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収入印紙の割印(消印)はどこに押す?署名でもよい・忘れると額面と同額の過怠税

結論から言うと、収入印紙に押すあの印は、法律上は「割印」ではありません。印紙税法と印紙税法施行令を全文検索すると、「割印」という語は一度も出てきません。さらに言えば、実務で使われる「消印」という名詞すら条文には無く、条文の言い方は「印紙を消す」です(印紙税法8条2項、施行令5条の見出し)。

呼び方の話に見えますが、実害があります。「割印」は本来、2通の文書にまたがって押して同一性を示すための慣行で、押す相手が違います。社内マニュアルに「割印を押す」と書いたために、印紙ではなく契約書2通にまたがって押してしまう——という事故が起きるのはこのためです。条文が求めているのは、その文書自身と印紙の彩紋(模様)とにかけて消すことです。

そしてもう一点。貼りさえすれば終わりではありません。貼ってあるのに消していないと、印紙税法20条3項によりその印紙の額面と同額の過怠税が徴収されます。しかも同条4項で1,000円未満は1,000円に切り上げられるので、200円の印紙を消し忘れただけで1,000円です。以下、条文を読みながら、誰が・どこに・何で押すのか、忘れたらいくらかを整理します。

結論:条文にあるのは「印紙を消す」だけ

印紙税法(昭和42年法律第23号)と印紙税法施行令(昭和42年政令第108号)の全条文をe-Gov法令APIで取得して語を数えると、次のようになります。

印紙税法印紙税法施行令
割印0回0回
契印0回0回
消印0回0回
彩紋1回(8条2項)0回
署名1回1回(5条)

条文が使うのは「印紙を消す」という動詞の形だけです。施行令5条の見出しも「(印紙を消す方法)」です。一方、国税庁はタックスアンサーで「印章または署名で消印することによって行います」(No.7131)と、名詞の「消印」を使っています。

呼び方の整理

「消印」は国税庁も使う実務用語なので、そう呼んで差し支えありません。問題は「割印」です。これは別の慣行を指す語で、押す対象が違います。社内の手順書や新人への説明でここが混ざると、後述する過怠税に直結します。

条文はどう書いてあるか(法8条2項)

印紙税法8条は2項構成で、1項が「貼る」、2項が「消す」を定めています。

印紙税法8条(印紙による納付等)

1項 課税文書の作成者は、(中略)当該課税文書に課されるべき印紙税に相当する金額の印紙を、当該課税文書の作成の時までに、当該課税文書にはり付ける方法により、印紙税を納付しなければならない。

2項 課税文書の作成者は、前項の規定により当該課税文書に印紙をはり付ける場合には、政令で定めるところにより、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない。

2項から、消し方の要件が2つ読み取れます。

また1項は納付の期限を「作成の時までに」と定めています。郵送する時でも、相手に渡す時でもありません。

誰の印章で消すのか — 代表者印でなくてよい

「政令で定めるところにより」の中身が、印紙税法施行令5条です。ここが実務でいちばん誤解されています。

印紙税法施行令5条(印紙を消す方法)

課税文書の作成者は、法第八条第二項の規定により印紙を消す場合には、自己又はその代理人(法人の代表者を含む。)、使用人その他の従業者の印章又は署名で消さなければならない。

この一文から、3つのことが言えます。

よくある思い込み施行令5条が実際に定めていること
代表者印(会社の実印)でなければならない「使用人その他の従業者」の印章でよい。経理担当者の認印で足りる
契約書に押した契約印と同じ印でなければならない条文はそう限定していない。同じである必要はない
印章(ハンコ)が要る「印章又は署名」。署名(手書きで名前を書く)でもよい

国税庁もタックスアンサーNo.7129で「自己またはその代理人、使用人その他の従事者の印章または署名で、その課税文書と印紙の彩紋とにかけて、判明に印紙を消す必要があります」と、同じ内容を書いています。出先で社印が手元にない場合でも、担当者が署名すれば消したことになります。

斜線やレ点は条文の列挙に入っていない

施行令5条が挙げているのは「印章」と「署名」の2つだけです。斜線を引く・×やレ点を書く・「済」とだけ書く、はそのどちらにも当たりません。急ぐなら、担当者名を書くほうが条文の文言に沿います。

