年金生活者支援給付金とは【令和8年度】— 5,620円は基準額で、免除期間は11,768円で数える
結論から言うと、令和8年度の年金生活者支援給付金の給付基準額は月額5,620円です。ただしこの5,620円は文字どおりの「基準額」で、そのまま振り込まれる額ではありません。老齢の給付金は、保険料を納めた月と保険料を免除された月をそれぞれ別の単価で数えて足し上げます。免除された月に掛ける単価は11,768円で、納めた月の単価より高く出ます。
対象になるかどうかの線も1本ではなく2本あります。前年の年金収入とその他の所得の合計が809,000円以下なら本体の老齢年金生活者支援給付金、809,000円を超えて909,000円以下なら補足的老齢年金生活者支援給付金です(いずれも昭和31年4月2日以後生まれの方の額)。909,000円を超えると、どちらも出ません。
そして手続きには、ほとんど知られていない締切があります。その年の10月1日から12月31日までに請求すれば、9月30日に請求したものとみなされ、10月分から支給されます(施行令12条の2)。原則は「請求した月の翌月分から」で遡らない制度なので、9月に届いたはがきを机の上に置いたまま年を越すと、2か月分が戻らなくなります。この記事は、この2つの数字と1つの締切を、条文と令和8年度の公表額で確かめていきます。
令和8年度はいくらか — 5,620円は「基準額」であって受取額ではない
法律の本文を開くと、給付基準額は5,620円ではなく5,000円と書かれています。
給付基準額(前条第一号に規定する給付基準額をいう。以下同じ。)は、五千円とする。
これは制度が始まったときの水準で、同じ4条の2項が、全国消費者物価指数の動きに応じて翌年4月以降の額を改定すると定めています。改定は政令で行われ、令和8年度分は次のように書かれています。
令和八年四月以降の月分の給付基準額(法第三条第一号に規定する給付基準額をいう。)については、法第四条第一項中「五千円」とあるのは、「五千六百二十円」と読み替えて、法の規定を適用する。
つまり5,620円は政令の条文にそのまま書かれた額で、推計値ではありません。令和7年度は5,450円だったので、日本年金機構の公表どおり3.2%の引上げです。
| 種類 | 令和8年度(月額) | 令和7年度(月額) |
|---|---|---|
| 老齢年金生活者支援給付金の給付基準額 | 5,620円 | 5,450円 |
| 障害年金生活者支援給付金(障害等級1級) | 7,025円 | 6,813円 |
| 障害年金生活者支援給付金(障害等級2級) | 5,620円 | 5,450円 |
| 遺族年金生活者支援給付金 | 5,620円 | 5,450円 |
令和8年度は、年金額のほうが国民年金(基礎年金)で1.9%、厚生年金(報酬比例部分)で2.0%の引上げでした。給付金は3.2%です。数字が揃わないのは誤りではなく、法4条2項が見ているのが全国消費者物価指数だけだからです。年金額のほうは賃金変動率を基準に、マクロ経済スライドの調整も入ります。「年金が1.9%上がったのだから給付金も1.9%のはず」という検算は成り立ちません。
障害等級1級の7,025円は、法16条が「給付基準額の百分の百二十五に相当する額」と定めているとおりで、5,620円×1.25=7,025円ちょうどです。令和7年度も5,450円×1.25=6,812.5円で、50銭以上1円未満は1円に切り上げるという同条の端数処理で6,813円になっています。
免除期間は11,768円で数える — 納めた月より単価が高い理由
老齢年金生活者支援給付金の額は、法3条が2つの号に分けて定めています。1号が保険料を納めた月の分です。
給付基準額に、その者の保険料納付済期間(国民年金法第五条第一項に規定する保険料納付済期間をいい、他の法令の規定により同項に規定する保険料納付済期間とみなされた期間を含む。)の月数を四百八十で除して得た数(その数が一を上回るときは、一)を乗じて得た額
2号が保険料を免除された月の分です。ここで掛ける相手が給付基準額ではなく、老齢基礎年金の額になっているのが、この制度でいちばん見落とされている点です。
