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ストックオプションの税金 — 税制適格なら行使時は課税されない。「2,400万円」は条文に一度も出てこない

結論から言うと、ストックオプションの税金は「課税が1回で済むか、2回来るか」の話です。税制適格なら権利行使のときは所得税が課されず、株を売ったときの譲渡所得(所得税15%)だけで終わります。税制適格でなければ、権利行使の時点で給与所得として累進課税され、さらに売ったときにもう一度課税されます。同じ株、同じ値上がりでも、手元に残る金額は倍近く変わります。

そしてもう一つ、ここ数年で最も誤解が広がっているのが「年間の上限が2,400万円・3,600万円に引き上げられた」という説明です。租税特別措置法の全文(3,174,346字)を取得して数えたところ、「二千四百万円」も「三千六百万円」も0回でした。条文が書いている金額は、いまも「千二百万円」だけです。上限を引き上げたのではなく、権利行使価額のほうを2または3で割ってから1,200万円と比べるという書き方をしています。結果は同じに見えますが、割る条件が会社の設立年数と上場の有無で分かれるので、「うちは3,600万円まで」と思い込むと外れます

ついでに書いておくと、「ストックオプション」という語は、所得税法にも租税特別措置法にも一度も出てきません(ともに0回)。条文はすべて「新株予約権」で書かれています。検索して条文が見つからないのは、あなたの探し方が悪いからではありません。

課税されるのはいつか — 適格は1回、非適格は2回

ストックオプションには、お金が動く場面が3つあります。①付与(もらう)②権利行使(お金を払って株を受け取る)③譲渡(株を売る)です。このうち①では課税は起きません。条文が収入金額を捉えているのは権利行使の時点だからです(所得税法施行令84条3項)。問題は②と③です。

租税特別措置法29条の2第1項は、一定の要件を満たす新株予約権(条文の言葉では「特定新株予約権」)を契約に従って行使して株式を取得した場合、「当該株式の取得に係る経済的利益については、所得税を課さない」と定めています。これが世に言う「税制適格」です。非課税ではなく「課税の繰延べ」と説明されることが多いのは、行使時に課さないぶん、売却時の取得価額が低いままになり、値上がり益がまとめて譲渡所得として出てくるからです。

逆に要件を満たさなければ、行使時の経済的利益(=取得した株式の時価から、払い込んだ額と新株予約権の取得価額を差し引いた額)が、その年の所得として課税されます。金額の決め方は所得税法施行令84条3項にあります。ここで注意したいのが条の見出しで、84条の見出しは「譲渡制限付株式の価額等」です。ストックオプションの課税根拠は、名前がまったく違う条文の第3項に同居しています。

① 付与決議・契約 もらう ② 権利行使 払い込んで株を取得 ③ 譲渡 株を売る 税制適格 課税なし 課税なし(29条の2) 譲渡所得 所得税 15% 非適格 課税なし 給与所得 累進(最高45%) 譲渡所得 所得税 15% ※ 所得税15%のほかに住民税5%・復興特別所得税がかかります(本記事では条文を取得していません)。
課税が起きる場面。適格と非適格の違いは②にあり、③はどちらも譲渡所得です。ただし③の税額は同じにはなりません(取得価額が違うため)。

非適格・税制適格・有償の3つを並べて比べる

実務で登場するストックオプションは、おおむね次の3つに分かれます。

非適格(無償)税制適格有償
発行時の払込みなしなし(政令が「金銭の払込み(金銭以外の資産の給付を含む。)をさせないで発行された新株予約権」に限っている)あり(公正価値で購入する)
権利行使時経済的利益に課税(多くは給与所得。所得区分を決めているのは通達で、退職後の行使などは雑所得になり得ます)課税されない(措置法29条の2第1項)課税されない(払込済みの権利の行使であるため)
譲渡時譲渡所得(所得税15%)譲渡所得(所得税15%)譲渡所得(所得税15%)
譲渡時の取得価額権利行使日の株式の価額払い込んだ金額(権利行使価額+新株予約権の取得価額)払込額+権利行使価額
要件なし措置法29条の2の6要件+書面の提出法令上の特例ではないので要件はない
付与できる相手制限なし取締役等・権利承継相続人・特定従事者(大口株主とその特別関係者を除く)制限なし

「有償」は、税制上の特例を使わずに、はじめから対価を払って新株予約権を買う設計です。権利そのものを時価で買っているので行使時に経済的利益が生じない、という理屈で組まれています。法令に「有償ストックオプション」という区分があるわけではありません。

