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税務代理権限証書とは — この1枚が出ていないと、税務調査の事前通知は税理士に届かない

結論から言うと、税務代理権限証書は「顧問税理士がいることの証明」ではなく、「その税理士が税務代理をする権限を持っていることの証明」です。根拠は税理士法30条で、様式は税理士法施行規則15条が定める別紙第八号様式です。

この区別が効いてくるのが税務調査です。国税通則法74条の9第3項2号は、事前通知を受け取る「税務代理人」を「税理士法第三十条…の書面を提出している税理士」と定義しています。つまり、顧問契約があっても、その税目・その年分について税務代理権限証書が提出されていなければ、通則法上は税務代理人が存在しないことになり、事前通知は本人にしか届きません

もう1つ混同されやすいのが、いわゆる書面添付(税理士法33条の2)との関係です。「書面添付があれば調査の前に税理士の意見聴取がある」と言われますが、条文を読むと意見聴取の要件には税務代理権限証書の提出が入っています(35条1項)。書面添付だけでは足りません。この記事では、その条文の並びを1本ずつ開いて確かめていきます。

結論 — 30条が出させているのは「権限を証する書面」

税理士法の第4章(税理士の権利及び義務)に、次の1文があります。見出しは「税務代理の権限の明示」です。

税理士は、税務代理をする場合においては、財務省令で定めるところにより、その権限を有することを証する書面を税務官公署に提出しなければならない。

ここで押さえておきたい点が3つあります。

  1. 語尾は「しなければならない」。 税務代理をするなら提出は義務です。後で見る書面添付が「できる」であるのと対照的です。
  2. 条文には「税務代理権限証書」という名前が出てこない。 法律が求めているのは「権限を有することを証する書面」で、その名前と様式を決めているのは財務省令のほうです。
  3. 提出先は「税務官公署」。 税務署に限られていません。この点は後の地方税の節で効いてきます。

その財務省令が税理士法施行規則15条です。

法第三十条(法第四十八条の十六において準用する場合を含む。)に規定する財務省令で定めるところにより提出しなければならない税務代理の権限を有することを証する書面は、別紙第八号様式による税務代理権限証書とする。

「税務代理権限証書」という呼び名は、ここで初めて出てきます。括弧の中の48条の16は税理士法人への準用規定で、税理士法人が税務代理をする場合も同じ扱いになります。

「税務代理」と「税務書類の作成」は別 — 括弧書きが線を引いている

30条の義務は「税務代理をする場合」に限って生じます。そこで、税務代理とは何かが問題になります。税理士法2条1項は税理士の業務を3つに分けており、1号が税務代理です。

税務代理(税務官公署(税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする。以下同じ。)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(これらに準ずるものとして政令で定める行為を含むものとし、酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二章の規定に係る申告、申請及び審査請求を除くものとする。以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)
読み落とされる括弧書き

末尾の「(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)」が、税務代理と税務書類の作成のあいだに線を引いています。2号の「税務書類の作成」は、申告書などを作って提出する行為です。申告書を作ってもらっているだけの状態は、条文の言葉では税務代理ではありません。そして税務代理でなければ、30条の提出義務も生じません。

実務では顧問契約の中に申告書作成も調査の立会いも含まれているのが普通なので、この区別を意識する場面はあまりありません。ただし「顧問税理士がいる=税務代理権限証書が出ている」とは条文上は言えないという点は、次の節でそのまま効いてきます。

この1枚が無いと、通則法上は「税務代理人」がいない

税務調査の事前通知は、国税通則法74条の9第1項が定めています。通知の相手は「当該納税義務者(当該納税義務者について税務代理人がある場合には、当該税務代理人を含む。)」です。通知される10項目の中身や、日程の変更を求められるかどうかは税務調査とはで扱っているので、ここでは誰に届くかだけを追います。

その「税務代理人」が誰なのかは、同条3項2号が定義しています。

税理士法第三十条(税務代理の権限の明示)(同法第四十八条の十六(税理士の権利及び義務等に関する規定の準用)において準用する場合を含む。)の書面を提出している税理士若しくは税理士法人又は同法第五十一条第一項(税理士業務を行う弁護士等)の規定による通知をした弁護士若しくは同条第三項の規定による通知をした弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人

