経理ミニツールズ

勤労学生控除シミュレーター

働く学生の勤労学生控除(所得税27万円・住民税26万円)の対象になるかを要件から判定し、所得税と住民税それぞれで実際にいくら安くなるかを計算します。令和8年分から所得要件は89万円(バイト年収163万円)に上がりました。対象外のときはどの要件で外れたかを名指しします。

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勤労学生控除は、働きながら学ぶ学生の所得から27万円(住民税は26万円)を差し引ける所得控除です(所得税法82条)。令和8年分から対象になる所得の上限が合計所得89万円=バイト年収163万円に上がりました。ただし知っておきたいのは、同じ改正で基礎控除が104万円に上がった結果、この控除は所得税では効かなくなったことです。要件を満たす人の所得税は、控除がなくてももともと0円。実際に効くのは住民税(年間最大26,500円)月々の源泉徴収です。上の計算機は、この「本当の効き目」まで含めて計算します。以下では要件・改正・親の扶養との関係を条文にもとづいて解説します(一般的な計算方法の説明であり、個別の税務相談ではありません)。

使い方と前提

バイトの年収(額面)をそのまま入れてください 給与所得への換算は、令和8年分の求め方(給与所得控除の定額74万円)で自動計算します。バイトをかけもちしている人は全部の合計を入れてください。フリーランスの収入や配当などがある人は、それぞれの欄に所得(収入から経費を引いた後)を入れます。

判定は所得税法2条1項32号の要件をそのまま使います。住民税は、令和8年分の所得に対する令和9年度分(2027年6月から払う分)を、標準税率・均等割・森林環境税・調整控除まで含めて計算し、控除がある場合とない場合の差を出します。

本ツールの結果は目安です。均等割の額など自治体によって少し変わるほか、株式の譲渡益など分離課税の所得は扱いません。申告の前に税務署・学校の窓口・税理士でご確認ください。

勤労学生控除の3つの要件

勤労学生控除の対象になるのは、次の3つすべてを満たす人です(所得税法2条1項32号)。

要件内容つまずきやすい点
① 学校の学生・生徒であること下の表の3区分のどれかに当てはまること専修学校・各種学校は課程の要件がある(下の表)
② 働いて得た所得があること自分の勤労にもとづく給与所得・事業所得・退職所得・雑所得(給与所得等)があること奨学金・仕送り・配当だけの人は対象外
③ 所得が少ないこと合計所得金額89万円以下、かつ働きによらない所得(給与所得等以外)が10万円以下バイト給与だけなら年収163万円以下。配当などが10万円を超えると、合計が89万円以下でも対象外

「学校」の範囲は、条文が次の3区分を列挙しています。

区分あてはまる学校条件
イ 学校教育法1条の学校大学・大学院・短大・高等専門学校・高校・中学校など(通信制・定時制・放送大学を含む)無条件で対象
ロ 専修学校・各種学校専門学校・看護学校・調理師学校など(国・地方公共団体・学校法人などが設置したもの)課程の要件あり: 職業に必要な技術を教える・修業期間1年以上など(施行令11条の3)。満たすかどうかは学校が発行する証明書で確認できます
ハ 認定職業訓練職業訓練法人が行う認定職業訓練(職業能力開発促進法)を受ける訓練生ロと同様の課程の要件あり

令和8年分から所得要件は89万円(バイト年収163万円)

所得要件は85万円 → 89万円に上がりました(令和8年分から) 令和8年度税制改正で、勤労学生の合計所得金額の要件は85万円以下から89万円以下に引き上げられました。バイト給与だけなら、給与所得控除の定額74万円を足した年収163万円以下がこのラインです。改正法の経過措置(令和8年法律第12号 附則2条)が「令和8年分以後の所得税について適用」と定めているので、2026年のバイト代からこの新しいラインで判定されます。施行日(2026年12月1日)より前に令和8年分の申告をした人は、5年以内なら更正の請求で取り戻せます(同附則2条2項)。

ネット上の解説には、まだ改正前の「130万円まで」(旧・所得75万円)や令和7年分の「150万円まで」(所得85万円)と書かれたページが多く残っています。令和8年分(2026年)の正しいラインは163万円です。住民税のほうも、地方税法が所得税の定義をそのまま準用しているため(314条の2第9項)、令和8年分の所得に対する令和9年度分から同じ89万円で判定されます。

