税金・経理・補助金ツールズ

収益認識基準と法人税法22条の2|会計基準は中小企業に任意でも、売上計上基準は全法人に適用

「収益認識に関する会計基準」は中小企業に強制されるものではありません。ここまでは、よく言われるとおりです。ただし、そこから「だからうちは売上の計上時期を気にしなくてよい」と続けると誤ります。売上をいつ・いくらで計上するかというルールは、会計基準とは別に法人税法22条の2が定めており、この条文は主語を「内国法人」とだけ書いて、資本金にも売上高にも限定を置いていないからです。

つまり会計基準の適用範囲と、法人税の売上計上基準の適用範囲は一致していません。前者は会計監査を受ける会社の話ですが、後者は全ての内国法人に効きます。中小企業にとって実務上の意味があるのは、むしろ後者のほうです。

この記事では、原則が引渡し・役務提供の日であること(1項)、確定した決算で「近接する日」に経理すればそれも認められること(2項)、そして決算で経理していなくても確定申告書に記載があれば経理したとみなされること(3項)を条文で確認します。そのうえで、返品や貸倒れの見込みでは収益を減らせないという、会計と税務が正面から割れる部分を実数で示します。

収益認識基準が強制されるのはどの会社か

収益認識に関する会計基準が適用対象としているのは、金融商品取引法の適用を受ける会社と、会社法上の会計監査人設置会社などです。ここで基準になるのが「大会社」に当たるかどうかで、その定義は会社法2条6号に置かれています。

同号は、大会社を次のいずれかに該当する株式会社と定めています。イは「最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が五億円以上であること」、ロは「最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること」です。そして会社法328条2項は、公開会社でない大会社は会計監査人を置かなければならないと定めています。

会社の区分会社法上の位置づけ収益認識に関する会計基準法人税法22条の2
上場会社等金融商品取引法の適用会社適用適用
大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)会計監査人の設置義務(328条)適用適用
それ以外の会社(多くの中小企業)会計監査人の設置義務なし強制されない適用
個人事業会社法の適用外強制されない法人税法の適用外(所得税法による)
「または」であって「かつ」ではない会社法2条6号のイとロは、いずれかに該当すれば大会社です。資本金1億円の会社でも、負債の部の合計額が200億円以上であれば大会社に当たります。逆に資本金5億円以上であれば、負債がいくら小さくても大会社です。片方だけを見て「うちは違う」と判断しないでください。

会計基準が任意でも、売上の計上時期は全法人に効く

ここからが本題です。法人税法22条の2第1項は、次のように定めています。

「内国法人の資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供(以下この条において「資産の販売等」という。)に係る収益の額は、別段の定め(前条第四項を除く。)があるものを除き、その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。」

読み取るべき点が2つあります。1つは、原則が「引渡しの日」または「役務の提供の日」だということ。もう1つは、主語が「内国法人」だけで、規模による限定がないことです。会社法2条6号のように資本金や負債の額で線を引く書き方をしていません。

したがって、収益認識に関する会計基準を適用していない中小企業であっても、売上をいつ益金に算入するかはこの条文で決まります。「会計基準は関係ない」は正しく、「売上計上基準は関係ない」は誤りである、というのはこの違いによるものです。

出荷基準・検収基準は使えるのか|「近接する日」の2つの入口

原則が引渡しの日だとすると、実務で広く使われている出荷基準や検収基準はどうなるのか、という疑問が出ます。これに答えるのが22条の2第2項です。

同項は、資産の販売等に係る収益の額につき一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って、契約の効力が生ずる日その他の1項に規定する日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合には、1項にかかわらずその事業年度の益金に算入する、としています。

ここで見落としやすいのが要件の書き方です。条文が求めているのは「確定した決算において収益として経理」していることであって、社内で継続的にその基準を使っているという事実だけではありません。決算書がその基準で作られている必要があります。

では、決算で経理していなかった場合はどうなるのか。ここにもう1つの入口が用意されています。22条の2第3項は、近接する日の属する事業年度の確定申告書にその収益の額の益金算入に関する申告の記載があるときは、その事業年度の確定した決算において収益として経理したものとみなして2項を適用する、と定めています。

