固定資産台帳とは — 法令に名前は無いのに必須になる理由。記載項目・書き方・保存年数
結論から言うと、固定資産台帳とは、建物・機械・車両・パソコンなどの減価償却資産を1件ずつ1行にして、取得年月日・取得価額・耐用年数・償却方法・当期の償却費・期末の帳簿価額を追いかける帳簿です。仕訳帳や総勘定元帳が「金額の動き」を勘定科目ごとに集計するのに対し、固定資産台帳は「物」の側から、買った日から除却・売却する日までの一生を記録します。
ただし、「固定資産台帳」という名前の帳簿を作れと命じている条文はありません。法人税法・所得税法・それぞれの施行令と施行規則・地方税法・会社法・会社計算規則・財務諸表等規則・電子帳簿保存法・消費税法の全文を検索しても、この語は11法令で0回です。それでも実務で必ず作ることになるのは、法人税法施行規則 別表二十四(八)の帳簿記載事項、法人税法施行令63条が確定申告書への添付を命じる償却明細書(別表十六)、地方税法383条の償却資産申告の3つが、同じ列の情報を要求しているからです。3つの要求を1枚にまとめたものが固定資産台帳で、国税庁タックスアンサー No.5930 も法人が備え付ける帳簿の例として「固定資産台帳」を名指ししています。
この記事は、①法令の中の「固定資産台帳」の位置、②3つの法令が要求する記載項目の一覧、③パソコン240,000円の記載例、④法人と個人で列が1本違う理由、⑤償却資産の申告との関係、⑥保存期間、⑦電子帳簿保存法、⑧決算書・申告書とのつながり、⑨運用のコツ、の順で整理します。減価償却そのものの計算(定額法・定率法・耐用年数)は減価償却とはと耐用年数の引き方に、10万円・20万円・40万円の判定は少額減価償却資産と一括償却資産に譲ります。
法令の中の「固定資産台帳」 — 11法令で0回。必須にしているのは3つの別の条文
e-Gov 法令API v2 で取得した全文を検索すると、「固定資産台帳」の語は法人税法・法人税法施行令・法人税法施行規則・所得税法・所得税法施行令・所得税法施行規則・地方税法・会社計算規則・財務諸表等規則・消費税法・電子帳簿保存法の11法令すべてで0回です(2026年8月21日時点の現行法令)。法律が定義している帳簿は仕訳帳と総勘定元帳だけで、法人税法施行規則54条は青色申告法人に対して、この2つと「その他必要な帳簿」を備え、別表二十四に定める事項を記載するよう求めています。
青色申告法人は、全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿(次条において「仕訳帳」という。)、全ての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿(次条において「総勘定元帳」という。)その他必要な帳簿を備え、別表二十四に定めるところにより、取引に関する事項を記載しなければならない。
その別表二十四の(八)が「減価償却資産に関する事項」で、ここに書かれている記載事項が、固定資産台帳の列の原型です。
耐用年数省令に定める耐用年数の異なるものについてはその異なるごとに区分し、それぞれ、その取引の年月日、事由、相手方、数量及び金額
つまり法律が求めているのは「固定資産台帳という帳面」ではなく、減価償却資産を種類・構造・細目と耐用年数ごとに区分して、年月日・事由・相手方・数量・金額を記録することです。これを総勘定元帳の「器具備品」勘定の中でやろうとすると、1行に取得日・耐用年数・償却方法が入らないので、資産ごとに1行を持つ別の帳簿が要ります。それが固定資産台帳です。
さらに2つの条文が、同じ情報を「税務署に出せ」「市町村に出せ」と求めています。1つ目は法人税法施行令63条1項で、償却費を損金経理した法人に償却限度額その他償却費の計算に関する明細書(法人税申告書の別表十六)の添付を命じます。
内国法人は、各事業年度終了の時においてその有する減価償却資産につき償却費として損金経理をした金額(第百三十一条の二第三項(リース取引の範囲)の規定により償却費として損金経理をした金額に含まれるものとされる金額を除く。)がある場合には、当該資産の当該事業年度の償却限度額その他償却費の計算に関する明細書を当該事業年度の確定申告書に添付しなければならない。
2つ目は地方税法383条で、償却資産(固定資産税の対象になる事業用資産)の所有者に、毎年1月1日現在の資産について所在・種類・数量・取得時期・取得価額・耐用年数・見積価額を1月31日までに市町村へ申告させます。
