経理ミニツールズ

住民税非課税のボーダーを1円超えたら、いくら損するか

結論から言います。住民税非課税のボーダーを1円超えると、住民税が5,000円かかり、手取りは4,999円減ります。年収が1円増えたのに手取りが減る——これが「逆転」です。

ただし、逆転が消えるのは年収があと5,000円増えた地点です。つまり損をする谷の幅は5,000円しかありません。「非課税から外れると損」という話は事実ですが、住民税だけで見れば、その谷は驚くほど浅くて狭い。この記事では、その谷の深さを1円単位で計算します。

多くの解説は「非課税世帯から外れるとデメリットがあります」で終わっています。ここでは家族構成別の正確な境目と、逆転がどこで解消するかまで出します。

1円超えると4,999円。谷の幅は5,000円

単身(東京23区・40歳・扶養なし・給与収入のみ)で計算します。均等割の非課税限度額は年収1,190,000円。ここを境に何が起きるかを、年収を1円ずつ動かして見ます。

年収住民税手取り(年収−住民税)の増減
1,190,000円0円(非課税)
1,190,001円5,000円−4,999円(逆転)
1,192,000円5,000円−3,000円
1,195,000円5,000円±0円(トントンに戻る)
1,200,000円5,000円+5,000円

かかるのは均等割5,000円(市町村民税3,000円+道府県民税1,000円+森林環境税1,000円)です。定額なので、年収がいくら増えてもこの5,000円は増えません。だから年収が5,000円増えれば、増えた分が住民税をちょうど打ち消します

手取り 年収 → 非課税(住民税0円) 1円超えで −4,999円 +5,000円でトントンに戻る 1,190,000円 谷の幅=5,000円
非課税ボーダー前後の手取り。落ちるのは1回きり(均等割は定額)なので、谷は深さ4,999円・幅5,000円で終わる。
「働き控え」の判断材料としては小さい 住民税だけで見れば、失うのは最大4,999円です。時給1,200円なら4時間ぶんで取り返せます。ボーダーの手前で働く時間を減らすと、その減らした収入のほうが大きいことがあります。ただし後述する給付金の話は別です。

家族構成別のボーダー(1円単位)

非課税限度額は扶養している人数で変わります。同じ「非課税世帯」でも、単身と子ども2人では境目が2倍以上違います。東京23区(1級地)・給与収入のみ・社会保険料は概算で計算した値です。

家族構成均等割の非課税上限(年収)1円超えたときの住民税
単身1,190,000円5,000円
夫婦のみ(配偶者を扶養)1,750,000円5,000円
夫婦+子1人2,100,000円5,000円
夫婦+子2人2,559,999円5,000円

どの家族構成でも、1円超えたときにかかるのは均等割5,000円だけです。谷の深さ(4,999円)と幅(5,000円)は家族構成で変わりません。変わるのは、その谷がどこにあるかだけです。

なお、ここでいう「扶養している人数」には16歳未満の子どもも入ります。16歳未満は扶養控除の対象外(所得控除は0円)ですが、非課税限度額の判定では人数に数えます。ここは間違えやすいところです。

住民税非課税世帯の判定ツールで、自分の年収・家族構成で確かめる

非課税ラインは2つある(均等割と所得割)

「住民税非課税」には2つの段階があります。多くの記事はこれを1つにまとめて説明していますが、金額が違います。

家族構成均等割も所得割も非課税(=完全に0円)所得割だけ非課税(均等割はかかる)
単身〜1,190,000円同じ(差がない)
夫婦のみ〜1,750,000円〜1,860,000円
夫婦+子1人〜2,100,000円〜2,215,999円
夫婦+子2人〜2,559,999円〜2,715,999円

単身では2つが一致しますが、扶養がいると11万円前後ズレます。この帯にいる人は「均等割5,000円だけかかり、所得割は0円」という状態です。

そして重要なのは、給付金などの「住民税非課税世帯」は、ふつう均等割も所得割も非課税である世帯を指すという点です。「所得割だけ非課税」では対象にならないことが多い。自分がどちらの帯にいるかで、受けられる支援が変わります。

住む場所で70,000円ずれる(級地)

非課税限度額の判定には生活保護法の級地区分を使います。物価の高い地域ほど限度額が高く設定されているためです。単身の場合で比べます。

級地主な地域均等割の非課税上限(単身)
1級地東京23区・政令指定都市・県庁所在地など1,190,000円
2級地1級地に次ぐ市1,155,000円
3級地その他の市町村1,120,000円

1級地と3級地で70,000円の差があります。同じ年収・同じ家族構成でも、引っ越しただけで課税・非課税が入れ替わることがあるということです。ボーダー付近の人は、自分の市区町村がどの級地かを確認してください。

★給付金の谷は、住民税の谷より深い

ここまで見てきた谷は住民税だけの話です。深さ4,999円・幅5,000円と小さい。しかし多くの人が「非課税世帯から外れると損」と感じるのは、住民税以外の制度が非課税世帯かどうかで切り替わるからです。

正直に書きます。これらの金額はこの記事では計算していません。 給付金の額・要件は実施のたびに変わり、保育料や就学援助は自治体ごとに基準が違います。「一般にいくら損する」と言える数字がないため、書きません。確かめられない数字を書かないのが、このサイトの方針です。お住まいの市区町村の案内で確認してください。

言えるのは構造だけです。住民税の谷は幅5,000円で終わりますが、給付金の谷は「もらえる/もらえない」の1回きりの段差なので、幅がありません。10万円の給付金を1円差で逃した場合、それを年収で取り返すには10万円ぶん多く稼ぐ必要があります。働き控えを考えるなら、住民税ではなくこちらを見るべきです。

逆に言えば、給付金が実施されていない年に、住民税だけを理由にボーダーを気にするのは合理的ではありません。谷は5,000円しかないからです。

よくある質問

Q. 非課税のボーダーを1円超えると、いくら損しますか?

A. 住民税の均等割5,000円がかかるため、手取りは4,999円減ります。ただし年収があと5,000円増えれば手取りは元の水準に戻ります。損をする範囲は年収で5,000円ぶんだけです。

Q. 均等割の5,000円という額は誰でも同じですか?

A. 標準税率で計算した場合の額です。市町村民税3,000円・道府県民税1,000円・森林環境税1,000円の合計で、多くの自治体がこの額ですが、超過課税を行っている自治体では数百円高いことがあります。

Q. 16歳未満の子どもは非課税の判定に関係ありますか?

A. 関係します。扶養控除の対象にはなりませんが、非課税限度額を計算するときの扶養親族の数には含めます。子どもの人数で限度額が上がります。

Q. 「所得割だけ非課税」でも住民税非課税世帯になりますか?

A. 給付金などで使われる「住民税非課税世帯」は、通常は均等割も非課税である世帯を指します。所得割だけが非課税で均等割がかかっている場合は対象外とされることが多いため、実施要領を確認してください。

Q. 引っ越すと非課税かどうかが変わることはありますか?

A. あります。非課税限度額は生活保護法の級地区分で決まり、単身では1級地1,190,000円・3級地1,120,000円と70,000円の差があります。同じ年収でも住む場所で判定が変わります。

出典

この記事は一般的な計算方法の説明であり、個別の税務相談ではありません。実際の税額・給付の可否は、お住まいの市区町村や税務署にご確認ください。