離職率の計算方法|業種別の比較表と定着率との違い
離職率は、対象期間中の離職者数を、基準時点の在籍者数で割って求める割合です。厚労省の雇用動向調査と比較するなら、期間だけでなく、分母となる常用労働者と、離職者に含める範囲をそろえます。
この記事では、雇用動向調査の年計に沿った計算と業種別の比較表を示します。期初在籍者を追う定着率は、年中採用後の離職も含む離職率とは別に計算します。
離職率の計算式と集計対象
年齢階級別を除く雇用動向調査の年計では、離職率は年間の離職者数 ÷ 年初の常用労働者数 × 100で計算します。
厚生労働省の「主な用語の定義」では、年計の分母を1月1日現在の常用労働者数としていますが、年齢階級別の離職率は6月末日現在の常用労働者数を使います。
| 確認するもの | 含める範囲・区分 |
|---|---|
| 常用労働者 | 期間を定めずに雇われている人、又は1か月以上の期間を定めて雇われている人 |
| 離職者 | 期間中に事業所を退職・解雇された常用労働者。他企業への出向者・出向復帰者を含み、同一企業内の他事業所への転出者を除く |
| 一般労働者 | 常用労働者のうちパートタイム労働者以外。正社員だけを意味しない |
| パートタイム労働者 | 常用労働者のうち、事業所の一般労働者より所定労働時間が短い人等。下の注を参照 |
パートタイム労働者は、常用労働者のうち、同じ事業所の一般労働者より日々の所定労働時間が短い人、又は所定労働時間が同じでも週の所定労働日数が少ない人です。契約書の呼称だけで区分しません。
退職理由を自己都合だけに絞った集計と、退職・解雇を含む調査の離職率は、同じ指標として並べられません。他企業への出向等を除いた社内管理用の指標を作る場合も、調査方式との違いを集計表に残します。
年中採用後の離職を含めた計算例
年中に採用し、その年のうちに離職した常用労働者も、対象期間の離職者に含めます。
以下は、ある暦年の年初常用労働者が50人、年間離職者が8人だった架空例です。この架空例の離職者の内訳は期初在籍者6人、年中採用者2人で、出向・社内転出・再入社等の別移動はないものとします。
| 集計項目 | 人数・計算 |
|---|---|
| 分母:年初の常用労働者 | 50人 |
| 分子:期間中の離職者 | 8人(期初在籍者6人+年中採用者2人) |
| 年計の離職率 | 8人 ÷ 50人 × 100 = 16% |
この架空例で期初在籍者の離職だけを分子にすると、6人 ÷ 50人 × 100 = 12%ですが、年中採用後に離職した2人を含まないため、年計の離職率とは呼び分けます。
就業形態別・業種別の離職率
自社と比較するときは、産業と就業形態をそろえて表を読みます。一般労働者だけを集計した自社の数字を、パートタイムを含む産業計にそのまま当てはめないようにします。
次表は、全国の指定16大産業(家事サービス業・外国公務を除く)の常用労働者5人以上の事業所を対象とする、2025年雇用動向調査の年計の離職率です。分母は各区分の年初常用労働者数で、公表値は表章単位未満を四捨五入しています。
| 産業 | 計 | 一般労働者 | パートタイム労働者 |
|---|---|---|---|
| 産業計 | 13.7% | 11.4% | 19.9% |
| 鉱業,採石業,砂利採取業 | 10.2% | 9.8% | 19.0% |
| 建設業 | 8.7% | 7.9% | 19.3% |
| 製造業 | 9.8% | 9.2% | 14.2% |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 8.8% | 8.0% | 19.6% |
| 情報通信業 | 10.4% | 10.0% | 21.9% |
| 運輸業,郵便業 | 9.0% | 8.1% | 12.2% |
| 卸売業,小売業 | 11.9% | 8.5% | 17.6% |
| 金融業,保険業 | 6.6% | 6.3% | 10.6% |
| 不動産業,物品賃貸業 | 12.1% | 10.5% | 19.6% |
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 11.7% | 10.0% | 26.7% |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 23.7% | 21.5% | 25.0% |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | 20.1% | 16.1% | 25.1% |
| 教育,学習支援業 | 15.1% | 9.8% | 26.6% |
| 医療,福祉 | 14.3% | 13.6% | 15.9% |
| 複合サービス事業 | 8.6% | 7.7% | 12.6% |
| サービス業(他に分類されないもの) | 21.2% | 20.3% | 23.8% |
出典:厚生労働省「入職と離職の推移」、「産業別の入職と離職」。表は各社の離職率を単純平均したものではなく、調査から推計した人数を基にした率です。
業種の順位から、自社の退職理由までは分かりません。業種が同じでも、就業形態、事業所規模、年齢構成や契約満了の状況は違います。比較表は調べる入口として使い、個別の離職原因は社内の記録で確認します。
定着率と離職率を混同しない
定着率は、誰を追跡するかを決めてから計算します。この記事の管理例では、期初にいた集団のうち、期末にも在籍している人の割合を定着率とします。
先ほどの架空例では、期初在籍者50人のうち年間に6人が離職し、44人が期末も在籍しています。再入社・出向等の別移動はなく、期初集団を期末在籍と期間内離職に分ける管理例です。
| 指標 | 計算 | 何を数えたか |
|---|---|---|
| 期初集団の定着率 | 44人 ÷ 50人 × 100 = 88% | 期初集団のうち期末にも在籍している人 |