固定資産税の納税義務がある償却資産の所有者(第三百八十九条第一項の規定によつて道府県知事若しくは総務大臣が評価すべき償却資産又は第七百四十二条第一項若しくは第三項の規定によつて道府県知事が指定した償却資産の所有者を除く。)は、総務省令の定めるところによつて、毎年一月一日現在における当該償却資産について、その所在、種類、数量、取得時期、取得価額、耐用年数、見積価額その他償却資産課税台帳の登録及び当該償却資産の価格の決定に必要な事項を一月三十一日までに当該償却資産の所在地の市町村長に申告しなければならない。
帳簿の記載事項(別表二十四)・申告書の添付書類(別表十六)・市町村への申告(383条)は、それぞれ別の目的で別の法令に置かれていますが、要求している列はほぼ同じです。3回別々に作るより1枚の台帳から3つを出す方が確実なので、実務では固定資産台帳が「必須の帳簿」になります。国税庁タックスアンサー No.5930(帳簿書類等の保存期間)も、法人が備え付ける帳簿の例として「総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳など」を挙げており、法令に語が無くても税務の現場では帳簿の1つとして数えられています。
記載項目の一覧 — 3つの法令の要求を1枚に重ねる
条文ごとに要求している項目を並べると、次の表になります。「台帳の列」はそれを実務の見出しに直したものです。
| 台帳の列 | 法人税法施行規則 別表二十四(八) | 法人税法施行令63条(別表十六) | 地方税法383条 |
|---|---|---|---|
| 資産の種類・構造・細目 | 種類の区分(構造・用途・細目を含む)ごとに区分 | 種類ごと・償却方法ごとの区分(63条2項) | 種類 |
| 耐用年数 | 耐用年数の異なるごとに区分 | 償却率の基礎 | 耐用年数 |
| 取得年月日(事業供用日) | 取引の年月日 | 事業供用日から月数按分 | 取得時期 |
| 事由・相手方 | 事由、相手方 | — | — |
| 数量 | 数量 | — | 数量 |
| 取得価額 | 金額 | 償却限度額の計算の基礎 | 取得価額 |
| 所在(設置場所) | — | — | 所在 |
| 償却方法・償却率・当期償却費・期末帳簿価額 | —(決算で必要) | 償却限度額その他償却費の計算 | 見積価額(評価額)の基礎 |
別表二十四(八)が要求する「種類の区分」は、法人税法施行規則14条の償却方法の選定単位と耐用年数省令の別表の区分で、たとえば同じ器具備品でも「事務机」「パソコン」「応接セット」は細目が違い、耐用年数も違うので、台帳では別の行になります。減価償却資産の範囲は法人税法2条23号が定めています。
建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう。
受けた法人税法施行令13条は1号から9号までの9つの号で範囲を列挙しています(土地は入りません。土地は減価しないので償却せず、固定資産台帳には載せても償却費の列は空欄になります)。
記載例 — パソコン240,000円・定額法4年・令和8年7月に事業供用
個人事業主(青色申告)が令和8年7月1日に業務用パソコンを240,000円(送料込み)で購入し、同日から事業に使い始めた場合で、台帳の行を作ってみます。
- 耐用年数 4年 — 耐用年数省令 別表第一「器具及び備品」の「電子計算機」のうち「パーソナルコンピュータ(サーバー用のものを除く。)」が4年です。
- 償却方法 定額法 — 個人事業主が償却方法を届け出ていない場合、平成19年4月1日以後に取得した資産の法定償却方法は定額法です(所得税法施行令125条2号イ)。
- 償却率 0.250 — 耐用年数省令 別表第八(平成19年4月1日以後に取得をされた減価償却資産の定額法の償却率表)で耐用年数4年は 0.250 です。
- 初年度は月数按分 — 年の途中で業務の用に供した資産は、年間の償却費を12で割り、供用日から12月31日までの月数を掛けます(所得税法施行令132条1項1号イ)。7月1日供用なら6か月。
- 最後は1円を残す — 平成19年4月1日以後取得の資産は、償却費の累計が「取得価額から一円を控除した金額」に達するまで償却します(所得税法施行令134条1項2号イ)。
当該資産につきこれらの方法により計算した前条の規定によるその年分の償却費の額に相当する金額を十二で除し、これに当該業務の用に供された日からその年十二月三十一日(その者が年の中途において死亡し又は出国をした場合には、その死亡又は出国の日。以下この項において同じ。)までの期間の月数を乗じて計算した金額
