産後パパ育休(出生時育児休業) — 「2週間前まで」は申出の期限ではない。会社にできるのは開始日をずらすことだけ
結論から言うと、「2週間前までに申し出なければならない」という決まりは、条文のどこにも書かれていません。育児・介護休業法が定めているのはその逆で、申出が2週間を切っていたときに、事業主が開始日を後ろへずらせるという規定です(9条の3第3項)。申出そのものは有効に成立します。会社ができるのは、労働者が希望した開始日から「申出の翌日から2週間を経過する日」までのあいだのいずれかの日を、開始予定日として指定することだけです。1日前に申し出ても休業は取れます。始まる日が最大で2週間後ろへ動くだけです。
もう1つ、ほぼすべての解説が「出生後8週間以内」と書いている取得できる期間も、条文どおりに読むと違います。枠は、出生日と出産予定日の早い方から始まり、遅い方から8週間を経過する日の翌日で終わります。つまり予定日とずれて生まれたときは、どちらにずれても枠は8週間より長くなります(9条の2第1項の2つの括弧書き)。
この記事は、産後パパ育休という休業の制度そのもの——誰が取れて、いつまでに何を申し出て、会社は何を拒めて何を拒めないのか、休業中に働けるのか、社会保険料はどうなるのか——を条文で確認します。給付金がいくらになるかの計算は育児休業給付金はいくらと産後パパ育休 給付金 計算機に譲ります。ここはお金ではなく、休むこと自体の話です。
法律上の名前は「出生時育児休業」。育休の一種であって別制度ではない
「産後パパ育休」は行政と報道が使う通称で、条文にこの言葉は出てきません。法律上の名称は出生時育児休業で、育児・介護休業法9条の2から9条の5までがこれを定めています。
そして条文は、これを育児休業の一種として定義しています。9条の2第1項の括弧書きは「出生時育児休業(育児休業のうち、この条から第九条の五までに定めるところにより、……の期間内に四週間以内の期間を定めてする休業をいう。以下同じ。)」という書き方です。別建ての休暇制度ではなく、育児休業という大きな箱の中の、最初の8週間だけに使える特別な取り方だということです。
逆に、通常の育児休業を定める5条1項のほうは、括弧書きで出生時育児休業を除いています。
労働者は、その養育する一歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業(第九条の二第一項に規定する出生時育児休業を除く。以下この条から第九条までにおいて同じ。)をすることができる。
つまり同じ法律の中で、5条から9条までの「育児休業」は産後パパ育休を含まない言葉として使われています。実務で条文を引くときは、この読み替えを踏まないと結論が反対になります。
9条の2第1項の主語は「労働者は」で、条文に性別の限定はありません。実際には母親が出生後8週間のあいだ労働基準法65条2項の産後休業に入っているため使う場面がないだけです。特別養子縁組の場合などは産後休業が生じないため、施行規則21条の2第1項3号も申出事項として「特別養子縁組の請求等の場合にあっては、その事実」を挙げています。「パパ」は通称に含まれる言葉であって、要件ではありません。
取れる枠は「出生後8週間」ではない — 早い方から、遅い方の8週間後まで
ここが、解説記事と条文がいちばん大きくずれている点です。9条の2第1項は、休業できる期間の枠をこう定めています。
子の出生の日から起算して八週間を経過する日の翌日まで(出産予定日前に当該子が出生した場合にあっては当該出生の日から当該出産予定日から起算して八週間を経過する日の翌日までとし、出産予定日後に当該子が出生した場合にあっては当該出産予定日から当該出生の日から起算して八週間を経過する日の翌日までとする。
括弧書きが2つ入っていて読みにくいのですが、整理すると規則は1つです。
- 枠の始まり= 出生日と出産予定日の早い方
- 枠の終わり= 出生日と出産予定日の遅い方から起算して8週間を経過する日の翌日
予定日どおりに生まれたときだけ、この2つが同じ日になって「出生後8週間」に見えます。ずれて生まれたときは、早く生まれても遅く生まれても枠は長くなります。出産予定日を2026年10月1日として、条文の「起算して」を初日算入で数えると次のようになります。
| ケース | 出産予定日 | 出生日 | 枠の始まり | 枠の終わり | 枠の長さ |
|---|---|---|---|---|---|