資産の販売等(資産の販売・譲渡、役務の提供)を行った 原則:引渡しの日・役務の提供の日の属する事業年度(22条の2第1項) 近接する日で、確定した決算において 収益として経理した(2項) 決算では経理していないが、確定申告書に 益金算入の申告の記載がある(3項) その近接する日の属する事業年度で益金に算入する
売上の計上時期は原則が引渡しの日。近接する日で計上するには、確定決算での経理(2項)か、確定申告書への記載(3項)のどちらかが要る。
根拠いつの事業年度で益金に算入するか満たすべき要件
22条の2第1項引渡しの日・役務の提供の日原則。特段の要件なし
22条の2第2項1項の日に近接する日公正妥当な会計処理の基準に従い、確定した決算で収益として経理
22条の2第3項同上(近接する日)決算での経理はないが、確定申告書に益金算入の申告の記載がある
3項は「決算を組み替えなくてもよい」と言っている2項だけを読むと、近接する日で計上するには決算書がその基準で作られていなければならないように見えます。しかし3項は、申告書の記載があれば決算で経理したものとみなすと書いています。2項の要件を確定決算での経理だけで理解していると、使える選択肢を1つ見落とすことになります。どちらで扱うべきかは事案によるため、申告書の作成にあたっては顧問税理士にご確認ください。

公正処理基準を理由に原則を外せない|括弧書きの意味

22条の2を読むと、1項・2項・4項のいずれにも「別段の定め(前条第四項を除く。)があるものを除き」という同じ言い回しが出てきます。この括弧書きは読み飛ばされやすいのですが、条文の効き方を決めている部分です。

「前条第四項」とは法人税法22条4項のことで、同項は「第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする」と定めています。いわゆる公正処理基準です。

法人税法では、別段の定めがあればそちらが優先されます。ところが22条の2は、その「別段の定め」から公正処理基準を明示的に除外しています。結果として、会計慣行であることを理由に22条の2の計上時期や価額のルールを外すことはできません。

公正処理基準が効く場所と効かない場所22条4項は、収益や費用の額を計算する一般的なものさしとしては生きています。しかし22条の2が定める計上時期価額については、公正処理基準を持ち出して原則を外すことができない書き方になっています。2項が公正処理基準に言及しているのは、近接する日を選ぶ場面での限定的な参照であって、原則そのものを置き換える根拠ではありません。

会計と税務が割れる最大の点|返品・貸倒れの見込み

計上時期の次は金額です。22条の2第4項は、益金に算入する金額を「その販売若しくは譲渡をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額」としています。そして続く5項が、実務でもっとも影響の大きい定めです。

5項は、前項の引渡しの時における価額または通常得べき対価の額は、次に掲げる事実が生ずる可能性がある場合においても、その可能性がないものとした場合における価額とする、として2つを挙げています。一 当該資産の販売等の対価の額に係る金銭債権の貸倒れ、二 当該資産の販売等(資産の販売又は譲渡に限る。)に係る資産の買戻しです。

言い換えれば、返品されるかもしれない・回収できないかもしれないという見込みで、益金を減らすことはできません。会計上そうした見積りを反映している場合、法人税の計算では差額を戻す必要が出てきます。

場面会計上の考え方(見積りを反映する場合)法人税法22条の2第4項・5項
返品が見込まれる販売返品見込分を収益から控除する処理がある買戻しの可能性がないものとした価額で益金算入(5項2号)
回収不能が見込まれる債権回収可能性を織り込む処理がある貸倒れの可能性がないものとした価額で益金算入(5項1号)
上記以外の値引き等取引の内容による5項が挙げるのは貸倒れと買戻しの2つのみ。一般化して書かれていない

実数で見ます。当期に商品を10,000,000円販売し、過去の実績から3%が返品されると見込んだとします。

見込みが外れたときに二重に効かない仕組みがある5項で見込みを無視して益金に算入した以上、その見込みが後で変動しても、それだけを理由に収益を修正することはできません。法人税法施行令18条の2第1項は、修正の経理から「法第二十二条の二第五項各号に掲げる事実が生ずる可能性の変動に基づく修正の経理を除く」と括弧書きで外しています。見込みの振れは、次の見出しで扱う3項の「変動することが確定した事業年度」で処理する建て付けです。
益金が増えたときの法人税額を計算する(軽減税率15%の範囲つき)

あとから金額が変わったとき|修正の経理と債権の簿価

22条の2第7項は、修正の経理をした場合の処理その他必要な事項を政令に委ねています。その政令が法人税法施行令18条の2です。同条は、金額が動いたときの受け皿を3通りに分けています。

