勤労学生控除は、法定の学校・勤労所得・所得上限の要件をすべて満たす居住者が受けられる所得控除です。要点は次の4つです。
- 対象:令和8年分から、所得の上限が合計所得89万円に上がりました。給与年収への換算はこの計算機の前提で確認できます。
- 所得税:基礎控除との関係を確認してください。
- 住民税:軽減額は下の計算例で確認できます。
- 月々の源泉徴収:反映時期と必要書類を確認してください。
上の計算機は、この「本当の効き目」まで含めて計算します。以下では要件・改正・親の扶養との関係を条文にもとづいて解説します(一般的な計算方法の説明であり、個別の税務相談ではありません)。
使い方と前提
バイトの年収(額面)をそのまま入れてください。バイトをかけもちしている人は全部の合計を入れてください。フリーランスなどの事業所得・雑所得は、収入から必要経費を引いた所得を入れます。配当などは、それぞれの所得区分で計算した所得を入れてください。
この計算機の前提
- 対象:この計算機は令和8年分の居住者で総合課税の所得を対象とし、特定支出控除・所得金額調整控除は扱いません。
- 判定:所得税法2条1項32号の要件をそのまま使います。
- 年収への換算:「年収163万円」などの額は、令和8・9年分で、収入が給与だけ・特定支出控除の適用がない場合の換算です。令和10年分以後の給与所得控除の最低保障額は69万円で、給与収入163万円の換算はそのまま使えません。
- 合計所得に含めない所得:非課税所得(NISAの配当・譲渡所得等)、源泉分離課税の利子等、申告不要を選択した一定の配当等・源泉徴収選択口座の譲渡所得等は含めません。
- 住民税:令和8年分の所得に対する令和9年度分を、標準税率・均等割・森林環境税・調整控除まで含めて計算し、控除がある場合とない場合の差を出します。
給与の年収を所得に換算します。次の表は令和8年分・特定支出控除なしの場合です。
| 給与の年収 | 給与所得 |
|---|---|
| 74万1,000円未満 | 0円(負の額にはせず、他の所得から引きません) |
| 74万1,000円以上219万1,000円未満 | 年収から74万円を引いた額 |
| 219万1,000円以上220万円未満 | 収入帯別の定額所得 |
| 220万円以上 | 別の表・算式で計算 |
勤労学生控除の3つの要件
所得税の勤労学生控除の対象は、その年の12月31日の現況で次の3要件を満たす居住者本人です(本人の死亡時や出国して非居住者となる時はその時点)。要件の根拠は所得税法2条1項32号です。
| 要件 | 内容 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| ① 法定学校等の児童・生徒・学生・訓練生であること | 下の表の3区分のどれかに当てはまること | 専修学校・各種学校は課程の要件がある(下の表) |
| ② 働いて得た所得があること | 自分の勤労にもとづく給与所得・事業所得・退職所得・雑所得(給与所得等)があること | 奨学金・仕送り・配当だけの人は対象外 |
| ③ 所得が少ないこと | 令和8年分以後、合計所得金額89万円以下、かつ働きによらない所得(給与所得等以外)が10万円以下 | 合計所得と、働きによらない所得の両方を確認 |
年収への換算の前提と、合計所得に含めない所得(NISAの配当など)は、この計算機の前提にまとめました。
「学校」の範囲は、条文が次の3区分を列挙しています。
| 区分 | あてはまる学校 | 条件 |
|---|---|---|
| イ 学校教育法1条の学校 | 大学・大学院・短大・高等専門学校・高校・中学校など(通信制・定時制・放送大学を含む) | 無条件で対象 |
| ロ 専修学校・各種学校 | 専門学校・看護学校・調理師学校など(国・地方公共団体・学校法人などが設置したもの) | 課程の要件あり: 職業に必要な技術を教える・修業期間1年以上など(施行令11条の3)。満たすかどうかは学校が発行する証明書で確認できます |
| ハ 認定職業訓練 | 職業訓練法人が行う認定職業訓練(職業能力開発促進法)を受ける訓練生 | ロと同様の課程の要件あり |
ロの専修学校・各種学校は、国・地方公共団体・学校法人等の法定の設置者(又は文部科学大臣の基準を満たす学校を設置する者)が設置したものに限ります。
ロ・ハの人が申告するときは証明書が要ります(申告のしかた)。
学生かどうかはいつ判定する?