| 予定日どおり | 10月1日 | 10月1日 | 10月1日 | 11月26日 | 57日 |
| 11日早く生まれた | 10月1日 | 9月20日 | 9月20日 | 11月26日 | 68日 |
| 9日遅れて生まれた | 10月1日 | 10月10日 | 10月1日 | 12月5日 | 66日 |
早産のときは始まりが前へ動き、終わりは動きません(終わりを決めるのは遅い方=予定日のままだから)。遅れて生まれたときは始まりが動かず、終わりが後ろへ動きます。どちらも枠が広がる向きに設計されているわけです。
ただし、枠が広がっても取れる日数は増えません。次の章のとおり、日数の上限は28日で別に定められています。枠が広がるのは「いつ取るかを選ぶ余地」が広がるということです。
28日の数え方と、2回に分けるときの落とし穴
日数の上限は9条の2第2項2号にあります。ここで注意したいのは、28日を数え始める日が、枠の始まりと同じ考え方で決まっていることです。
当該子の出生の日(出産予定日後に当該子が出生した場合にあっては、当該出産予定日)以後に出生時育児休業をする日数(出生時育児休業を開始する日から出生時育児休業を終了する日までの日数とする。第九条の五第六項第三号において同じ。)が二十八日に達している場合
括弧書きが効くのは「出産予定日後に出生した場合」だけで、そのときの起点は出産予定日です。早く生まれたときは括弧書きが働かず、起点は出生日のままです。どちらの場合も、結果として起点は早い方の日になります。枠の始まりと一致しているわけです。
また、日数の数え方は「開始する日から終了する日までの日数」とはっきり書かれています。所定労働日だけを数えるのではありません。土日や祝日も、休業期間の中に入っていれば1日と数えます。
9条の2第2項1号は、枠の中で「二回の出生時育児休業……をした場合」にはもう申し出られないと定めています。つまり2回までは分割できます。問題はその申し出方です。事業主の義務を定める9条の3第1項には、次のただし書があります。
事業主は、労働者からの出生時育児休業申出があったときは、当該出生時育児休業申出を拒むことができない。ただし、労働者からその養育する子について出生時育児休業申出がなされた後に、当該労働者から当該出生時育児休業申出をした日に養育していた子について新たに出生時育児休業申出がなされた場合は、この限りでない。
読み解くと、事業主が拒めないのは最初の申出までです。同じ子について、最初の申出のあとで新たに出された2回目の申出は、この「この限りでない」に当たるため拒むことができます。よく「2回に分ける場合は初めにまとめて申し出る必要があります」と書かれますが、正確には労働者の側の禁止ではなく、事業主の側の拒否権です。まとめて申し出なくても申出自体は有効で、会社が受け入れれば2回目も取れます。会社に断られたときに争えないだけです。
実務上の意味は小さくありません。2回に分ける可能性が少しでもあるなら、最初の申出で2回分の日程を書いておく——そうすれば会社に拒否権が生じません。あとから思いついた2回目は、会社の裁量にかかります。
「2週間前まで」の正体 — 期限ではなく、会社の開始日指定権
冒頭に書いた点をここで条文で確かめます。9条の3第3項です。
事業主は、労働者からの出生時育児休業申出があった場合において、当該出生時育児休業申出に係る出生時育児休業開始予定日とされた日が当該出生時育児休業申出があった日の翌日から起算して二週間を経過する日(以下この項において「二週間経過日」という。)前の日であるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該出生時育児休業開始予定日とされた日から当該二週間経過日(当該出生時育児休業申出があった日までに、第六条第三項の厚生労働省令で定める事由が生じた場合にあっては、当該二週間経過日前の日で厚生労働省令で定める日)までの間のいずれかの日を当該出生時育児休業開始予定日として指定することができる。
主語は「事業主は」、述語は「指定することができる」です。労働者に対する「申し出なければならない」という義務規定ではありません。したがって、次のことが条文から言えます。
- 2週間を切った申出も有効に成立する。会社は「期限切れだから受け付けない」とは言えない(9条の3第1項の「拒むことができない」がかかる)
- 会社にできるのは、労働者が希望した開始日から「二週間経過日」までのあいだの、いずれかの日を指定することだけ
