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仕訳帳とは — 記載事項4つ・書き方と記入例・総勘定元帳との違い・保存年数を条文で

結論から言うと、仕訳帳とは、すべての取引を発生した順に、借方と貸方に分けて記録する帳簿です。法令上の定義は法人税法施行規則54条と所得税法施行規則58条にあり、どちらも「全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿」と書いています。記載事項は取引の年月日・内容・勘定科目・金額の4つ(法人税法施行規則55条1項・所得税法施行規則59条1項)で、ここから勘定科目ごとに転記した先が総勘定元帳です。仕訳帳が「いつ、何が起きたか」を時系列で持ち、総勘定元帳が「科目ごとにいくら」を持つ、という役割分担で、2つ合わせて主要簿と呼ばれます。

ただし、仕訳帳を作れと命じているのは税法の省令だけです。会社法・商法・会社計算規則・財務諸表等規則・法人税法・所得税法・消費税法の条文本文を e-Gov 法令API で全文取得して数えると、「仕訳帳」の語はいずれも0回でした。全法令のキーワード検索でこの語を含む条文は6法令・11文しかなく、無関係な1本(更生保護事業法施行規則)を除いた5本はすべて税法の省令です。そしてその5本が仕訳帳を名指しする場面は、定義と記載方法のほかに3つしかありません。青色申告特別控除65万円の電子帳簿ルート・優良な電子帳簿による過少申告加算税の5%軽減・税務調査で帳簿を出さなかったときの加算税10%加重です。仕訳帳は、税務上の権利と罰がぶら下がる単位として条文に登場します。

この記事は、①条文の中の仕訳帳、②記載事項4つ、③書き方(伝統的な様式・会計ソフト・エクセル)、④令和8年7月の記入例、⑤誰に義務があるか、⑥名指しされる3つの場面、⑦消費税の帳簿を兼ねるときの追加事項と起算日、⑧電子帳簿保存法との関係、⑨保存年数、の順で整理します。総勘定元帳の側の記載事項・別表二十四の14区分・欠損金を繰り越すときの10年は総勘定元帳の書き方に、55万円・65万円・10万円の分かれ目は青色申告特別控除の記事に、補助簿は現金出納帳固定資産台帳に、伝票で記帳に代える扱いは出金伝票の記事に譲ります。

条文の中の「仕訳帳」 — 定義は施行規則にあり、法律本文には無い

法人税法126条1項は、青色申告の承認を受けた法人に帳簿書類の備付け・記録・保存を命じますが、帳簿の名前は挙げず、中身を財務省令に委ねています。

第百二十一条第一項(青色申告)の承認を受けている内国法人は、財務省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならない。

受けた法人税法施行規則54条が、仕訳帳という名前を初めて出します。名前を与える形が独特で、「全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿」という機能を先に書き、括弧書きで呼び名(仕訳帳)を付けています。

青色申告法人は、全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿(次条において「仕訳帳」という。)、全ての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿(次条において「総勘定元帳」という。)その他必要な帳簿を備え、別表二十四に定めるところにより、取引に関する事項を記載しなければならない。

個人の側は所得税法148条1項が同じ構造で所得税法施行規則に委ね、同規則58条1項が同じ定義を置いています。文言はほぼ同じですが、法人税法施行規則の「全ての」が所得税法施行規則では「すべての」と平仮名のままで、記載事項の指定先も別表ではなく「財務大臣の定める取引に関する事項」(告示)になっています。

青色申告者は、すべての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿(次条において「仕訳帳」という。)、すべての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿(次条において「総勘定元帳」という。)その他必要な帳簿を備え、財務大臣の定める取引に関する事項を記載しなければならない。

一方、会社の帳簿を命じる会社法432条1項は「会計帳簿」としか言わず、仕訳帳・総勘定元帳という区分は持っていません。法務省令である会社計算規則4条2項も、会計帳簿の形式については書面か電磁的記録かを定めるだけです。

株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
会計帳簿は、書面又は電磁的記録をもって作成しなければならない。

つまり、仕訳帳という帳簿の形は会社法上の要求ではなく、簿記の慣行を税法の省令が採用したものです。e-Gov 法令API で各法令の全文を取得し「仕訳帳」「仕訳」「伝票」の出現回数を数えた結果が次の表です(2026年8月21日取得の現行リビジョン)。

