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賞与支払届は支払った日から5日以内 — 期限の根拠は法律ではなく省令、船員だけ10日以内

結論から言うと、賞与支払届の提出期限は「賞与を支払った日から5日以内」です。支給月の末日でも、給与計算が締まった日でもなく、実際に支払った日が起算日になります。夏季賞与を7月10日に支払ったなら、7月15日までに提出する、という数え方です。

意外に知られていないのは、この5日という期限を決めているのが法律ではないことです。健康保険法48条と厚生年金保険法27条は、賞与額に関する事項を届け出なければならない、と定めるだけで、日数はどちらにも出てきません。5日以内という数字は、それぞれの施行規則(省令)にあります。そして同じ省令の中に、船員被保険者だけは10日以内という別の期限が置かれています。

もう一つ、実務で毎年迷うのが「賞与を出さなかった月にも何か出すのか」です。答えは登録した賞与支払予定月に支給しなかったなら、賞与不支給報告書を提出するというものですが、この報告書には法令上の根拠がありません。厚生年金保険法施行規則と健康保険法施行規則の本則を検索しても、賞与の文脈で「不支給」「支払予定月」という語は1件も出てきません。日本年金機構が運用上お願いしている様式です。この記事では、条文と実際の様式を突き合わせて、どこまでが法令の義務でどこからが運用なのかを整理します。

結論 — 支払った日から5日以内(船員は10日)

健康保険・厚生年金保険の被保険者に賞与を支払ったときは、事業主が「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届/厚生年金保険 70歳以上被用者賞与支払届」を日本年金機構(健康保険組合に加入している場合は組合にも)へ提出します。期限は賞与を支払った日から5日以内です。

区分期限根拠
一般の被保険者(健康保険)支払った日から5日以内健康保険法施行規則27条1項
一般の被保険者・70歳以上被用者(厚生年金保険)支払った日から5日以内厚生年金保険法施行規則19条の5第1項
船員被保険者支払った日から10日以内厚生年金保険法施行規則19条の5第5項
船員たる70歳以上の使用される者支払った日から10日以内(届書は正副二通厚生年金保険法施行規則19条の5第6項
提出期限は「賞与を支払った日」から数える 賞与の支給日 =起算日 5日以内(一般の被保険者) 健保則27条1項/厚年則19条の5第1項 10日以内(船員被保険者) 厚年則19条の5第5項
起算日は支給月の末日でも締日でもなく、実際に賞与を支払った日。船員に係る届出だけは、期限が5日ではなく10日と定められている。

期限を決めているのは法律ではなく省令

「賞与支払届は法律で5日以内と決まっている」と説明されることがありますが、条文を読むと少し違います。法律が定めているのは届け出る義務があることまでで、日数は書かれていません。

適用事業所の事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を保険者等に届け出なければならない。
(健康保険法48条)

厚生年金保険法27条も同じ構造で、「厚生労働省令で定めるところにより……報酬月額及び賞与額に関する事項を厚生労働大臣に届け出なければならない」と書かれているだけです。日数を定めているのは、その委任を受けた省令のほうです。

被保険者の賞与額に関する法第四十八条の規定による届出は、賞与を支払った日から五日以内に、様式第六号による健康保険被保険者賞与支払届を機構又は健康保険組合に提出することによって行うものとする。
(健康保険法施行規則27条1項)

この構造を知っておくと実務で役に立つ場面があります。様式や期限の細かい取扱いが変わるときは、法律の改正ではなく省令の改正で動くということだからです。法律だけを追いかけていても、届出のルール変更には気づけません。

船員だけ期限が違うのはなぜか 厚生年金保険法施行規則19条の5は、第1項で一般の被保険者を5日以内としたうえで、第5項で船員被保険者を10日以内、第6項で船員たる70歳以上の使用される者を10日以内かつ届書正副二通と定めています。長期の乗船で事務処理が支給日直後にできないことを見込んだ扱いと考えられます。一般の会社の経理では出番がありませんが、海運業を営む事業所では期限そのものが違う点に注意が要ります。

対象になる賞与・ならない賞与

社会保険でいう賞与は、名称ではなく支給の回数で決まります。賞与支払届の対象になるのは年3回以下で支給されるものです。年4回以上支給されるものは、賞与ではなく報酬として扱われ、標準報酬月額の計算に含まれます。つまり年4回以上の賞与に賞与支払届は出しません

支給の回数社会保険での扱い賞与支払届
年3回以下賞与(標準賞与額)提出する
年4回以上報酬(標準報酬月額に算入)提出しない

「決算賞与」「一時金」「期末手当」など呼び名が違っても、年3回以下の支給であれば賞与として届け出ます。逆に「賞与」という名前が付いていても年4回以上支給されていれば報酬です。賞与の社会保険料そのものの計算方法や、育児休業中の免除については賞与(ボーナス)の社会保険料で詳しく整理しています。

