消費税の還付 — 還付になる3つの型、免税事業者が受けられない理由、還付加算金は令和8年で1.3%
結論から言うと、消費税が還付になるのは、仕入れに係る消費税額が売上げに係る消費税額を超えたときです。消費税は預かった税から支払った税を引いて納めるしくみなので、引き算の答えがマイナスになれば、その分が戻ってきます。設備投資をした年、輸出だけをしている事業者、赤字でも仕入れが多い年に起きます。
ただし、還付を受けられるのは課税事業者だけです。消費税法46条1項は還付申告ができる者から「消費税を納める義務が免除される事業者」を明文で除いています。売上1,000万円以下の免税事業者は、どれだけ設備投資をしても1円も戻りません。戻したければ課税事業者選択届出書を出して自ら課税事業者になる必要があり、そこには2年縛りと、場合によっては3年縛りが付いてきます。
そしてもう一つ、実務であまり知られていないことがあります。還付金には利息にあたる還付加算金が付き、その割合は令和8年は年1.3%です(令和4年から令和7年まで4年続いた0.9%から上がりました)。ところが消費税法52条2項は、還付申告の場合の起算日を「その申告書を提出した日の属する月の末日」と定めています。早く出しても還付加算金は増えないという構造です。この記事では、条文に当たりながらその全体を追います。
還付になるのはどんなときか — 3つの型
消費税の納付額は、おおまかに、売上げに係る消費税額から仕入れに係る消費税額を差し引いた額です。この引き算がマイナスになる状況は、実務では次の3つに整理できます。
| 型 | 何が起きているか | 典型例 |
|---|---|---|
| ①設備投資型 | その年だけ大きな課税仕入れがあり、売上税額を超えた | 店舗の内装、機械、社用車、建物の取得 |
| ②輸出型 | 売上が免税なので売上税額がゼロ。仕入税額だけが残る | 輸出業、越境EC |
| ③赤字・在庫型 | 売上が落ちた年に仕入れ・在庫を抱えた | 創業期、事業縮小期 |
②の輸出が還付になるのは、消費税法7条1項が輸出取引を免税としているからです。非課税ではなく免税である点が要点で、免税なら課税資産の譲渡等にあたるため、対応する課税仕入れの仕入税額控除が使えます。売上側の税額はゼロ、仕入側の税額はそのまま残るので、構造上ほぼ必ず還付になります。
免税事業者は還付を受けられない
ここが最初の関門です。消費税法46条1項は、還付を受けるための申告書を提出できる者を、次のように定めています。
事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)は、その課税期間分の消費税につき第四十五条第一項第五号又は第七号に掲げる金額がある場合には、同項ただし書の規定により申告書を提出すべき義務がない場合においても、第五十二条第一項又は第五十三条第一項の規定による還付を受けるため、第四十五条第一項各号に掲げる事項を記載した申告書を税務署長に提出することができる。
冒頭の括弧書きが効いています。免税事業者は、還付申告の主体からあらかじめ外されているのです。同じ除外は確定申告を定める45条1項の冒頭にもあり、還付の根拠条文である52条1項も、45条1項または46条1項による申告書の提出があったことを前提にしています。つまり免税事業者には、還付にたどり着く入口が条文上どこにもありません。
したがって、設備投資の年に還付を受けたい免税事業者は、課税事業者選択届出書(消費税法9条4項)を提出して、自ら課税事業者になる必要があります。提出の効果が生じるのは原則として提出した日の属する課税期間の翌課税期間からです。ここが実務でいちばん間違えやすいところで、「設備を買ってから慌てて出す」のでは間に合いません。買う年の前年末までに出すのが原則です。
2年縛りと3年縛り — 還付を取り戻される仕組み
課税事業者選択は、一度出すとすぐにはやめられません。消費税法9条6項が縛りを定めています。
前項の場合において、第四項の規定による届出書を提出した事業者は、事業を廃止した場合を除き、同項に規定する翌課税期間の初日から二年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、同項の規定の適用を受けることをやめようとする旨を記載した届出書を提出することができない。
これが2年縛りです。還付を受けた翌期も課税事業者として納税する義務が残るので、還付額と、2年分の納税額を通算して損得を見る必要があります。
さらに厳しいのが3年縛りです。9条7項は、2年の縛り期間中に調整対象固定資産(税抜100万円以上の固定資産)の仕入れ等を行った場合、その仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、選択をやめる届出書を提出できないと定めています。建物を買って還付を受けるケースは、まさにこれに当たります。