卒業した人は、年末に対象の学校等の児童・生徒・学生・訓練生でなければ、その年の勤労学生控除は受けられません(判定時点の例外は要件の節)。
所得税と基礎控除の関係
所得税は勤労学生控除がなくても0円になります(令和8年分の勤労学生の要件を満たす居住者・総合課税の所得のみ)。
基礎控除104万円は、令和8・9年分の居住者で合計所得489万円以下の人に、令和8年12月1日以後の計算で使う額です。
令和8年11月30日以前に行う計算には改正前の額を用います(合計所得132万円以下の居住者の基礎控除は95万円)。
住民税はいくら安くなる?
住民税の基礎控除は所得税と違って43万円のままなので、こちらでは勤労学生控除26万円がしっかり効きます。
バイト年収別の効き目を示します。令和9年度分、給与のみ・特定支出控除なしの成年単身者で、社会保険料の本人負担がなく、障害者等の非課税特例に該当しない設例です。標準税率で均等割と森林環境税を含み、均等割の非課税限度額が合計所得45万円の自治体を想定しています。
| バイト年収 | 控除なしの住民税 | 勤労学生控除ありの住民税 | 安くなる額 |
|---|---|---|---|
| 119万円以下 | 0円 | 0円 | 0円(もともと非課税) |
| 130万円 | 15,500円 | 5,000円 | 10,500円 |
| 143万円 | 28,500円 | 5,000円(所得割は0円) | 23,500円 |
| 150万円 | 35,500円 | 9,000円 | 26,500円 |
| 163万円 | 48,500円 | 22,000円 | 26,500円 |
- 減らせるのは所得割だけ:勤労学生控除が減らせるのは所得割だけです。年収別の計算例は上の表を確認してください。
- 均等割は減りません:均等割・森林環境税の課税対象者には、標準で合計年5,000円が残ります。
- 非課税なら税額は変わりません:住民税の非課税限度額は自治体によって異なります。地方税法295条も確認してください。
月々の源泉徴収にも反映されます
もうひとつの効き目が月々の源泉徴収です。勤労学生に当たる人は、甲欄の扶養親族等の数に1人を加算して税額を求めます(源泉徴収税額表の見方)。
- 手続き:「扶養控除等申告書」に勤労学生の印と該当する事実を記載し、必要な証明書を添付または提示して提出します(対象者別の必要書類)。
- いつから:令和8年の改正で新たに該当する人は、必要書類を提出すると令和8年12月1日以後に支払う給与から反映されます。令和8年11月までの源泉徴収は変わりません。
- 減らない場合:元の税額が0円なら減額はありません。
- 精算:年末調整の対象者は年末調整で精算します。対象外の人も、納め過ぎがあれば還付申告で精算できます。還付は徴収済み税額との差額によります。
親の扶養とはまったく別の判定
勤労学生控除で一番多い誤解が「これを使うと親の扶養から外れる/外れない」というものです。2つは別の制度で、別の判定です。
| 勤労学生控除 | 親の扶養控除 | |
|---|---|---|
| 誰の税金が安くなるか | あなた自身の住民税 | 親の所得税・住民税 |
| 判定に使う所得 | あなたの合計所得89万円以下(年収163万円以下)、かつ給与所得等以外の所得10万円以下 | あなたの合計所得62万円以下(年収136万円以下) |
| 超えるとどうなるか | 控除が受けられない | 親の扶養控除が受けられなくなる(19歳以上23歳未満なら特定親族特別控除の対象になる場合がある) |
表の年収は、令和8・9年分で収入が給与だけ・特定支出控除の適用がない場合の換算です。給与所得等とは、自分の勤労による事業・給与・退職・雑所得のことです。
- 扶養を外れるライン:親の扶養控除の所得要件を外れるのは、令和8年分以後は合計所得62万円を超える場合です。勤労学生控除を使うかどうかはこれに影響しません(使っても使わなくても外れるものは外れます)。
