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生命保険料控除 — 令和8年の「6万円」は所得税法の改正ではない。12万円の上限は読み替えられていない

結論から言うと、令和8年分と令和9年分に限り、23歳未満の扶養親族がいる人は「一般の生命保険料」の控除額が最高4万円から最高6万円になります。ただし、3区分あわせて12万円という上限はそのままです。

この2つを並べると、実務でいちばん大事なことが出てきます。すでに一般・介護医療・個人年金の3区分で12万円に達している人は、この特例があっても控除額が1円も増えません。「上限が6万円に上がった」という見出しだけを読むと増えたつもりになりますが、増えるかどうかは12万円までにどれだけ余白があるかで決まります。

もう1つ、この特例の性格を知っておくと年末調整の説明がしやすくなります。これは所得税法の改正ではありません。所得税法76条の条文は、令和9年1月1日施行の版まで一字も変わっていません。租税特別措置法41条の15の5という別の条文が、令和8年分・令和9年分についてだけ76条の字句を読み替えているだけです。だから令和10年分は、何もしなくても自動的に4万円へ戻ります。この記事では、条文のどこが読み替えられ、どこが読み替えられていないのかを起点に、増える人・増えない人と金額を整理します。

結論 — 上限12万円は動いていない

生命保険料控除は、一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3区分をそれぞれ計算し、合計する仕組みです。所得税法76条4項が、その合計額の上限を定めています。

4 前三項の規定によりその居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する金額の合計額が十二万円を超える場合には、これらの規定により当該居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する金額は、これらの規定にかかわらず、十二万円とする。(所得税法76条4項)

令和8年分の特例は、このうち一般の生命保険料の計算だけを触ります。介護医療(76条2項)も個人年金(76条3項)も、そして合計12万円の上限(76条4項)も、読み替えの対象に入っていません。

3区分とも上限まで払っている人(合計14万円になっても、控除は12万円) 76条4項の上限 12万円 個人年金 4万 介護医療 4万 一般 4万 特例前 控除 12万円 個人年金 4万 介護医療 4万 一般 6万 ← この2万円は切り捨て 特例後 控除 12万円(±0)
一般の枠が4万円から6万円に広がっても、合計の天井が12万円のままなら、はみ出した分は切り捨てられる。増えるかどうかは「12万円までの余白」で決まる。
増える額を1行で言うと 実際に増える控除額は min(一般の控除の増加分、12万円 − 特例前の合計控除額) です。一般の控除の増加分は最大でも2万円なので、この特例で増える控除額は、どんなに多くても2万円です。所得税率10%の人なら、所得税と復興特別所得税をあわせて年2,042円です。

「6万円」の正体 — 76条は改正されていない

この特例は、租税特別措置法41条の15の5に置かれています。条文の見出しは「年齢二十三歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例」です。

居住者が年齢二十三歳未満の扶養親族(所得税法第二条第一項第三十四号に規定する扶養親族をいう。次項において同じ。)を有する場合における令和八年分又は令和九年分の同法第七十六条第十一項に規定する生命保険料控除については、同条第一項中「各年」とあるのは「令和八年又は令和九年」と、同項第一号イ中「二万円」とあるのは「三万円」と、同号ロ中「二万円」とあるのは「三万円」と、「四万円」とあるのは「六万円」と、同号ハ中「四万円」とあるのは「六万円」と、「八万円」とあるのは「十二万円」と、「三万円」とあるのは「四万五千円」と、同号ニ中「八万円」とあるのは「十二万円」と、「四万円」とあるのは「六万円」と、同項第三号中「四万円」とあるのは「六万円」とする。(租税特別措置法41条の15の5第1項)

読み方のポイントは2つあります。

1つめは、「令和八年分又は令和九年分」と期間が書き込まれていることです。恒久措置ではありません。令和10年分については、この条文が働かないので76条がそのまま適用され、上限は4万円に戻ります。

2つめが実務で効きます。読み替えの対象として名指しされているのは、76条1項1号(イ・ロ・ハ・ニ)と1項3号だけです。冒頭では「76条11項に規定する生命保険料控除について」と、控除全体を指しておきながら、実際に字句を差し替えているのは1項の中だけ、ということです。76条11項は「第一項から第四項までの規定による控除は、生命保険料控除という」と定めている定義規定なので、4項(合計12万円)は特例の射程に入っているのに、金額は差し替えられていないという構造になっています。

条文を突き合わせて確かめたこと 所得税法76条を、現行版・令和8年12月1日施行版・令和9年1月1日施行版で取得して比較したところ、3つとも完全に同一でした(本文6,564字が一致)。つまり「令和8年から生命保険料控除が6万円に改正された」という言い方は正確ではありません。改正されたのは租税特別措置法の側で、所得税法76条そのものは動いていません。