法令仕訳帳仕訳伝票総勘定元帳会計帳簿
会社法000031
商法00004
会社計算規則000014
財務諸表等規則00000
法人税法/所得税法/消費税法00000/1/0
法人税法施行規則340460
所得税法施行規則34035
租税特別措置法施行規則11012
国税通則法施行規則22020
電子帳簿保存法施行規則22020

「仕訳」という語そのものも、上の5本の省令にしか出てきません(すべて「仕訳する帳簿」「仕訳帳」の形)。「伝票」は上のどの法令にも0回です。全法令のキーワード検索(e-Gov法令API v2)で「仕訳帳」を含む文は11文・6法令で、内訳は法人税法施行規則3文・所得税法施行規則3文・国税通則法施行規則2文・租税特別措置法施行規則1文・電子帳簿保存法施行規則1文・更生保護事業法施行規則1文でした。この記事で見るべき条文は、数えてしまえばこれだけです。

記載事項は4つ — 年月日・内容・勘定科目・金額

仕訳帳に何を書くかは、法人税法施行規則55条1項と所得税法施行規則59条1項が同じ文言で定めています。

青色申告法人は、仕訳帳には、取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目及び金額を記載しなければならない。
青色申告者は、仕訳帳には、取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目及び金額を記載しなければならない。

条文が求めているのは、並べ方が1つ(取引の発生順)と、項目が4つです。

項目条文の語実務での欄注意点
取引の年月日日付欄「記載の年月日」ではなく取引の日。記帳した日を書くのではない(総勘定元帳の側は「記載の年月日」で、書き分けられている)
内容摘要欄(小書き)相手方と取引の中身。消費税の帳簿を兼ねるなら「相手方の氏名又は名称」が要る(後述)
勘定科目借方科目/貸方科目科目名そのものは法令が決めていない。勘定科目一覧のとおり、条文に名前のある科目は少ない
金額借方金額/貸方金額借方合計=貸方合計(複式簿記の前提)

この4つのうち「内容」は仕訳帳にだけあり、総勘定元帳の記載事項(記載の年月日・相手方勘定科目・金額の3つ)には含まれていません。取引の内容を書き留める役目を負っているのは仕訳帳です。4つの項目を、取引の種類ごとにどう書き分けるか(売上・仕入・経費・固定資産…)は、法人は法人税法施行規則の別表二十四(14区分)、個人は財務大臣の告示が定めています。この中身は総勘定元帳の記事の別表二十四の節法人と個人で探しに行く場所が違う節で扱っているので、ここでは繰り返しません。

書き方 — 伝統的な様式、会計ソフト、エクセル

条文が求めるのは上の4項目だけなので、様式は自由です。ただ実務には定着した形があり、簿記の教科書で習う仕訳帳は次の5欄です。

書くもの条文との対応
日付取引の年月日①取引の年月日
摘要借方科目(左寄せ)を先に、貸方科目(右寄せ)を次の行に。その下に小書き(相手方・内容)②内容・③勘定科目
元丁転記した総勘定元帳の口座番号(ページ番号)条文には無い。転記済みの印を兼ねる
借方借方金額④金額
貸方貸方金額④金額

記入の慣行として、①1つの取引は借方科目の行から書き始め、貸方科目は1行下げる、②借方または貸方の科目が2つ以上あるときは先頭行に「諸口」と書いて内訳を続ける、③小書きに相手方と内容を書く、④転記したら元丁欄に総勘定元帳の番号を入れる、⑤月末に借方合計と貸方合計を出して一致を確かめ、次ページへ繰り越す、の5つがあります。いずれも条文ではなく簿記の作法です。「諸口」という語も条文には出てきません(総勘定元帳の記事で確認したとおりです)。

会計ソフトを使っている場合、仕訳帳を手で書くことはありません。振替伝票や取引登録の画面で入力した仕訳が、日付順に並んだ一覧として自動で生成されます。ソフトによって「仕訳帳」「仕訳日記帳」などと名前が違いますが、取引の年月日・摘要・勘定科目・金額を発生順に持っているので、条文上の仕訳帳に当たります。同じデータから総勘定元帳・補助簿・試算表も自動で作られるので、転記や元丁の作業は消えます。