税制適格の要件 — 条文が並べる6つ

租税特別措置法29条の2第1項は、新株予約権に係る契約のなかに次の要件が定められているものに限る、という形で6つの号を並べています。要件は「実際にそうしている」だけでは足りず、契約書に書いてあることが条文上の条件です。

要件つまずきやすいところ
1号行使は、付与決議の日後2年を経過した日から10年を経過する日までの間に行う(一定の会社は15年)起算はいずれも付与決議の日。契約日でも付与日でもない
2号年間の権利行使価額の合計が1,200万円を超えないこの1,200万円には後述の「2で除す・3で除す」が効く
3号1株当たりの権利行使価額が、契約締結時の1株当たりの価額以上であるここだけは「2で除す・3で除す」の対象外(条文が明示的に3号を除いている)
4号新株予約権を譲渡してはならないこととされている
5号株式の交付が、付与決議で定めた会社法238条1項の事項に反しないで行われる
6号取得した株式について、イ 金融商品取引業者等への保管の委託等、またはロ 発行会社による管理のいずれかを満たすロは譲渡制限株式に限ると条文が明記している

6号ロが、いわゆる「発行会社による株式管理スキーム」です。証券口座を開いて保管委託しなくても、発行会社が権利者ごとに帳簿を備えて管理する取決めをあらかじめ結んでいれば足りる、という道が用意されています。ただし条文はこれを「譲渡制限株式に限る」と限定しているので、上場株式についてはロを使えません。

要件は「取締役等」と「特定従事者」で数が変わる

1項は「当該新株予約権が当該取締役等に対して与えられたものである場合には、第一号から第六号までに掲げる要件」と書いています。取締役等(役員・執行役・使用人)には6つ全部が課され、社外高度人材である特定従事者には、これに加えて中小企業等経営強化法上の認定計画に従うことなどが重なります。

年間1,200万円の上限 — 「2,400万円」は条文に無い

ここが本記事でいちばん強調したいところです。租税特別措置法の全文3,174,346字を取得して数えた結果、「二千四百万円」0回、「三千六百万円」0回、「千二百万円」5回でした。同じテキストで「新株予約権」は84回、「千二百万円」は5回ヒットしているので、数えかたが壊れているわけではありません。

では何が変わったのか。条文は上限の金額を動かさず、比べる相手(権利行使価額)のほうを割っています。29条の2第1項ただし書は、権利行使価額について次のかっこ書きを置いています。

つまり「上限が2,400万円になった」のではなく、1,500万円分行使しても、2で割って750万円として1,200万円と比べるという書き方です。結果としての天井は2,400万円・3,600万円と一致しますが、条件の付き方が違います。

その年の 権利行使価額の合計 設立5年未満 → 2で除す 上場・非上場を問わない 設立5年以上20年未満 → 3で除す 非上場、または上場後5年未満 設立20年以上 → 除さない 1,200万円 を超えないこと ※ 除した後の金額で判定するのは1項ただし書と2号。3号(1株当たりの権利行使価額)は条文が   明示的に除外しているので、実際に払い込む金額そのままで契約締結時の株価と比べます。 ※ 超えた部分だけが課税され、その年の行使すべてが非適格になるわけではありません。
年間上限の判定。条文は上限を動かさず、権利行使価額のほうを2または3で除しています。

「3で除す」には財務省令の要件がぶら下がっています。租税特別措置法施行規則11条の3第1項は、①設立の日以後の期間が5年以上20年未満であること、②非上場会社であるか、上場後5年未満であるか、店頭売買登録後5年未満であるかのいずれか、という2つを要求しています。「2で除す」の側にはこの上場要件がありません(条文が設立年数だけで切っているため)。設立から5年以内に上場した会社は2で除せますが、上場から5年を過ぎて設立20年未満の会社は、3で除すことができません。

「権利行使期間15年」の要件はもっと厳しい

1号の行使期間を10年から15年に延ばせるのは「その設立の日以後の期間が五年未満であることその他の財務省令で定める要件を満たすもの」です。施行規則11条の3第2項は、①設立5年未満、②上場株式または店頭売買登録銘柄を発行する会社以外の会社(=非上場)、の両方を求めています。設立5年未満でも上場していれば15年にはなりません。「2で除す」は非上場でなくてよく、「15年」は非上場でなければならない。同じ「設立5年未満」でも、条件の残りが違います。

