地震保険料控除は、地震保険の保険料を払っている人の所得から、最大5万円(所得税)を差し引く所得控除です。年末調整か確定申告で控除証明書の金額を申告するだけで、所得税と住民税が安くなります。ただし住民税は計算式も上限も所得税と違い、さらに旧長期損害保険料という古い契約向けの経過措置があるため、実際の控除額は思ったより複雑です。上の計算機で正確な控除額と節税額が出せます。以下では、条文と国税庁の様式にもとづいて解説します(一般的な計算方法の説明であり、個別の税務相談ではありません)。
使い方と注意点
このツールの前提
控除額は所得税法77条1項・地方税法34条1項5号の3の計算式で求めます。旧長期損害保険料は平成18年法律第10号 附則10条2項(所得税)・平成18年法律第7号 附則5条5項(住民税)の経過措置によります。1円未満の端数は切り上げ(国税庁の保険料控除申告書の脚注どおり)です。節税額のほうは、所得税を国税庁の所得税の速算表で計算し、控除で税率の段をまたぐ場合も速算表の差をとって超過累進を正しく反映します。住民税の所得割は一律10%として概算します。復興特別所得税(所得税額の2.1%)の減少も含めています。
控除額の計算式 — 所得税と住民税で3か所違う
地震保険料控除でいちばん誤解が多いのが、所得税と住民税で計算式が違う点です。違いは次の3か所です。
| 違うところ | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 地震保険料の控除額 | 支払額の全額 | 支払額の2分の1 |
| 上限 | 5万円 | 2万5千円 |
| 旧長期の帯の刻み | 1万円・2万円 | 5千円・1万5千円 |
旧長期損害保険料の経過措置
平成18年の税制改正で損害保険料控除は廃止されました。ただし経過措置として、一定の古い長期契約は今も地震保険料控除の対象にできます。これを旧長期損害保険料といいます。積立火災保険・積立傷害保険などが該当し、控除証明書に「旧長期」と書かれています。
- 平成18年12月31日までに締結した契約であること
- 満期返戻金を支払う旨の特約のある契約(またはこれに準ずる政令で定める契約)であること
- 保険期間または共済期間が10年以上であること
- 平成19年1月1日以後に、その損害保険契約等の変更をしていないこと
- 保険期間または共済期間の始期が平成19年1月1日以後のものでないこと
※ 5つ目は条文(平成18年法律第10号 附則10条2項の柱書き)のかっこ書きです。国税庁のタックスアンサーは1つ目のかっこ書きに畳んで3要件として示していますが、畳んだ形だけを読むと「契約したのが平成18年中だから対象」と誤読しかねません。契約が平成18年中でも、補償の始まりが平成19年1月1日以後なら対象外です。
| 年間の旧長期損害保険料 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
|---|---|---|
| 5,000円以下 | 支払額の全額 (10,000円以下のとき) | 支払額の全額 |
| 5,000円超 15,000円以下 | 支払額×1/2+2,500円 | |
| 10,000円超 20,000円以下 | 支払額×1/2+5,000円 | 10,000円(上限) |
| 20,000円超 | 15,000円(上限) |
所得税の式は、条文(附則10条2項2号ロ)では「1万円と、合計額から1万円を控除した金額の2分の1に相当する金額との合計額」と書かれています。国税庁のタックスアンサーと保険料控除申告書は同じものを「支払金額×1/2+5,000円」と書いており、どちらも同じ値になります(10,000+(x−10,000)÷2 = x÷2+5,000)。
一つの契約が両方に該当するとき
一つの損害保険契約が、地震保険料と旧長期損害保険料のどちらの区分にも該当することがあります。積立火災保険に地震保険を付帯しているようなケースです。このとき、両方を足して申告することはできません。どちらか一方の区分でしか控除を受けられません(所得税=平成18年法律第10号 附則10条3項、住民税=平成18年法律第7号 附則5条6項)。
