和9年分 | 令和10年分以後(現条文) |
|---|---|---|---|---|
| 132万円以下 | 48万円 | 95万円 | 104万円 | 99万円 |
| 132万円超 336万円以下 | 48万円 | 88万円 | 104万円 | 62万円 |
| 336万円超 489万円以下 | 48万円 | 68万円 | 104万円 | 62万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 48万円 | 63万円 | 67万円 | 62万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 48万円 | 58万円 | 62万円 | 62万円 |
| 2,350万円超 2,400万円以下 | 48万円 | 48万円 | 48万円 | 48万円 |
| 2,400万円超 2,450万円以下 | 32万円 | 32万円 | 32万円 | 32万円 |
| 2,450万円超 2,500万円以下 | 16万円 | 16万円 | 16万円 | 16万円 |
| 2,500万円超 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 |
令和元年分以前の基礎控除は、合計所得金額にかかわらず一律38万円でした。居住者でない人の基礎控除は、令和7年分は58万円、令和8年分以後は62万円が最高額です(国税庁No.1199の注3)。
「48万円」は令和6年分までの額
「基礎控除48万円を超えたら申告」という説明は、令和2年分〜令和6年分の、合計所得金額2,400万円以下の人の基礎控除の額にもとづくものです。令和7年度改正(令和7年12月1日施行)で本体が58万円に上がり、令和7年分は居住者に限り措置法の加算(37万・30万・10万・5万円の4段階)を足して最大95万円になりました。令和8年度改正は、本体と加算の両方を書き換えています。改正後の所得税法86条1項1号は次のとおりです。
その居住者の合計所得金額が二千三百五十万円以下である場合六十二万円
加算を定める措置法41条の16の2第1項の柱書は次のとおりで、見出しも「令和八年分以後の各年分の基礎控除等の特例」に変わっています。
条文を読む(措置法41条の16の2第1項柱書)
令和八年分以後の各年分において、居住者のその年分の所得税に係る合計所得金額(所得税法第二条第一項第三十号の合計所得金額をいう。第一号において同じ。)が六百五十五万円(令和十年分以後の各年分にあつては、百三十二万円)以下である場合における同法第八十六条第二項に規定する基礎控除の額は、同条第一項の規定にかかわらず、同項第一号に定める金額に次の各号に掲げる年分の区分に応じ当該各号に定める金額を加算した額とする。
同項1号は、令和8年分と令和9年分について、合計所得金額489万円以下なら42万円、489万円超(655万円以下)なら5万円を加算すると定めています。令和7年分の加算の4段階とは、段の数も額も違います。
令和7年分の列は国税庁No.1199の表と現行の措置法41条の16の2(令和7年分以後の各年分の基礎控除等の特例)で、令和8年分の列は12月1日施行版の条文で確かめました。国税庁No.1199(令和8年4月1日現在法令等)も令和8年分を104万円・67万円・62万円などの段階で表示し、令和8年分の規定は令和8年12月1日に施行されると注記しています。令和8年分の申告書を作るときは、本人の所得区分や準確定申告の提出時期に対応する控除額かどうかを確かめます。
令和7年12月1日より前に令和7年分の準確定申告書を提出した人は、改正前の額で申告しています。改正後の規定の適用で申告した事項に異動が生じるときは、同日から5年以内に更正の請求ができます(令和7年法律第13号附則7条2項、措置法の加算は同附則37条の2第3項)。
令和10年分以後は、条文上は加算が37万円(合計所得金額132万円以下の居住者)だけに戻り、本体62万円と合わせて99万円です。ただしこの部分は将来の改正で動く可能性が高いので、その年分になったら条文を引き直します。
よくある質問
収入が103万円を超えたら確定申告が必要ですか?
収入の額だけでは決まりません。判定に使うのは、収入から給与所得控除や必要経費を引いた所得です。対象・条件は会社員の節で確認できます。
副業の収入が20万円を超えたら必ず確定申告ですか?
必ずではありません。副業が事業や雑所得なら、20万円で数えるのは収入ではなく所得です。収入26万円でも必要経費が8万円あれば所得は18万円で、20万円以下に収まります。この所得額だけでは申告の要否は決まりません。会社員の申告不要制度の対象・例外も確認します。副業が別の勤め先の給与なら、121条1項2号で判定します。
基礎控除は48万円ではないのですか?
48万円は、令和2年分〜令和6年分の、合計所得金額2,400万円以下の人の額です。令和8年分は、合計所得金額489万円以下の居住者なら104万円です。段階ごとの額と、準確定申告の扱いは基礎控除の節にまとめました。
年金が400万円以下なら何もしなくてよいですか?
所得税は、公的年金等の収入400万円以下、その全部が源泉徴収の対象、年金以外の所得(個人年金保険などの雑所得を含む)20万円以下の3つを満たせば申告不要です(所得税法121条3項・年金の節)。ただし住民税の申告が別に要る場合があり、医療費控除や社会保険料控除などで源泉徴収税額が戻る人は還付申告ができます。
所得税の申告が不要なら住民税の申告も不要ですか?
同じではありません。住民税には、所得税のような20万円以下の申告不要の制度がありません(地方税法317条の2第1項)。所得税の確定申告書を出した人は、政令で定める場合などを除き、住民税の申告書も出したものとみなされます。出さなかった人で、給与・年金以外の所得があるなどで住民税の申告が必要なら、市区町村へ申告書を出します。
申告義務がないのに申告して損をすることはありますか?