| 年分 | 期首帳簿価額 | 計算 | 本年分の償却費 | 期末帳簿価額 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和8年 | 240,000 | 240,000×0.250×6/12 | 30,000 | 210,000 | 7月1日供用・6か月 |
| 令和9年 | 210,000 | 240,000×0.250 | 60,000 | 150,000 | |
| 令和10年 | 150,000 | 240,000×0.250 | 60,000 | 90,000 | |
| 令和11年 | 90,000 | 240,000×0.250 | 60,000 | 30,000 | |
| 令和12年 | 30,000 | 30,000−1 | 29,999 | 1 | 備忘価額1円を残して償却終了 |
台帳の行としては、これに資産名(ノートパソコン)・種類(器具及び備品/電子計算機)・取得年月日(令和8年7月1日)・相手方(○○電機)・数量(1)・所在(事務所)・取得価額(240,000)・耐用年数(4)・償却方法(定額法)・償却率(0.250)が付き、年ごとの償却費と期末帳簿価額が右へ伸びていきます。償却費の合計は 30,000+60,000×3+29,999=239,999 で、取得価額 240,000 から1円を引いた額に一致します。
法人と個人で列が1本違う — 「損金経理額のうち限度額まで」と「計算した金額」
同じ固定資産台帳でも、法人の台帳には個人に無い列が1本あります。償却限度額と、会計上の償却費との差額(償却超過額・償却不足額)です。理由は条文の書き方の違いにあります。法人税法31条1項は、損金になる償却費を、損金経理をした金額のうち償却限度額に達するまでの金額と定めています。
内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として第二十二条第三項(各事業年度の所得の金額の計算の通則)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、その取得をした日及びその種類の区分に応じ、償却費が毎年同一となる償却の方法、償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法その他の政令で定める償却の方法の中からその内国法人が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかつた場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額(次項において「償却限度額」という。)に達するまでの金額とする。
法人は会計上いくら償却するかを自分で決め(損金経理額)、税務上はその額と限度額の小さい方が損金になります。会計上の償却費が限度額を超えれば超過額は損金不算入で翌期以降に繰り越し、下回れば不足額はその期の損金にならず(償却不足は切り捨てで、翌期に取り戻せません)、どちらも別表十六で管理します。だから法人の台帳には「会計上の償却費」と「税務上の償却限度額」の2本の列が要ります。
一方、所得税法49条1項は、個人の必要経費になる償却費を「政令で定めるところにより計算した金額」と定めています。
居住者のその年十二月三十一日において有する減価償却資産につきその償却費として第三十七条(必要経費)の規定によりその者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、その取得をした日及びその種類の区分に応じ、償却費が毎年同一となる償却の方法、償却費が毎年一定の割合で逓減する償却の方法その他の政令で定める償却の方法の中からその者が当該資産について選定した償却の方法(償却の方法を選定しなかつた場合には、償却の方法のうち政令で定める方法)に基づき政令で定めるところにより計算した金額とする。
「損金経理をした金額のうち」という限定が無いので、個人は計算した金額がそのまま必要経費になり、償却しない・少なく償却するという選択はありません(いわゆる強制償却)。台帳の償却費の列は1本で済みます。
| 法人 | 個人事業主 | |
|---|---|---|
| 償却費の損金・必要経費算入 | 損金経理額のうち償却限度額まで(法人税法31条1項) | 計算した金額(所得税法49条1項) |