エクセルで作る場合は、伝統的な2行書きよりも「1行1仕訳」の表の方が集計に向きます。列は、日付・借方科目・借方金額・貸方科目・貸方金額・摘要(相手方・内容)・消費税区分、が一般的です。借方または貸方が複数になる複合仕訳は行を分け、同じ伝票番号を振って1取引であることが分かるようにします。月ごとに借方金額の合計と貸方金額の合計が一致するかを SUM で確かめておくと、入力ミスを月内で見つけられます。ただしエクセルの仕訳帳は、後述の電子帳簿保存法の「優良な電子帳簿」の要件(訂正・削除の履歴が残ること)を標準機能では満たしにくいので、65万円控除を電子帳簿のルートで取ることや、過少申告加算税の5%軽減の対象にすることは一般に難しい、という限界があります。

会計ソフトでは左の入力から右の全部が自動生成される。条文が見ているのは枠の中身 取引 領収書・請求書 仕訳帳 発生順に1取引ずつ 年月日・内容・勘定科目・金額 法規55条1項・所規59条1項 転記 総勘定元帳 勘定科目ごとに集計 記載の年月日・相手方勘定科目・金額 法規55条2項・所規59条2項 試算表 決算書 申告 この2冊(主要簿)だけが、65万円控除の電子帳簿ルート・5%軽減・10%加重で名指しされる 措規9条の6第2項/電帳規5条1項/通則規11条の2第1項1号・4号
仕訳帳は時系列、総勘定元帳は科目別。補助簿(現金出納帳・固定資産台帳など)はこの流れの脇に付く。

記入例 — 令和8年7月の5取引

金額はすべて仮の数字です。小さな法人(3月決算・税込経理)の令和8年7月に、次の5つの取引があったとします。①1日に得意先A社へ商品を掛けで売り上げ(110,000円)、②5日に文具店Cで事務用品を現金で購入(3,300円)、③10日にA社からの売掛金が振込手数料330円を差し引かれて入金(109,670円)、④25日に7月分の給与250,000円を支払い(源泉所得税と社会保険料の本人負担分として30,000円を預かり、差引220,000円を振込)、⑤31日に8月分の事務所家賃88,000円をD不動産へ振込。伝統的な様式で書くと次のようになります。

日付摘要元丁借方貸方
7/1(売掛金)3110,000
    (売上)
 A社 7月分 商品B 掛売上
21110,000
7/5(消耗品費)253,300
    (現金)
 文具店C 事務用品
13,300
7/10諸口
(普通預金)2109,670
(支払手数料)27330
    (売掛金)
 A社 7/1売掛金回収 振込手数料当方負担
3110,000
7/25(給料手当)23250,000
    諸口
    (普通預金)2220,000
    (預り金)
 7月分給与 源泉所得税・社会保険料 本人負担分
830,000
7/31(地代家賃)2688,000
    (普通預金)
 D不動産 事務所 8月分家賃
288,000
7月合計561,300561,300

読み方を3点だけ補足します。第一に、7/10と7/25は借方または貸方が2科目なので、その側の先頭に「諸口」を置いて内訳を続けています。転記するときは、相手方の総勘定元帳にも「諸口」と書き、内訳は仕訳帳に戻って追う運用です。第二に、元丁欄の数字は総勘定元帳の口座番号の例で、何番にするかは自由です。現金を1番、普通預金を2番、売掛金を3番……と資産・負債・純資産・収益・費用の順に振っておくと、転記先を探す手間が減ります。第三に、小書きには相手方の名前(A社・文具店C・D不動産)を入れています。これは後述のとおり、消費税の仕入税額控除の帳簿としてこの仕訳帳を使うなら「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」が記載事項になるからです。月末の借方合計と貸方合計が561,300円で一致しているので、この月の仕訳帳は転記に進めます。

同じ5取引を会計ソフトに入力すれば、このページが自動で出力され、売掛金勘定には7/1の借方110,000と7/10の貸方110,000(相手方勘定科目は諸口)が並ぶ総勘定元帳も同時にできあがります。