割印・契印・消印はどう違うか

3つは目的も押す場所も違います。印紙税法が義務づけているのは、このうち印紙を消すことだけです。

呼び方何のために押すか押す場所法律上の義務
印紙を消す(消印)印紙の再使用を防ぐその文書と印紙の彩紋にかけてあり(印紙税法8条2項・施行令5条)
契印複数ページの文書が1つづきであることを示すページの綴じ目や見開き印紙税法には規定なし(商慣行)
割印2通以上の文書が同一・関連であることを示す2通をずらして重ね、またがるように印紙税法には規定なし(商慣行)

契印・割印を押さなかったからといって、印紙税法上の過怠税が生じることはありません。逆に、割印を押したつもりで印紙を消していなければ、過怠税は生じます。

課税文書を作成した 印紙を貼ったか? はい いいえ 彩紋にかけて消したか? はい 納付完了(過怠税なし) いいえ 過怠税=消していない印紙の額面と同額 (法20条3項/1,000円未満は1,000円・4項) 自分から申し出たか? はい 過怠税=印紙税額の1.1倍(法20条2項) 1,000円への切り上げは適用されない(5項) いいえ(調査で発覚) 過怠税=印紙税額の3倍(法20条1項) (1,000円未満は1,000円・4項)
印紙税法20条の分岐。「貼ったか」と「消したか」は別の項で、罰の重さも切り上げの有無も違う。

消し忘れの過怠税は「額面と同額」

印紙税法20条3項は、消さなかった場合を独立して定めています。

印紙税法20条3項

第八条第一項の規定により印紙税を納付すべき課税文書の作成者が同条第二項の規定により印紙を消さなかつた場合には、(中略)当該作成者から、当該消されていない印紙の額面金額に相当する金額の過怠税を徴収する。

印紙代は既に払っているのに、もう一度同じ額を取られるという構造です。さらに同条4項があります。

印紙税法20条4項

第一項又は前項の場合において、過怠税の合計額が千円に満たないときは、これを千円とする。

ここが実務で効きます。5万円以上の領収書に貼る200円の印紙を消し忘れた場合、20条3項の過怠税は200円ですが、4項によって1,000円に切り上げられます。

項目金額
本来の印紙税(貼付済み)200円
消し忘れの過怠税(20条3項)200円 → 4項で1,000円
負担合計1,200円(本来の6倍)

印章を押すか署名するかの一手間を省いた代償が、1枚あたり1,000円ということになります。

貼り忘れは3倍、自主申告なら1.1倍

そもそも貼っていなかった場合は20条1項です。

印紙税法20条1項

(中略)納付しなかつた印紙税の額とその二倍に相当する金額との合計額に相当する過怠税を徴収する。

国税庁はこれを「当初に納付すべき印紙税の額の3倍に相当する過怠税」と説明しています(No.7131)。ただし2項に軽減があります。

印紙税法20条2項(要旨)

所轄税務署長に対し、印紙税を納付していない旨の申出(印紙税不納付事実申出書)があり、かつ、その申出が調査があったことにより過怠税の決定があるべきことを予知してされたものでないときは、過怠税の額は、納付しなかった印紙税の額とその10%との合計額とする。

そして見落とされがちなのが20条5項です。4項の1,000円への切り上げについて、「前項に規定する過怠税の合計額が、第二項の規定の適用を受けた過怠税のみに係る合計額であるときは、(中略)前項の規定の適用はないものとする」と定めています。

自主申告すると、1,000円への切り上げが働かない

200円の貼り忘れを調査で指摘されると、過怠税は600円 → 4項で1,000円。自分から申し出れば1.1倍で220円、しかも5項により切り上げが適用されないので220円で済みます。差は4.5倍です。

状況過怠税の計算200円の印紙なら1,000円への切り上げ根拠
貼り忘れ(調査で発覚)印紙税額の3倍600円 → 1,000円あり20条1項・4項
貼り忘れ(自主申告)印紙税額の1.1倍220円なし20条2項・5項
貼ったが消し忘れ消していない印紙の額面と同額200円 → 1,000円あり20条3項・4項

なお20条1項の過怠税は、納付しなかった印紙税に代わるものとして徴収されます。上表の「200円の印紙なら」の欄は、そのつど徴収される過怠税の額です。

過怠税は損金にも必要経費にもならない

経理側でもう一段効くのがここです。国税庁はNo.7131で「過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されません」と明記しています(根拠として法人税法55条4項1号、所得税法45条1項3号を挙げています)。

つまり1,000円の過怠税は、税引前利益を1,000円減らしてくれません。税引後の利益からそのまま出ていく支出です。少額なので軽く見られがちですが、印紙を多用する事業では、消し忘れが積み上がると金額と手間の両方で効きます。

収入印紙の金額を判定する(印紙税額一覧表つき)

