確定申告はいつまで? — 条文が決めているのは「3月15日まで」ではなく「2月16日から3月15日までの期間」
結論から言うと、令和8年分の確定申告の期限は令和9年(2027年)3月15日です。ただし所得税法の条文に「3月15日まで」という書き方は出てきません。120条1項は「第三期において」提出しなければならないと書き、その第三期を括弧書きで「その年の翌年二月十六日から三月十五日までの期間」と定義しています。
この違いは言葉遊びではありません。条文は終わりの日だけでなく、始まりの日も決めているということです。だから「2月16日より前に確定申告書は出せないのか」という疑問が出てきますし、その裏返しとして還付申告が1月1日から出せる理由も条文から説明がつきます。還付申告の根拠である122条には、この「第三期において」が付いていないからです。
そして期限は1つではありません。納付、延納、還付、亡くなった方の申告、個人事業者の消費税で、それぞれ別の日が定められています。特に消費税だけは3月31日で、所得税と16日ずれます。以下、条文で順に確かめます。
条文には「3月15日まで」と書かれていない — 「第三期において」
所得税法120条1項は、確定申告書を提出すべき人について、次のように書いています。
第三期(その年の翌年二月十六日から三月十五日までの期間をいう。以下この節において同じ。)において、税務署長に対し、次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
「第三期」という言葉の定義は、この括弧書きにしかありません。同じ章には第一期と第二期も出てきますが、そちらは別の条にあります。104条1項が予定納税について、第一期を「その年七月一日から同月三十一日までの期間」、第二期を「その年十一月一日から同月三十日までの期間」と定義しています。3つの期は、どれも「期間」として定義されているのが特徴です。
120条1項は「三月十五日までに」という形ではなく、「第三期(……)において……提出しなければならない」という形で書かれています。文言どおりに読めば、2月16日より前は、この条文が想定する提出の窓の外です。実務上、申告書の作成そのものを早く済ませることはできますが、この期間の始まりが条文に書かれているという点は、次に述べる還付申告との対比で効いてきます。
期限が日曜・祝日なら翌日にずれる — 令和7年分は実際に1日ずれた
3月15日が休日に当たる年があります。このとき期限は動きます。根拠は所得税法ではなく国税通則法10条2項です。
国税に関する法律に定める申告、申請、請求、届出その他書類の提出、通知、納付又は徴収に関する期限(時をもつて定める期限その他の政令で定める期限を除く。)が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他一般の休日又は政令で定める日に当たるときは、これらの日の翌日をもつてその期限とみなす。
この条文は「翌日をもつてその期限とみなす」と書いており、翌日が休日ならさらに翌日へ、と順に送られます。直近の実例を並べると次のようになります(曜日は暦から計算したものです)。
| 年分 | 本来の3月15日 | 実際の期限 |
|---|---|---|
| 令和7年分(令和8年に提出) | 2026年3月15日(日) | 2026年3月16日(月)へ1日ずれた |
| 令和8年分(令和9年に提出) | 2027年3月15日(月) | 2027年3月15日(月)のまま |
注意したいのは、ずれるのは終わりの日だけだという点です。10条2項は「期限」について書いた条文で、期間の始まりについては何も言っていません。
納付期限は申告期限と同じ日。振替納税だけ後ろにずれる
所得税法128条は、納付についても第三期という同じ言葉を使っています。
第三期において、当該金額に相当する所得税を国に納付しなければならない。
つまり申告と納付は同じ日が期限です。ここが法人税と違うところで、法人は事業年度終了の日の翌日から2か月以内という別の枠組みで動きます。
例外的に日付が後ろへ動くのが振替納税です。国税庁タックスアンサーNo.9201は、これを預貯金口座からの口座引落しにより国税を納付する手続と説明しており、根拠法令等として国税通則法34条の2を挙げています。引落しの日は毎年国税庁が公表するため、年によって変わります。
同じタックスアンサーは、対象を期限内に提出された確定申告分・予定納税分・中間申告分に限るとし、期限後申告分や修正申告分は利用できないと明記しています。また、残高不足等で振替ができなかった場合は法定納期限の翌日から延滞税がかかるとされています。引落し日まで待ってもらえるのは、期限内に申告した人だけということです。