国民年金法第二十七条本文に規定する老齢基礎年金の額に、その者の保険料免除期間(同法第五条第二項に規定する保険料免除期間をいい、他の法令の規定により同項に規定する保険料免除期間とみなされた期間を含み、同法第九十条の三第一項の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係る期間を除く。)の月数の六分の一(同法第五条第六項に規定する保険料四分の一免除期間にあっては、同項に規定する保険料四分の一免除期間の月数の十二分の一)に相当する月数(当該月数と同法第二十七条各号に掲げる月数を合算した月数(四百八十を限度とする。以下この号において同じ。)とを合算した月数が四百八十を超えるときは、四百八十から当該各号に掲げる月数を合算した月数を控除した月数を限度とする。)を四百八十で除して得た数を乗じて得た額を十二で除して得た額
この「老齢基礎年金の額の6分の1」を月額に直したものが、日本年金機構が公表している11,768円です。令和8年度の老齢基礎年金の満額は月額70,608円(昭和31年4月2日以後生まれの方)なので、70,608円÷6=11,768円とちょうど一致します。4分の1免除期間だけは12分の1なので、70,608円÷12=5,884円です。
| 掛ける単価(令和8年度・月額) | 昭和31年4月2日以後生まれ | 昭和31年4月1日以前生まれ |
|---|---|---|
| 保険料納付済期間 | 5,620円 | 5,620円 |
| 全額免除・4分の3免除・半額免除の期間 | 11,768円 | 11,734円 |
| 4分の1免除の期間 | 5,884円 | 5,867円 |
| (参考)老齢基礎年金の満額 | 70,608円 | 70,408円 |
昭和31年4月1日以前生まれの方は満額が70,408円で、6で割ると11,734.66…になります。公表されている単価は11,734円です。生年月日で線が引かれているのは、令和8年度の老齢基礎年金の改定率が生年月日で分かれているためで、後で出てくる所得の線(809,000円と806,700円)も同じ理由で2本あります。
11,768円は5,620円の約2.09倍です。保険料を全額免除されていた月のほうが、保険料を納めた月より給付金の単価が高いことになります。ずるい話に見えますが、そうではありません。法3条2号が老齢基礎年金の額を基礎にしているのは、免除期間は老齢基礎年金そのものが減っているからで、その減りを部分的に埋め戻す設計だからです。給付金だけを見ると免除のほうが多く、年金と給付金を合わせて見れば納付済のほうが多い、という関係になります。
日本年金機構が挙げている計算例で確かめます。納付済月数240か月、全額免除月数60か月の方の場合です。
- 納付済分 … 5,620円×240÷480=2,810円
- 免除分 … 11,768円×60÷480=1,471円
- 合計 … 2,810円+1,471円=4,281円(月額)
それぞれの計算結果に50銭未満の端数が生じたときは切り捨て、50銭以上1円未満は1円に切り上げます(法3条柱書)。なお480という分母は、昭和16年4月1日以前に生まれた方については生年月日に応じて短くなります。法附則8条が、昭和60年国民年金等改正法附則別表第4に従って「四百八十」を読み替えると定めているためで、いちばん古い区分(大正6年4月1日以前生まれ)では180月になります。
対象者の3要件 — 老齢だけが「世帯」と「収入」で見られる
老齢年金生活者支援給付金の要件は3つで、すべて満たす必要があります。
- 65歳以上で、老齢基礎年金を受けていること
- 請求する方の世帯全員の市町村民税が非課税であること
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計が809,000円以下であること(昭和31年4月1日以前生まれの方は806,700円以下)
ここで注意したいのが1つめの「65歳以上」です。法律の本則には書かれていません。法2条1項は単に老齢基礎年金の受給権者と書いており、年齢の限定は附則6条の読み替えで入ります。
第二条の規定の適用については、当分の間、同条第一項中「老齢基礎年金(」とあるのは「老齢基礎年金(国民年金法等の一部を改正する法律(昭和六十年法律第三十四号)附則第十五条第一項又は第二項の規定による老齢基礎年金を除く。」と、「の受給権者」とあるのは「の受給権者(六十五歳に達している者に限る。)」と、「同法」とあるのは「国民年金法」とする。
実務上の効き目は繰上げ受給をした方に出ます。60歳から老齢基礎年金を繰り上げて受け取っていても、この給付金は65歳になるまで対象になりません。日本年金機構も、繰上げ受給をしている方向けの請求手続きを65歳の誕生月を起点として案内しています。