大口株主は入口で外れる — 上場は10分の1超、非上場は3分の1超

29条の2第1項は、対象となる個人から大口株主大口株主の特別関係者を除いています。ここでいう大口株主の「政令で定める数」は、租税特別措置法施行令19条の3第3項が定めていて、上場株式・店頭売買登録銘柄では発行済株式の総数の10分の1超、それ以外(非上場)では3分の1超です。

この2つが同じだと思っている説明をよく見かけます。非上場のスタートアップで創業者が3分の1を持っていれば大口株主に当たり、その人には税制適格の適用がありません。逆に上場会社では10分の1で線が引かれるので、はるかに手前で当たります。

特別関係者の範囲も政令にあります(施行令19条の3第4項)。①大口株主の親族、②事実婚の相手とその直系血族、③大口株主の直系血族の事実婚の相手、④大口株主から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者とその直系血族、⑤大口株主の直系血族から生計の維持を受けている者とその直系血族、の5類型です。判定の基準時は付与決議の日で、行使時点ではありません。

有償ストックオプションが適格になれない理由は、政令のたった1行

有償ストックオプションは税制適格にならない、とよく言われます。その根拠は本文ではなく政令にあります。租税特別措置法施行令19条の3第1項は、29条の2第1項の「政令で定める新株予約権」を次のように定義しています。

会社法第二百三十八条第二項の決議(…)に基づき金銭の払込み(金銭以外の資産の給付を含む。)をさせないで発行された新株予約権とする。

つまり無償発行のものしか土俵に上がれません。対価を払って取得した新株予約権は、要件を1号から6号まですべて満たしていても、定義の段階で対象外です。「要件を満たせないから」ではなく「そもそも対象の定義に入らないから」であって、順番が違います。

要件を満たしても、書面を出さなければ非課税にならない

ここは実務でいちばん取りこぼしが起きるところです。29条の2第2項は、「前項本文の規定は、権利者が特定新株予約権の行使をする際、次に掲げる要件…を満たす場合に限り、適用する」と書いています。「限り、適用する」ですから、契約が完璧でも、書面が出ていなければ非課税になりません。

取締役等の場合に必要なのは1号と3号の2通です。

いずれも電磁的方法による提供でもよいと条文が明記しています。そして第3項により、会社側にはこれらの書面(電磁的記録を含む)を保存する義務があります。

会社の側にはもう2つ、税務署への提出義務があります。

調書誰がいつまでに根拠
特定新株予約権の付与に関する調書特定新株予約権を与える株式会社付与をした日の属する年の翌年1月31日29条の2第6項
特定株式等の異動状況に関する調書保管の委託等を受けている金融商品取引業者等、または6号ロにより管理をしている株式会社毎年1月31日29条の2第7項

6号ロの発行会社管理スキームを選ぶと、証券会社が担っていた異動状況の調書提出義務が発行会社自身に移ります。「口座を開かなくてよい」ぶん、経理・総務側の年次事務が増える、という交換です。

非課税がひっくり返る場面がある

29条の2第4項は、保管委託や発行会社管理に係る契約が解約・終了した場合、贈与・相続・遺贈があった場合、取決めに従わない低額の譲渡があった場合などについて、その時の価額で譲渡があったものとみなして譲渡所得の規定を適用すると定めています。行使のときに非課税だった株を、管理の外に出した時点で清算する仕組みです。

取得価額の入れ替わりは、政令の読替えで起きている

適格と非適格で最終的な税額が違うのは、売るときの取得価額が違うからです。この入れ替わりがどこで起きているのかは、条文を追うと少し意外な場所にあります。

まず原則です。所得税法施行令109条1項3号は、令84条3項各号に掲げる権利(=新株予約権など)の行使により取得した有価証券の取得価額を、その有価証券のその権利の行使の日における価額としています。行使時に経済的利益を課税したぶん、取得価額もそこまで引き上げる、という筋です。非適格はこれに当たります。

ところが適格の場合、租税特別措置法施行令19条の3第23項が、この109条1項3号を読み替えます。3号の対象から「租税特別措置法第二十九条の二第一項本文…の規定の適用を受けて取得したものを除く」と括り出すのです。3号から外れた株式は、109条1項1号(金銭の払込みにより取得した有価証券=その払込みをした金銭の額。新株予約権の取得価額を含む)に落ちます。