- 扶養控除の額:19〜22歳の特定扶養親族の控除額は、税目別に扶養控除シミュレーターで確認できます。
- 外れたあと:親の特定親族特別控除の対象になる場合があります。要件の全体は特定親族特別控除とはで確認できます。
- 特定親族特別控除の額:所得税・住民税で異なります。特定親族特別控除の控除額表を確認してください。
- 親側の要件と計算:親の扶養控除には、所得のほかに16歳以上・生計同一・事業専従者でないことなどの要件があります。扶養控除シミュレーターと扶養控除等申告書の書き方で確認できます。
- 社会保険の扶養:「130万円の壁」など社会保険の扶養は税金とはさらに別の判定です(年収の壁シミュレーター)。
申告のしかた — 年末調整のC欄か確定申告
バイト先が1か所で年末まで勤めている人は、通常は年末調整で完結します。手順は次のとおりです。
- 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」のC欄(障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生)の「勤労学生」に印を付けます。
- 該当する事実(学校名・所得の種類と見積額等)を記載して、勤め先に提出します。
- 専修学校・各種学校と、認定職業訓練を行う職業訓練法人の人は、証明書を2つ添付または提示します。対象課程についての大臣の証明書の写しと、本人が履修していることを学校・訓練法人が証明する書類です(学校教育法1条の学校は不要)。
年末調整で受けられなかったとき
- バイトをかけもちしている人・年の途中で辞めた人は、確定申告(第一表「勤労学生控除」欄)でも受けられます
- 年の途中で辞めた人でも、年末調整の対象になる場合があります。区分は年末調整の対象とならない人で確認できます。
- 年末調整の対象外でも、それだけで確定申告の義務が生じるわけではありません。源泉徴収された税額が納め過ぎなら、還付申告で精算できます。
- 申告し忘れて年末調整が終わってしまった場合も、5年以内なら確定申告(還付申告・更正の請求)でさかのぼれます
住民税の手続き
給与所得だけで給与支払報告書が提出される場合、通常は住民税の別手続きは不要で、年末調整の内容が市区町村に送られて令和9年度分の住民税に反映されます。給与以外の所得があり所得税の確定申告をしない場合は、原則として住所地の市区町村へ住民税申告が必要です。
令和8年分から合計所得の上限は89万円
- 令和8年度税制改正で、勤労学生の合計所得金額の要件は85万円以下から89万円以下に引き上げられました。
- 給与年収での目安は、令和8・9年分・給与のみ・特定支出控除なしなら163万円以下です。
- 改正法の経過措置(令和8年法律第12号 附則2条)が「令和8年分以後の所得税について適用」と定めているので、2026年のバイト代からこの新しいラインで判定されます。
- 施行日前の申告等に関する更正の請求は、対象・期限を改正法の経過措置で確認してください(同附則2条2項)。
ネット上の解説には、まだ改正前の「130万円まで」(旧・所得75万円)や令和7年分の「150万円まで」(所得85万円)と書かれたページが多く残っています。給与年収の目安は、令和8年分・給与のみ・特定支出控除なしなら163万円以下です。
住民税のほうも、地方税法が所得税の定義をそのまま準用しているため(314条の2第9項)、令和8年分の所得に対する令和9年度分から同じ89万円で判定されます。
よくある質問
勤労学生控除を使うと、親の扶養から外れますか?
外れません。勤労学生控除は本人の控除で、親の扶養控除は別に判定します。親の扶養控除の所得要件は、令和8年分以後は合計所得62万円以下です。合計所得がこの上限を超えていれば、勤労学生控除を使わなくても親の扶養控除は受けられません。年齢や生計同一などほかの要件は「親の扶養とはまったく別の判定」にまとめました。
バイトをかけもちしています。年収はいくらまでなら対象ですか?