実は所得税には効かない — 基礎控除104万円が要件89万円を包含

ここがこの控除の一番知られていない点です。同じ令和8年度改正で基礎控除が104万円(合計所得489万円以下の人)に上がった結果、次の関係が成り立ちます。

勤労学生控除の要件(合計所得89万円以下)を満たす人は、控除がなくても所得税が0円です 合計所得89万円以下 < 基礎控除104万円 なので、収入がバイト給与など総合課税の所得だけなら、基礎控除を引いた時点で課税所得は必ず0円になります。つまり令和8年分の所得税では、勤労学生控除27万円を足しても引く相手がもうありません。「勤労学生控除で所得税を安くする」という古い解説の図式は、令和8年分からは成り立たなくなりました。
バイト年収と「壁」の位置関係(令和8年分) 100万円 190万円 119万円 住民税がかかり始める 143万円 控除があれば所得割0円はここまで 163万円 勤労学生控除の上限(所得89万円) 178万円 所得税がかかり始める 勤労学生控除が効く帯(住民税) ※ 控除の上限163万円は、所得税がかかり始める178万円より15万円内側 → 対象者は控除がなくても所得税0円 ※ 住民税は119万円から。勤労学生控除は119万〜163万円の帯で住民税の所得割を減らす(均等割は残る)
バイト年収の「壁」と勤労学生控除の効き目(令和8年分・成年の単身者。119万円=住民税非課税ライン45万円+給与所得控除74万円、163万円=要件89万円+74万円、178万円=基礎控除104万円+74万円)

効くのは住民税 — 年間最大26,500円

住民税の基礎控除は所得税と違って43万円のままなので、こちらでは勤労学生控除26万円がしっかり効きます。バイト年収別の効き目です(令和9年度分・標準税率・均等割と森林環境税を含む・成年の単身者・社会保険料の本人負担なしの場合)。

バイト年収控除なしの住民税勤労学生控除ありの住民税安くなる額
119万円以下0円0円0円(もともと非課税)
130万円15,500円5,000円10,500円
143万円28,500円5,000円(均等割のみ)23,500円
150万円35,500円9,000円26,500円
163万円48,500円22,000円26,500円
均等割(年5,000円・森林環境税込み)は減りません。住民税が非課税になるかどうかは、控除を引くの合計所得45万円以下(給与収入119万円以下)で判定されるためです。勤労学生控除が減らせるのは所得割(10%の部分)だけで、年収143万円までなら所得割を0円にできます。
18歳未満(未成年)は、年収209万円まで住民税がそもそも非課税です 未成年者は前年の合計所得金額135万円以下(給与収入だけなら209万円以下)なら住民税が全額非課税です(地方税法295条1項2号)。この場合、勤労学生控除の出番はありません。基準日は賦課期日(令和9年度分なら2027年1月1日)で、18歳になっているかで判定します。上の計算機は未成年のチェックを入れるとこの非課税も織り込みます。

もうひとつの効き目が月々の源泉徴収です。年末調整の「扶養控除等申告書」で勤労学生に印を付けると、給与の源泉徴収の「扶養親族等の数」が1人増え、毎月天引きされる所得税が減ります(源泉徴収税額表の見方)。どうせ年末調整で戻る税金ですが、先に手取りが増えるのは同じ額でも早い方が便利です。

親の扶養とはまったく別の判定

勤労学生控除で一番多い誤解が「これを使うと親の扶養から外れる/外れない」というものです。2つは別の制度で、別の判定です。

勤労学生控除親の扶養控除
誰の税金が安くなるかあなた自身の住民税の所得税・住民税
判定に使う所得あなたの合計所得89万円以下(年収163万円以下)あなたの合計所得62万円以下(年収136万円以下)
超えるとどうなるか控除が受けられない親の扶養控除が受けられなくなる(19〜23歳なら特定親族特別控除で段階的に縮小)
年収136万円を超えた時点で、親の扶養控除(19〜22歳は63万円)の対象からは外れています。勤労学生控除を使うかどうかはこれに影響しません(使っても使わなくても外れるものは外れます)。ただし19歳以上23歳未満なら、親は特定親族特別控除(あなたの所得123万円=年収197万円まで段階的)を受けられるので、いきなりゼロにはなりません。親側の計算は扶養控除シミュレーター扶養控除等申告書の書き方で確認できます。また、「130万円の壁」など社会保険の扶養は税金とはさらに別の判定です(年収の壁シミュレーター)。