- 指定は義務ではなく権利。会社が指定しなければ、希望どおりの日から始まる
- 指定できる範囲の上限は「二週間経過日」なので、どれだけ直前に申し出ても、ずれるのは最大で2週間
10月1日に申し出て10月2日から休みたいと言った場合、二週間経過日は10月15日です(申出の翌日10月2日から起算して14日目)。会社が指定できるのは10月2日から10月15日までのどこかで、それより後ろへは指定できません。指定できる幅は、申出が早いほど狭くなり、2週間以上前に申し出れば会社の指定権はそもそも発生しません。
なお、指定できる範囲がさらに縮む場合があります。条文中の「第六条第三項の厚生労働省令で定める事由」——出産予定日前に子が生まれたことなどが申出までに起きていた場合には、二週間経過日より手前の日が上限になります。予定日より早く生まれてから慌てて申し出たケースでは、会社が後ろへずらせる幅はもっと狭くなるということです。
労使協定で1か月前まで延ばすには、定量的な目標の設定まで要る
この2週間は、労使協定で最大1か月まで延ばせます。ただし「延ばす」とだけ協定に書いても効きません。9条の3第4項は、協定に定めるべき事項を2つ挙げています。
出生時育児休業申出が円滑に行われるようにするための雇用環境の整備その他の厚生労働省令で定める措置の内容
事業主が出生時育児休業申出に係る出生時育児休業開始予定日を指定することができる出生時育児休業申出があった日の翌日から出生時育児休業開始予定日とされた日までの期間(二週間を超え一月以内の期間に限る。)
2つ目が「1か月まで」の根拠です。問題は1つ目で、そこにいう「厚生労働省令で定める措置」を受けた施行規則21条の7が、3つの措置を並べています。条文は「次のとおりとする」と書いており、いずれかを選ぶ形ではありません。
| 号 | 措置の内容 | 実務でつまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 1号 | 雇用環境整備の措置として、研修の実施/相談体制の整備/取得事例の収集と提供/制度と取得促進の方針の周知/業務の配分または人員の配置に係る必要な措置、のいずれか2つ以上を講じること | ここだけは「2つ以上」の選択制。5つのうち2つでよい |
| 2号 | 育児休業の取得に関する定量的な目標を設定し、取得促進の方針を周知すること | 数値目標の設定まで条文上の要件。「推進します」では足りない |
| 3号 | 育児休業申出に係る労働者の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取組を行うこと | 確認の仕組みを置くだけでなく、把握する取組までが求められる |
つまり1か月ルールは、会社が育休の取得促進に実体を伴って取り組んでいることと引き換えに与えられています。3つのうち1つでも欠けていれば、協定に「1か月前まで」と書いてあっても9条の3第4項の読み替えは働かず、原則どおり2週間に戻ります。会社側の実務としては、協定書に期間だけを書いて満足しないことです。
休業中に働けるか — 起点は労働者の申出。上限は3つある
産後パパ育休は、通常の育児休業と違ってあらかじめ決めておけば休業中に働けます。ただし手順は厳密で、9条の5第2項から第4項までが3段階を定めています。
- 労使協定で「就業させることができる労働者」として定められていること(9条の5第2項の括弧書き)。協定が無ければ、そもそも就業の申出はできません
- 労働者が、就業できる日と時間帯を申し出る(9条の5第2項)。開始予定日の前日までです。起点は労働者側で、会社から働けと求めることはできません
- 会社が申出の範囲内で日時を提示し、労働者の同意を得る(9条の5第4項)。同意も開始予定日の前日までに必要です
事業主は、労働者から第二項の規定による申出(前項の規定による変更の申出を含む。)があった場合には、当該申出に係る就業可能日等(前項の規定により就業可能日等が変更された場合にあっては、その変更後の就業可能日等)の範囲内で日時を提示し、厚生労働省令で定めるところにより、当該申出に係る出生時育児休業開始予定日とされた日の前日までに当該労働者の同意を得た場合に限り、厚生労働省令で定める範囲内で、当該労働者を当該日時に就業させることができる。
