生命保険料控除は、生命保険・医療保険・個人年金保険の保険料を払っている人の所得から、最大12万円(所得税)を差し引く所得控除です。年末調整か確定申告で控除証明書の金額を申告するだけで、所得税と住民税が安くなります。上の計算機で、控除額と実際の節税額が出せます。以下では、3区分の計算式、新契約・旧契約の見分け方と併用のルール、令和8年分・令和9年分だけの「6万円特例」まで、条文と国税庁の様式にもとづいて解説します(一般的な計算方法の説明であり、個別の税務相談ではありません)。
使い方と注意点
このツールの前提
控除額は所得税法76条・地方税法314条の2の計算式で求めます。1円未満の端数は切り上げ(国税庁の保険料控除申告書の注記どおり)です。節税額のほうは、所得税を国税庁の所得税の速算表で計算し、控除で税率の段をまたぐ場合も速算表の差をとって超過累進を正しく反映します。住民税の所得割は一律10%として概算します。生命保険料控除は所得税と住民税で控除額が違う(上限が12万円と7万円)ため、住民税の減少は住民税側の控除額で計算します。復興特別所得税(所得税額の2.1%)の減少も含めています。
3つの区分と上限 — 所得税12万円・住民税7万円
生命保険料控除は3つの区分に分かれていて、区分ごとに控除額を計算してから合計します。合計には上限があり、所得税は12万円、住民税は7万円です。
| 区分 | 対象になる保険 | 所得税の上限 | 住民税の上限 |
|---|---|---|---|
| 一般の生命保険料 | 死亡保険・学資保険・養老保険など | 4万円 | 2.8万円 |
| 介護医療保険料 | 医療保険・がん保険・介護保険など | 4万円 | 2.8万円 |
| 個人年金保険料 | 「個人年金保険料税制適格特約」が付いたもの | 4万円 | 2.8万円 |
| 3区分の合計(上限) | 12万円 | 7万円 | |
控除額の計算式 — 新契約と旧契約で違う
控除額は、その保険契約が新契約(平成24年1月1日以後に締結)か旧契約(平成23年12月31日以前)かで計算式が変わります。控除証明書に「新制度」「旧制度」と印字されているので、そこで判断します。
| 制度 | 年間の支払保険料 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
|---|---|---|---|
| 新契約 (平成24年1月1日以後) | 2万円以下 | 全額 | 1.2万円以下は全額 |
| 2万円超 4万円以下 | 支払額 × 1/2 + 1万円 | × 1/2 + 6,000円 | |
| 4万円超 8万円以下 | 支払額 × 1/4 + 2万円 | × 1/4 + 1.4万円 | |
| 8万円超 | 一律 4万円 | 一律 2.8万円 | |
| 旧契約 (平成23年12月31日以前) | 2万5,000円以下 | 全額 | 1.5万円以下は全額 |
| 2万5,000円超 5万円以下 | 支払額 × 1/2 + 1万2,500円 | × 1/2 + 7,500円 | |
| 5万円超 10万円以下 | 支払額 × 1/4 + 2万5,000円 | × 1/4 + 1万7,500円 | |
| 10万円超 | 一律 5万円 | 一律 3.5万円 |
住民税の帯(区切りの金額)は所得税と違います。所得税が2万円・4万円・8万円で区切るのに対し、住民税は1.2万円・3.2万円・5.6万円で区切ります(新契約の場合)。所得税の帯を住民税に流用すると答えがずれるため、このツールは税ごとに別の表で計算しています。なお介護医療保険料は新契約しかありません(平成24年に新設された区分なので、旧契約という概念がそもそもありません)。
令和8年分・令和9年分の「6万円特例」
23歳未満の扶養親族がいると、一般の生命保険料(新契約)の上限が4万円→6万円に
年齢23歳未満の扶養親族がいる人は、令和8年分と令和9年分に限り、一般の生命保険料の新契約について計算式が1.5倍のものに変わります(租税特別措置法41条の15の5)。上限だけでなく帯の区切りごと1.5倍になる点に注意してください。