定義そのものが「30条の書面を提出している税理士」になっています。顧問契約の有無でも、過去に申告書を作ってもらったかどうかでもありません。税務代理権限証書が提出されているかどうかが、そのまま通則法上の税務代理人であるかどうかを決めています。

実地の調査の事前通知 通則法74条の9第1項 証書が出ていない → 通則法上の税務代理人がいない 通知は本人にだけ届く 証書あり・同意の記載なし 本人と税理士の両方に届く 証書あり・同意の記載あり(施行規則17条の2第1項) 税理士にだけ届く(本人には来ない)
事前通知の届き先は3通りに分かれる。分岐を決めているのは顧問契約ではなく、税務代理権限証書が出ているかと、その証書に同意の記載があるか。

法令が名指ししている記載欄は2つだけ

様式第八号にはいくつもの記入欄がありますが、法令の側が「この記載があるかどうかで結論が変わる」と名指ししている欄は2つです。税理士法34条を先に見ておきます。

税務官公署の当該職員は、租税の課税標準等を記載した申告書を提出した者について、当該申告書に係る租税に関しあらかじめその者に日時場所を通知してその帳簿書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)を調査する場合において、当該租税に関し第三十条の規定による書面を提出している税理士があるときは、併せて当該税理士に対しその調査の日時場所を通知しなければならない。

そのうえで、34条2項と3項が「財務省令で定める場合」に当たるときの特則を置いています。その財務省令が施行規則17条の2です。

法第三十四条第二項(法第四十八条の十六において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)に規定する財務省令で定める場合は、第十五条の税務代理権限証書に、法第三十四条第二項に規定する申告書を提出した者への調査の通知は同項の税理士に対してすれば足りる旨の記載がある場合とする。
法第三十四条第三項(法第四十八条の十六において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)に規定する財務省令で定める場合は、第十五条の税務代理権限証書に、当該税務代理権限証書を提出する者を法第三十四条第三項の代表する税理士として定めた旨の記載がある場合とする。

1つめが本人への通知を省略できるようにする記載、2つめが税理士が複数いるときに代表を決める記載です。国税側にも同じ構造の規定があり、国税通則法施行規則11条の4第1項は、税理士法施行規則15条の様式を名指ししています。

法第七十四条の九第五項(納税義務者に対する調査の事前通知等)に規定する財務省令で定める場合は、税理士法施行規則(昭和二十六年大蔵省令第五十五号)第十五条(税務代理権限証書)の税務代理権限証書(次項において「税務代理権限証書」という。)に、法第七十四条の九第三項第一号に規定する納税義務者への調査の通知は税務代理人に対してすれば足りる旨の記載がある場合とする。
ここが実務上いちばん動く

1つめの記載があると、調査の事前通知は税理士にだけ行われ、本人(会社)には来ません。書面の1か所の記載で、通知が自社に届くかどうかが変わります。連絡が来ないことを不審に思う前に、まず提出済みの証書にこの記載があるかを確かめる、という順序になります。

書面添付(33条の2)は別の書面 — 義務ではなく「できる」

いわゆる書面添付の根拠は、税理士法33条の2第1項です。

税理士又は税理士法人は、国税通則法第十六条第一項第一号に掲げる申告納税方式又は地方税法第一条第一項第八号若しくは第十一号に掲げる申告納付若しくは申告納入の方法による租税の課税標準等を記載した申告書を作成したときは、当該申告書の作成に関し、計算し、整理し、又は相談に応じた事項を財務省令で定めるところにより記載した書面を当該申告書に添付することができる。

語尾が「添付することができる」である点が30条との決定的な違いです。30条は税務代理をするなら提出しなければならない義務、33条の2は税理士の側の選択です。様式も別で、施行規則17条が定めています。

法第三十三条の二第一項又は第二項に規定する財務省令で定めるところにより記載した書面は、別紙第九号様式又は別紙第十号様式により記載した書面とする。

第九号様式が自分で作成した申告書に添付するもの(33条の2第1項)、第十号様式が他人が作成した申告書を審査したときのもの(同2項)です。

意見聴取が発生する条件 — 書面添付だけでは足りない

書面添付の効果としてよく紹介されるのが、調査の通知の前に税理士の意見を聴く手続です。税理士法35条1項がその規定です。

税務官公署の当該職員は、第三十三条の二第一項又は第二項に規定する書面(以下この項及び次項において「添付書面」という。)が添付されている申告書を提出した者について、当該申告書に係る租税に関しあらかじめその者に日時場所を通知してその帳簿書類を調査する場合において、当該租税に関し第三十条の規定による書面を提出している税理士があるときは、当該通知をする前に、当該税理士に対し、当該添付書面に記載された事項に関し意見を述べる機会を与えなければならない。