半分納めれば5月31日まで延ばせる(延納)
3月15日にお金が用意できないとき、所得税には延納という仕組みがあります。所得税法131条1項は、納付すべき所得税額の2分の1に相当する金額以上を期限までに納付したときについて、こう定めています。
その者は、その残額についてその納付した年の五月三十一日までの期間、その納付を延期することができる。
使うには2つの条件があります。1つは半分以上を期限までに納めていること、もう1つは同条2項が求める延納届出書の提出で、これも納付期限までに出す必要があります。2項は届出書に、128条により納付すべき税額、そのうち期限までに納付する金額その他財務省令で定める事項を記載することを求めています。
延納した部分には利子税がつきます。3項の書きぶりは次のとおりです。
その延納の期間の日数に応じ、年七・三パーセントの割合を乗じて計算した金額に相当する利子税をその延納に係る所得税にあわせて納付しなければならない。
ただしこの年7.3%がそのまま適用されるわけではありません。租税特別措置法93条1項1号が所得税法131条3項を名指しし、その年の利子税特例基準割合が年7.3%に満たない場合はその割合とする、としています。利子税特例基準割合は同条2項で平均貸付割合に年0.5%を加算した割合と定義され、平均貸付割合は前年11月30日までに財務大臣が告示します。実際に適用される割合は年ごとに変わるため、国税庁の公表値で確認する必要があります。
なお、5月31日が休日ならこの期限も国税通則法10条2項で翌日へ動きます。2026年5月31日は日曜、2027年5月31日は月曜です。
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還付を受けるための申告は、所得税法122条が定めています。この条文を120条1項と並べて読むと、違いがはっきりします。
| 120条1項(確定所得申告) | 122条1項(還付等を受けるための申告) | |
|---|---|---|
| 語尾 | 提出しなければならない | 提出することができる |
| 時期の指定 | 「第三期において」がある | 無い |
| 結果 | 翌年2月16日〜3月15日 | 翌年1月1日から5年間 |
122条には「第三期において」という文言がありません。だから2月16日を待つ必要がなく、1月1日から提出できます。では5年はどこから来るのかというと、所得税法ではなく国税通則法74条1項です。
還付金等に係る国に対する請求権は、その請求をすることができる日から五年間行使しないことによつて、時効により消滅する。
国税庁タックスアンサーNo.2030も、還付申告書は確定申告期間とは関係なくその年の翌年1月1日から5年間提出することができる、としています。
同じNo.2030は、青色申告特別控除(55万円、65万円)を受けようとする場合など、法定申告期限までの確定申告書の提出が要件となっている特例を適用する場合には、還付申告であっても法定申告期限までに提出する必要があるとしています。還付になるかどうかと、期限内申告が要件になっているかどうかは別の話です。
亡くなった方の申告期限は「4か月以内」ではない
年の途中で亡くなった方の確定申告(準確定申告)について、所得税法125条1項はこう書いています。
その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日
「4か月以内」と要約されることが多い部分ですが、条文は起算日と終わりの日を明示しています。起算日は亡くなった日ではなく相続の開始があったことを知った日の翌日で、終わりは4月を経過した日の前日です。相続人が複数いて、知った日が違えば、期限も人によって違うことになります。
納付の期限も3月15日ではありません。129条が定めています。
これらの申告書の提出期限までに、当該金額に相当する所得税を国税通則法第五条(相続による国税の納付義務の承継)に定めるところにより国に納付しなければならない。
つまり申告期限がそのまま納付期限で、こちらも4月を経過した日の前日までということになります。
消費税だけ3月31日 — 所得税と16日ずれる
個人事業者が消費税の課税事業者である場合、所得税と消費税の2つを申告することになります。この2つは期限が違います。消費税法45条1項の原則は課税期間の末日の翌日から2か月以内ですが、個人事業者についてはこれを上書きする特例が租税特別措置法86条の4第1項に置かれています。
同条第一項の規定にかかわらず、その年の翌年三月三十一日とする。