仕訳帳が要るのは誰か — 青色は必須、白色と簡易簿記には規定が無い

仕訳帳を備え付ける義務があるのは、青色申告の承認を受けた法人(法人税法126条1項→施行規則54条)と、正規の簿記の原則で記帳する青色申告の個人(所得税法148条1項→施行規則57条・58条)です。所得税法施行規則57条1項は「正規の簿記の原則」という言葉で複式簿記を要求しています。

資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引(以下この節において「取引」という。)を正規の簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りように記録し、その記録に基づき、貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない。

ただし個人の青色申告には、同じ規則56条1項のただし書で、この57条から59条までに代えて簡易な記録の方法によることができる道が用意されています。いわゆる簡易簿記(10万円控除)で、ここには仕訳帳も総勘定元帳も出てきません。

ただし、当該帳簿書類については、次条から第五十九条まで(青色申告者の帳簿書類)、第六十一条(貸借対照表及び損益計算書)及び第六十四条(帳簿書類の記載事項等の省略又は変更)の規定に定めるところに代えて、財務大臣の定める簡易な記録の方法及び記載事項によることができる。

逆に言うと、青色申告特別控除の55万円・65万円は、この簡易な道を選ばずに57条から62条までのとおり記帳していることが条件です。租税特別措置法25条の2第3項が「一切の取引の内容を詳細に記録している場合として財務省令で定める場合」を要件にし、受けた施行規則9条の6第1項が条番号で特定しています。58条(仕訳帳・総勘定元帳)がその範囲に入っているので、仕訳帳を備えていない個人は、電子帳簿やe-Taxの要件以前に55万円の入口に立てません。

法第二十五条の二第三項に規定する一切の取引の内容を詳細に記録している場合として財務省令で定める場合は、同項に規定する個人が同項の不動産所得又は事業所得を生ずべき事業につき備え付ける帳簿書類について、所得税法施行規則第五十七条から第六十二条まで及び第六十四条の規定に定めるところにより記録し、かつ、作成している場合とする。

白色申告の個人は所得税法232条1項が根拠で、こちらは「財務省令で定める簡易な方法」で総収入金額と必要経費に関する事項を記録すれば足り、帳簿の名前は挙げられていません(受けた施行規則102条も同じです)。

総収入金額及び必要経費に関する事項を財務省令で定める簡易な方法により記録し、かつ、当該帳簿(その年においてこれらの業務に関して作成したその他の帳簿及びこれらの業務に関して作成し、又は受領した財務省令で定める書類を含む。第三項において同じ。)を保存しなければならない。

白色申告の法人(法人税法150条の2→施行規則66条・別表二十六)も、例示されるのは現金出納帳だけで、仕訳帳の語はありません。この点は総勘定元帳の記事で条文を引いています。まとめると次のとおりです。

区分仕訳帳根拠
法人・青色必須法人税法126条1項→施行規則54条・55条
個人・青色(正規の簿記=55万円・65万円)必須所得税法148条1項→施行規則57条〜59条、措置法25条の2第3項→施行規則9条の6第1項
個人・青色(簡易簿記=10万円)規定なし所得税法施行規則56条1項ただし書(財務大臣の定める簡易な記録の方法)
個人・白色規定なし所得税法232条1項→施行規則102条(簡易な方法)
法人・白色規定なし(現金出納帳その他必要な帳簿)法人税法150条の2→施行規則66条・別表二十六

「規定なし」は「作ってはいけない」ではありません。白色でも会計ソフトで複式簿記をしていれば仕訳帳は自動でできますし、後述の加算税の加重では白色の帳簿も対象です。ここで言えるのは、条文が仕訳帳という形を要求しているのは青色の2つだけ、ということです。

仕訳帳が名指しされる3つの場面 — 65万円控除・5%軽減・10%加重

定義と記載方法のほかに、仕訳帳を条文が名指しする場面は3つです。どれも「仕訳帳及び総勘定元帳」とペアで出てきます。

① 青色申告特別控除65万円の電子帳簿ルート(租税特別措置法施行規則9条の6第2項)

55万円を65万円にする要件は2つあり(措置法25条の2第4項)、1号が電子帳簿保存、2号がe-Taxによる申告です。1号で電子保存すべき帳簿は、施行規則9条の6第2項が仕訳帳と総勘定元帳の2つに特定しています。

