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先端設備等導入計画|固定資産税2分の1の特例は令和9年3月31日まで・賃上げ方針の記載が必須に

結論から言うと、先端設備等導入計画による固定資産税の軽減は、令和7年4月1日から令和9年3月31日までに取得した設備が対象です。適用期間は地方税法附則15条42項に書かれており、この記事を書いている令和8年8月14日の時点で、期限まで残り約7か月半あります。

ただし、令和6年度までのつもりで動くと足をすくわれます。令和7年度の改正で、賃上げ方針の記載が「上乗せをもらうための条件」から「そもそも特例を受けるための入口の条件」に格上げされました。以前は賃上げに触れない計画でも課税標準2分の1・3年度分を受けられましたが、いまは雇用者給与等支給額を1.5%以上引き上げる方針を計画に書かなければ、軽減はゼロです。

この記事では、新旧の条文を並べて何が変わったのかを確認し、対象になる設備の金額ライン、実際の軽減額、手続きの順序、そして「自分の市町村では申請そのものができない」という見落としやすい点までを、条文と政省令にあたって整理します。

結論:2つの段階と、令和9年3月31日という期限

地方税法附則15条42項は、中小事業者等が適用期間内に認定先端設備等導入計画に従って取得した機械装置等について、固定資産税の課税標準を軽減すると定めています。軽減は次の2段階です。いずれも新たに固定資産税が課されることとなった年度から数えます。

計画に記載する賃上げ方針課税標準期間根拠
雇用者給与等支給額を1.5%以上引き上げる方針価格の2分の13年度分附則15条42項 本文
同じく3%以上引き上げる方針(大幅な増加)価格の4分の15年度分附則15条42項 ただし書

1.5%・3%という数字は法律本体ではなく地方税法施行令に置かれています。施行令は前者を「百分の一・五以上とする旨のもの」、後者を「百分の三以上とする旨のもの」と定義しています。

計画に書く賃上げ方針 課税標準 軽減される年度 1.5%以上(必須) 価格の1/2 3年度 3%以上(上乗せ) 価格の1/4 5年度 旧制度(令和5年4月1日〜令和7年3月31日に取得したもの) 賃上げ方針なし 価格の1/2 3年度分 1.5%以上 価格の1/3 5年度分(令和6年度取得は4年度分) 現行の適用期間:令和7年4月1日 〜 令和9年3月31日に取得したもの
賃上げ方針の水準と軽減内容の対応(上)と、旧制度との比較(下)。旧制度では賃上げに触れなくても2分の1を受けられた。

制度の全体像 — 出す先は税務署でも国でもなく市町村

先端設備等導入計画は中小企業等経営強化法52条1項に基づく計画です。同項は、計画を作成して「その導入する先端設備等の所在地を管轄する特定市町村に提出して、その認定を受けることができる」と定めています。特定市町村とは、同意導入促進基本計画を作成した市町村のことです。

ここが、名前の似た他の制度と決定的に違うところです。混同されやすい3つを並べます。

計画認定する人主な効果
先端設備等導入計画市町村長固定資産税の課税標準の軽減
経営力向上計画国(主務大臣)中小企業経営強化税制(即時償却・税額控除)ほか
特例承継計画都道府県知事事業承継税制の特例措置
設備投資で2つの計画を混同しない 即時償却や税額控除を狙うなら経営力向上計画(中小企業経営強化税制)、固定資産税を下げたいなら先端設備等導入計画です。効果が別なので、両方を検討する場面もあります。

計画に書く事項は法52条3項が3つだけ挙げています。先端設備等の種類及び導入時期/先端設備等導入の内容/必要な資金の額及びその調達方法です。認定の基準は同条4項で、基本方針および当該市町村の同意導入促進基本計画に適合すること、そして計画に係る導入が円滑かつ確実に実施されると見込まれることの2つです。

令和7年度改正で変わった3点(新旧の条文で確認)

改正前の規定は地方税法附則15条44項で、適用期間は令和5年4月1日から令和7年3月31日まででした。現行は附則15条42項です。両方の条文を取り出して比べると、変わったのは次の3点です。

論点旧(令和5年4月1日〜令和7年3月31日取得)現行(令和7年4月1日〜令和9年3月31日取得)
本文(2分の1・3年度分)の要件賃上げ方針の記載は不要1.5%以上の方針の記載が必要
上乗せの水準1.5%以上で価格の3分の13%以上で価格の4分の1
上乗せの年数5年度分。ただし令和6年4月1日以後の取得は4年度分一律5年度分