3つめの所得の見方も独特です。法2条1項は「公的年金等の収入金額」と「前年の所得」の合計、という書き方をしています。年金だけが控除前の収入金額で数えられ、それ以外は所得で数えられるということです。二重に数えないよう、施行令4条が、市町村民税の合計所得金額から所得税法35条2項1号の金額(公的年金等に係る雑所得の金額)を差し引くと定めています。
809,000円という基準が低く見えるのは、この構造のためです。年金収入は公的年金等控除を引く前の額面で比べられます。障害年金・遺族年金は非課税収入なので、この判定には入りません。
満額は月額70,608円=年額847,296円。所得基準額は809,000円です。差は38,296円あります。つまり40年間まるまる保険料を納めて満額の老齢基礎年金だけで暮らしている方は、本体の老齢年金生活者支援給付金ではなく、補足的老齢年金生活者支援給付金の側に落ちます。所得基準額は法2条1項が「老齢基礎年金の額を勘案して政令で定める額」としているだけで、満額と一致させるとは書かれていません。実際の判定は前年の収入で行うので年度は1年ずれますが、水準の関係は同じです。
809,000円を1円超えたら — 補足的老齢年金生活者支援給付金
もし本体だけの制度だったら、所得が809,000円の人は年金+給付金で最大67,440円(5,620円×12か月)多く受け取り、809,001円の人は給付金がゼロになります。1円の差で年6万円以上の逆転が起きてしまいます。これを避けるために置かれているのが補足的老齢年金生活者支援給付金です。
計算式は、本体の1号の額(納付済期間の分だけ。免除期間の分は入りません)に調整支給率を掛けたものです。法11条が「同条第一号に規定する額として算定されることとなる額から」と書いているとおりで、免除期間に基づく額はここでは使われません。
調整支給率は施行令7条2項が定めています。分子は補足的所得基準額から前年所得額を引いた額、分母は補足的所得基準額から所得基準額を引いた額で、小数点以下3位未満を四捨五入します。昭和31年4月2日以後生まれの方なら分母は909,000円−809,000円=100,000円です。日本年金機構の案内に出てくる「÷100,000円」は、この引き算の結果です。
前年の年金収入とその他の所得の合計が847,296円、保険料をすべて納めた(480月)方で計算してみます。
- 調整支給率 …(909,000円−847,296円)÷100,000円=0.61704 → 小数点以下3位未満を四捨五入して0.617
- 給付額 … 5,620円×480÷480×0.617=3,467.54円 → 50銭以上1円未満は切り上げて3,468円(月額)
本体なら5,620円だったところが3,468円になります。所得が909,000円に近づくほど小さくなり、909,000円でゼロです。この傾斜があるおかげで、給付金を含めた手取りの逆転は起きません。
所得が動いて9月分は本体、10月分から補足的(またはその逆)になることがあります。このとき施行令11条が、その年の9月30日に認定の請求があったものとみなすと定めています。本体と補足的は法律上は別の給付なので本来は別々に認定請求が要るところですが、境目をまたぐだけの人に手続きをさせない作りになっています。届く通知は「支給金額変更通知書」で、不該当通知ではありません。
障害・遺族は物差しがまったく違う(4,794,000円)
同じ「年金生活者支援給付金」という名前ですが、障害年金生活者支援給付金と遺族年金生活者支援給付金は、老齢とは判定の仕方が根本的に違います。
| — | 老齢(補足的老齢) | 障害・遺族 |
|---|---|---|
| 年齢要件 | 65歳以上 | 無し |
| 世帯全員の市町村民税非課税 | 必要 | 不要 |
| 判定に使うもの | 年金の収入金額+その他の所得 | 前年の所得のみ |
| 基準額(令和8年度) | 809,000円 | 4,794,000円+加算 |
| 逓減のしくみ | 補足的(909,000円まで) | 無し(超えたらゼロ) |
障害・遺族の基準額は施行令8条が定めており、扶養親族等がいるときは1人につき38万円が加算されます。同一生計配偶者のうち70歳以上の方または老人扶養親族は48万円、特定扶養親族または16歳以上19歳未満の扶養親族は63万円です。
桁が違うのは、判定に使う所得の中身が違うからです。障害年金・遺族年金そのものが非課税収入で、判定所得に入りません。老齢の場合は自分の老齢年金がそのまま収入として数えられるのに対し、障害基礎年金2級を受けている方は、その年金額がいくらであっても判定所得はゼロから始まります。同じ「年金生活者」という言葉でも、老齢だけが自分の年金で自分を基準から押し出す構造になっています。