対象になるのは誰か

要件は「年齢23歳未満の扶養親族を有すること」だけです。ここで言う扶養親族は、条文が明示しているとおり所得税法2条1項34号の扶養親族であって、扶養控除の対象になる「控除対象扶養親族」(同項34号の2)ではありません。

扶養控除が付かない16歳未満の子でも要件を満たす 控除対象扶養親族は「16歳以上」に限られますが、扶養親族そのものに年齢の下限はありません。したがって、年末調整で扶養控除が1円も付かない0歳〜15歳の子どもがいる家庭も、この特例の対象になります。小さい子がいる世帯ほど扶養控除が付かず損をした気分になりますが、生命保険料控除の側ではむしろこちらが本命です。

扶養親族に当たるかどうかは、①納税者の配偶者以外の親族であること、②生計を一にしていること、③その年の合計所得金額が一定額以下であること、④青色事業専従者等でないこと、の4つで判定します。③の金額は令和8年分から62万円以下です(令和7年分は58万円以下でした)。

年分扶養親族の合計所得金額給与収入だけの場合
令和7年分58万円以下123万円以下
令和8年分・令和9年分62万円以下136万円以下

給与収入への換算がずれるのは、給与所得控除にも令和8年・令和9年限定の特例があるためです。租税特別措置法29条の4(給与所得控除の最低控除額等の特例)が、収入220万円以下の場合の給与所得控除額を74万円としています。62万円+74万円=136万円という計算です。生命保険料控除の特例と同じ2年間の措置になっている点も揃えて覚えておくと混乱しません。

年齢と扶養親族の判定はその年の12月31日の現況で行います(措置法41条の15の5第2項)。年の途中で納税者が死亡または出国した場合は、その時点の現況です。12月31日までに23歳の誕生日が来る子は、対象から外れます。

新契約(平24.1.1以後)の 一般生命保険料を払ったか いいえ 特例の対象外 旧契約のみは最高5万円のまま 12月31日時点で23歳未満の 扶養親族がいるか いいえ 計算式Ⅰ 一般は最高4万円 はい 計算式Ⅱ 一般は最高6万円 最後に3区分合計の上限 12万円がかかる(76条4項) ここで頭打ちになる人は 特例があっても増えない
判定は3段階。最後の12万円の上限は特例で読み替えられていないので、ここで頭打ちになる人には特例の効果が出ない。

計算式Ⅱ — 刻みが1.5倍になる

読み替え後の計算式(申告書では「計算式Ⅱ」と呼ばれます)は、通常の計算式Ⅰの金額の刻みをすべて1.5倍にしたものです。2万円が3万円に、4万円が6万円に、8万円が12万円になります。

年間の支払保険料等計算式Ⅰ(通常・新契約)
2万円以下支払保険料等の全額
2万円超 4万円以下支払保険料等 × 1/2 + 1万円
4万円超 8万円以下支払保険料等 × 1/4 + 2万円
8万円超一律 4万円
年間の支払保険料等計算式Ⅱ(令和8・9年分の特例)
3万円以下支払保険料等の全額
3万円超 6万円以下支払保険料等 × 1/2 + 1万5,000円
6万円超 12万円以下支払保険料等 × 1/4 + 3万円
12万円超一律 6万円

旧契約(平成23年12月31日以前に締結)の計算式Ⅲは読み替えられていません。2万5,000円以下は全額、5万円超10万円以下は支払保険料等×1/4+2万5,000円、10万円超は一律5万円のままです。

いくら増えるのか(早見表)

一般の生命保険料(新契約)の年額ごとに、計算式Ⅰと計算式Ⅱを並べたものです。これは「一般の区分だけ」の差で、ここから12万円の上限を当てると最終的な増加額が出ます。

年間の支払保険料等計算式Ⅰ計算式Ⅱ
2万円20,000円20,000円0円
3万円25,000円30,000円5,000円
4万円30,000円35,000円5,000円
6万円35,000円45,000円10,000円
8万円40,000円50,000円10,000円
10万円40,000円55,000円15,000円
12万円以上40,000円60,000円20,000円

次に、3区分をあわせて12万円の上限を当てた場合です。同じ「一般12万円超」でも、他の区分をいくら払っているかで結果が変わります。

3区分の支払状況特例前の控除額特例後の控除額増える額
一般12万円超のみ40,000円60,000円+20,000円
一般12万円超+介護医療8万円超80,000円100,000円+20,000円
一般12万円超+介護医療8万円超+個人年金4万円110,000円120,000円+10,000円
一般6万円+介護医療3万円65,000円75,000円+10,000円
一般・介護医療・個人年金とも8万円超120,000円120,000円±0円