源泉徴収税額や予定納税額が税額より多い人は、還付申告で納め過ぎが戻るだけで、追加の税額は生じません。ただし申告する以上は、給与所得者の申告不要制度で省けたはずの給与所得・退職所得以外の20万円以下の所得(副業の所得など)も含めて計算するので、その分だけ還付額が減ることはあります。申告不要を選べる上場株式等の配当や特定口座(源泉徴収あり)の譲渡益を申告に含めると合計所得金額が増え、控除の要件や保険料に影響する場合があります。
学生でアルバイト収入が120万円あります。確定申告は必要ですか?
給与収入120万円だけで、その給与の全部が源泉徴収の対象なら不要です。令和8年分(令和8年11月30日以前に提出する準確定申告を除く)の居住者なら、給与所得は120万円−74万円=46万円で基礎控除104万円以下、所得税は0円です。月々の給与から源泉徴収されていて年末調整を受けていない場合は、源泉徴収税額のうち年税額を上回る分が還付申告で戻ります。
出典
所得税法・租税特別措置法(令和8年12月1日施行版)・国税通則法・地方税法・国税庁タックスアンサーの一次情報に基づく。
- e-Gov法令検索「所得税法」
- 120条1項(確定所得申告)、121条1項・3項(確定所得申告を要しない場合)、122条(還付等を受けるための申告)
- 89条(税率)、86条(基礎控除)、82条(勤労学生控除)、35条4項(公的年金等控除)、28条(給与所得)、2条1項32号
- 令和7年12月1日・令和8年12月1日の施行日と、それより前に提出した準確定申告の経過措置は、改正附則(令和7年法律第13号附則1条・2条・3条・7条、令和8年法律第12号附則1条・2条・3条・9条)
- e-Gov法令検索(API v2。版 340AC0000000033_20261201_508AC0000000012)で令和8年12月1日施行版の条文を確認。86条の62万円は、令和8年8月12日施行の版の58万円と比較。
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」
- 41条の16の2(令和八年分以後の各年分の基礎控除等の特例)、29条の4(給与所得控除の最低控除額等の特例)
- 41条の15の3(公的年金等控除の最低控除額等の特例)、41条の15の4(消滅時効を援用せずに支払うこととされた公的年金等に対する源泉徴収の不適用)、25条の2(青色申告特別控除)
- 令和8年8月12日施行の版は、居住者の令和7年分の加算37万・30万・10万・5万円。令和7年12月1日前に提出した令和7年分の準確定申告の経過措置は、令和7年法律第13号附則37条の2第3項
- e-Gov法令検索で令和8年12月1日施行版の条文を確認(加算42万円・5万円と74万円)。
- e-Gov法令検索「地方税法」
- e-Gov法令検索「国税通則法」・「国税通則法施行令」
- 国税通則法118条1項(課税標準の1,000円未満切捨て)、119条1項(確定金額の100円未満切捨て)。所得税の確定申告に使う規定
- 国税通則法118条2項・119条2項(政令で定める国税の1円未満切捨て)
- 国税通則法施行令40条2項2号(所得税法190条・192条の年末調整で徴収する所得税を、国税通則法119条2項の「政令で定める国税」に含める規定)
- e-Gov法令検索で2026年9月8日に確認(API v2。国税通則法は令和8年6月24日施行の版 337AC0000000066_20260624_508AC0000000046、施行令は令和8年4月1日施行の版 337CO0000000135_20260401_507CO0000000126)。
- 国税庁「給与所得者に生命保険の満期返戻金などの一時所得があった場合」
- 国税庁「一時所得」
- 国税庁「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」
- 国税庁「給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合」
- 国税庁「No.2020 確定申告」。申告が必要な人の定義、給与所得者と年金受給者の申告不要制度、源泉徴収を要しない年金の扱い。
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」および同ページの質疑応答「確定申告を要しない場合の意義」。7つの類型、2か所給与の(注)150万円、確定申告する場合は20万円以下の所得も申告する旨。
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」。公的年金等の受給者の申告不要制度、注1の還付申告、注2の住民税申告。
- 国税庁「No.1199 基礎控除」(令和8年4月1日現在法令等)。合計所得金額の段階ごとの年分別の表と、注1〜4(令和8年分の規定の施行日、準確定申告の扱い、居住者でない場合の最高額、令和元年分以前の一律38万円)。
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」。基礎控除の引上げ・給与所得控除の最低保障額の引上げの概要と、改正の施行日(令和8年12月1日)の案内(令和8年11月30日以前に提出する準確定申告の扱いはNo.1199の注2)。確認日:2026年9月8日。
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」「No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか」。給与所得控除の最低額と、ほかに所得がない場合に所得税がかからないパート収入の額の年分別の案内。
- 国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」。期限後申告、無申告加算税の区分・不適用要件、延滞税。
- 国税庁「No.2070 青色申告制度」。損益通算後に残る純損失の繰越期間と特定非常災害の特例。
- 国税庁「No.2030 還付申告」。翌年1月1日から5年間(青色申告特別控除など法定申告期限までの提出が要件の特例を受ける場合は期限内)、中途退職・医療費控除・住宅借入金等特別控除などの具体例。
- 国税庁「No.2795 原稿料や講演料等を支払ったとき」。報酬・料金等の源泉徴収税額の算式(100万円以下か100万円超かは、所得税法205条により同一人に対し1回に支払われる金額で判定)と、消費税等の額の扱い。同ページの具体例は、150万円で204,200円。確認日:2026年9月8日。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。