もうひとつ、障害・遺族側は施行令10条2項が控除を認めています。雑損控除額・医療費控除額・社会保険料控除額・小規模企業共済等掛金控除額・配偶者特別控除額・特定親族特別控除額に相当する額を、計算した所得から差し引きます。障害者控除(27万円、特別障害者は40万円)・寡婦(27万円)・ひとり親(35万円)・勤労学生(27万円)に相当する額も同様です。老齢側(施行令4条)にはこの差引きがありません。
遺族年金生活者支援給付金には、老齢にも障害にも無い割り算があります。法21条2項により、2人以上の子が遺族基礎年金を受け取っている場合は、5,620円を子の人数で割った額をそれぞれに支払います。子が3人なら5,620円÷3=1,873.33…で、端数処理をして1人あたり1,873円(月額)です。子の数が増えても総額は5,620円のままで、1人あたりが減ります。
老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給見込額を計算する9月に届くはがきと、12月31日という締切
この給付金は、要件を満たしていても自動では始まりません。認定の請求が要り(法5条)、支給は請求した月の翌月分からです。
老齢年金生活者支援給付金の支給は、受給資格者が前条の規定による認定の請求をした日の属する月の翌月から始め、老齢年金生活者支援給付金を支給すべき事由が消滅した日の属する月で終わる。
日本年金機構は、基礎年金を受給している方で新たに対象になる方へ、年金生活者支援給付金請求書(はがき型)を毎年9月の第1営業日から順次送付しています。緑の封筒で届き、氏名などを記入して目隠しシールを貼り、切手を貼って投函すれば手続きは完了します。令和7年1月以降にはがきが届いた方は電子申請も選べます。
ここに、条文を読まないと分からない救済があります。施行令12条の2です。
各年の十月分の年金生活者支援給付金(法第二十五条第一項に規定する年金生活者支援給付金をいう。以下同じ。)の支給要件に該当している者から、当該各年の十月一日から十二月三十一日までの間に法第五条、第十二条、第十七条又は第二十二条の規定による認定の請求(前条各項に規定する認定の請求を除く。)があったときは、当該各年の九月三十日に当該認定の請求があったものとみなす。
つまり12月31日までに出せば、10月分から満額出ます。9月に届いたはがきを出しそびれても、年内なら間に合います。逆に言えば、1月1日を過ぎるとこの救済は使えず、そこから請求月の翌月分に戻ります。1月に出せば2月分から。10月・11月・12月・1月の4か月分が戻ってきません。
これから年金を受け始める方には、別の遡及があります。施行令12条1項は、老齢基礎年金の裁定請求をした方が受給権を得た日から3か月以内に給付金の認定請求をしたときは、受給権を得た日に請求があったものとみなすと定めています。起算日は、繰上げ受給をしている方は65歳到達の日、繰下げの申出をする方は申出を行った日です。同条3項・4項が障害基礎年金・遺族基礎年金にも同じ扱いを置いています。
はがきが送られるのは、機構が市町村から受け取った所得情報で新たに該当すると分かった方です。世帯構成の変更や税額の更正で要件に当てはまるようになった場合は、自分から認定請求をする必要があります。たとえば同居していた課税の家族が転出して世帯が非課税になった場合、機構の側からは案内が来ません。この場合の支給も請求した月の翌月分からです。
支払いは偶数月です。法6条3項が「毎年二月、四月、六月、八月、十月及び十二月の六期に、それぞれの前月までの分を支払う」と定めており、10月分と11月分が12月中旬に振り込まれます。年金とは別の振込で、同じ受取口座に入ります。
1年ずれる — 所得が下がっても効くのは翌年10月分から
この制度でいちばん問い合わせが多いのが、時間軸のずれです。
判定は1年に1回、前年の所得等で行われ、結果は10月分から翌年9月分までの1年間に反映されます。法2条1項のかっこ書きが「一月から九月までの月分の…老齢年金生活者支援給付金については、前々年とする」と書いているのが、その仕組みです。1月から9月分は前々年の所得、10月から12月分は前年の所得で見るので、切替点が10月に来ます。世帯の市町村民税非課税の判定も、施行令2条が同じずらし方をしています。
| 対象の月分 | 判定に使う所得 | 支払い |
|---|---|---|
| 令和8年10月分〜令和9年9月分 | 令和7年分の所得 | 令和8年12月〜令和9年10月 |