条件を分解すると、次の2つが両方そろって初めて意見聴取の義務が生じます。

  1. 添付書面(33条の2第1項または2項の書面)が添付されている申告書であること
  2. その租税に関し30条の規定による書面を提出している税理士がいること

2つめが税務代理権限証書です。書面添付だけをして税務代理権限証書を出していない場合、35条1項の要件は満たされません。

この読み方は、施行規則16条2項からも裏づけられます。添付書面には税理士が一定の事項を付記して署名することになっており(33条の2第3項)、その付記事項が次のように定められています。

法第三十三条の二第三項に規定する財務省令で定める事項は、同項に規定する書面を作成した税理士又は税理士法人の前条の税務代理権限証書の提出の有無とする。

添付書面そのものに、税務代理権限証書を出しているかどうかを書かせているわけです。制度の側が最初から両者をセットで扱っていることが、この1行に表れています。

税務代理権限証書なし 税務代理権限証書あり 書面添付 なし 書面添付 あり 通知は本人にだけ 意見聴取なし 通知は税理士にも届く 意見聴取なし 通知は本人にだけ 意見聴取なし(35条1項) 通知の前に意見聴取 この1通りだけ
意見聴取(税理士法35条1項)が義務づけられるのは4通りのうち1通りだけ。左下は書面添付をしているのに意見聴取が発生しない組み合わせで、条文が30条の書面を要件にしているために生じる。

3つの書面の違いを1つの表にする

ここまでに出てきた3つの書面を並べます。名前が似ているので、様式番号で覚えておくと混同しません。

書面根拠様式義務か主な効果
税務代理権限証書税理士法30条
施行規則15条
別紙第八号様式しなければならない(税務代理をする場合)通則法上の税務代理人になる。事前通知が税理士にも届く
添付書面(自ら作成した申告書)税理士法33条の2第1項
施行規則17条
別紙第九号様式することができる証書とそろえば、調査の通知の前に意見聴取
添付書面(他人の作成した申告書を審査)税理士法33条の2第2項
施行規則17条
別紙第十号様式することができる同上

並べてみると、税務代理権限証書だけが義務で、あとの2つは選択であることが分かります。「書面添付をお願いしていない」ことと「税務代理権限証書が出ていない」ことは、まったく別の話です。

地方税にも及ぶ — 条文は「税務官公署」で書かれている

税理士法34条も35条も、主語は「税務官公署の当該職員」です。税務官公署の意味は2条1項1号の括弧書きが定めており、「税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする」という限定しか置かれていません。都道府県や市区町村の税務担当部署を除外する文言はありません。

実際、35条2項は更正の場合の意見聴取について「税務署長(当該更正が国税庁又は国税局の当該職員の調査に基づいてされるものである場合においては、国税庁長官又は国税局長)又は地方公共団体の長」と書いており、地方税を正面から想定しています。書面添付の対象も33条の2第1項が地方税法1条1項8号(申告納付)と11号(申告納入)を挙げているので、法人住民税・法人事業税や、給与から特別徴収する住民税の申告納入も射程に入ります。

一方、国税通則法74条の9の事前通知は国税の実地の調査についての規定なので、地方税の調査には及びません。地方税の側で通知が税理士に届く根拠は税理士法34条のほうだ、という整理になります。

意見聴取を飛ばされても、処分は無効にならない

意見聴取や通知の手続には、条文自身が置いている限界があります。税理士法35条4項です。

前三項の規定による措置の有無は、これらの規定に規定する調査に係る処分、更正又は審査請求についての裁決の効力に影響を及ぼすものと解してはならない。

「前三項の規定による措置」とは、35条1項の意見聴取・2項の更正前の意見聴取・3項の審査請求に係る意見聴取です。これらが行われなかったとしても、それを理由に処分や更正や裁決が無効になるわけではないと条文が明言しています。