法第二十五条の二第四項第一号に規定する財務省令で定める帳簿書類は、所得税法施行規則第五十八条第一項に規定する仕訳帳及び総勘定元帳とする。

補助簿まで電子化する必要はありません。ただし同条3項が、この2つの帳簿の電子保存は電子帳簿保存法施行規則5条5項の要件(優良な電子帳簿)を満たすものに限ると書いており、同5項で適用届出書の提出も要ります。要件の中身は後述します。

② 優良な電子帳簿による過少申告加算税の5%軽減(電子帳簿保存法8条4項)

電子帳簿保存法8条4項は、一定の国税関係帳簿を優良な電子帳簿の要件で保存している場合、その帳簿に記録された事項に関する修正申告・更正があったときの過少申告加算税を5%分軽くします。対象の帳簿を決める施行規則5条1項が、所得税法施行規則58条1項・法人税法施行規則54条の仕訳帳・総勘定元帳を先頭に置いています。

法第八条第四項に規定する財務省令で定める国税関係帳簿は、同項に規定する修正申告等(以下この項及び次項において「修正申告等」という。)の基因となる事項に係る所得税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十一号)第五十八条第一項(取引に関する帳簿及び記載事項)に規定する仕訳帳、総勘定元帳その他必要な帳簿(財務大臣の定める取引に関する事項の記載に係るものに限る。)
百分の五の割合を乗じて計算した金額を控除した金額とする。ただし、その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されたものがあるときは、この限りでない。

法人の側は「その他必要な帳簿」の範囲が括弧書きで列挙されており、売掛金・買掛金・有価証券・減価償却資産・繰延資産・売上・仕入その他経費に関する事項の帳簿です(固定資産台帳の記事で減価償却資産の項を引きました)。軽減を受けるには、あらかじめ届出書を出しておくことも要件です(施行規則5条1項柱書)。

③ 税務調査で帳簿を出さなかったときの加算税10%加重(国税通則法65条4項・66条5項)

これは罰の側です。国税通則法65条4項は、調査の職員から帳簿の提示・提出を求められたのに出さなかった場合、または出した帳簿の売上の記載が著しく不十分だった場合に、過少申告加算税を10%分(不十分の程度が軽ければ5%分)上乗せします。

当該職員に当該帳簿の提示若しくは提出をしなかつた場合又は当該職員にその提示若しくは提出がされた当該帳簿に記載し、若しくは記録すべき事項のうち、納税申告書の作成の基礎となる重要なものとして財務省令で定める事項(次号及び次条第五項において「特定事項」という。)の記載若しくは記録が著しく不十分である場合として財務省令で定める場合
百分の十の割合(第二号に掲げる場合に該当するときは、百分の五の割合)を乗じて計算した金額を加算した金額とする。

どの帳簿が対象かは施行規則11条の2第1項が6つの号で挙げており、1号が個人青色の仕訳帳・総勘定元帳、4号が法人青色の仕訳帳・総勘定元帳です(2号は簡易簿記の帳簿、3号は個人白色の帳簿、5号は法人白色の帳簿、6号は消費税の帳簿)。

所得税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十一号)第五十八条第一項(取引に関する帳簿及び記載事項)に規定する仕訳帳及び総勘定元帳

「特定事項」は同条2項で売上げ(業務に係る収入を含む)とされ、「著しく不十分」は記載が本来の2分の1に満たない場合(3項)、「不十分」は3分の2に満たない場合(4項)です。

法第六十五条第四項第一号に規定する財務省令で定める事項は、売上げ(業務に係る収入を含む。)とする。
法第六十五条第四項第一号に規定する財務省令で定める場合は、同号の特定事項の金額の記載又は記録が、同号の帳簿に記載し、又は記録すべき特定事項の金額の二分の一に満たない場合とする。

通常の過少申告加算税は10%(65条1項)、期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%(同2項)なので、仕訳帳を出さない・売上の半分以上が仕訳帳に載っていない、という状態で修正申告になると20%・25%に上がります。無申告加算税にも同じ仕組みがあります(66条5項)。なお「当該納税者の責めに帰すべき事由がない場合」は除かれます。税務調査の手続そのものは税務調査の記事で条文を追っています。