なぜ3年なのか。それは消費税法33条が、第3年度の課税期間で仕入税額控除を調整し直すからです。33条は、調整対象固定資産について、仕入れ等の課税期間の課税売上割合と、第3年度までの通算課税売上割合を比べ、著しく減少していれば、その差額に相当する消費税額を第3年度の仕入れに係る消費税額から控除する(=納税額を増やす)と定めています。
手続 — 確定申告と還付申告は別の条文
還付を受けるための申告には、根拠条文が2つあります。どちらに乗るかで、後述する還付加算金の起算日が変わります。
| 消費税法45条1項(確定申告) | 消費税法46条1項(還付申告) | |
|---|---|---|
| 誰が | 課税事業者で、申告義務がある者 | 課税事業者で、45条1項ただし書により申告義務がない者 |
| 性質 | 提出しなければならない(義務) | 提出することができる(権利) |
| 期限 | 課税期間の末日の翌日から2月以内 (個人事業者は翌年3月31日) | 期限の定めなし |
45条1項には、次のただし書があります。
ただし、国内における課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)及び特定課税仕入れがなく、かつ、第四号に掲げる消費税額がない課税期間については、この限りでない。
括弧書きで輸出免税が除かれていることに注目してください。売上が輸出免税だけの事業者は、このただし書でいう「課税資産の譲渡等」がないことになり、確定申告の義務がありません。それでも還付は受けたい。そのために置かれているのが46条の還付申告です。46条1項が「申告書を提出すべき義務がない場合においても……提出することができる」と書いているのは、この場面を指しています。
個人事業者の確定申告期限が翌年3月31日になるのは、租税特別措置法86条の4の特例です。
消費税法第二条第一項第三号に規定する個人事業者(同法第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される者を除く。)のその年の十二月三十一日の属する課税期間(同法第十九条に規定する課税期間をいう。次条及び第八十六条の六において同じ。)に係る同法第四十五条第一項の規定による申告書(同条第二項の規定により提出すべき申告書を除く。)の提出期限は、同条第一項の規定にかかわらず、その年の翌年三月三十一日とする。
この特例が対象にしているのは45条1項の申告書だけです。46条の還付申告は文言に入っていません。所得税の申告期限(3月15日)とも別なので、個人事業者は所得税3月15日・消費税3月31日と2つの期限を持つことになります。
なお、還付申告には明細書の添付が義務です。46条3項が定めています。
第一項の規定による申告書には、財務省令で定めるところにより、当該課税期間中の資産の譲渡等の対価の額及び課税仕入れ等の税額の明細その他の事項を記載した書類を添付しなければならない。
これが「消費税の還付申告に関する明細書」です。45条6項にも同じ規定があるため、還付になる確定申告でも添付が必要になります。添付漏れは還付の処理を止める典型的な原因です。
還付加算金 — 令和8年は1.3%。早く出しても増えない
還付金には利息にあたる還付加算金が付きます。根拠は国税通則法58条1項で、本則の割合は年7.3%です。ただし租税特別措置法95条が、市中金利に合わせてこれを引き下げています。
各年の還付加算金特例基準割合(平均貸付割合に年〇・五パーセントの割合を加算した割合をいう。)が年七・三パーセントの割合に満たない場合には、国税通則法第五十八条第一項に規定する還付加算金(以下この条及び次条第一項において「還付加算金」という。)の計算の基礎となる期間であつてその年に含まれる期間に対応する還付加算金についての同法第五十八条第一項の規定の適用については、同項中「年七・三パーセントの割合」とあるのは、「租税特別措置法第九十五条(還付加算金の割合の特例)に規定する還付加算金特例基準割合」とする。
国税庁が公表している還付加算金特例基準割合は、次のとおりです。
| 期間 | 還付加算金特例基準割合 |
|---|---|
| 令和4年1月1日〜令和4年12月31日 | 0.9% |
| 令和5年1月1日〜令和5年12月31日 | 0.9% |
| 令和6年1月1日〜令和6年12月31日 | 0.9% |
| 令和7年1月1日〜令和7年12月31日 | 0.9% |
| 令和8年1月1日〜令和8年12月31日 | 1.3% |
4年続いた0.9%が、令和8年に1.3%へ上がりました。同じ告示に基づく延滞税の割合も令和8年は2.8%(納期限の翌日から2月経過後は9.1%)に上がっています。還付を待たされる側にとっては有利な方向の改定ですが、納付が遅れたときの負担も同時に増えています。
起算日はいつか — ここが実務の勘所
通則法58条1項は、期間について「他の国税に関する法律に別段の定めがある場合には、その定める期間」と逃げ道を用意しています。消費税には、まさにその別段の定めがあります。消費税法52条2項が、申告書の種類ごとに起算日を定めているのです。