| 償却するかどうか | 会計上の判断(限度額の範囲で任意) | 選択なし(計算どおり) |
| 法定償却方法(器具備品・機械など。平成19年4月1日以後取得) | 定率法(法人税法施行令53条2号イ) | 定額法(所得税法施行令125条2号イ) |
| 台帳の償却費の列 | 会計上の償却費+税務上の償却限度額+超過/不足額 | 1本 |
| 税務署に出す明細 | 別表十六(法人税法施行令63条) | 青色申告決算書「減価償却費の計算」欄(所得税法149条) |
建物(平成19年4月1日以後取得)と、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備・構築物は、法人でも定額法しか選べません(法人税法施行令48条の2第1項1号ロ)。法定償却方法の違いは、会計ソフトが台帳に資産を登録するときの初期値にも現れるので、法人と個人で設定が違うことを知っておくと登録ミスを防げます。
償却資産の申告は台帳から作る — 1月31日・少額特例の資産は申告対象に残る
固定資産税は土地・家屋だけでなく、事業に使う機械・器具備品・構築物などの「償却資産」にもかかります。地方税法341条4号の定義は、減価償却費が法人税法・所得税法で損金・必要経費になる資産です。
土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む。)をいう。
毎年1月1日現在の償却資産を1月31日までに市町村へ申告するのが383条で、申告事項は前掲のとおり所在・種類・数量・取得時期・取得価額・耐用年数・見積価額です。固定資産台帳の列そのものなので、実務では台帳から前年中に増えた資産・減った資産を拾って申告書(増加資産・減少資産の明細)を作ります。
ここで間違えやすいのが、「経費で落とした資産は申告しなくてよい」という思い込みです。341条4号の「取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産」を受けた地方税法施行令49条は、除外する資産を10万円未満の少額資産と一括償却資産に限定しています。
法第三百四十一条第四号に規定する政令で定める資産は、法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上、法人税法施行令第百三十三条第一項若しくは第百三十三条の二第一項又は所得税法施行令第百三十八条第一項若しくは第百三十九条第一項の規定によりその取得価額(法人税法施行令第五十四条第一項各号又は所得税法施行令第百二十六条第一項各号若しくは第二項の規定により計算した価額をいう。以下この条において同じ。)の全部又は一部が損金又は必要な経費に算入される資産とする。
ここに租税特別措置法28条の2・67条の5(中小企業者等の少額減価償却資産の特例)は入っていません。特例で取得年に全額を損金にした資産は、国税では消えても償却資産税では申告対象に残ります。台帳の行を消さずに「措置法適用」と備考を付けておくのは、この申告のためです。
| 取得価額・処理 | 国税(法人税・所得税) | 固定資産台帳 | 償却資産の申告 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満(法人税法施行令133条・所得税法施行令138条) | 取得年に全額損金・必要経費 | 載せなくてよい(管理目的で載せるのは可) | 対象外(施行令49条) |
| 20万円未満を一括償却資産に(法人税法施行令133条の2・所得税法施行令139条) | 3年で均等に損金 | 一括償却資産として別管理 | 対象外(施行令49条) |
| 40万円未満を措置法の少額特例で(28条の2・67条の5。令和8年4月1日以後取得) | 取得年に全額損金・必要経費(年300万円まで) | 載せる(全額償却済みと明記) | 対象 |
| 通常の減価償却資産 | 耐用年数で償却 | 載せる | 対象(土地・家屋・自動車税対象の車両を除く) |
償却資産税の税率や免税点(課税標準150万円未満)は償却資産税の記事に譲ります。台帳側で押さえるのは「申告の元データは台帳」「少額特例の資産は残す」の2点です。
保存期間 — 税法は7年、会社法は10年。起算日が3つとも違う
固定資産台帳は帳簿なので、帳簿の保存期間がそのまま当てはまります。ただし根拠法令によって年数と起算日が違います。