| 令和9年10月分〜令和10年9月分 | 令和8年分の所得 | 令和9年12月〜令和10年10月 |
この結果、次のようなことが起きます。日本年金機構の年金Q&Aが挙げている例では、令和6年分の所得が基準を超えていた方が令和7年分で下がった場合、令和7年度の給付金は出ず、受け取れるのは令和8年10月分(令和8年12月支払)からです。所得が下がってから実際に入金されるまで、最長で2年ほどかかります。
継続認定の基準日も明確です。機構はその年の9月30日時点で把握している世帯状況と前年の所得情報で判定しています。10月1日以降に世帯構成が変わって要件を満たすようになっても、その年度の継続認定には反映されず、改めて請求書を出すことになります。修正申告で所得が基準以下になった場合も同じで、9月30日時点の情報に間に合っていなければ不該当のままです。
一度受け取り始めれば、翌年以降の手続きは原則不要です(法5条の認定は継続します)。ただし要件を満たさなくなって支給が止まった方が再び要件を満たした場合は、あらためて請求が必要になります。ここで前節の12月31日の締切がもう一度効いてきます。
経理・税務での扱い — 非課税で、源泉徴収票にも出てこない
この給付金は課税されません。法33条が正面から禁じています。
租税その他の公課は、年金生活者支援給付金として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。
実務上の帰結は3つあります。
- 公的年金等の源泉徴収票には載りません。年金とは別に支払われ、課税対象ではないためです。確定申告書に書く公的年金等の収入金額にも含めません。
- 翌年の判定所得にも入りません。施行令3条・9条が判定所得を「非課税所得以外の所得」としているので、給付金を受け取ったことで翌年の基準を超える、ということは起きません。
- 差押えや担保にできません。法32条が譲渡・担保提供・差押えを禁じています。
もうひとつ、期間の制限が年金本体より短い点に注意が要ります。
年金生活者支援給付金の支給を受け、又はその返還を受ける権利及び次条第一項の規定による徴収金を徴収する権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によって消滅する。
時効は2年です。年金の基本権・支分権が5年であるのと比べて3年短く、しかもこの給付金はそもそも請求月の翌月分からしか出ないので、2年の時効が実際に問題になる場面は多くありません。むしろ効いてくるのは、機構から過払いの返還を求められる側です。所得の更正などで後から不該当と分かった場合、2年分までは戻すことになります。
落とし穴 — 実務で間違えやすい5点
5,620円は納付済期間が480月そろって初めて出る額です。納付済240月なら2,810円です。はがきには請求した場合の見込額(月額)が印字されているので、そこを見るのが確実です。
10月に課税されている家族が転出しても、その年度の継続認定は覆りません。改めて請求書を出す必要があり、支給は請求月の翌月分からです。
世帯単位で1つ、ではありません。日本年金機構も「年金生活者支援給付金はお一人おひとりに支払われるもの」と明記しています。夫婦それぞれが要件を満たすなら、それぞれに支給されます。判定は個人ごと、非課税要件だけが世帯です。
60歳から老齢基礎年金を受け取っていても、給付金は65歳からです。法附則6条の読み替えによるもので、繰上げの減額とは別の話です。特別支給の老齢厚生年金を受けている方も同じで、65歳の誕生月の初旬に年金請求書と一体になったはがきが届きます。
不該当のラインは809,000円ではなく909,000円です。809,000円を超えただけなら補足的の側に移るだけで、給付金そのものは続きます。「基準を超えたから終わり」と早合点して請求をやめないことです。
よくある質問
Q. 年金生活者支援給付金は、令和8年度はいくらもらえますか?
A. 老齢の場合は、保険料納付済期間と保険料免除期間から計算します。納付済期間の分は5,620円×納付済月数÷480月、免除期間の分は11,768円×免除月数÷480月(4分の1免除期間は5,884円)で、この2つを足した額が月額です。昭和31年4月1日以前に生まれた方は、免除期間の単価が11,734円(4分の1免除は5,867円)になります。納付済240か月・全額免除60か月の方なら2,810円+1,471円=4,281円です。障害の場合は障害等級1級が7,025円、2級が5,620円、遺族の場合は5,620円で、子が2人以上のときは人数で割ります。