労働者が申し出た範囲を超える日時を提示することはできません。そして施行規則21条の15第4項は、申出があったときに事業主は就業させたい日と、その日の労働条件を速やかに提示しなければならないと定めています。就業させたくない場合も「その旨」を提示する義務があるので、会社が申出を放置することは想定されていません。申出も提示も同意も、書面が原則で、ファクシミリと電子メール等は相手方の希望や事業主が適当と認める場合に限られます(規則21条の15第2項・第5項、21条の16第1項)。
上限は3つ。「半分まで」で覚えると1つ落ちる
9条の5第4項の末尾「厚生労働省令で定める範囲内で」を受けているのが施行規則21条の17です。上限は3つあります。
就業させることとした日(以下この条において「就業日」という。)の数の合計が、出生時育児休業期間の所定労働日数の二分の一以下であること。ただし、一日未満の端数があるときは、これを切り捨てた日数であること。
就業日における労働時間の合計が、出生時育児休業期間における所定労働時間の合計の二分の一以下であること。
出生時育児休業開始予定日とされた日又は出生時育児休業終了予定日とされた日を就業日とする場合は、当該日の労働時間数は、当該日の所定労働時間数に満たないものであること。
3つ目が見落とされがちです。休業の初日と最終日を就業日にする場合、その日はフルタイムで働かせられません。所定労働時間数「に満たない」ことが求められるので、8時間の所定なら7時間59分以下です。日数と時間の半分ルールを両方満たしていても、この3つ目に触れると範囲外になります。
所定労働時間8時間・週5日勤務の人が、10月1日から28日間(4週間)の産後パパ育休を取るとします。この期間の所定労働日数が20日なら、就業日の上限は10日(20日の2分の1)。所定労働時間の合計は160時間なので、就業時間の上限は80時間です。10日間を1日8時間で働けば80時間ちょうどで、両方の上限に同時に届きます。ここで初日の10月1日を就業日に含めるなら、その日だけは8時間未満にしなければなりません。
一度した同意は、開始予定日の前日までなら理由を問わず全部または一部を撤回できます(9条の5第5項本文)。開始日以後は、施行規則21条の19が定める特別の事情がある場合に限られます。挙げられているのは、配偶者の死亡、配偶者が負傷・疾病等により子を養育することが困難になったこと、離婚等により配偶者が子と同居しないこととなったこと、子が負傷・疾病等により2週間以上の期間にわたり世話を必要とする状態になったとき、の4つです。「仕事が思ったより落ち着いた」といった理由での撤回は、開始後にはできません。
有期雇用の要件は、育休と起点が違う
契約社員・パートなど期間を定めて雇用される人には、育児休業も産後パパ育休も追加の要件がかかります。ここで同じ法律の中で、2つの制度が別々の基準日を使っています。
ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、その養育する子の出生の日(出産予定日前に当該子が出生した場合にあっては、当該出産予定日)から起算して八週間を経過する日の翌日から六月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる。
これが産後パパ育休(9条の2第1項ただし書)です。対して通常の育児休業(5条1項ただし書)はこうです。
ただし、期間を定めて雇用される者にあっては、その養育する子が一歳六か月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの。第三項、第九条の二第一項及び第十一条第一項において同じ。)が満了することが明らかでない者に限り、当該申出をすることができる。
| 産後パパ育休(9条の2第1項ただし書) | 育児休業(5条1項ただし書) | |
|---|---|---|
| 基準となる日 | 出生日等から8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日 | 子が1歳6か月に達する日 |
| 出生日からのおおよその長さ | 約8か月 | 18か月 |
| 要件 | その日までに労働契約が満了することが明らかでないこと(満了することが明らかなら申し出られない) | |