書き方 — 千円未満切捨て、70歳以上も同じ用紙

届書に書く賞与額は、支給した総額です。そこから千円未満を切り捨てた額が標準賞与額になります。切り捨ての処理は健康保険法45条・厚生年金保険法24条の4に定められており、届出のときに事業主が計算します。

たとえば賞与の支給額が487,600円なら、千円未満を切り捨てて標準賞与額は487,000円です。600円は保険料の計算には乗りません。

用紙について、条文上は健康保険が様式第六号、厚生年金保険が様式第九号の二と別々に定められています。ただし実務で使うのは「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届/厚生年金保険 70歳以上被用者賞与支払届」という1枚の共通様式です。厚生年金保険法施行規則19条の5第1項の後段が、健康保険の届出と併記して行うことを認めているため、2枚書く必要はありません。

70歳以上被用者も同じ用紙で届け出る 70歳以上の使用される者は厚生年金保険の被保険者ではありませんが、在職老齢年金の計算に賞与額が使われるため届出の対象です。日本年金機構は「70歳以上被用者も被保険者と同一の届書をご使用ください」と案内しており、別紙を用意する必要はありません。
賞与から引かれる社会保険料と手取りを計算する → ボーナス手取り計算機

2つの上限は「数え方」が違う

標準賞与額には上限がありますが、健康保険と厚生年金保険で数え方そのものが違います。ここは条文を並べるとはっきりします。

厚生年金保険健康保険
上限1か月あたり150万円年度累計573万円
数える単位その月ごと年度(4月1日〜翌年3月31日)の累計
上限に達した後翌月の賞与はまた150万円までその年度の翌月以降に受ける賞与の標準賞与額は
根拠厚生年金保険法24条の4健康保険法45条

厚生年金保険は月単位でリセットされます。6月に200万円の賞与を払えばその月の標準賞与額は150万円ですが、12月にまた200万円払えば、その月もあらためて150万円です。

健康保険は年度をまたぐまでリセットされません。健康保険法45条は、累計が573万円を超えることになる月については累計が573万円ちょうどになるように標準賞与額を決め、その年度においてその月の翌月以降に受ける賞与の標準賞与額は零とすると定めています。したがって年度の途中で573万円に達すると、その年度の残りの賞与には健康保険料がかからなくなります。

ここで大事なのは、上限に達していても賞与支払届そのものは提出するという点です。上限は保険料計算の話であって、届出義務がなくなるわけではありません。

賞与不支給報告書には法令の根拠が無い

事業所は新規適用届などで賞与支払予定月を登録しています。登録した予定月に賞与を支給しなかった場合、日本年金機構は賞与不支給報告書の提出を求めています。

ただし、これは法令上の届出義務ではありません。厚生年金保険法施行規則と健康保険法施行規則の本則を検索すると、賞与の文脈で「不支給」「支払予定月」という語はどちらにも1件も出てきません(「支払わなかった」「支給しない」といった言い換えでも0件でした。一方「五日以内」は厚生年金保険法施行規則だけで14か所ヒットするので、検索そのものは機能しています)。日本年金機構のページも「『賞与不支給報告書』の提出をお願いします」という書き方で、義務ではなく依頼の形になっています。

その月に、どの届出を出すか その月に賞与を支払ったか 年3回以下の賞与 はい 賞与支払届 支払日から5日以内(省令) いいえ 登録した賞与支払予定月か はい 賞与不支給報告書 機構の運用(法令に定めなし) いいえ 提出は不要
賞与支払届は省令に期限まで定められた届出。賞与不支給報告書は日本年金機構の運用上の様式で、施行規則には根拠となる条文が見当たらない。

根拠が運用であっても、提出しないと機構から確認の連絡が来ることがあります。登録した予定月に賞与を出さなかったのか、届出を忘れているのかが、機構の側からは区別できないためです。賞与支払予定月そのものを変更した場合は、事業所関係変更(訂正)届で予定月を直しておくと、以後の不支給報告書が不要になります。

総括表は令和3年3月で廃止された

かつては賞与支払届と一緒に「被保険者賞与支払届総括表」を提出していましたが、この総括表は令和3年3月で廃止され、令和3年4月1日以降は提出不要です。古い社内マニュアルや書式集がそのままになっていると、いまだに総括表を用意している事業所があります。

廃止にともなって、賞与を支給しなかった月の扱いが総括表での申告から賞与不支給報告書へ移りました。総括表には「不支給」を記入する欄があり、そこで報告できていたためです。総括表を出していた時期の運用を覚えている担当者ほど、この置き換わりを見落としやすいところです。

特定法人は電子申請が義務

一定規模以上の法人は、賞与支払届を電子申請で行うことが義務づけられています。健康保険法施行規則27条3項と厚生年金保険法施行規則19条の5第3項が、特定法人の事業所の事業主については電子情報処理組織を使用して行うものとする、と定めています。