Q. 5,620円と11,768円は、なぜ違う額なのですか?
A. 掛ける相手が条文上で違うからです。年金生活者支援給付金の支給に関する法律3条1号は保険料納付済期間に給付基準額を掛けると定めており、この給付基準額が令和8年度は5,620円です。同条2号は保険料免除期間について、老齢基礎年金の額に免除期間の月数の6分の1を掛けると定めています。令和8年度の老齢基礎年金の満額は月額70,608円なので、70,608円を6で割った11,768円が免除期間に掛かる単価になります。免除期間は老齢基礎年金そのものが減っているため、その減りを部分的に埋め戻す趣旨で単価が高く設定されています。年金と給付金を合計すれば、保険料を納めた方のほうが多く受け取ります。
Q. 対象になるのはどんな人ですか?
A. 老齢年金生活者支援給付金は、65歳以上で老齢基礎年金を受けており、請求する方の世帯全員の市町村民税が非課税で、前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計が809,000円以下(昭和31年4月1日以前生まれの方は806,700円以下)の方です。障害年金生活者支援給付金は障害基礎年金を受けており前年の所得が4,794,000円以下の方、遺族年金生活者支援給付金は遺族基礎年金を受けており同じく4,794,000円以下の方です。障害・遺族の基準額は扶養親族等の数に応じて加算されます。なお日本国内に住所がないとき、年金が全額支給停止のとき、刑事施設等に拘禁されているときは支給されません。
Q. 請求書を出し忘れました。もう遅いですか?
A. その年の12月31日までなら間に合います。年金生活者支援給付金の支給に関する法律施行令12条の2により、10月分の支給要件に該当している方が10月1日から12月31日までの間に認定の請求をしたときは、その年の9月30日に請求があったものとみなされ、10月分から支給されます。1月1日を過ぎるとこの特例は使えず、原則どおり請求した月の翌月分からの支給になります。また、これから年金を受け始める方については、受給権を得た日から3か月以内に請求すれば受給権を得た日に請求したものとみなされます(同令12条1項)。
Q. 毎年手続きが必要ですか?
A. 原則として不要です。一度受け取り始めれば、引き続き要件を満たしているかぎり翌年以降の手続きは要りません。日本年金機構が毎年、市町村から所得情報の提供を受けて継続支給の判定を行い、その結果が10月分から翌年9月分まで反映されます。ただし要件を満たさなくなって支給が止まった方が、その後また要件を満たした場合は、あらためて認定請求の手続きが必要です。世帯構成の変更や税額の更正で新たに該当するようになった場合も、自分から請求する必要があります。
Q. 給付金に税金はかかりますか?年末調整や確定申告で申告しますか?
A. かかりません。年金生活者支援給付金の支給に関する法律33条が、租税その他の公課は年金生活者支援給付金として支給を受けた金銭を標準として課することができないと定めています。公的年金等の源泉徴収票にも載らず、確定申告書の公的年金等の収入金額にも含めません。翌年の給付金の判定に使う所得にも入りません。なお同法32条により、受給権を譲り渡したり担保に供したり差し押さえたりすることもできません。
Q. 満額の老齢基礎年金だけで暮らしていますが、対象になりますか?
A. 本体ではなく、補足的老齢年金生活者支援給付金の対象になる可能性があります。令和8年度の老齢基礎年金の満額は月額70,608円=年額847,296円で、所得基準額の809,000円を上回るためです。ただし909,000円以下なので、補足的老齢年金生活者支援給付金の範囲には入ります。世帯全員の市町村民税が非課税であることなど、ほかの要件も満たす必要があります。判定に使うのは前年の収入金額なので、実際にはご自身の令和7年分の年金収入額で確かめてください。