| 申告書の種類 | 還付加算金の計算の基礎となる期間の始まり |
|---|---|
| 45条1項の確定申告書(期限内) | その申告書の提出期限の翌日 |
| 45条1項の確定申告書(期限後) | 提出があった日の属する月の末日の翌日 |
| 46条1項の還付申告書 | 提出があった日の属する月の末日の翌日 ただし課税期間の末日の翌日から2月を経過する日より前に出したときは、その2月を経過する日の翌日 |
3行目を読んでください。還付申告をどれだけ早く提出しても、起算日は、課税期間の末日の翌日から「二月を経過する日」より前には来ません。1月10日に出しても2月28日に出しても、起算日は同じです。早出しによって還付加算金が増えることはない——これが52条2項の構造です。
実際に計算してみる
12月決算の法人が、令和8年に店舗を出したとします。数字は税込です。
| 区分 | 金額(税込) | うち消費税(国税7.8%分) |
|---|---|---|
| 課税売上 | 22,000,000円 | 1,560,000円 |
| 課税仕入(うち内装2,200万円) | 33,000,000円 | 2,340,000円 |
| 差引 | — | △780,000円 → 還付 |
消費税(国税)の還付が780,000円、これに対応する地方消費税(譲渡割)が220,000円で、手元に戻るのは合計1,000,000円です。税率10%の内訳は国税7.8%・地方2.2%なので、申告書上もこの2段で計算します。
次に還付加算金です。令和9年2月28日(期限内)に確定申告を提出し、令和9年5月15日に支払決定があったとします。
- 起算日 … 提出期限の翌日=令和9年3月1日(消費税法52条2項1号)
- 日数 … 3月1日から5月15日まで=76日
- 基礎となる金額 … 780,000円(1万円未満の端数は切り捨て。ここでは端数なし)
- 計算 … 780,000円 × 1.3% × 76 ÷ 365 = 2,111円
- 100円未満を切り捨てて … 2,100円
端数処理は国税通則法120条が定めています。計算の基礎となる金額の側と、算出後の金額の側で、切り捨ての単位が違う点に注意してください。
還付加算金の確定金額に百円未満の端数があるとき、又はその全額が千円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。
還付加算金の額を計算する場合において、その計算の基礎となる還付金等の額に一万円未満の端数があるとき、又はその還付金等の額の全額が一万円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。
つまり還付金が1万円未満なら還付加算金は付かず、計算しても1,000円未満なら切り捨てられてゼロになります。100万円の還付でも2,100円。還付加算金を当てにして資金繰りを組むものではありません。
消費税の税込・税抜と端数処理を計算する落とし穴
1. 中間納付の還付は、起算日の考え方が違う
中間納付をしすぎた場合の還付は、52条ではなく53条です。53条3項は、還付加算金の起算日を、還付すべき中間納付額の納付の日(その中間納付額がその納期限前に納付された場合には、その納期限)の翌日としています。52条が申告書の提出を基準にするのに対し、53条はお金を払った日を基準にする——同じ消費税の還付でも、条文が違えば起算日の考え方も違います。
また53条2項は、還付される中間納付額に対応する延滞税も併せて還付すると定めていますが、同5項が「第二項の規定による還付金については、還付加算金は、付さない」としています。延滞税の還付部分には利息が付きません。
2. 還付申告は義務ではないので、出さなければ戻らない
46条1項の語尾は「提出することができる」です。義務ではないので、税務署が気づいて自動的に振り込んでくれることはありません。輸出だけの事業者や、売上のない年に設備投資をした事業者は、自分から出さなければ1円も戻りません。なお還付を受ける権利は、国税通則法74条1項により5年で時効消滅します。
3. 課税事業者選択届出書の提出期限を年度末と取り違える
提出期限は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までです。12月決算なら前年12月31日まで。3月決算なら前年3月31日までで、確定申告期限(5月末)ではありません。9条9項は、やむを得ない事情がある場合の特例を政令に委ねていますが、「知らなかった」はやむを得ない事情には当たりません。
4. 還付申告は税務署の確認が入りやすい
還付は税金が出ていく処理なので、内容の確認が入ることが少なくありません。46条3項の明細書に加えて、大きな設備投資であれば契約書・請求書・支払の記録を揃えておくと処理が早く進みます。インボイス制度のもとでは、仕入税額控除の要件として適格請求書の保存も必要です。