差は約10か月あります。したがって「産後パパ育休は取れるが、そのあとの育児休業は取れない」という状態が、条文上ふつうに起こります。たとえば子の出生から12か月後に契約期間が満了することが明らかな有期雇用の人は、産後パパ育休の基準(約8か月)は越えているので取れますが、育児休業の基準(18か月)は越えられないので取れません。
これとは別に、6条1項ただし書は「当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者」を労使協定で除外できると定めています。産後パパ育休についても9条の3第2項がこの規定を準用しているので、入社1年未満を除外する労使協定があれば、産後パパ育休も同じように除外されます。有期かどうかとは別の話なので、無期雇用の新入社員にもかかります。
なお、契約更新をまたいで休業を続ける場合には、これらの制限が働きません。9条の2第4項は、労働契約の末日を休業終了予定日とする休業をしている人が、更新後の契約の初日から続けて休業する申出をするときは、有期の要件も2回の制限も適用しないとしています。9条の3第5項も同様に、事業主の指定権を適用しないと定めています。契約の切れ目で休業が中断させられないための規定です。
社会保険料 — 産後パパ育休だけだと賞与分は免除されない
健康保険料・厚生年金保険料の免除は、健康保険法159条と厚生年金保険法81条の2が同じ構造で定めています。免除される月は2通りです。
- 月をまたぐ場合(1号)… 開始した日の属する月から、終了する日の翌日が属する月の前月まで。要するに末日に休業していればその月は免除
- 同じ月の中で始まって終わる場合(2号)… その月の休業日数が14日以上であればその月が免除
ここまでは育児休業と共通ですが、産後パパ育休にはこの制度に固有の効き方が2つあります。
① 賞与にかかる保険料は、産後パパ育休だけでは免除されない
159条1項の本文には、見落としやすい括弧書きがあります。
その育児休業等の期間が一月以下である者については、標準報酬月額に係る保険料に限る
産後パパ育休は最長28日ですから、単独で取る限り必ず「一月以下」に当たります。したがって免除されるのは標準報酬月額に係る保険料だけで、賞与に係る保険料は免除されません。厚生年金保険法81条の2第1項にも同じ括弧書きがあるので、健保・厚年の両方で同じ結論になります。
ただし救いがあります。159条2項は、連続する2以上の育児休業等は全部を1つの育児休業等とみなすと定めています。産後パパ育休のあと続けて通常の育児休業に入り、通算が1か月を超えれば、賞与分も免除の対象になります。その「連続」の意味を定めているのが施行規則135条5項で、ここがきわめて実務的です。
法第百五十九条第二項に規定する厚生労働省令で定める場合は、被保険者が二以上の育児休業等をしている場合であって、一の育児休業等を終了した日とその次の育児休業等を開始した日との間に当該被保険者が就業した日がないときとする。
あいだに1日でも就業した日があれば、連続とはみなされません。産後パパ育休を終えて数日出社し、それから育児休業に入る——という取り方をすると、みなし規定が働かず、それぞれが「一月以下」として扱われる可能性があります。賞与月にかかるなら、この数日の出社が保険料の免除を失わせることになります。
② 14日を数えるとき、就業した分は日数から引かれる
2号の「14日以上」を数える方法を定めているのが施行規則135条4項です。産後パパ育休を名指しして、就業分を差し引く計算を置いています。
その育児休業等を開始した日の属する月における当該育児休業等を開始した日から当該育児休業等を終了する日までの期間の日数(被保険者が育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七十六号)第九条の二第一項に規定する出生時育児休業をする場合には、同法第九条の五第四項の規定に基づき当該被保険者を使用する事業主が当該被保険者を就業させる日数(当該事業主が当該被保険者を就業させる時間数を当該被保険者に係る一日の所定労働時間数で除して得た数(その数に一未満の端数があるときは、これを切り捨てた数)をいう。)を除いた日数)とする。
ここで差し引く「就業させる日数」は、暦の日数ではありません。上の条文が定義しているのは、事業主が被保険者を就業させる時間数を、その被保険者に係る1日の所定労働時間数で除して得た数です。1未満の端数があるときは切り捨てます。時間で割って、端数は切り捨てるのです。