Q. 夫婦2人とも要件を満たしていたら、2人とも受け取れますか?
A. 受け取れます。年金生活者支援給付金は一人ひとりに支払われるもので、世帯に1つではありません。判定のうち所得の要件は個人ごとに見ますが、市町村民税が非課税かどうかだけは世帯全員で見ます。したがって夫婦のどちらか一方に課税されている所得があると、2人とも要件を満たさなくなる点には注意が必要です。それぞれの納付済期間・免除期間が違えば、支給される額も別々に計算されます。
出典
- 年金生活者支援給付金の支給に関する法律(平成二十四年法律第百二号) — e-Gov法令API v2で取得(最終改正の施行日 2025年6月1日)。1条(目的)、2条(老齢の支給要件・前年所得額・1月〜9月分は前々年)、3条(額の計算・1号と2号・端数処理)、4条(給付基準額五千円・物価による改定)、5条(認定)、6条(支給期間と支払期月)、9条(未支払)、10条・11条(補足的の支給要件と額)、15条・16条(障害の支給要件と1級125%)、20条・21条(遺族の支給要件と子の数による按分)、30条(時効2年)、32条(受給権の保護)、33条(公課の禁止)、附則6条(65歳に達している者に限る、の読み替え)、附則7条・8条(納付済期間と480月の読み替え)
- 年金生活者支援給付金の支給に関する法律施行令(平成三十年政令第三百六十四号) — e-Gov法令API v2で取得(施行日 2026年4月1日)。1条(所得基準額 806,700円/809,000円)、2条(世帯の市町村民税非課税の判定年度)、3条・4条(老齢側の所得の範囲と計算方法)、4条の2(令和8年4月以降の給付基準額を五千六百二十円に読み替え)、6条(補足的所得基準額 906,700円/909,000円)、7条(調整支給率)、8条(障害・遺族の 4,794,000円と扶養親族等の加算)、9条・10条(障害・遺族側の所得の範囲と控除)、11条(本体と補足的の行き来の請求特例)、12条(受給権発生から3か月以内の遡及)、12条の2(10月1日〜12月31日の請求を9月30日とみなす)
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」(更新日 2026年4月1日) — 支給要件の3項目、令和8年度の 809,000円/909,000円・806,700円/906,700円、給付額の計算式(5,620円・11,768円・5,884円・11,734円・5,867円)、調整支給率、納付済240月+全額免除60月の計算例(4,281円)
- 日本年金機構「障害年金生活者支援給付金の概要」(更新日 2026年4月1日) — 1級 7,025円・2級 5,620円、所得要件 4,794,000円+扶養親族の数×38万円(48万円・63万円の加算)
- 日本年金機構「遺族年金生活者支援給付金の概要」(更新日 2026年4月1日) — 5,620円、子が2人以上のときは人数で割ること、子3人の計算例(1,873円)
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」(更新日 2026年4月1日) — 令和8年度の老齢基礎年金の満額 月額70,608円(昭和31年4月1日以前生まれは70,408円)、国民年金1.9%・厚生年金2.0%の引上げ、給付基準額の令和8年度/令和7年度の対照(5,620円/5,450円、1級 7,025円/6,813円)
- 日本年金機構「令和8年度の年金額および年金生活者支援給付金支給金額の改定について」(更新日 2026年6月3日) — 給付基準額が物価変動率により令和7年度比3.2%の引上げであること、免除期間を有する方は3.2%増とならない場合があること
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」(更新日 2025年9月1日) — 毎年9月の第1営業日から順次送付、緑の封筒、電子申請と郵送、はがきに見込額(月額)が記載されていること
- 日本年金機構 年金Q&A(年金生活者支援給付金の支給要件・手続き・継続認定)(更新日 2022年4月1日〜2026年4月1日) — 夫婦2人とも受け取れること、請求した場合の支給開始時期と3か月以内の遡及、支給判定の結果が10月分から翌年9月分まで反映されること、翌年以降の手続きは原則不要であること、継続認定は9月30日時点の世帯状況と前年所得で判定していること、所得が下がった場合に受給できるのは翌年10月分からであること
- 本文中の計算例(調整支給率0.617・月額3,468円、11,768円=70,608円÷6、5,884円=70,608円÷12、7,025円=5,620円×1.25)は、上記の条文と公表額から算出した
この記事は令和8年(2026年)8月時点で日本年金機構が公表している内容と、e-Gov法令検索で確認した条文に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案についての相談に対する回答ではありません。筆者は税理士・社会保険労務士ではありません。実際に支給される額は、保険料納付済期間・保険料免除期間の記録、生年月日、世帯の課税状況、前年の所得によって変わります。ご自身の額と該当の有無については、はがきに記載された見込額を確認するか、給付金専用ダイヤルまたはお近くの年金事務所にご確認ください。