手続として求められていることと、その手続を欠いた場合の効力とは別に定められている、という構造です。一般に、意見聴取があったかどうかを争点にして課税処分そのものを覆すという組み立ては、この4項があるためにとりにくいと理解されています。実際の対応方針については税理士にご確認ください。

令和8年9月1日から様式第八号が変わる

ここは2026年8月時点で押さえておく価値があります。令和8年9月1日に、様式第八号の改正が施行されます。あわせて税理士法施行規則に28条が新設されます。

国税庁長官は、別紙第八号様式から別紙第十号様式までの様式について必要があるときは、所要の事項を付記すること又は一部の事項を削ることができる。

この改正を入れているのは令和6年3月30日財務省令第25号で、公布は2年以上前です。ところが同省令の附則1条にただし書があります。

ただし、目次の改正規定、本則に一条を加える改正規定、第八号様式の改正規定並びに第九号様式第1面及び第十号様式第1面の改正規定並びに次条第五項の規定は、令和八年九月一日から施行する。
公布日と施行日を1つの日付だと思わない

この省令の本体は「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和三年法律第三十七号)附則第一条第十号に掲げる規定の施行の日」から施行されており、様式の改正部分だけが令和8年9月1日まで留め置かれています。同じ省令の中で施行日が割れているので、「令和6年の改正だから、もう反映されているはず」という読み方をすると外します。条ごと・様式ごとに施行日を確かめるのが確実です。

切り替えのしかたについては、同省令の附則2条5項が経過措置を置いています。

第八号様式の改正規定並びに第九号様式第1面及び第十号様式第1面の改正規定の施行の際、現に存する改正前の様式による用紙は、当分の間、これを使用することができる。

旧様式の用紙は「当分の間」使えます。期限が日付で切られていないので、9月1日を境に旧様式が一斉に無効になるわけではありません。ただし新設される28条により、国税庁長官が様式に事項を付記したり一部を削ったりできるようになるため、実際に使う用紙は国税庁が公表しているものを都度確認することになります。

経理担当者側で確かめられること

税務代理権限証書を作って提出するのは税理士の側で、会社の側が直接手を動かす書面ではありません。それでも、条文の構造から次のような確認点が出てきます。いずれも一般的な整理です。

  1. どの税目・どの年分について出ているかを聞いておく。 30条の義務は「税務代理をする場合」に生じるので、法人税は出ていて消費税は出ていない、といった状態が制度上はありえます。
  2. 本人への通知を省略する記載の有無を把握しておく。 施行規則17条の2第1項の記載があると、事前通知は税理士にだけ行われます。社内で「税務署から連絡が来ない」ことを異常と受け取らないために、事前に知っておくと齟齬が起きません。
  3. 税理士が複数いるなら代表を決めているか。 34条3項・施行規則17条の2第2項の記載がなければ、通知は関与する税理士それぞれに行われます。
  4. 書面添付をしているかどうかは別に確認する。 意見聴取を期待するなら、証書と添付書面の両方が必要です(35条1項)。
  5. 地方税の調査は別ルートで考える。 通則法74条の9は国税の規定なので、住民税・事業税の調査で税理士に通知が行く根拠は税理士法34条のほうになります。

調査そのものの流れ、通知される10項目、さかのぼる年数、終了時に交付される書面については税務調査とはで扱っています。調査で提示を求められる帳簿書類を電子で保存している場合の検索要件は、次のツールで一覧を作れます。

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よくある質問

Q. 顧問税理士がいれば、税務代理権限証書は自動的に出ているのですか?

A. 自動ではありません。税理士法30条が提出を義務づけているのは「税務代理をする場合」で、税務代理の定義(2条1項1号)は末尾の括弧書きで「次号の税務書類の作成にとどまるものを除く」としています。申告書の作成だけを依頼している状態は条文上の税務代理ではないため、30条の義務も生じません。また税務代理をする場合でも、提出は税目や手続の単位で行われるため、ある税目については出ていて別の税目については出ていない、ということが制度上はありえます。どの範囲で提出されているかは、関与している税理士に確認するのが確実です。