いちばん下の行が、この記事の主題です。3区分とも上限まで保険に入っている人は、一般の枠が6万円に広がっても、合計の天井が12万円のままなので1円も増えません。

税額に直すと、控除が2万円増えた場合で次のとおりです。住民税には同じ特例が無いので、住民税は変わりません。

所得税率所得税の減少復興特別所得税の減少年間の合計
5%1,000円21円1,021円
10%2,000円42円2,042円
20%4,000円84円4,084円

効果としてはこの規模です。「上限が1.5倍」という見出しの印象よりは小さく、2年間の合計でも所得税率10%なら4,084円ほどです。数字の大きさをあらかじめ共有しておくと、年末調整の問い合わせ対応が楽になります。

自分の保険料を入れて控除額を確かめる → 生命保険料控除シミュレーター

1円も増えない3つのケース

読み替えの範囲を裏返すと、特例があっても控除額が変わらない人が3通り出てきます。

①すでに3区分の合計が12万円に達している人。76条4項が読み替えられていないためです。上の表のいちばん下の行がこれです。

②新生命保険料が年2万円以下の人。計算式Ⅰでは「2万円以下は全額」、計算式Ⅱでは「3万円以下は全額」です。どちらでも支払額がそのまま控除額になるので、差が出ません。刻みが広がっても、全額控除の範囲にいる人には効きません。

③旧契約しか持っていない人。読み替えの対象は76条1項1号(新生命保険料)と1項3号(新旧併用)だけで、1項2号(旧生命保険料のみ)は触られていません。したがって旧契約だけの人は、これまでどおり最高5万円です。

「一般の生命保険料」だけの話であることに注意 介護医療保険料(76条2項)と個人年金保険料(76条3項)は読み替えの対象外です。どちらも最高4万円のままです。保険会社から届く控除証明書は区分ごとに分かれているので、6万円まで使えるのは「一般」の欄だけだと確認してから計算してください。

新旧併用の分かれ目が動く

新契約と旧契約の両方を持っている場合、国税庁はタックスアンサーNo.1140で次のように整理しています。

・旧生命保険料控除の年間支払保険料等の金額が60,000円を超える場合/旧生命保険料控除の年間支払保険料等の金額について 上記の「旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約等)に基づく場合の控除額」で計算した金額(最高50,000円)(国税庁 タックスアンサー No.1140 生命保険料控除)

この「旧6万円」という分かれ目には理由があります。計算式Ⅲ(旧契約)は、支払額6万円のときちょうど6万円 × 1/4 + 2万5,000円 = 4万円になります。つまり新旧併用の上限4万円に、旧契約だけでちょうど届く点が6万円なのです。これを超えると旧契約だけで計算した方が有利になるので、国税庁の整理はそこで枝を分けています。

ところが特例では、1項3号の「四万円」が「六万円」に読み替えられます。新旧併用の上限が4万円から6万円に上がるため、この分かれ目の前提が崩れます。

支払状況旧契約だけで計算新旧併用(特例前・上限4万円)新旧併用(特例後・上限6万円)
旧10万円+新3万円50,000円40,000円60,000円
旧15万円+新15万円50,000円40,000円60,000円

特例前は「旧契約だけ」が有利(5万円 > 4万円)でしたが、特例後は併用の上限6万円が旧契約だけの上限5万円を上回るため、逆転します。旧契約を長く持っている人ほど、令和7年分までの感覚のまま処理すると1万円損をする形になります。

なお国税庁のタックスアンサーNo.1140は、記事執筆時点で「令和7年4月1日現在法令等」と表示されており、この特例を反映していません。上の逆転は条文(読み替え後の76条1項3号)の金額から導いたものです。令和8年分の申告書・手引きで実際にどう案内されるかは確認していません。

住民税には、この特例が無い

個人住民税の生命保険料控除は、地方税法314条の2第1項5号(市町村民税。道府県民税は34条1項5号)が別に定めています。金額の刻みも上限も所得税とは違います。

区分所得税の上限住民税の上限
一般の生命保険料(新契約)4万円(特例で6万円)2万8,000円
一般の生命保険料(旧契約)5万円3万5,000円
3区分の合計12万円7万円

租税特別措置法は所得税・法人税などの国税の特例を定める法律で、今回の特例も所得税についてのものです。地方税法の側に対応する規定があるかを確かめるため、令和8年9月24日施行版と、現時点で最も先の施行日である令和12年6月19日施行版の全文(附則を含む)を取得して調べたところ、「二十三歳未満」という語は4か所とも特定扶養親族・特定親族特別控除に関するもので、生命保険料控除の特例は見当たりませんでした。