結果として、適格の取得価額は払い込んだ権利行使価額のままになり、行使時の値上がり分は売却時まで持ち越されて譲渡所得に含まれます。「課税の繰延べ」と説明される仕組みの実体は、この読替え1つです。

所得区分を決めているのは、法令ではなく通達

非適格の権利行使益は給与所得になる、と広く説明されています。その根拠は法令ではありません。所得税法施行令84条3項が定めているのは「価額」、つまりいくらかだけです。どの所得かを定めているのは、所得税基本通達23〜35共-6(株式等を取得する権利を与えられた場合の所得区分)という通達です。

場面所得区分
発行法人と権利を与えられた者との間の雇用契約又はこれに類する関係に基因して与えられたと認められるとき給与所得
同上だが、退職後に行使され、かつ権利付与後短期間のうちに退職を予定している者に付与されたなど、主として職務の遂行に関連しない利益が供与されていると認められるとき雑所得
権利を与えられた者の営む業務に関連して与えられたと認められるとき事業所得または雑所得
上記以外原則として雑所得

この通達には注が付いていて、措置法29条の2第1項にいう「取締役等」の関係は、雇用契約又はこれに類する関係に該当することに留意する、とされています。役員へのストックオプションが給与所得になるのは、この注が支えています。

もう1つ、実務で効くのが収入すべき時期です。同じ通達群の23〜35共-6の2は、収入すべき時期を「当該権利の行使により取得した株式の取得についての申込みをした日」としています。株式が実際に交付された日でも、払込みが完了した日でもありません。年末をまたぐ行使では、どちらの年分になるかがここで決まります。同項の注は、申込みをしなかった・取り消した・払込みをしなかったことにより失権した場合には課税しないとも書いています。

実数で通す

設立3年の非上場会社が、従業員に無償で新株予約権を付与したとします。数字はすべて説明のための仮定値です。

項目金額
付与株数30,000株
1株当たりの権利行使価額(=契約締結時の1株当たりの価額)500円
権利行使価額の合計(払い込む金額)1,500万円
権利行使日の1株当たりの価額3,000円
譲渡時の1株当たりの価額4,000円

まず年間上限の判定です。実際の権利行使価額は1,500万円で、そのままだと1,200万円を超えます。しかしこの会社は設立5年未満なので、ただし書により1,500万円 ÷ 2 = 750万円として判定し、1,200万円以内に収まります。2で除す仕組みが無ければ、300万円分が枠を超えて課税されていました。

権利行使時。経済的利益は (3,000円 − 500円) × 30,000株 = 7,500万円です。

譲渡時。売却代金は 4,000円 × 30,000株 = 1億2,000万円です。非上場株式なので措置法37条の10(一般株式等)で所得税15%、これに住民税5%と復興特別所得税を加えた20.315%で計算します。

税制適格非適格
取得価額1,500万円(払込額)9,000万円(行使日の価額 3,000円×30,000株)
譲渡益1億500万円3,000万円
譲渡時の税額(20.315%)21,330,750円6,094,500円
行使時の税額0円41,958,750円
合計21,330,750円48,053,250円

差は26,722,500円です。売った値段も、払った金額も、株数も同じです。違うのは、行使のときに課税されるかどうかと、そのぶん取得価額が上がるかどうかだけ。非適格でも取得価額が9,000万円まで上がるので譲渡時の税額は下がりますが、行使時に55.945%で取られたぶんを取り返すには足りません。累進税率で取られたものを、分離課税の20.315%で埋め合わせることはできないというのが、この差の中身です。

非適格には、もう1つ実務上の重さがあります。行使した時点では現金が1円も入っていないのに、給与所得としての税金が発生することです。非上場株式は市場で売れないので、納税資金を別に用意する必要があります。適格ならこの問題は起きません。

権利行使益が給与に上乗せされたときの手取りを試算する →

よくある質問

Q. ストックオプションは、条文では何という名前ですか?

A. 「新株予約権」です。所得税法(全文1,095,638字)と租税特別措置法(全文3,174,346字)を e-Gov法令API で取得して数えたところ、「ストックオプション」という語はどちらにも0回でした。同じテキストで「新株予約権」は所得税法37回・租税特別措置法84回です。また「税制適格」という語も租税特別措置法に0回で、条文上の呼び名は「特定新株予約権」です。根拠条文は租税特別措置法29条の2で、見出しは「特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等」となっています。