場面効き方仕訳帳を名指しする条文条件
① 65万円控除(個人)55万円→65万円租税特別措置法施行規則9条の6第2項仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件で電子保存+届出(またはe-Tax申告)
② 5%軽減(法人・個人)過少申告加算税 −5%電子帳簿保存法施行規則5条1項仕訳帳・総勘定元帳等を優良な電子帳簿の要件で保存+届出。隠蔽・仮装があれば不適用
③ 10%加重(法人・個人)過少申告加算税・無申告加算税 +10%(+5%)国税通則法施行規則11条の2第1項1号・4号調査で提示・提出を求められて出さない/売上の記載が1/2未満(2/3未満は+5%)

消費税の帳簿を兼ねるとき — 相手方の名称と、もう1つの起算日

消費税法は「仕訳帳」という語を使いませんが、仕入税額控除の条件として「帳簿及び請求書等」の保存を求めています(30条7項)。実務では、この帳簿を仕訳帳(と総勘定元帳・補助簿)で兼ねるのが普通です。

第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。

その帳簿に何を書くかは30条8項1号で、課税仕入れについてはイからニまでの4項目です。

30条8項1号記載事項仕訳帳の4項目との対応
課税仕入れの相手方の氏名又は名称追加(仕訳帳の「内容」に相手方名を含めて満たす)
課税仕入れを行った年月日①取引の年月日
課税仕入れに係る資産又は役務の内容(軽減税率の対象ならその旨)②内容(軽減税率の対象は区分を追加)
課税仕入れに係る支払対価の額④金額

仕訳帳の4項目に無くて消費税の帳簿にあるのは、相手方の氏名又は名称です。先ほどの記入例の小書きに「文具店C」「D不動産」と相手方を入れたのはこのためで、科目と金額だけの仕訳帳では消費税の帳簿の要件を満たしません。一方で、インボイス(適格請求書)の登録番号は帳簿の記載事項には入っていません。イからニまでに登録番号は無く、番号は「請求書等」の側(30条9項)で確認するものだからです。請求書等が不要で帳簿のみで控除できる類型と、そのとき増える記載事項(公共交通機関特例など)は出金伝票の記事旅費交通費の記事で扱いました。

もう1つ、消費税の帳簿として保存するときは起算日が所得税の帳簿としての起算日と違います。消費税法施行令50条1項は、帳簿の閉鎖の日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間としています。

当該帳簿についてはその閉鎖の日の属する課税期間の末日の翌日、当該請求書等についてはその受領した日(同条第九項第二号に掲げる電磁的記録並びに前条第七項及び第十項の電磁的記録にあつては、これらの電磁的記録の提供を受けた日)の属する課税期間の末日の翌日から二月(清算中の法人について残余財産が確定した場合には一月とする。次項及び第三項において同じ。)を経過した日から七年間

法人は法人税法施行規則59条2項も「事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日」なので、3月決算なら6月1日で一致します。個人は所得税法施行規則63条4項が「翌年三月十五日の翌日」=3月16日、消費税法施行令50条1項は「課税期間の末日の翌日から二月を経過した日」=3月1日で、同じ仕訳帳に2つの起算日が付きます。どちらも7年なので、遅い方(3月16日起算)まで保存しておけば両方を満たします。次の節の図にまとめます。

電子帳簿保存法との関係 — 会計ソフトの仕訳帳は印刷しなくてよいか

仕訳帳は、電子帳簿保存法2条2号の「国税関係帳簿」です。

国税に関する法律の規定により備付け及び保存をしなければならないこととされている帳簿

会計ソフトで最初から電子的に作った仕訳帳は、同法4条1項により、電子データのまま備え付け・保存することで紙の帳簿の備付け・保存に代えることができます。条文は「代えることができる」で、義務ではありません。紙に印刷して保存する選択も残っています。

保存義務者は、国税関係帳簿(財務省令で定めるものを除く。以下この項、次条第一項及び第三項並びに第八条第一項及び第四項において同じ。)の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。

電子のまま保存するときの最低限の要件は施行規則2条2項の3つで、①システムの概要書・操作説明書・事務手続書類の備付け(市販ソフトなら概要書と開発書類は不要)、②パソコン・プログラム・ディスプレイ・プリンタを備え、画面と書面に整然・明瞭に速やかに出力できること、③税務職員からデータの提示・提出(ダウンロード)の要求に応じられることです。