節税額の例
控除額はそのまま戻ってくる金額ではありません。実際に安くなるのは控除額 × 税率です。課税される所得金額が400万円(所得税の税率20%)の人の例を示します。
| 年間の地震保険料 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 | 年間の節税額 |
|---|---|---|---|
| 20,000円 | 20,000円 | 10,000円 | 約5,084円 |
| 30,000円 | 30,000円 | 15,000円 | 約7,626円 |
| 50,000円以上 | 50,000円(上限) | 25,000円(上限) | 約12,710円 |
よくある質問
Q. 地震保険料控除は最大でいくら戻りますか?
A. 控除額の上限は所得税5万円・住民税2万5千円で、実際に戻る(安くなる)金額は課税所得400万円の人で年12,550円ほどが上限のめやすです。所得税の減少は「所得税側の控除額5万円×あなたの税率20%=10,000円」、復興特別所得税がその2.1%で210円、住民税の減少が「住民税側の控除額2万5千円×10%=2,500円」という内訳です。控除額の5万円がそのまま戻ってくるわけではありません。税率が10%の人なら年8,105円ほどになります。
Q. 住民税の控除額も所得税と同じ5万円ですか?
A. 違います。住民税は支払った地震保険料の2分の1が控除額になり、上限も2万5千円です。所得税は支払額の全額で上限5万円なので、式も上限も別物です。たとえば年間3万円の地震保険料なら、所得税側の控除額は3万円、住民税側は1万5千円です。所得税の式で住民税を計算すると控除額を2倍に見積もることになるので注意してください。根拠は地方税法34条1項5号の3・314条の2第1項5号の3です。
Q. 旧長期損害保険料とは何ですか。まだ使えますか?
A. 平成18年の税制改正で損害保険料控除は廃止されましたが、経過措置として、平成18年12月31日までに締結し、満期返戻金があり保険期間が10年以上で、平成19年1月1日以後に契約を変更していない長期の損害保険契約については、今も地震保険料控除の対象にできます。控除額は所得税で最高1万5千円、住民税で最高1万円です。積立火災保険や積立傷害保険が該当することが多く、控除証明書に「旧長期」と記載されています。
Q. 控除証明書に地震保険料と旧長期損害保険料の両方が書いてあります。どちらで申告しますか?
A. 一つの契約が両方の区分に該当する場合は、どちらか一方でしか控除を受けられません。納税者が選べますが、どちらが得かは金額しだいです。旧長期は上限が低い(所得税1万5千円)代わりに少額でも控除額が大きくなりやすく、地震保険料は支払額の全額が控除される代わりに上限が5万円と高いという違いがあるためです。上の計算機に両方の金額を入れると、どちらで申告した方が何円得かを計算します。
Q. 地震保険料をたくさん払えばそれだけ控除も増えますか?
A. 増えません。所得税は5万円、住民税は2万5千円で頭打ちになります。しかもこの上限は地震保険料と旧長期損害保険料を合計した後の上限と同じ金額なので、地震保険料だけで5万円に達している人は、旧長期損害保険料の控除証明書を追加で出しても控除額は1円も増えません。複数年分をまとめて払った長期契約の場合は、支払った年に全額を申告するのではなく、保険会社が発行する控除証明書に書かれた「その年分」の金額を申告します。
出典
- 所得税法77条1項 — 地震保険料控除(支払った地震保険料の合計額、5万円を超える場合は5万円)— e-Gov法令検索
- 所得税法等の一部を改正する等の法律(平成18年法律第10号)附則10条2項・3項 — 旧長期損害保険料の経過措置(1万円以下は全額、1万円超2万円以下は1万円+超過分の2分の1、2万円超は1万5千円。一の契約が両方に該当するときはいずれか一方)— e-Gov法令検索
- 地方税法34条1項5号の3・314条の2第1項5号の3 — 住民税の地震保険料控除(合計額の2分の1、2万5千円を超える場合は2万5千円)— e-Gov法令検索
- 地方税法等の一部を改正する法律(平成18年法律第7号)附則5条5項・6項(道府県民税)、11条5項(市町村民税) — 住民税の旧長期損害保険料の経過措置(5千円以下は全額、5千円超は5千円+超過分(1万円が上限)の2分の1)— e-Gov法令検索
- 国税庁 タックスアンサー No.1145 地震保険料控除(控除額の表、旧長期の3要件、一の契約が両方に該当する場合の選択)
- 国税庁 令和8年分 給与所得者の保険料控除申告書(地震保険料控除額の計算欄と、1円未満の端数を切り上げる旨の脚注)
- 国税庁 タックスアンサー No.2260 所得税の税率(節税額の計算に使う速算表)
関連するツール・記事
- 生命保険料控除シミュレーター — 同じ保険料控除申告書で申告する、生命保険・介護医療・個人年金の控除
- 社会保険料計算ツール — 給与から引かれる社会保険料
- 手取り計算ツール — 年収から手取りを計算
- 年末調整の書き方 — 保険料控除申告書のどこに書くか