・3万円以下 → 全額/3万円超6万円以下 → 支払額×1/2+1万5,000円
・6万円超12万円以下 → 支払額×1/4+3万円/12万円超 → 一律6万円
この特例には、見落としやすい制限が3つあります。
- 「一般の生命保険料」の「新契約」だけが対象です。介護医療保険料・個人年金保険料・一般の旧契約は、これまでどおりの計算式のままです
- 住民税には同じ特例がありません。地方税法に読み替えの規定が無いので、住民税側の上限は2.8万円のままです(このツールは所得税と住民税を別々に計算するので、ここを取り違えません)
- 3区分の合計上限12万円は据え置きです(所得税法76条4項は読み替えの対象外)。一般で6万円まで使えても、他の区分と合わせて12万円を超える分は切り捨てられます
対象になる「23歳未満の扶養親族」は所得税法2条1項34号の扶養親族で、判定はその年12月31日の現況です。16歳未満の年少扶養親族も含みます(扶養控除の対象は16歳以上ですが、この特例は年齢の下限がありません)。また「世帯で1人だけ」という制限が無いため、共働きの夫婦は両方がこの特例を使えます。
扶養親族がいる場合の扶養控除の節税額も計算する新旧を併用しているときの選び方
同じ区分で新契約と旧契約の両方に入っている場合(たとえば一般の生命保険で古い契約と新しい契約を持っている場合)は、次の2つのうち有利な方を選べます。
- 旧契約だけで計算する(上限5万円)
- 新契約と旧契約を合算して計算する(上限4万円)
合算の上限は4万円なのに旧契約だけなら5万円まで使えるため、旧契約の保険料が年6万円を超えるなら「旧契約だけ」の方が得になります(6万円ちょうどならどちらも4万円で同じ)。上の計算機は両方を計算して有利な方を自動で採り、どちらを採ったかを結果に表示します。
節税額の例
控除額そのものではなく、実際に安くなる税金の例です。このツールと同じ計算式で出した実数です。
| ケース(年間の支払保険料) | 課税所得 | 控除額(所得税/住民税) | 年間の節税額 |
|---|---|---|---|
| 一般6万円・介護医療4万円・個人年金8万円 | 300万円 | 10万5,000円/7万円 | 17,720円 |
| 一般6万円・介護医療4万円・個人年金8万円 | 500万円 | 10万5,000円/7万円 | 28,441円 |
| 一般(新契約)8万円だけ | 300万円 | 4万円/2万8,000円 | 6,884円 |
| 一般(新契約)8万円だけ・23歳未満の子あり | 300万円 | 5万円/2万8,000円 | 7,905円 |
| 3区分すべて年10万円以上 | 500万円 | 12万円/7万円 | 31,504円 |
3区分をすべて上限まで使っても、課税所得500万円の人で年31,504円です。掛金の全額が所得控除になるiDeCoや小規模企業共済と比べると、生命保険料控除は払った保険料のごく一部しか控除にならない(8万円払って4万円)点が大きな違いです。節税のために保険に入るのは割に合いませんが、すでに入っている保険の控除を申告し忘れることは、そのまま損になります。
「6万円特例」で増えるのは、控除額で最大2万円分
一般の新契約に年12万円以上払っていて23歳未満の子がいる場合、控除額は4万円→6万円(+2万円)になります。課税所得500万円(所得税率20%)なら、節税額は10,968円→15,052円で年4,084円の差です。ただし他の区分と合わせて12万円の上限に当たっていると、この上乗せは効きません。
よくある質問
Q. 生命保険料控除は最大でいくら戻りますか?
A. 控除額の上限は所得税12万円・住民税7万円で、実際に戻る(安くなる)金額は課税所得500万円の人で年31,504円が上限のめやすです。所得税の減少は「所得税側の控除額×あなたの税率」、住民税の減少は「住民税側の控除額×10%」が基本だからです。課税所得300万円(税率10%)なら3区分上限で年19,504円ほどになります。控除額そのものが戻ってくるわけではない点に注意してください。