原則どおりなら2月末日ですが、特例で3月31日まで延びています。所得税の3月15日より16日あとです。同じ年の確定申告のつもりで所得税に合わせて消費税も3月15日に出すのは早い分には問題ありませんが、逆に「消費税は3月31日だから所得税も月末でよい」と読み替えると、所得税が期限後申告になります。
| 税目 | 令和8年分の期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 所得税・復興特別所得税 | 2027年3月15日(月) | 所得税法120条1項(第三期) |
| 個人事業者の消費税・地方消費税 | 2027年3月31日(水) | 租税特別措置法86条の4第1項 |
| 贈与税 | 所得税と同じ枠(相続税法28条1項) | 相続税法 |
期限を過ぎたら — 1か月以内なら加算税がかからない道がある
期限を過ぎて出す申告は期限後申告として扱われます。国税庁タックスアンサーNo.2024は、税務署からの調査の事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合は納付すべき税金の5%の無申告加算税がかかるとしています。事前通知の後になると、50万円までの部分が10%、50万円超300万円までが15%、300万円超が25%と段階的に上がります(令和5年分以降)。
ただし同じページは、次の要件をすべて満たす場合には無申告加算税はかからないとしています。
- その期限後申告が、法定申告期限から1か月以内に自主的に行われていること
- 納付すべき税金の全額を法定納期限(口座振替納付の手続をした場合は期限後申告書を提出した日)までに納付していること
- その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつこの不適用を受けていないこと
もう1つ押さえておきたいのが納期限の動き方です。国税通則法35条2項1号は、期限後申告書により納付すべき税額の納期限を次の日としています。
その期限後申告書又は修正申告書を提出した日
提出した日が納期限になるということは、その日に納付しなければ翌日から延滞税が動き出すということです。申告書を出してから資金を用意するのではなく、順序としては納付できる状態にしてから提出する形になります。
よくある質問
Q. 確定申告は2月16日より前に提出できますか?
A. 所得税法120条1項は「第三期において」提出しなければならないと定め、第三期を同項の括弧書きで「その年の翌年二月十六日から三月十五日までの期間」と定義しています。条文は終わりの日だけでなく始まりの日も置いている形です。一方、還付を受けるための申告を定めた122条にはこの「第三期において」という文言がなく、国税庁タックスアンサーNo.2030も還付申告書は確定申告期間とは関係なく翌年1月1日から提出できるとしています。納める税金がある申告と還付を受ける申告とで、条文上の扱いが分かれています。
Q. 3月15日が日曜日のときはどうなりますか?
A. 国税通則法10条2項が、申告や納付に関する期限が日曜日・国民の祝日に関する法律に規定する休日その他一般の休日または政令で定める日に当たるときは、これらの日の翌日をもってその期限とみなすと定めています。令和7年分の確定申告期限にあたる2026年3月15日は日曜日であったため、期限は翌日の3月16日でした。令和8年分にあたる2027年3月15日は月曜日なので、この規定によるずれは生じません。なお動くのは終わりの日で、期間の始まりについてこの規定は何も定めていません。
Q. 所得税と消費税で期限が違うのはなぜですか?
A. 消費税法45条1項の原則は課税期間の末日の翌日から2か月以内で、個人事業者なら2月末日にあたります。これに対して租税特別措置法86条の4第1項が、個人事業者のその年の12月31日の属する課税期間に係る申告書の提出期限を、同条1項の規定にかかわらずその年の翌年3月31日とする特例を置いています。所得税の期限は所得税法120条1項の第三期の終わりである3月15日なので、2つの税目で16日の差が生じます。根拠となる法律が別々に期限を決めているという構造です。
Q. 3月15日に払えないときは、申告だけ先に出せますか?
A. 所得税法131条1項は、納付すべき所得税額の2分の1に相当する金額以上を納付の期限までに納付したときは、その残額についてその納付した年の5月31日までの期間、納付を延期することができるとしています。同条2項により、納付期限までに延納届出書を提出することが適用の条件です。延納した部分には同条3項の利子税がかかり、条文上は年7.3%ですが、租税特別措置法93条1項1号によりその年の利子税特例基準割合が年7.3%に満たない場合はその割合となります。半分も納付できない場合は、この規定の要件を満たさないことになります。