| 期初集団の離職割合 | 6人 ÷ 50人 × 100 = 12% | 期初集団のうち期間内に離職した人 |
| 年計の離職率 | 8人 ÷ 50人 × 100 = 16% | 年中採用後の離職者も含む |
この架空例の定着率は88%で、年計の離職率を差し引いた100 − 16 = 84%とは一致しません。
同じ期初集団を期末在籍と期間内離職に重複・漏れなく分けた管理指標なら、定着率と離職割合を足すと100%になります。年中採用者を含む離職率や、再入社の扱いが異なる指標との間で、この関係を使うことはできません。
新卒採用者の定着を見たい場合も、入社時の対象集団と観察期間を先に固定します。会社全体の暦年の離職率と、新卒の入社後の一定期間の離職率は、対象者と期間が異なるので別表にします。
人事台帳から集計表を作る手順
以下は、雇用動向調査の年計と比べるための社内集計の作業例です。法定の提出様式や、助成金の離職率判定に使う算定手順ではありません。
- 対象期間、事業所の範囲、常用労働者の区分を決め、集計表の冒頭に書く。
- 基準時点の人事台帳から、分母となる常用労働者数を確定する。期末の名簿で上書きしない。
- 期間中の異動記録から離職者を集計する。年中採用者、他企業への出向等、同一企業内の転出を区別する。
- 離職者数を分母で割る。人数と未丸めの計算結果を保存し、表示の丸め方をそろえる。
- 比較する公表表の対象年・産業・就業形態と、社内集計の定義が一致するか確かめる。
集計の元データには、従業員を識別する番号、入社日、退職日、就業形態、異動区分、期初在籍の印を持たせると、年計と期初集団の集計を分けて確かめられます。給与の支給月だけから退職時点を推定せず、人事の異動記録と対応させます。
表計算ソフトでは、離職者数のセルを基準時点の人数のセルで割り、セルをパーセント表示にします。パーセント表示を使う場合は、計算式側でも百分率への換算を重ねないようにします。
分母となる在籍者がいない場合は、割り算の結果を離職率として出せません。未算定の理由を記し、離職者がいなかった場合と区別します。
比較と原因確認で間違えやすい点
| 違いが生まれる点 | 比較前の確認 |
|---|---|
| 暦年と事業年度 | 開始日と終了日をそろえる。期間がずれたまま前年比と呼ばない |
| 半期と年計 | 年計同士で比べる。半期の率をそのまま年計の率と並べない |
| 期初人数と期末人数 | 分母を固定する。採用増で分母が大きくなった影響と混同しない |
| 正社員と一般労働者 | 雇用形態の呼称ではなく、公表資料の定義を確認する |
| 自己都合だけの集計 | 調査の離職者全体とは別指標として名前を付ける |
| 小さな部署の変動 | 率だけでなく分母と離職人数を併記する |
率が変わったら、先に人数と集計条件を確認します。そのうえで、勤続期間、就業形態、契約満了や定年等の区分を分け、退職記録や面談記録と照合する流れです。離職率だけを根拠に、給与、人間関係、業務負荷のどれが原因かを断定しません。
部門別に見る場合は、社内異動をどう扱ったかも残します。同一企業内の転出を数える部門独自の指標と、転出を除く雇用動向調査の定義は区別が必要です。原因を調べるための切り口と、公表統計に合わせる切り口を混ぜないようにします。
残業や休暇の状況も確認する場合は、所定労働時間の整理が関連します。これらの値と離職率が同時に変わっても、それだけで因果関係が確定するわけではありません。
休暇の付与条件を確かめる:有給休暇計算ツールこのツールは有給休暇の付与日数を確認するもので、離職率や離職原因を判定するものではありません。
よくある質問
パートやアルバイトも離職率に含めますか?
雇用動向調査では、常用労働者の定義に当たる人を含めます。期間を定めずに雇われている人、又は1か月以上の期間を定めて雇われている人が対象で、パートやアルバイトという呼称だけでは除きません。
途中で入社して辞めた人も数えますか?
雇用動向調査の年計の離職者には、期間中に入社して離職した常用労働者も含めます。分母の基準時点と、離職者に含める範囲は別に確認します。
定着率は離職率を差し引けば分かりますか?
対象集団と観察期間が一致するかの確認が必要です。同じ期初集団を期末在籍と期間内離職に重複・漏れなく分ける管理指標とは異なり、年中採用後の離職者を含む離職率からは、期初集団の定着率を直接求められません。
業種の平均より高ければ問題のある会社ですか?
離職率だけでは判断できません。就業形態や対象期間、離職理由の構成などを確認し、同じ定義で比べます。個別の原因は、退職記録や職場の状況と照合して確かめます。
出典
- 厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概況」主な用語の定義
- 厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概況」調査の概要
- 厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概況」利用上の注意
- 厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概況」入職と離職の推移
- 厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概況」産業別の入職と離職
- 計算例の人数・定着率の定義、社内集計の作業手順は当サイトの説明用です。公表された企業の実績や、厚生労働省所定の定着率の算定方法ではありません。
本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・労務相談への回答ではありません。実際の判断は税務署・税理士・社会保険労務士等にご確認ください。個別の税務・労務相談には応じられません。