1日の所定労働時間が8時間の人が、休業期間中に4時間ずつ3日就業したとします。就業させた時間数は合計12時間。12 ÷ 8 = 1.5 で、1未満の端数を切り捨てて1日。差し引かれるのは3日ではなく1日です。
逆に8時間を3日なら 24 ÷ 8 = 3 で3日が引かれます。同じ「3日出勤」でも、短時間で分散させたほうが差し引きは小さくなります。14日ぎりぎりの設計をするときは、日数ではなく時間で数えてください。
この就業日の差し引きは、条文が出生時育児休業を名指しして置いている規定です。通常の育児休業には休業中の就業という仕組みがないため、差し引きも生じません。産後パパ育休だけの計算だということです。
免除を受けるには事業主が申出書を出す必要があり(159条1項本文、施行規則135条1項)、同じ月の中で始まって終わる場合には申出書に育児休業等の日数を記載します(同項7号)。この日数が、いま見た計算で出す数字です。
産後パパ育休でいくら受け取れるかを計算する(産後パパ育休 給付金 計算機)2026年10月1日施行の改正は、この制度を1文字も動かさない
育児・介護休業法は近年たびたび改正されており、2026年10月1日にも令和7年法律第63号による改正が施行されます。ただしこの改正は、産後パパ育休の条文を変更しません。
e-Gov 法令API v2 で、現行(令和7年10月1日施行)と2026年10月1日施行のリビジョンを両方取得し、条単位で突き合わせて確認しました。9条の2から9条の5までの4か条は、4か条とも完全に一致します。5条・6条も同じです。この改正で変わるのは次の3か条だけでした。
| 条 | 変わる内容 |
|---|---|
| 1条(目的) | 目的規定の文言 |
| 52条の6(調停) | 準用する男女雇用機会均等法の条番号が「19条から26条まで」から「25条から32条まで」へ |
| 60条(船員に関する特例) | 船員職業安定法の引用の整理 |
52条の6は引用先の法律の条番号が動いたことに伴う整理で、調停の手続そのものが変わるわけではありません。つまり、2026年10月1日を境に産後パパ育休の取り方が変わるということはありません。この時期に「改正がある」という情報を見かけても、産後パパ育休の申出期限や28日や就業の上限には関係しないと考えて差し支えありません。
よくある質問
Q. 「2週間前までに申し出ないと取れない」と会社に言われました。本当ですか?
A. 取れます。育児・介護休業法9条の3第1項は、事業主は出生時育児休業申出を拒むことができないと定めており、2週間を切った申出を無効とする規定はありません。同条3項が定めているのは、開始予定日が申出の翌日から2週間を経過する日より前であるときに、事業主がその範囲内のいずれかの日を開始予定日として指定することができる、という権利です。つまり申出は成立し、会社にできるのは開始日を後ろへずらすことだけで、ずらせる幅も最大で2週間です。指定は義務ではないので、会社が指定しなければ希望した日から始まります。なお2週間を1か月まで延ばす労使協定がある場合は、この幅が1か月まで広がります。
Q. 産後パパ育休は出生後8週間以内と聞きましたが、予定日より遅く生まれた場合はどうなりますか?
A. 枠は広がります。9条の2第1項の括弧書きは、出産予定日後に子が出生した場合の期間を、当該出産予定日から当該出生の日から起算して八週間を経過する日の翌日までとしています。始まりが出産予定日、終わりが出生日から8週間後なので、遅れた日数の分だけ枠が長くなります。逆に予定日より早く生まれた場合は、始まりが出生日に前倒しされ、終わりは出産予定日から8週間後のままなので、やはり枠は長くなります。ただし枠が広がっても取得できる日数の上限28日は変わらないため、増えるのは「いつ取るかの選択肢」です。
Q. 2回に分けて取りたいのですが、あとから2回目を申し出てもよいですか?
A. 申出自体はできますが、会社は拒むことができます。9条の3第1項ただし書は、その子について出生時育児休業申出がなされた後に、同じ子について新たに出生時育児休業申出がなされた場合には、事業主が拒むことができないという原則の例外になると定めています。したがって、2回に分ける可能性があるなら最初の申出で2回分の日程をまとめて明らかにしておくのが確実です。まとめて申し出た場合、会社は原則として拒めません。なお分割できるのは2回までで、9条の2第2項1号が枠の中で2回の出生時育児休業をした場合にはそれ以上申し出られないと定めています。