Q. 還付申告は5年間できると聞きましたが、いつからの5年ですか?
A. 国税庁タックスアンサーNo.2030は、還付申告書はその年の翌年1月1日から5年間提出することができるとしています。根拠は国税通則法74条1項で、還付金等に係る国に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年間行使しないことによって時効により消滅すると定めています。令和8年分であれば令和9年1月1日が起点です。ただし同ページは、青色申告特別控除の55万円・65万円のように法定申告期限までの提出が要件となっている特例を適用する場合は、還付申告であっても法定申告期限までに提出する必要があるとしています。
Q. 亡くなった父の確定申告は、いつまでに出すのですか?
A. 所得税法125条1項は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から4月を経過した日の前日までに提出しなければならないとしています。起算日は亡くなった日そのものではなく、相続の開始があったことを知った日の翌日です。納付についても129条が、これらの申告書の提出期限までに納付しなければならないとしており、申告期限と納付期限が同じ日になります。3月15日という日付はこの規定には出てきません。
Q. 期限を1週間過ぎてしまいました。加算税はいくらかかりますか?
A. 国税庁タックスアンサーNo.2024は、法定申告期限から1か月以内に自主的に行われた期限後申告について、納付すべき税金の全額を法定納期限までに納付していることと、提出した日の前日から起算して5年前までの間に無申告加算税または重加算税を課されたことがなくこの不適用も受けていないことの両方を満たす場合には、無申告加算税はかからないとしています。この要件を満たさない場合は、調査の事前通知の前に自主的に申告したものであれば5%の無申告加算税がかかります。いずれの場合も延滞税は別に計算されます。
Q. 振替納税にしていれば、期限を過ぎても引き落としてもらえますか?
A. 国税庁タックスアンサーNo.9201は、振替納税の対象を期限内に提出された確定申告分や予定納税分、中間申告分に限るとし、期限後申告分や修正申告分は利用できないとしています。したがって期限後申告になった分は振替納税の対象外で、別に納付することになります。また同ページは、残高不足等で振替納税ができない場合には法定納期限の翌日から延滞税がかかるとしており、引落し日ではなく法定納期限が延滞税の起点である点にも触れています。
出典
- e-Gov法令検索 所得税法(昭和四十年法律第三十三号) — 第104条第1項(第一期・第二期の定義)、第120条第1項(第三期の定義と確定所得申告)、第122条第1項(還付等を受けるための申告。「第三期において」の文言が無いこと)、第125条第1項(年の中途で死亡した場合の確定申告)、第128条(確定申告による納付)、第129条(死亡の場合の確定申告による納付)、第131条第1項・第2項・第3項(確定申告税額の延納)。e-Gov法令API v2 で令和8年12月1日施行版(リビジョン 340AC0000000033_20261201_508AC0000000012)を取得し、現行版と条文を機械比較して104・122・125・128・129・131に差分が無いことを確認
- e-Gov法令検索 国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号) — 第10条第2項(期限の特例)、第35条第2項第1号(期限後申告書等に係る納期限)、第74条第1項(還付金等の消滅時効)。同上(令和8年6月24日施行版)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号) — 第86条の4第1項(個人事業者に係る消費税の確定申告期限の特例)、第93条第1項第1号および第2項(利子税の割合の特例・利子税特例基準割合の定義)。同上(令和8年8月12日施行版)
- 国税庁タックスアンサー No.2020 確定申告(申告等の期間・期限)、No.2024 確定申告を忘れたとき(無申告加算税の割合と不適用の要件)、No.2030 還付申告(翌年1月1日から5年間・期限内申告が要件となる特例)、No.9201 振替納税のお勧め(対象範囲と延滞税の起点)。いずれも令和8年8月20日に本文を確認
- 曜日は暦から計算した(2026年3月15日=日曜、2026年3月31日=火曜、2027年3月15日=月曜、2027年3月31日=水曜、2026年5月31日=日曜、2027年5月31日=月曜)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。