国税に関する法律の規定による当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしておくこと。

これに対し、前節の①65万円控除と②5%軽減で要求される優良な電子帳簿(施行規則5条5項1号)は要件が重く、イ(1)訂正・削除の事実と内容を確認できること、イ(2)通常の期間を過ぎて入力した事実を確認できること、ロ 他の帳簿との相互関連性、ハ 取引年月日・金額・取引先で検索でき、範囲指定と2項目以上の組合せができること、が加わります(ダウンロードの求めに応じるなら検索要件の一部は免除)。

当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。

エクセルで作った仕訳帳は、最低限の3要件(2条2項)は満たせても、セルを書き換えた履歴が標準では残らないので、優良な電子帳簿のイ(1)を満たすのは一般に難しいところです。65万円控除を取りたい個人は、エクセル仕訳帳のままならe-Taxによる申告(措置法25条の2第4項2号)のルートを使うか、訂正・削除履歴を持つ会計ソフトに移すかの二択になります。なお、会計ソフトを使っていても、ソフト側が優良の要件に対応していることと、届出書を出していることの両方が要るので、ソフトの仕様を確かめてから届出を出す順序です。

65万・55万・10万のどれになるか(電子帳簿/e-Tax/簡易簿記)を判定する(青色申告特別控除シミュレーター)

保存は7年、会社法・商法は10年 — 起算日は3つある

仕訳帳の保存期間は、法人税法施行規則59条1項1号(54条の帳簿)と所得税法施行規則63条1項1号(58条の帳簿)がどちらも「起算日から七年間」としています。

第五十四条(取引に関する帳簿及び記載事項)に規定する帳簿並びに当該青色申告法人の資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿

起算日は決算日・締め日ではありません。法人は事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日、個人は翌年3月15日の翌日です。

前項に規定する起算日とは、帳簿についてはその閉鎖の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月(次の各号に掲げる事業年度にあつては、当該各号に定める月数。以下この項において同じ。)を経過した日をいい、書類についてはその作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日をいう。
第一項及び第二項に規定する起算日とは、帳簿についてはその閉鎖の日の属する年の翌年三月十五日の翌日をいい、書類についてはその作成又は受領の日の属する年の翌年三月十五日の翌日をいう。

株式会社には会社法432条2項の10年が別に掛かります。起算は「会計帳簿の閉鎖の時」で、税法の起算日とも違います。個人事業主でも商法上の商人であれば商法19条3項が同じ10年を課しますが、営業用財産が法務省令の額以下の小商人は商法7条で第五章(商業帳簿)の適用が除かれます。

株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。
商人は、帳簿閉鎖の時から十年間、その商業帳簿及びその営業に関する重要な資料を保存しなければならない。
第五章及び第二十二条の規定は、小商人(商人のうち、法務省令で定めるその営業のために使用する財産の価額が法務省令で定める金額を超えないものをいう。)については、適用しない。
根拠期間起算日個人・暦年の例法人・3月決算の例
所得税法施行規則63条/法人税法施行規則59条7年翌年3月15日の翌日/事業年度終了の翌日から2か月経過日3月16日6月1日
消費税法施行令50条1項(消費税の帳簿として)7年課税期間の末日の翌日から2か月経過日3月1日6月1日
会社法432条2項/商法19条3項10年会計帳簿の閉鎖の時(商人なら)12月31日3月31日
12/31 帳簿の閉鎖 会計帳簿の閉鎖の時 (会社法・商法は10年) 3/1 消費税の帳簿としての起算日 末日の翌日から2か月経過日 (消令50条1項) 3/16 所得税の帳簿としての起算日 翌年3月15日の翌日 (所規63条4項) 7年後 遅い方(3/16起算)まで 持てば両方を満たす 同じ仕訳帳に、15日ずれた2つの起算日が付く(個人・暦年の場合) 法人はどちらも「事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日」で一致する(法規59条2項・消令50条1項)
個人事業主の仕訳帳は、所得税の帳簿と消費税の帳簿を兼ねるので起算日が2つ付く。法人はそろっている。

赤字を翌年以降に繰り越す場合の10年保存(法人税法57条・所得税法70条に対応する規則)は、総勘定元帳の記事の10年の節で条文を引いています。仕訳帳も同じ帳簿の扱いなので、欠損金を繰り越す年度の仕訳帳は10年持つことになります。