条項どんな場面かどの事業年度で益金・損金にするか
18条の2第1項引渡し等事業年度より後の事業年度の確定決算で修正の経理をした(5項各号の可能性の変動によるものは除くその修正の経理をした事業年度
18条の2第2項決算での修正はないが、確定申告書に増減額の申告の記載がある同上(修正の経理をしたものとみなす
18条の2第3項引渡し等事業年度終了の日後に生じた事情により価額・対価の額が変動したその変動することが確定した事業年度
18条の2第4項貸倒れ・買戻しの可能性があることにより、金銭債権に計上していない金額がある(時期ではなく簿価の調整)下記参照

とくに4項は、収益だけでなく債権の帳簿価額にまで手当てをしている点で見落としやすい規定です。同項は、対価として受け取ることとなる金額のうち5項各号の事実が生ずる可能性があることにより売掛金その他の金銭債権に係る勘定の金額としていない金額を「金銭債権計上差額」と呼び、その対価の額に係る金銭債権の帳簿価額は、この項を適用しないものとした場合の帳簿価額に金銭債権計上差額を加算した金額とする、と定めています。

先ほどの例で言えば、会計上の売掛金を9,700,000円としている場合、金銭債権計上差額は300,000円であり、税務上の金銭債権の帳簿価額は10,000,000円となります。収益を戻すだけでなく、債権の簿価も戻すという対応関係になっています。この簿価は、その後の貸倒れの判定などの出発点になる金額です。

よくある質問

Q. 中小企業は収益認識に関する会計基準を適用しなくてよいのですか?

A. 会計基準の適用と、法人税法の売上計上時期の話は分けて考える必要があります。収益認識に関する会計基準が適用対象としているのは会計監査人の監査を受ける会社などであり、会社法上の大会社に当たらない会社は従来の会計処理を続けることができます。一方、法人税法22条の2は主語を「内国法人」とだけ書いており、資本金や売上高による限定を置いていません。したがって「会計基準は関係ない」は成り立ちますが、「売上の計上時期のルールは関係ない」は成り立ちません。

Q. 出荷基準を続けたいのですが、税務上の問題はありますか?

A. 22条の2第1項の原則は引渡しの日ですが、同条2項は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って、契約の効力が生ずる日その他の1項の日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合には、その事業年度の益金に算入すると定めています。条文が要求しているのは「確定した決算において収益として経理」していることです。社内の運用として出荷日で計上しているだけでなく、決算書がその基準で作られていることが要件になります。個別の適否は顧問税理士にご確認ください。

Q. 決算では経理していませんでした。もう近接する日では計上できませんか?

A. 22条の2第3項に受け皿が置かれています。同項は、近接する日の属する事業年度の確定申告書にその収益の額の益金算入に関する申告の記載があるときは、その事業年度の確定した決算において収益として経理したものとみなして2項を適用する、と定めています。決算そのものを組み替えなくても2項に乗せられる構造です。2項の要件を確定決算での経理だけで理解していると、使える選択肢を1つ見落とすことになります。

Q. 返品の見込みで売上を減らしたら、税務でも同じでよいですか?

A. 22条の2第5項は、引渡しの時における価額または通常得べき対価の額について、金銭債権の貸倒れ資産の買戻しという2つの事実が生ずる可能性がある場合においても、その可能性がないものとした場合における価額とすると定めています。つまり見込みの分だけ収益を減らすことは、法人税の益金の計算では認められません。会計上その処理をしている場合、税務では差額を加算する調整が必要になります。なお5項が挙げているのは貸倒れと買戻しの2つで、他の事由まで一般化して書かれてはいません。

Q. 「別段の定め(前条第四項を除く。)」という括弧書きは何のためにあるのですか?

A. 前条第四項とは法人税法22条4項(公正処理基準)です。22条の2は1項・2項・4項のいずれにも「別段の定め(前条第四項を除く。)があるものを除き」という書き方をしており、公正処理基準を別段の定めから明示的に外しています。別段の定めがあれば22条の2の原則より優先されますが、公正処理基準はその別段の定めに当たらないため、会計慣行であることを理由に22条の2の計上時期や価額のルールを外すことはできない、という構造になっています。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。何をもって「引渡しの日」とするか、どの日が「近接する日」に当たるか、会計上の見積りと税務上の調整をどう対応させるかは、取引の内容や契約条件によって判断が分かれることがあります。申告書の作成にあたっては、顧問税理士にご確認ください。

この内容をXで共有