給与年収の目安は163万円以下です(令和8・9年分・給与のみ・特定支出控除なし)。全部のバイト給与を合算して判定します。学校・勤労所得の要件も必要です。ほかの所得がある場合の集計はこの計算機の前提、所得上限は3つの要件で確認してください。
所得税が減らないなら、申告する意味はありますか?
あります。効き目は2つです。①住民税:令和9年度分の住民税が年間最大26,500円安くなります(標準税率での試算)。年収143万円の計算例はこちら。②月々の源泉徴収:申告書と必要な証明書を提出・提示すると、甲欄の扶養親族等の数に1人を加算します(改正で新たに該当する人は令和8年12月1日以後の給与から)。住民税がもともと非課税の人は、この控除による住民税の軽減はありません。非課税限度額は自治体によって異なります。
専門学校・予備校ですが対象になりますか?
課程の要件を満たす場合に対象です。専門学校(専修学校)や各種学校は、法定の設置者が設置し、職業に必要な技術の教授・修業期間1年以上など所定の課程要件を満たすことが必要です。自分で判定する必要はなく、学校の窓口で「勤労学生控除の証明書」を発行してもらえるか確認してください。発行されればその課程は要件を満たしています。予備校は各種学校であっても課程の要件(職業に必要な技術の教授)を満たさないことが多いので、必ず学校に確認を。
大学院生・通信制でも対象ですか?
学校の要件は満たします。大学院・短大・高等専門学校・定時制や通信制の高校・放送大学は、いずれも学校教育法1条の学校(またはそこに置かれる課程)なので、課程の追加の条件はありません。所得の要件は別に判定します。一方、大学の研究生・聴講生・科目等履修生は「学生」に当たらない場合があるため、学校の学生課に確認してください。海外の大学に留学している人は、日本の学校教育法1条の学校に在学していないため原則対象外です。
住民税はいつから安くなりますか?
令和8年(2026年)のバイト代に対する住民税は、令和9年度分として2027年6月ごろから払うもので、勤労学生控除の効き目もそこに現れます。住民税は前年の所得に対して翌年度に課税されるためです。源泉徴収への反映の時期は「月々の源泉徴収にも反映されます」にまとめました。
働きによらない所得10万円とは何ですか?
合計所得金額のうち「自分の勤労にもとづく給与所得・事業所得・退職所得・雑所得(給与所得等)」以外の部分です。合計所得に含める株の配当、不動産の賃貸に係る所得(収入から必要経費を引いた額)、仮想通貨の売却益、親から譲り受けた資産の運用による所得などが例です。NISAの非課税所得や申告不要を選択した一定の配当等は合計所得に含めません。これが10万円を超えると、合計所得が89万円以下でも勤労学生控除は受けられません。
出典
- 所得税法82条・2条1項32号(勤労学生控除の額と対象)。令和8年法律第12号 附則2条(適用年分と経過措置)
- e-Gov法令検索「所得税法」85条(本人の現況を判定する時点)
- 所得税法施行令11条の3(専修学校・各種学校・認定職業訓練の課程の要件) — e-Gov法令検索(現行版とR8-12-01施行版で同文)
- 所得税法86条・租税特別措置法41条の16の2(令和8年分・令和9年分の居住者の基礎控除104万円=合計所得489万円以下)
- 地方税法34条1項9号・314条の2第1項9号(住民税の勤労学生控除・26万円)。
- 34条9項・314条の2第9項(所得税法2条1項32号の準用=前年の合計所得金額で判定)。295条1項2号(未成年者の非課税の範囲) — e-Gov法令検索(現行版と2027年1月1日施行版で同文)
- 国税庁 タックスアンサー No.1175 勤労学生控除 — nta.go.jp
- 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」(勤労学生 合計所得89万円以下と、令和8・9年分・給与所得のみ・特定支出控除なしの給与収入163万円以下の対比表) — nta.go.jp
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