特定法人にあたるのは次の4つです(厚生年金保険法施行規則の定義による)。

判定の基準時が事業年度開始の時である点に注意が要ります。期の途中で増資して資本金が1億円を超えても、その事業年度の途中から義務が生じるわけではありません。

例外が条文に書かれている どちらの施行規則にも、電気通信回線の故障、災害その他の理由により電子情報処理組織を使用することが困難であると認められ、かつ電子情報処理組織を使用しないで届出を行うことができると認められる場合は、この限りでない、という但書があります。システム障害や被災のときに紙での提出が閉ざされるわけではありません。

転職すると573万円は自動で通算されない

健康保険の年度累計573万円という上限は、保険者が把握している範囲での累計です。年度の途中で転職して健康保険の保険者が変わると、前の勤務先で受けた賞与は新しい勤務先の事業主にも保険者にも分かりません。したがって累計は自動では通算されません。

この場合に使うのが「健康保険 標準賞与額累計申出書」です。日本年金機構は、同一年内に複数の被保険者期間があり、標準賞与額の年度累計額が上限額573万円を超える旨の申し出が被保険者よりあった場合に、事業主が提出する届出だと説明しています。

ここで実務上重要なのは、起点が本人の申し出だという点です。事業主の側から前職の賞与額を知る手段はないので、従業員が申し出なければ上限を超えた分の保険料が控除されたままになります。年度の途中で入社した従業員に高額の賞与を支給する場合は、前職での賞与の有無を確認できる導線を作っておくと取りこぼしが減ります。

間違えやすい点

よくある誤り正しくは
支給月の末日から5日以内だと思っている起算日は実際に支払った日。7月10日支給なら7月15日まで
上限に達したので届出も不要だと考える上限は保険料計算の話。届出は必要
賞与不支給報告書を「法定の届出」として案内する施行規則に根拠は無く、日本年金機構の運用上の様式
総括表を今も添付している令和3年3月で廃止。令和3年4月1日以降は提出不要
年4回以上の賞与にも賞与支払届を出している年4回以上は報酬。標準報酬月額に算入し賞与支払届は出さない
千円未満を四捨五入している切り捨て(健康保険法45条・厚生年金保険法24条の4)
転職者の573万円が自動で通算されると思っている本人の申し出を起点に標準賞与額累計申出書を提出する

よくある質問

Q. 賞与支払届の提出期限は、支給日と支給月の末日のどちらから数えますか?

A. 賞与を支払った日から数えます。健康保険法施行規則27条1項は「賞与を支払った日から五日以内」と定めており、厚生年金保険法施行規則19条の5第1項も同じ5日以内です(後者の条文は送り仮名が「支払つた」と表記されています)。支給月の末日や給与計算の締日は起算日になりません。

Q. 5日以内という期限は法律に書いてありますか?

A. 法律には書かれていません。健康保険法48条と厚生年金保険法27条は「厚生労働省令で定めるところにより」賞与額に関する事項を届け出なければならないと定めるだけで、日数は出てきません。5日以内という期限は、委任を受けたそれぞれの施行規則にあります。

Q. 期限の5日は土日祝を除いた営業日で数えますか?

A. 条文は「賞与を支払った日から五日以内」としており、営業日に限る旨の記載はないため暦日で数えるのが原則です。期限の末日が行政機関の休日にあたる場合の取扱いなど個別の判断が必要なときは、管轄の年金事務所に確認するのが確実です。

Q. 賞与を支給しなかった月にも届出は要りますか?

A. 登録している賞与支払予定月に支給しなかった場合は、日本年金機構が賞与不支給報告書の提出を求めています。ただし施行規則にはこの報告書の根拠となる条文が見当たらず、法令上の届出義務ではなく運用上の様式です。賞与支払予定月として登録していない月であれば、何も提出しません。

Q. 被保険者賞与支払届総括表はまだ提出が必要ですか?

A. 必要ありません。総括表は令和3年3月で廃止され、令和3年4月1日以降の提出は不要とされています。かつて総括表で報告していた不支給の申告は、賞与不支給報告書に置き換わっています。

Q. 70歳以上の従業員に賞与を支払ったときは別の用紙ですか?

A. 同じ用紙です。日本年金機構は70歳以上被用者も被保険者と同一の届書を使うよう案内しており、様式も「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届/厚生年金保険 70歳以上被用者賞与支払届」という一体のものになっています。

Q. 標準賞与額の上限に達したら賞与支払届は出さなくてよいですか?

A. 上限に達していても提出します。厚生年金保険の1か月150万円、健康保険の年度累計573万円という上限は保険料の計算に関するもので、賞与額を届け出る義務そのものは健康保険法48条・厚生年金保険法27条に基づいて残ります。

Q. 電子申請が義務になるのはどのような法人ですか?

A. 事業年度開始の時における資本金の額または出資金の額が1億円を超える法人、相互会社、投資法人、特定目的会社が特定法人にあたり、電子情報処理組織を使用して届け出るものとされています。ただし電気通信回線の故障や災害その他の理由により使用が困難と認められる場合の但書が条文に置かれています。

出典

この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・社会保険相談ではありません。実際の届出については、日本年金機構の案内を確認するか、管轄の年金事務所・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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