青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(第三号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。
前項に規定する起算日とは、帳簿についてはその閉鎖の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月(次の各号に掲げる事業年度にあつては、当該各号に定める月数。以下この項において同じ。)を経過した日をいい、書類についてはその作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日をいう。
法人は法人税法施行規則59条1項・2項で、帳簿の閉鎖日の属する事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日(=確定申告期限の翌日)を起算日として7年です。国税庁 No.5930 によれば、青色申告で欠損金が生じた事業年度は10年になります。個人は所得税法施行規則63条で同じく7年ですが、起算日は翌年3月15日の翌日です。
第一項及び第二項に規定する起算日とは、帳簿についてはその閉鎖の日の属する年の翌年三月十五日の翌日をいい、書類についてはその作成又は受領の日の属する年の翌年三月十五日の翌日をいう。
株式会社はこれとは別に会社法432条2項で、会計帳簿を閉鎖の時から10年保存する義務があります。固定資産台帳は会計帳簿の一部なので、株式会社では税法の7年より会社法の10年が長く、結局10年保存になります。
株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。
| 根拠 | 期間 | 起算日 |
|---|---|---|
| 法人税法施行規則59条(青色申告法人) | 7年(欠損金が生じた事業年度は10年・No.5930) | 帳簿を閉鎖した事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日 |
| 所得税法施行規則63条(青色申告者) | 7年 | 帳簿を閉鎖した年の翌年3月15日の翌日 |
| 会社法432条2項(株式会社) | 10年 | 会計帳簿の閉鎖の時 |
電子帳簿保存法 — 国税関係帳簿の1つ。優良帳簿の範囲にも入る
会計ソフトや表計算で固定資産台帳を作っている場合、紙に打ち出して保存するか、データのまま保存するかは電子帳簿保存法の話になります。同法2条2号は「国税関係帳簿」を次のように定義しています。
国税関係帳簿(国税に関する法律の規定により備付け及び保存をしなければならないこととされている帳簿(輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律(昭和三十年法律第三十七号)第十六条第十一項(保税工場等において保税作業をする場合等の内国消費税の特例)に規定する帳簿を除く。)をいう。以下同じ。)
法人税法126条・所得税法148条が備付け・保存を命じる帳簿のうち、減価償却資産に関する事項を記載するものが固定資産台帳なので、固定資産台帳は国税関係帳簿の1つです(No.5930 が帳簿の例として挙げているのもその意味です)。自分で最初から一貫して電子計算機で作成しているなら、電子帳簿保存法4条1項により、一定の要件を満たせばデータのまま保存できます。
さらに、過少申告加算税が5%軽減される「優良な電子帳簿」(電子帳簿保存法8条4項)の対象になる帳簿の範囲を定めた電子帳簿保存法施行規則5条1項は、仕訳帳・総勘定元帳に加えて「その他必要な帳簿」を列挙しており、その中に減価償却資産に関する事項が入っています。
同条第二十三号に規定する減価償却資産に関する事項、同条第二十四号に規定する繰延資産に関する事項
つまり優良帳簿の軽減を受けるには、仕訳帳・総勘定元帳だけでなく、固定資産台帳(と繰延資産台帳)も要件を満たした電子帳簿として備え付けている必要があります。索引簿・検索要件の考え方は電子帳簿保存法をわかりやすくを参照してください。
電子帳簿保存法の検索要件を満たす索引簿のテンプレートを作る(索引簿メーカー)決算書・申告書とのつながり — 附属明細書・別表十六・青色申告決算書
固定資産台帳は、決算と申告で3つの書類の元になります。
①株式会社の附属明細書。 会社計算規則117条は、計算書類の附属明細書に「有形固定資産及び無形固定資産の明細」を表示するよう求めています。括弧書きで公開会社以外の株式会社は1号から3号までとされており、非公開の小さな株式会社でも1号の固定資産の明細は省略できません。