したがって、住民税の生命保険料控除は新契約2万8,000円・合計7万円のままと考えられます。年末調整の説明では「所得税は少し増えるが、住民税は変わらない」と伝えるのが実態に近い形です。

申告書に扶養親族の名前を書く欄ができた理由

令和8年分の保険料控除申告書には、扶養親族の氏名を書く欄が加わっています。これも同じ条文が根拠です。措置法41条の15の5第3項が、所得税法196条1項(保険料控除申告書の記載事項)を次のように読み替えています。

第百九十六条第一項/事項を/事項並びに租税特別措置法第四十一条の十五の五第一項(年齢二十三歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例)に規定する扶養親族の氏名及び個人番号(個人番号を有しない者にあつては、氏名)その他の財務省令で定める事項を(租税特別措置法41条の15の5第3項の読替表)

あわせて190条2号ロ(年末調整の計算)と198条4項(申告書の保存等)も読み替えられています。「なぜ保険料の話なのに子どもの名前を書くのか」という質問には、この読み替えが答えです。特例の要件が扶養親族の有無なので、扶養親族を特定できないと会社側で年末調整の計算ができない、という構造になっています。

条文には「世帯で1人だけ」という制限は置かれていません。要件は「23歳未満の扶養親族を有する」ことなので、共働きで夫婦それぞれが同じ子を扶養親族としている場合、どちらもこの特例を使えます(扶養控除のように一方でしか使えない、という条文上の制限が見当たりません)。

間違えやすい点

よくある理解実際
令和8年から生命保険料控除が改正されて6万円になった所得税法76条は改正されていない。租税特別措置法41条の15の5が令和8年分・令和9年分だけ字句を読み替えている。令和10年分は自動的に4万円に戻る
上限が6万円に上がったので控除が増える3区分合計12万円の上限(76条4項)は読み替えられていない。すでに12万円の人は±0円
介護医療も個人年金も6万円になる読み替えの対象は1項(一般の生命保険料)だけ。2項・3項はどちらも4万円のまま
旧契約も6万円になる1項2号(旧のみ)は据え置きで最高5万円。読み替えは1号(新)と3号(新旧併用)だけ
16歳未満の子は扶養控除が無いから関係ない要件は2条1項34号の「扶養親族」で、控除対象扶養親族ではない。年齢の下限は無いので0歳の子でも要件を満たす
旧契約が6万円超なら旧契約だけで計算するのが有利令和7年分まではそのとおり。令和8年分は併用の上限が6万円になるため逆転する
住民税も一緒に増える地方税法に対応する特例が見当たらない。住民税は新契約2万8,000円・合計7万円のまま

よくある質問

Q. 生命保険料控除の上限はいくらですか?

A. 所得税は3区分あわせて12万円で、これは令和8年分でも変わりません(所得税法76条4項)。区分ごとの上限は、一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料がそれぞれ4万円(新契約の場合)です。令和8年分と令和9年分は、23歳未満の扶養親族がいる人に限り、一般の生命保険料だけが最高6万円になります。ただし合計の12万円は据え置きなので、3区分とも上限まで払っている人は控除額が増えません。住民税は所得税と別に定められていて、一般の生命保険料(新契約)が2万8,000円、3区分の合計が7万円が上限です。

Q. 令和8年分の「6万円」は誰でも使えますか?

A. いいえ。その年の12月31日時点で23歳未満の扶養親族がいる人に限られます。扶養親族は、配偶者以外の親族で生計を一にし、その年の合計所得金額が62万円以下(給与収入だけなら136万円以下)で、青色事業専従者等でない人です。また、対象になるのは平成24年1月1日以後に締結した新契約の一般生命保険料だけで、旧契約のみの人や、介護医療保険料・個人年金保険料には適用されません。

Q. なぜ所得税法の条文を見ても6万円と書いていないのですか?

A. この特例が所得税法の改正ではなく、租税特別措置法41条の15の5による字句の読み替えだからです。所得税法76条の条文は、現行版・令和8年12月1日施行版・令和9年1月1日施行版のいずれも同一で、4万円のままです。措置法の側が「令和八年分又は令和九年分」について、76条1項1号の「四万円」を「六万円」に読み替えるといった形で効果を与えています。期間が条文に書き込まれているため、令和10年分は措置法が働かず、自動的に元の4万円に戻ります。