Q. 税務代理権限証書と書面添付は同じものですか?

A. 別の書面です。税務代理権限証書は税理士法30条に基づく別紙第八号様式で、税務代理をするなら提出しなければならない義務の書面です。書面添付は税理士法33条の2に基づく別紙第九号様式または第十号様式で、条文の語尾が「添付することができる」となっている選択の書面です。役割も違い、前者は誰が税務代理人かを示すもの、後者は申告書の作成にあたって計算し整理し相談に応じた事項を記載するものです。

Q. 書面添付をしてもらえば、税務調査の前に必ず税理士の意見聴取がありますか?

A. 書面添付だけでは要件を満たしません。税理士法35条1項は、添付書面が添付されている申告書であることに加えて「当該租税に関し第三十条の規定による書面を提出している税理士があるとき」を要件にしています。30条の書面とは税務代理権限証書のことなので、書面添付と税務代理権限証書の両方がそろって初めて、通知の前に意見を述べる機会を与える義務が生じます。税理士法施行規則16条2項が、添付書面に税務代理権限証書の提出の有無を付記させているのも同じ理由によります。

Q. 税務署から事前通知の連絡が会社に来ませんでした。手続に不備があったのでしょうか。

A. 不備とは限りません。税理士法34条2項と国税通則法74条の9第5項は、納税者の同意がある場合として財務省令で定める場合に該当するときは、本人への通知は税理士に対してすれば足りると定めています。その「財務省令で定める場合」は、税理士法施行規則17条の2第1項および国税通則法施行規則11条の4第1項により、税務代理権限証書にその旨の記載がある場合とされています。つまり証書の記載によって、通知が税理士にだけ行われる状態が正規の手続として成立します。まず提出済みの証書の記載を確認するのが順序としては確実です。

Q. 税理士が複数関与している場合、通知は全員に行くのですか?

A. 原則として、30条の書面を提出している税理士それぞれに通知されます。ただし税理士法34条3項は、申告書を提出した者がこれらの税理士のうちから代表する税理士を定めた場合として財務省令で定める場合に該当するときは、代表する税理士に対して通知すれば足りるとしています。その財務省令が施行規則17条の2第2項で、税務代理権限証書に代表する税理士として定めた旨の記載がある場合を指しています。国税通則法74条の9第6項と同施行規則11条の4第2項にも同じ構造の規定があります。

Q. 住民税や事業税の調査でも、税理士に通知は行きますか?

A. 税理士法34条は主語を「税務官公署の当該職員」としており、税務官公署の意味は同法2条1項1号の括弧書きで「税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする」と定められているだけで、地方公共団体を除く文言はありません。同法35条2項が意見聴取の主体として「地方公共団体の長」を挙げていることからも、地方税が想定されていることが分かります。一方、国税通則法74条の9の事前通知は国税の実地の調査についての規定なので、地方税には及びません。地方税で通知が届く根拠は税理士法34条のほうになります。

Q. 意見聴取をしてもらえなかった場合、処分を争えますか?

A. 手続が行われなかったこと自体を理由に処分が無効になるという組み立ては、条文上とりにくくなっています。税理士法35条4項が「前三項の規定による措置の有無は、これらの規定に規定する調査に係る処分、更正又は審査請求についての裁決の効力に影響を及ぼすものと解してはならない。」と定めているためです。処分の内容そのものを争う手段は別に用意されているので、実際に不服がある場合の進め方については税理士にご相談ください。

Q. 令和8年9月1日の様式改正で、それまでの用紙は使えなくなりますか?

A. すぐには使えなくならないと読めます。改正を入れている令和6年3月30日財務省令第25号の附則2条5項が「第八号様式の改正規定並びに第九号様式第1面及び第十号様式第1面の改正規定の施行の際、現に存する改正前の様式による用紙は、当分の間、これを使用することができる。」と定めており、期限が日付で区切られていないためです。ただし同時に施行される税理士法施行規則28条により、国税庁長官が別紙第八号様式から第十号様式までについて所要の事項を付記したり一部の事項を削ったりできるようになるので、実際に使う様式は国税庁の公表しているものを確認するのが確実です。

出典

この記事は令和8年(2026年)8月27日時点でe-Gov法令検索の法令APIにより取得した条文に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案についての相談に対する回答ではありません。筆者は税理士でも社会保険労務士でもありません。どの税目・どの年分について税務代理権限証書が提出されているか、書面添付をするかどうかは関与する税理士との契約と判断によって決まるため、実際の取扱いについては顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。

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