よくある質問
Q. 免税事業者ですが、店舗を作ったので消費税を返してほしいです。可能ですか?
A. そのままではできません。消費税法46条1項は還付申告ができる者から「第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者」を除いており、免税事業者には還付にたどり着く条文上の入口がありません。還付を受けるには、原則としてその課税期間が始まる前日までに課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者になっておく必要があります。ただし事業を開始した日の属する課税期間であれば、その課税期間の末日までの提出でその期から適用されます。
Q. 課税事業者選択届出書を出すと、いつまで課税事業者のままですか?
A. 最低でも2年です。消費税法9条6項は、適用を受ける最初の課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、やめる旨の届出書を提出できないと定めています。さらにその2年の間に税抜100万円以上の調整対象固定資産を取得すると、9条7項により3年に延びます。還付額だけでなく、縛られる期間中に納めることになる消費税も含めて通算で判断してください。
Q. 建物を買って還付を受けました。あとで返すことがあると聞きました。本当ですか?
A. あります。消費税法33条は、調整対象固定資産について、仕入れ等の課税期間の課税売上割合と第3年度の課税期間までの通算課税売上割合を比較し、著しく減少している場合には、その差に相当する消費税額を第3年度の仕入れに係る消費税額から控除すると定めています。賃貸用建物を取得して初年度に還付を受け、その後は非課税である住宅家賃だけが入るという形が典型で、初年度の還付の相当部分を第3年度に納めることになります。
Q. 還付申告を早く出せば、還付加算金は多くもらえますか?
A. 増えません。消費税法52条2項3号は、46条1項の還付申告書について、還付加算金の計算の基礎となる期間の始まりを「提出があった日の属する月の末日」とし、課税期間の末日の翌日から2月を経過する日より前に提出した場合はその2月を経過する日とすると定めています。したがって起算日は2月を経過する日より前には来ず、1月に出しても2月末に出しても同じです。ただし早く出せば支払決定も早くなるのが通常なので、資金が早く戻るという意味では早期提出に意味があります。
Q. 還付加算金は令和8年で何パーセントですか?
A. 年1.3%です。国税通則法58条1項の本則は年7.3%ですが、租税特別措置法95条により、還付加算金特例基準割合が7.3%に満たない場合はその割合によることとされています。国税庁が公表している還付加算金特例基準割合は令和4年から令和7年まで4年続けて0.9%で、令和8年1月1日から令和8年12月31日までは1.3%です。なお還付金の額が1万円未満のときや、計算した還付加算金が1,000円未満のときは、国税通則法120条により切り捨てられます。
Q. 輸出しかしていないので売上に消費税がありません。申告は必要ですか?
A. 確定申告の義務はありませんが、還付を受けたいなら還付申告を提出します。消費税法45条1項ただし書は、消費税が免除されるものを除いた課税資産の譲渡等がなく、かつ差引税額もない課税期間について申告義務を免除しています。輸出免税だけの事業者はこれに当たります。その場合に還付を受けるための条文が46条1項で、語尾は「提出することができる」です。提出しなければ還付は行われません。
Q. 還付申告に添付する書類はありますか?
A. 消費税の還付申告に関する明細書の添付が必要です。消費税法46条3項は、還付申告書には課税期間中の資産の譲渡等の対価の額および課税仕入れ等の税額の明細その他の事項を記載した書類を添付しなければならないと定めています。同じ規定は確定申告について45条6項にもあるため、確定申告が還付になる場合も添付が必要です。あわせて仕入税額控除の要件として、帳簿および適格請求書等の保存も求められます。
Q. 中間納付をしすぎた分の還付にも、還付加算金は付きますか?
A. 付きますが、起算日の考え方が違います。中間納付額の還付は消費税法53条1項によるもので、同3項は還付加算金の起算日を、還付すべき中間納付額の納付の日(その納期限前に納付された場合にはその納期限)の翌日としています。申告書の提出を基準にする52条とは異なり、実際に納付した日が基準です。なお53条2項により併せて還付される延滞税については、同5項が還付加算金を付さないと定めています。
出典
- e-Gov 法令検索「消費税法(昭和六十三年法律第百八号)」7条、9条、33条、45条、46条、52条、53条(法令API v2 で令和8年4月1日施行のリビジョンを取得)
- e-Gov 法令検索「国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)」58条、74条、120条(法令API v2 で令和8年6月24日施行のリビジョンを取得)
- e-Gov 法令検索「租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)」86条の4、95条(法令API v2 で施行中のリビジョンを取得)
- 国税庁「延滞税の割合」(令和3年1月1日以後)— 利子税特例基準割合および還付加算金特例基準割合の表
この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。実際の会計処理・申告の判断は、税理士など有資格者にご確認ください。