各事業年度に係る株式会社の計算書類に係る附属明細書には、次に掲げる事項(公開会社以外の株式会社にあっては、第一号から第三号に掲げる事項)のほか、株式会社の貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び個別注記表の内容を補足する重要な事項を表示しなければならない。
有形固定資産及び無形固定資産の明細
金融商品取引法の開示書類では、財務諸表等規則121条1項2号の「有形固定資産等明細表」が同じ役割です。どちらも台帳を種類別に集計すれば作れます。
②法人税申告書の別表十六。 前掲の法人税法施行令63条1項の明細書で、定額法は別表十六(一)、定率法は別表十六(二)、少額減価償却資産の特例は別表十六(七)、一括償却資産は別表十六(八)と、償却方法ごとに様式が分かれています。63条2項により、種類ごと・償却方法ごとの合計額を記載した書類を添付し明細書本体を保存していれば、明細書の添付を省略できます。
③青色申告決算書の「減価償却費の計算」欄。 個人は所得税法149条で青色申告書に貸借対照表・損益計算書などの明細書を添付することになっており、その様式である青色申告決算書(一般用)の3ページ目に「減価償却費の計算」欄があります。国税庁の「令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」4ページによれば、記入する列は取得価額・償却の基礎になる金額・償却方法・耐用年数・償却率又は改定償却率・本年中の償却期間・本年分の普通償却費・本年分の必要経費算入額・未償却残高などで、固定資産台帳の1行がそのまま決算書の1行になります。
作り方と運用 — 登録のタイミング、取得価額の中身、除却の行
台帳の様式は法令で決まっていないので、会計ソフトの固定資産機能でも表計算でも構いません。運用で迷いやすい点を4つ挙げます。
(1)登録は「取得日」、償却の開始は「事業供用日」。 所得税法施行令132条1項1号・法人税法施行令59条1項1号の月数按分はどちらも「業務(事業)の用に供した日」からです。買っただけで箱のまま倉庫にある資産は、台帳には載せますが償却は始まりません。取得年月日と事業供用日は別の列にしておくと、年度末に買って翌期から使う資産で迷いません。
(2)取得価額には付随費用を含める。 所得税法施行令126条1項1号(法人は法人税法施行令54条1項1号)は、購入した減価償却資産の取得価額を購入代価に引取運賃などを加えた額と、業務の用に供するために直接要した費用の合計と定めています。
当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(関税法第二条第一項第四号の二(定義)に規定する附帯税を除く。)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
当該資産を業務の用に供するために直接要した費用の額
送料・設置費・据付工事費は本体と合わせて1行の取得価額にします。本体だけを台帳に登録し、送料を「荷造運賃」で経費にしてしまうのは、10万円・20万円・40万円の判定をずらす典型的な誤りです。
(3)除却・売却は行を消さず、減少の行を足す。 廃棄した資産は除却日と除却時の帳簿価額(固定資産除却損)を、売った資産は売却日・売却額・帳簿価額・売却損益を、同じ行の右端か減少欄に書きます。行を削除すると、翌年1月の償却資産申告で「減少資産」を拾えなくなり、別表十六との整合も取れなくなります。
(4)補助金・圧縮記帳・特別償却は備考に残す。 補助金で取得して圧縮記帳した資産は帳簿上の取得価額が圧縮後の額になるので、圧縮前の取得価額と圧縮額を備考に残しておきます(償却資産の申告での取得価額の扱いは、申告先の市町村の案内で確認します)。特別償却や措置法の少額特例を使った資産も、何条をどの年度に適用したかを備考に書いておくと、税務調査や翌年度の担当者交代で説明に困りません。補助金側の処理は補助金で買った固定資産の減価償却にまとめています。
(5)リース資産も台帳に載せる。 所有権移転外リース取引で借りている機械やコピー機は、税法上は引渡しの時に売買があったものとされ(法人税法64条の2第1項)、借手がリース期間定額法で償却します。賃借料として処理していても償却費の扱いになるので、台帳には「リース資産」の区分で取得価額(リース料総額)・リース期間・償却費を載せます。条文の作りと令和7年度改正はリース取引の税務にまとめています。