旧44項の本文には「雇用者給与等支給額」という語がそもそも登場せず、賃上げはただし書だけの話でした。現行42項では、この語が本文に移されています。かつて上乗せを買うための切符だった1.5%が、いまは入場券になったと考えると分かりやすいと思います。

令和6年度に認定を受けた感覚のまま進めない 「うちは前に賃上げに触れずに2分の1を受けられた」という経験は、令和7年4月1日以後の取得には通用しません。賃上げ方針を書かない計画では、認定が取れても固定資産税の軽減は受けられないことになります。

なお1.5%・3%は、計画を提出した日の属する事業年度(令和7年4月1日以後に開始する事業年度に限る)またはその翌事業年度の雇用者給与等支給額を、提出した日の属する事業年度の直前の事業年度の額(比較雇用者給与等支給額)と比べた増加割合です。実績ではなく「方針」を書くという建て付けである点も、条文どおりに読んでおくべきところです。

対象になる設備・ならない設備

2つのフィルターが重なっています。1つは中小企業等経営強化法施行規則7条1項が定める「先端設備等」の指定設備、もう1つは地方税法施行令が定める取得価額の下限です。

資産の種類省令上の範囲取得価額の下限
機械及び装置全ての指定設備160万円以上
工具測定工具及び検査工具に限る30万円以上
器具及び備品全ての指定設備30万円以上
建物附属設備全ての指定設備60万円以上
ソフトウエア全ての指定設備固定資産税の特例の対象外
ソフトウエアは計画に載るが、固定資産税は下がらない 省令7条1項の指定設備にはソフトウエアが含まれます。しかし地方税法附則15条42項が挙げる資産は機械及び装置・工具・器具及び備品・建物附属設備の4つだけで、ソフトウエアは入っていません。そもそも償却資産としての固定資産税の対象外だからです。計画の対象と税の対象がずれている点は、資料を読むときに取り違えやすいところです。

また省令7条1項は、指定設備であることに加えて「直接商品の生産若しくは販売又は役務の提供の用に供するもの」であることを求めています。本社の管理部門でしか使わない設備は、この時点で外れる可能性があります。

建物附属設備については、地方税法附則15条42項が「家屋と一体となつて効用を果たすものを除く」としています。家屋として評価されるものは償却資産ではないため、ここでも外れます。

なお省令7条2項は、生産性の向上に特に不可欠な設備等として、年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれる投資計画に記載された投資の目的を達成するために必要不可欠なもの、という別の枠を置いています。投資利益率は「各年度において増加する営業利益と減価償却費の合計額(取得等をする年度の翌年度以降3箇年度分)を平均した額 ÷ 取得等をする設備の取得価額の合計額」で計算します。この枠の設備を取得する場合は、要件に該当することを証する書類をあらかじめ市町村長に提出することが求められます。

いくら軽減されるか(計算例)

固定資産税の標準税率は1.4%です(地方税法350条1項。標準税率なので、市町村によってはこれと異なる税率を条例で定めていることがあります)。ある年度の課税標準となるべき価格が700万円の機械装置を例にすると、次のようになります。

課税標準その年度の税額1年あたりの軽減期間の合計
特例なし700万円98,000円
2分の1(1.5%以上)350万円49,000円49,000円3年度分
4分の1(3%以上)175万円24,500円73,500円5年度分

価格は年々下がっていくため、実際の軽減額は初年度がもっとも大きく、後年度は小さくなります。ここでの700万円は説明のために置いた1年度分の数字であり、期間の合計欄も「何年度分にわたって軽減が続くか」を示したもので、上の金額を単純に3倍・5倍したものではありません。

減価償却費の計算機(定額法・定率法)で取得価額から償却額を試算する
免税点150万円との関係を先に見る 償却資産の固定資産税は、同じ市町村内で所有する償却資産の課税標準となるべき額の合計が150万円未満なら課されません(地方税法351条)。判定は資産1件ごとではなく市町村ごとの合計です。他に償却資産がほとんどない事業者では、特例を使った結果として合計が150万円を下回り、税額そのものがゼロになることもあります。

手続きの流れと必要書類

順序を間違えると効果が出ません。中小企業等経営強化法52条1項は「導入をしようとする中小企業者」が計画を提出すると書いており、附則15条42項も認定計画に従って取得したものを対象としています。設備を買ってから計画を出すのでは順序が逆になります。