Q. 3区分とも上限まで払っています。特例でいくら増えますか?

A. 増えません。一般の枠が4万円から6万円に広がっても、合計の控除額は4万円+4万円+4万円=12万円から6万円+4万円+4万円=14万円になるだけで、所得税法76条4項の上限12万円で頭打ちになるためです。この上限は特例で読み替えられていません。増える額は「12万円 − 特例前の合計控除額」が上限になるので、すでに12万円に達している人は余白がゼロということになります。

Q. 一般の生命保険料を年間8万円払っています。いくら増えますか?

A. 一般の区分だけで見ると、計算式Ⅰでは4万円、計算式Ⅱでは8万円×1/4+3万円=5万円なので、差は1万円です。ただし実際に控除額が1万円増えるかどうかは、介護医療保険料と個人年金保険料の控除額を足して12万円に収まるかで決まります。たとえば他の2区分で8万円を使っている場合、合計は12万円で頭打ちになるため、増えるのは事実上ゼロになります。他の2区分が無ければ、そのまま1万円増えます。

Q. 新契約と旧契約の両方があります。どちらで計算すべきですか?

A. 従来は、旧契約の年間支払保険料が6万円を超える場合は旧契約だけで計算した方が有利でした。旧契約の計算式は支払額6万円でちょうど4万円に達し、それが新旧併用の上限と同じだったためです。令和8年分・令和9年分は、新旧併用の上限が4万円から6万円に読み替えられるため、この関係が逆転します。たとえば旧契約10万円・新契約3万円なら、旧契約だけでは5万円、併用なら6万円です。条文の金額から導ける結論ですが、国税庁のタックスアンサーは令和7年4月1日現在の法令等に基づくもので、この特例を反映していません。

Q. 住民税も同じように増えますか?

A. 増えないと考えられます。租税特別措置法は国税の特例を定める法律で、今回の特例も所得税についてのものです。地方税法の全文(附則を含む)を令和8年9月24日施行版と令和12年6月19日施行版で確認したところ、「二十三歳未満」という語は特定扶養親族と特定親族特別控除に関する4か所だけで、生命保険料控除の特例は見当たりませんでした。住民税の生命保険料控除は、一般の生命保険料(新契約)が2万8,000円、3区分の合計が7万円という上限のままです。

Q. 16歳未満の子どもでも対象になりますか?

A. なります。租税特別措置法41条の15の5第1項が要件としているのは「所得税法第二条第一項第三十四号に規定する扶養親族」で、扶養控除の対象になる「控除対象扶養親族」(同項34号の2)ではありません。控除対象扶養親族は16歳以上に限られますが、扶養親族そのものに年齢の下限はないため、0歳から15歳の子どもも扶養親族に当たります。年末調整で扶養控除が付かない年齢の子がいる家庭でも、この特例は使えます。

Q. 子どもが12月に23歳になります。どうなりますか?

A. 対象から外れます。租税特別措置法41条の15の5第2項が、23歳未満の扶養親族に該当するかどうかの判定は「その年十二月三十一日……の現況による」と定めているためです。12月31日の時点で23歳になっていれば、その年分はこの特例を使えません。なお納税者本人が年の途中で死亡または出国した場合は、その死亡または出国の時の現況で判定します。

Q. 共働きですが、夫婦どちらか一方しか使えませんか?

A. 条文上、そのような制限は置かれていません。要件は「年齢23歳未満の扶養親族を有する場合」であって、扶養控除のように同じ人を一方でしか対象にできないという定めが見当たりません。したがって夫婦それぞれが同じ子を扶養親族としていれば、双方がこの特例を使えると読めます。それぞれが自分の払った一般の生命保険料について計算式Ⅱを適用する形になります。

出典

本記事の確認範囲は、所得税法76条の生命保険料控除と、租税特別措置法41条の15の5による令和8年分・令和9年分の読み替え、および地方税法314条の2第1項5号の個人住民税の生命保険料控除です。令和8年分の給与所得者の保険料控除申告書の実際の様式・記入欄の配置、国税庁が令和8年分について公表する手引きの案内内容、新旧併用の場合にどちらの計算方法を選ぶかについての実務上の取扱いが令和8年分でどう示されるか、生命保険料控除の対象となる保険契約等の範囲(保険期間5年未満のいわゆる貯蓄保険や、主契約・特約の保障内容に応じた区分の判定)、剰余金の分配・割戻金がある場合の按分計算、および確定給付企業年金・確定拠出年金に係る掛金の取扱いは確認していません。

この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。契約が新契約と旧契約のどちらに当たるか、どの区分の保険料になるかは、保険会社から届く控除証明書の記載によって決まります。実際の年末調整・確定申告については、勤務先の給与担当者または顧問の税理士・所轄の税務署へご確認ください。

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