| 表計算で作るときの最低限の列 | 理由(どの法令の要求か) |
|---|---|
| 資産番号・資産名・種類/構造・細目 | 別表二十四(八)の種類の区分・383条の種類 |
| 取得年月日・事業供用日・相手方・数量 | 別表二十四(八)・383条の取得時期 |
| 取得価額(付随費用込み) | 別表二十四(八)の金額・所得税法施行令126条/法人税法施行令54条 |
| 耐用年数・償却方法・償却率 | 別表二十四(八)の耐用年数区分・別表十六 |
| 期首帳簿価額・当期償却費・期末帳簿価額(法人は償却限度額・超過/不足額も) | 法人税法31条・所得税法49条・別表十六 |
| 所在(設置場所) | 地方税法383条 |
| 減少(除却・売却)の年月日と金額・備考(特例・圧縮記帳) | 償却資産申告の減少資産・別表十六との整合 |
よくある質問
Q. 固定資産台帳とは何ですか?
A. 建物・機械・車両・器具備品などの減価償却資産を1件ずつ1行にして、取得年月日・取得価額・耐用年数・償却方法・当期の償却費・期末の帳簿価額・除却や売却の記録を管理する帳簿です。仕訳帳や総勘定元帳が金額の動きを勘定科目ごとに集計するのに対し、固定資産台帳は資産ごとに取得から除却までを追います。法人税法施行規則 別表二十四(八)の帳簿記載事項、法人税申告書の別表十六、地方税法383条の償却資産申告の元データになります。
Q. 固定資産台帳は法律で作成が義務づけられていますか?
A. 「固定資産台帳」という名前の帳簿を命じる条文はなく、法人税法・所得税法・地方税法・会社法など11法令の全文に語は0回です。ただし法人税法施行規則54条と別表二十四(八)が、減価償却資産を種類・耐用年数ごとに区分して年月日・事由・相手方・数量・金額を記録するよう求めており、これを資産ごとに行う帳簿が固定資産台帳です。国税庁タックスアンサー No.5930 も法人が備え付ける帳簿の例として固定資産台帳を挙げています。白色申告でも法人税法150条の2・所得税法232条で帳簿の備付けが必要で、減価償却費を計算するには台帳に当たる記録が要ります。
Q. 固定資産台帳に書く項目は何ですか?
A. 資産名と種類(構造・細目)、取得年月日、事業供用日、相手方、数量、取得価額(付随費用込み)、耐用年数、償却方法、償却率、期首帳簿価額、当期償却費、期末帳簿価額、所在(設置場所)、除却・売却の年月日と金額、備考(措置法の特例・圧縮記帳など)です。法人はこれに税務上の償却限度額と償却超過額・不足額の列を足します。これらは法人税法施行規則 別表二十四(八)・法人税法施行令63条・地方税法383条が要求する項目をまとめたものです。
Q. 10万円未満や一括償却資産も固定資産台帳に載せますか?
A. 税法上の義務としては、10万円未満で取得年に全額損金にしたもの(法人税法施行令133条・所得税法施行令138条)と一括償却資産(法人税法施行令133条の2・所得税法施行令139条)は減価償却資産として償却計算をしないので、台帳に載せなくても差し支えありません。どちらも地方税法施行令49条で償却資産の申告対象から除かれています。一方、租税特別措置法28条の2・67条の5の少額減価償却資産の特例(令和8年4月1日以後の取得は40万円未満)で全額損金にした資産は、施行令49条の除外に入っていないため償却資産の申告対象に残り、台帳にも載せて管理する必要があります。
Q. 固定資産台帳は何年保存しますか?
A. 法人は法人税法施行規則59条で、帳簿を閉鎖した事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日を起算日として7年(欠損金が生じた事業年度は10年・国税庁 No.5930)、個人事業主は所得税法施行規則63条で翌年3月15日の翌日から7年です。株式会社は会社法432条2項で会計帳簿を閉鎖の時から10年保存する義務があるので、固定資産台帳も10年保存になります。毎年度の台帳がそれぞれ保存対象です。