  1. 設備を導入する市町村が、導入促進基本計画について経済産業大臣の同意を得ているかを確認する
  2. 先端設備等導入計画を作成する(法52条3項の3項目。賃上げ方針を記載する)
  3. 様式第二十二による申請書1通を特定市町村の長に提出する
  4. 認定を受けたうえで、適用期間内(令和9年3月31日まで)に設備を取得する
  5. 取得した翌年の1月1日を賦課期日とする年度から軽減が適用される

添付書類は施行規則が定めています。計画の目標が達成されると見込まれることを証する書類に加えて、賃上げ方針を計画に記載する場合は「その旨を従業員に表明したことを証する書類」が必要です。賃上げ方針が必須要件になった現行制度では、この書類も事実上必須になります。認定後に計画を変更する場合は様式第二十三による変更認定の申請が要ります(法53条1項)。

つまずきやすい点

1. 市町村が制度を持っていないと、申請そのものができない。法52条1項の提出先は「特定市町村」=同意導入促進基本計画を作成した市町村に限られます。中小企業庁は「先端設備導入に係る固定資産税の軽減措置を講じている市区町村」の一覧を公表しており、逆に言えば講じていない市区町村があるということです。まずここを確認するのが最短です。

2. 軽減の割合は市町村が条例で決める余地がある。地方税法350条1項の1.4%は標準税率です。附則15条42項の課税標準の特例自体は法定ですが、税率が違えば軽減の実額も変わります。

3. 中古設備は対象外。附則15条42項は取得を「事業の用に供されたことのないものの取得に限る」としています。新品であることが条文上の要件です。

4. リースでも対象になる形がある。同項は、リース取引により引渡しを受けた場合の機械装置等も、一定の条件のもとで含めると規定しています。所有権移転外リースの扱いは個別性が高いので、契約内容ごとに確認が要ります。

5. 認定の取消しがある。法53条2項・3項は、計画に従って導入を行っていないと認めるとき、または認定基準に適合しなくなったと認めるときは、市町村が認定を取り消すことができると定めています。

この記事で踏み込んでいないこと 様式第二十二・第二十三の具体的な記載内容、市区町村ごとの受付期間や独自の上乗せ要件、金融支援(信用保証の特例)の内容は扱っていません。市区町村ごとの運用差が大きい部分なので、所在地の市区町村の担当窓口でご確認ください。

よくある質問

Q. 賃上げ方針を書かない計画では、固定資産税は下がりませんか?

A. 令和7年4月1日以後に取得した設備については下がりません。地方税法附則15条42項の本文が、雇用者給与等支給額の増加に係る事項が記載された認定計画に従って取得したものを対象としているためです。旧44項では本文に賃上げの要件がなく、賃上げに触れない計画でも2分の1を受けられました。

Q. 賃上げの方針を書いて達成できなかった場合はどうなりますか?

A. 条文が求めているのは「引上げの方針」を計画に記載することであり、実績そのものではありません。ただし法53条2項は、計画に従って導入を行っていないと認めるときに市町村が認定を取り消せると定めています。取消しの運用は市町村によるため、担当窓口にご確認ください。

Q. 経営力向上計画とどちらを出せばよいですか?

A. 効果が違うので択一ではありません。固定資産税の課税標準を下げたい場合は先端設備等導入計画、法人税の即時償却や税額控除を受けたい場合は経営力向上計画にもとづく中小企業経営強化税制が対応します。両方を検討する場面もあります。

Q. ソフトウエアも軽減の対象になりますか?

A. なりません。中小企業等経営強化法施行規則7条1項の指定設備にはソフトウエアが含まれますが、地方税法附則15条42項が挙げる資産は機械及び装置・工具・器具及び備品・建物附属設備の4つで、ソフトウエアは含まれていません。

Q. 工具ならどれでも30万円以上で対象になりますか?

A. なりません。省令7条1項の表は、工具については「測定工具及び検査工具(電気又は電子を利用するものを含む。)」に限っています。機械及び装置・器具及び備品・建物附属設備が「全ての指定設備」とされているのと異なる点です。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。適用の可否・計算・申告書への記載にあたっては、顧問税理士または所轄の市区町村の担当課にご確認ください。先端設備等導入計画の様式・受付期間・添付書類の運用は市区町村ごとに異なるため、計画を提出する市区町村の担当窓口にご確認ください。

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