Q. 控除証明書をなくしました。どうすればいいですか?
A. 保険会社に再発行を依頼します。多くの保険会社はコールセンターやWebのマイページから即日〜数日で再発行でき、電子的控除証明書(XML)をダウンロードできる会社もあります。年末調整に間に合わない場合は、勤務先の期限までに提出できないことを伝えたうえで、自分で確定申告をすれば控除を受けられます。還付申告は5年以内までさかのぼれるので、過去に申告し忘れた年があっても取り戻せます。
Q. 新契約と旧契約の両方があります。どちらで申告すべきですか?
A. 有利な方を選べます。旧契約だけで計算すると上限5万円、新契約と合算すると上限4万円なので、所得税では旧契約の保険料が年6万円を超えるなら「旧契約だけ」が有利です。住民税は分かれ目が4万2,000円と違うため、所得税は合算・住民税は旧契約だけ、という組み合わせも実際に起こります。上の計算機は税ごとに有利な方を自動で選び、どちらを採ったかを表示します。
Q. 23歳未満の子がいます。夫婦のどちらか一方しか特例を使えませんか?
A. 両方が使えます。租税特別措置法41条の15の5には「世帯で1人だけ」という制限が無いため、夫婦がそれぞれ一般の生命保険(新契約)を契約していれば、両方がこの特例の計算式を使えます。対象になる扶養親族は所得税法2条1項34号の扶養親族で、16歳未満の年少扶養親族も含みます。判定はその年12月31日の現況です。
Q. 学資保険や医療保険も生命保険料控除の対象ですか?
A. 対象です。学資保険は「一般の生命保険料」、医療保険・がん保険・介護保険は「介護医療保険料」に分類されます。ただし控除の対象になるのは保険金の受取人が本人・配偶者・その他の親族である契約に限られ、財形保険や傷害保険など保険金が身体の傷害のみに基因して支払われる契約は対象外です。個人年金保険は「個人年金保険料税制適格特約」が付いているものだけが個人年金の区分になり、付いていない場合は一般の生命保険料として扱います。
出典
- 国税庁「No.1140 生命保険料控除」— 3区分・新契約と旧契約の計算式・新旧併用の取り扱い(旧契約の保険料が6万円を超えるかで分かれる点)
- 所得税法76条1項〜4項 — 新契約(1号)・旧契約(2号)・併用(3号・合計4万円が上限)と、3区分の合計上限12万円(4項)— e-Gov法令検索(令和8年12月1日施行版)で条文を確認
- 租税特別措置法41条の15の5(年齢23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例)— 令和8年分・令和9年分について、所得税法76条1項1号イ〜ニと3号の金額を1.5倍に読み替える規定。上限4万円→6万円だけでなく帯の区切りも1.5倍になること、合計上限12万円(4項)は読み替えの対象外であることを条文で確認 — e-Gov法令検索
- 地方税法314条の2第1項5号の2 — 住民税の生命保険料控除(新契約1.2万円/3.2万円/5.6万円で区切り上限2.8万円、旧契約1.5万円/4万円/7万円で区切り上限3.5万円、併用の上限2.8万円、3区分の合計上限7万円)— e-Gov法令検索
- 国税庁「令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書」— 計算式Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、および「控除額の計算において算出した金額に1円未満の端数があるときは、その端数を切り上げます」の注記
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」— 所得税の速算表(5%〜45%)。本ツールの所得税の減少は、この速算表で控除の前後の税額を計算した差で求めている
- 復興特別所得税は所得税額の2.1%(令和19年分まで)/住民税所得割の標準税率10%(地方税法)
本ページの解説・計算例は令和8年(2026年)時点の法令にもとづく一般的な情報であり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の節税額は、他の所得控除や税額控除、住んでいる市区町村などによって異なります。申告の前に税務署・税理士でご確認ください。