貼りすぎたときの還付と、郵便局での交換

逆に、多く貼ってしまった・そもそも要らなかったという場合です。印紙税法14条1項が過誤納の確認手続を定めており、国税庁No.7130が対象を3つ挙げています。

手続は「印紙税過誤納確認申請(兼充当請求)書」を納税地の所轄税務署長に提出します。施行令14条2項が「過誤納となつた事実を証するため必要な文書その他の物件を(中略)提示しなければならない」と定めているとおり、文書の現物の提示が必要です。

還付されないもの(ここを間違えやすい)

登録免許税や特許手数料を納付するために貼った収入印紙は、誤って貼ったものであっても印紙税法による還付の対象になりません(No.7130)。収入印紙は印紙税専用ではないためです。
過怠税として徴収されたものは、印紙税法14条1項ただし書で還付の対象から除かれています。払ってしまった過怠税は戻りません。
・請求権は5年で時効消滅します。文書を作成した日から5年を経過したものは対象外です(No.7130)。

なお、まだ文書に貼っていない収入印紙については、郵便局の交換制度があります。汚損または毀損されていない収入印紙は、最寄りの郵便局で他の額面の収入印紙と交換できます。ただし1枚につき5円の手数料がかかり、現金には交換できません(No.7130)。

間違えやすい点

代表者印を探しに行ってしまう

施行令5条は「使用人その他の従業者の印章又は署名」を認めています。担当者の認印でよく、社印を待つ必要はありません。急ぐなら署名でも条文を満たします。

「割印」と書かれた手順書どおりに、契約書2通にまたがって押す

法8条2項がまたぐ相手として挙げているのは「当該課税文書と印紙の彩紋」です。2通にまたがって押しても、その文書と印紙の彩紋にかかっていなければ、消したことになりません。手順書の語を「印紙を消す」に直しておくのが確実です。

契約書2通のうち、相手方の分を確認しない

印紙税法3条1項は「その作成した課税文書につき」納税義務があると定めており、判定は文書ごとです。2通作れば2通とも課税文書で、それぞれに印紙と消印が要ります。さらに同条2項は、一の課税文書を二以上の者が共同して作成した場合、その二以上の者は連帯して印紙税を納める義務を負うと定めています。相手方に渡す1通の不備が自分に無関係とは言えません。

貼る時期を「郵送するとき」だと思っている

法8条1項は「当該課税文書の作成の時までに」です。作成後に貼る運用は、条文の文言から外れます。

消印を押してから額面の誤りに気づく

過大に貼ってしまった場合は、消印を押した後でも14条の過誤納確認の対象になりえます(No.7130が挙げる「貼り付けた収入印紙が過大となっているもの」)。ただし現物の提示と申請の手間がかかるため、押す前に額面を確かめるほうが早く済みます。

よくある質問

Q. 収入印紙の割印と消印は違うものですか?

A. 印紙税法にも施行令にも「割印」という語はなく、条文が求めているのは「印紙を消す」ことです。実務で割印と呼ばれているものがこの消印を指す場合もありますが、本来の割印は2通の文書にまたがって押す別の慣行です。

Q. 消印は代表者印でなければいけませんか?

A. いいえ。印紙税法施行令5条は「自己又はその代理人(法人の代表者を含む。)、使用人その他の従業者の印章又は署名」としており、担当者の印章で足ります。

Q. ボールペンの署名で消してもよいですか?

A. 施行令5条が「印章又は署名」と定めているため、署名でも消したことになります。国税庁のタックスアンサーNo.7129も同じ書き方をしています。

Q. 消印を忘れたらいくら取られますか?

A. 印紙税法20条3項により、消されていない印紙の額面金額と同額の過怠税です。同条4項で1,000円に満たないときは1,000円となるため、200円の印紙でも1,000円になります。

Q. 貼り忘れに気づいたら、自分から申し出たほうが得ですか?

A. 20条2項の申出が調査を予知せずにされたものであれば、過怠税は1.1倍に軽減されます。加えて20条5項により、その場合は1,000円への切り上げが適用されません

Q. 過怠税は経費になりますか?

A. なりません。国税庁は、過怠税は全額が法人税の損金にも所得税の必要経費にも算入されないとしています(法人税法55条4項1号、所得税法45条1項3号)。

Q. 印紙を多く貼ってしまったら返してもらえますか?

A. 印紙税法14条の過誤納確認を受ければ還付の対象になります。ただし過怠税として徴収されたものは同条1項ただし書で除かれ、また文書の作成から5年を経過すると請求権が時効消滅します。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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