Q. 休業中に働くと、社会保険料の免除は受けられなくなりますか?
A. 同じ月の中で始まって終わる場合の14日要件を数えるときに、就業した分が差し引かれます。健康保険法施行規則135条4項は、差し引く日数を、事業主が就業させる時間数を1日の所定労働時間数で除して得た数(1未満の端数は切り捨て)と定義しています。1日8時間の所定で4時間ずつ3日就業したなら、12時間÷8時間=1.5で切り捨てて1日が引かれます。暦の3日が引かれるわけではありません。月をまたいで休業して末日に休業している場合は1号が適用されるため、この日数計算そのものが不要です。
Q. 産後パパ育休の月に賞与が出ます。賞与の社会保険料も免除されますか?
A. 産後パパ育休だけを取っている場合は免除されません。健康保険法159条1項と厚生年金保険法81条の2第1項は、育児休業等の期間が1か月以下である者については標準報酬月額に係る保険料に限ると括弧書きで定めており、最長28日の産後パパ育休は必ずこれに当たるためです。ただし健康保険法159条2項は連続する2以上の育児休業等の全部を1つとみなすと定めているので、続けて通常の育児休業に入り通算が1か月を超えれば賞与分も対象になります。この連続の意味は健康保険法施行規則135条5項が定めており、一の育児休業等を終了した日と次を開始した日との間に就業した日がないことが条件です。間に出社日を挟むと連続とみなされません。
Q. 契約社員です。産後パパ育休は取れるのに、そのあとの育児休業は取れないと言われました。
A. 条文上ありうる状態です。産後パパ育休の有期雇用の要件は9条の2第1項ただし書が定めており、出生日等から8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに労働契約が満了することが明らかでないことが求められます。子の出生からおよそ8か月後が基準です。一方、育児休業の要件は5条1項ただし書が定めており、子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでないことが求められます。基準が約10か月遅い日になるため、その間に契約満了が明らかな場合は産後パパ育休だけが取れることになります。なお、育児休業を取りながら契約が更新される場合には9条の2第4項により制限が適用されない扱いがあるため、更新の見込みについては個別に確認する必要があります。
Q. 休業中に働きたいのですが、会社が取り合ってくれません。
A. まず労使協定の有無を確認してください。9条の5第2項は、就業可能日等を申し出られる労働者を、労使協定で出生時育児休業期間中に就業させることができるものとして定められた労働者に限っています。協定が無ければ申出そのものができません。協定がある場合、申出を受けた事業主は、健康保険法ではなく育児・介護休業法施行規則21条の15第4項により、就業させることを希望する日(希望しない場合はその旨)と労働条件を速やかに提示しなければならないとされています。就業させない結論であっても、その旨を提示する義務があります。なお働けるのは上限の範囲内で、日数は所定労働日数の2分の1以下、時間は所定労働時間の合計の2分の1以下、初日と最終日を就業日とする場合はその日の所定労働時間数に満たないことが求められます。
出典
- e-Gov 法令検索・法令API v2「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成三年法律第七十六号)令和7年10月1日施行リビジョン(403AC0000000076_20251001_506AC0000000042)および令和8年10月1日施行リビジョン(403AC0000000076_20261001_507AC0000000063)
- e-Gov 法令検索・法令API v2「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成三年労働省令第二十五号)令和7年10月1日施行リビジョン(403M50002000025_20251001_506M60000100125)
- e-Gov 法令検索・法令API v2「健康保険法」(大正十一年法律第七十号)159条
- e-Gov 法令検索・法令API v2「健康保険法施行規則」(大正十五年内務省令第三十六号)135条
- e-Gov 法令検索・法令API v2「厚生年金保険法」(昭和二十九年法律第百十五号)81条の2
- e-Gov 法令検索・法令API v2「労働基準法」(昭和二十二年法律第四十九号)65条
この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・労務相談ではありません。実際の取扱いは、勤務先の労使協定の内容、加入する健康保険組合の定め、個別の契約内容によって異なります。判断に迷う場合は、勤務先の担当部署、所轄の労働局雇用環境・均等部(室)、または社会保険労務士にご確認ください。