申告のしかた — 年末調整のC欄か確定申告

バイト先が1か所なら、年末調整だけで完結します。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」のC欄(障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生)の「勤労学生」に印を付けて出すだけです。住民税に別の手続きは不要で、年末調整の内容が市区町村に送られて令和9年度分の住民税に反映されます。

よくある質問

勤労学生控除を使うと、親の扶養から外れますか?

外れません。勤労学生控除はあなた自身の税金の計算に使う控除で、親の扶養控除はあなたの所得だけで判定される別の制度です。親の扶養控除の対象になるのはあなたの合計所得が62万円以下(バイト年収136万円以下)の場合で、これはあなたが勤労学生控除を使うかどうかと無関係に決まります。「勤労学生控除を申告したせいで親の税金が増えた」ということは起きませんが、逆に年収136万円を超えていれば、控除を使わなくても親の扶養控除は受けられなくなっています。

バイトをかけもちしています。年収はいくらまでなら対象ですか?

すべてのバイト給与を合計して年収163万円以下です(令和8年分)。給与所得の計算は全部の給与を合算してから行うので、1か所ごとではなく合計で判定します。給与のほかにフリーランスの報酬など「自分の働きによる」所得がある場合は、給与所得(年収−74万円)とそれらの所得の合計が89万円以下かで判定します。また、配当など働きによらない所得が10万円を超えると、合計が89万円以下でも対象外です。

所得税が減らないなら、申告する意味はありますか?

あります。効き目は2つです。①住民税:令和9年度分の住民税が年間最大26,500円安くなります(バイト年収143万円までなら所得割が0円になります)。②月々の手取り:年末調整の申告書で勤労学生に印を付けると源泉徴収の「扶養親族等の数」が1人増え、毎月の天引きが減ります。逆に、バイト年収119万円以下の人と、18歳未満で年収209万円以下の人は住民税がもともと非課税なので、実益はほぼありません。

専門学校・予備校ですが対象になりますか?

専門学校(専修学校)や各種学校は、職業に必要な技術を教えること・修業期間が1年以上であることなどの課程の要件(所得税法施行令11条の3)を満たす場合だけ対象です。要件を満たすかどうかは自分で判定する必要はなく、学校の窓口で「勤労学生控除の証明書」を発行してもらえるか確認してください。発行されればその課程は要件を満たしています。予備校は各種学校であっても課程の要件(職業に必要な技術の教授)を満たさないことが多いので、必ず学校に確認を。

大学院生・通信制でも対象ですか?

対象です。大学院・短大・高等専門学校・定時制や通信制の高校・放送大学は、いずれも学校教育法1条の学校(またはそこに置かれる課程)なので無条件で対象です。一方、大学の研究生・聴講生・科目等履修生は「学生」に当たらない場合があるため、学校の学生課に確認してください。海外の大学に留学している人は、日本の学校教育法1条の学校に在学していないため原則対象外です。

住民税はいつから安くなりますか?

住民税は前年の所得に対して翌年度に課税されるため、令和8年(2026年)のバイト代に対する住民税は、令和9年度分として2027年6月ごろから払うものです。勤労学生控除の効き目もそこに現れます。2026年に払っている住民税は令和7年(2025年)の所得に対するものなので、今年の申告では変わりません。なお2026年の毎月の給与から引かれる所得税(源泉徴収)は、申告書に印を付ければすぐ減ります。

働きによらない所得10万円とは何ですか?

合計所得金額のうち「自分の勤労にもとづく給与所得・事業所得・退職所得・雑所得(給与所得等)」以外の部分です。株の配当(申告した場合)、不動産の賃貸収入、仮想通貨の売却益、親から譲り受けた資産の運用益などが典型です。これが10万円を超えると、合計所得が89万円以下でも勤労学生控除は受けられません。「働いて学ぶ学生」のための控除なので、働き以外の収入が多い人を外す趣旨です。

出典