よくある質問

Q. 仕訳帳とは何ですか?

A. すべての取引を発生した順に借方と貸方に分けて記録する帳簿で、法人税法施行規則54条・所得税法施行規則58条が「全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿」と定義しています。記載事項は取引の年月日・内容・勘定科目・金額の4つ(同55条1項・59条1項)で、ここから勘定科目ごとに転記した帳簿が総勘定元帳です。

Q. 仕訳帳と総勘定元帳の違いは何ですか?

A. 仕訳帳は取引を発生順(時系列)に並べ、総勘定元帳は勘定科目ごとに集計します。記載事項も違い、仕訳帳は年月日・内容・勘定科目・金額の4つ、総勘定元帳は記載の年月日・相手方勘定科目・金額の3つで、「内容」を持つのは仕訳帳だけです。どちらも青色申告で必須の主要簿で、条文では常にペアで名指しされます。

Q. 仕訳帳は必ず作らないといけませんか?

A. 青色申告の法人と、正規の簿記で記帳する青色申告の個人(55万円・65万円控除)には義務があります。個人の簡易簿記(10万円控除)、個人の白色申告、法人の白色申告には仕訳帳という帳簿名の規定がありません。ただし会計ソフトで複式簿記をしていれば自動でできますし、調査で帳簿を出さないときの加算税の加重は白色の帳簿も対象です。

Q. 会計ソフトで作った仕訳帳は、印刷して保存しないといけませんか?

A. 印刷しなくてもよいですが、条件があります。電子帳簿保存法4条1項により、最初から電子的に作った帳簿は電子データのまま保存することで紙の保存に代えられます(「代えることができる」なので任意)。電子のまま保存するなら施行規則2条2項の3要件(システム関係書類の備付け・画面と書面への速やかな出力・データの提示提出要求に応じること)を満たす必要があります。紙に印刷して保存する選択も引き続きできます。

Q. エクセルで作った仕訳帳で65万円控除は受けられますか?

A. 電子帳簿のルートでは一般に難しいです。65万円の電子帳簿ルートは仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件(訂正・削除の履歴が確認できること等、施行規則5条5項)で保存し届出を出すことが条件で、エクセルの標準機能では訂正履歴が残りません。もう1つのルートであるe-Taxによる申告(措置法25条の2第4項2号)なら、帳簿がエクセルでも55万円の要件を満たしていれば65万円になります。

Q. 仕訳帳の摘要に相手方の名前は書かないといけませんか?

A. 消費税の仕入税額控除の帳簿として仕訳帳を使うなら必要です。消費税法30条8項1号イが「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」を帳簿の記載事項に挙げており、仕訳帳の4項目(年月日・内容・勘定科目・金額)には無い項目なので、摘要に相手方名を入れて満たします。インボイスの登録番号は帳簿の記載事項ではなく、請求書等の側で確認します。

Q. 税務調査で仕訳帳を見せないとどうなりますか?

A. 国税通則法65条4項により、調査の職員から帳簿の提示・提出を求められて出さなかった場合、修正申告・更正に係る過少申告加算税が10%分上乗せされます(通常10%→20%、50万円等を超える部分は15%→25%)。出しても売上の記載が本来の2分の1未満なら同じく10%、3分の2未満なら5%の上乗せです。対象の帳簿は施行規則11条の2が定め、青色の仕訳帳・総勘定元帳はその1号・4号です。

Q. 仕訳帳は何年保存しますか?

A. 税法上は7年です。起算日は法人が事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日(法人税法施行規則59条2項)、個人が翌年3月15日の翌日(所得税法施行規則63条4項)で、決算日からではありません。個人が消費税の帳簿としても使うなら消費税法施行令50条1項の起算日(3月1日)も付きますが、遅い方まで持てば足ります。株式会社は会社法432条2項で会計帳簿の閉鎖の時から10年です。

Q. 「諸口」や「元丁」は条文に書いてありますか?

A. どちらも条文にはありません。諸口は借方または貸方の科目が複数あるときの書き方、元丁は転記先の総勘定元帳の口座番号を控える欄で、いずれも簿記の慣行です。条文が求めるのは取引の年月日・内容・勘定科目・金額を発生順に書くことだけで、様式は自由です。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

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