Q. 年間の上限は2,400万円や3,600万円ではないのですか?

A. 条文が書いている金額は1,200万円だけです。租税特別措置法の全文を数えた結果は「千二百万円」5回、「二千四百万円」0回、「三千六百万円」0回でした。29条の2第1項ただし書は、上限の金額を動かすのではなく、権利行使価額のほうを、設立の日以後の期間が5年未満なら2で除し、5年以上20年未満で財務省令の要件を満たすなら3で除して判定すると定めています。天井としては2,400万円・3,600万円と一致しますが、除する条件が会社の設立年数と上場の有無で分かれるため、金額だけを覚えていると当てはまらない場合があります。

Q. 上場していても「2で除す」は使えますか?

A. 条文上は使えます。29条の2第1項ただし書は、2で除す場合の条件を「その設立の日以後の期間が五年未満のものである場合」とだけ書いており、上場・非上場を区別していません。一方、3で除す場合は租税特別措置法施行規則11条の3第1項2号が、非上場会社であるか、上場後5年未満であるか、店頭売買登録後5年未満であるかのいずれかに該当することを求めています。また権利行使期間を15年にできる要件は同条2項で、設立5年未満であることに加えて上場株式・店頭売買登録銘柄を発行する会社以外の会社であることの両方が必要です。

Q. 大口株主に当たるのは何%からですか?

A. 株式が上場されているか店頭売買登録銘柄かで変わります。租税特別措置法施行令19条の3第3項は、上場株式・店頭売買登録銘柄については発行済株式の総数の10分の1を超える数、それ以外の株式については3分の1を超える数と定めています。非上場会社では3分の1超が基準です。判定の基準時は付与決議の日であり、権利行使時点ではありません。また大口株主に該当する者の親族、事実上婚姻関係と同様の事情にある者などの特別関係者も、同条4項により対象から除かれます。

Q. 有償ストックオプションを税制適格にすることはできますか?

A. できません。租税特別措置法施行令19条の3第1項が、29条の2第1項にいう「政令で定める新株予約権」を「金銭の払込み(金銭以外の資産の給付を含む。)をさせないで発行された新株予約権」と定義しているためです。対価を払って取得した新株予約権は、1号から6号までの要件を満たすかどうか以前に、定義の段階で対象に入りません。なお有償の場合、権利そのものを対価を払って取得しているため、行使時に経済的利益が生じないという整理で組まれています。

Q. 契約は完璧なのですが、行使のときに会社へ何か出す必要がありますか?

A. あります。租税特別措置法29条の2第2項は、第1項本文の規定は権利者が行使をする際に一定の要件を満たす場合に「限り、適用する」と定めています。取締役等の場合は、付与決議の日において大口株主および大口株主の特別関係者に該当しなかったことを誓約する書面(1号)と、その年における他の特定新株予約権の行使の有無や権利行使価額・行使年月日その他財務省令で定める事項を記載した書面(3号)を、行使に係る株式会社へ提出する必要があります。いずれも電磁的方法による提供でも足ります。会社側は同条3項によりこれらを保存しなければなりません。

Q. 権利行使益はいつの年分の所得になりますか?

A. 所得税基本通達23〜35共-6の2は、収入すべき時期を「当該権利の行使により取得した株式の取得についての申込みをした日」としています。株式が交付された日や、払込みが完了した日ではありません。年末をまたぐ行使では、申込日がどちらの年に属するかで年分が決まります。同項の注により、株式の取得について申込みをしなかったこと、その申込みを取り消したこと、または払込みをしなかったことによって失権した場合には課税されません。

Q. 会社側は何をいつまでに税務署へ出しますか?

A. 2つあります。租税特別措置法29条の2第6項により、特定新株予約権を与える株式会社は「特定新株予約権の付与に関する調書」を、付与をした日の属する年の翌年1月31日までに税務署長へ提出します。同条7項により、6号イの取決めに従い保管の委託等を受けている金融商品取引業者等、または6号ロの取決めに従い管理をしている株式会社は「特定株式等の異動状況に関する調書」を毎年1月31日までに提出します。6号ロの発行会社管理スキームを選ぶと、後者の提出義務が発行会社自身に生じます。

出典

本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。記載は2026年8月16日時点で確認した法令および通達に基づいています。税制適格の該当性、年間上限の判定、所得区分および税額は、付与決議の日、会社の設立年月日と上場の有無、株主構成、契約の定め、書面の提出の有無によって変わりますので、実際の判断にあたっては顧問税理士または所轄の税務署へご確認ください。

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