Q. 固定資産台帳と償却資産の申告はどう関係しますか?
A. 地方税法383条は、償却資産の所有者に毎年1月1日現在の資産の所在・種類・数量・取得時期・取得価額・耐用年数・見積価額を1月31日までに市町村へ申告させます。これは固定資産台帳の列そのものなので、台帳から前年中の増加資産と減少資産を拾って申告書を作ります。除却した資産の行を台帳から消してしまうと減少資産を申告し漏れるので、行は消さず減少の記録を足します。
Q. 法人と個人事業主で固定資産台帳の作り方は違いますか?
A. 列が1本違います。法人税法31条1項は損金になる償却費を、損金経理をした金額のうち償却限度額に達するまでの金額と定めているので、法人の台帳には会計上の償却費と税務上の償却限度額の両方と、その差額(償却超過額・不足額)の列が要り、別表十六で管理します。所得税法49条1項は「計算した金額」をそのまま必要経費とするので、個人の台帳は償却費の列が1本で済みます。法定償却方法も法人は定率法(建物等を除く)、個人は定額法と違います。
Q. 固定資産台帳を会計ソフトやエクセルで作ったデータのまま保存できますか?
A. できます。固定資産台帳は電子帳簿保存法2条2号の国税関係帳簿に当たり、自分で最初から一貫して電子計算機で作成しているものは同法4条1項の要件を満たせばデータのまま保存できます。さらに過少申告加算税が5%軽減される優良な電子帳簿(同法8条4項)の対象帳簿には、電子帳簿保存法施行規則5条1項で「減価償却資産に関する事項」の帳簿、つまり固定資産台帳が含まれているので、軽減を受けるには仕訳帳・総勘定元帳だけでなく固定資産台帳も要件を満たす必要があります。
出典
- e-Gov法令検索 法人税法(昭和四十年法律第三十四号) — 第2条第23号(減価償却資産)、第31条第1項(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)、第126条第1項(青色申告法人の帳簿書類)、第150条の2第1項(帳簿書類の備付け等)。法人税法施行令 — 第13条(減価償却資産の範囲)、第48条の2・第53条(償却の方法)、第54条第1項第1号(取得価額)、第59条(事業年度の中途で事業の用に供した減価償却資産の償却限度額の特例)、第63条(減価償却に関する明細書の添付)、第133条・第133条の2(少額の減価償却資産・一括償却資産)。法人税法施行規則 — 第14条(償却の方法の選定の単位)、第54条(取引に関する帳簿及び記載事項)、第59条(帳簿書類の整理保存)、別表二十四(青色申告書の提出の承認を受けようとする法人の帳簿の記載事項)(八)、別表十六(一)〜(八)。e-Gov法令API v2 で取得して確認
- e-Gov法令検索 所得税法(昭和四十年法律第三十三号) — 第49条第1項(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)、第148条第1項(青色申告者の帳簿書類)、第149条(青色申告書に添附すべき書類)、第232条第1項(事業所得等を有する者の帳簿書類の備付け等)。所得税法施行令 — 第125条(償却の方法を選定しなかつた場合の償却の方法)、第126条第1項第1号(取得価額)、第132条第1項第1号(年の中途で業務の用に供した減価償却資産等の償却費の特例)、第134条第1項第2号(減価償却資産の償却累積額による償却費の特例)、第138条・第139条。所得税法施行規則 — 第56条〜第59条(青色申告者の帳簿書類)、第63条(帳簿書類の整理保存)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号) — 第28条の2・第67条の5(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例。令和8年8月12日施行のリビジョンで取得価額40万円未満・合計300万円・令和11年3月31日まで)
- e-Gov法令検索 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号) — 第341条第4号(償却資産)、第383条(固定資産の申告)。地方税法施行令 — 第49条(法第341条第4号の資産)
- e-Gov法令検索 会社法(平成十七年法律第八十六号) — 第432条(会計帳簿の作成及び保存)。会社計算規則 — 第117条(附属明細書)。財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 — 第121条第1項第2号(有形固定資産等明細表)
- e-Gov法令検索 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法) — 第2条第2号(国税関係帳簿)、第4条第1項、第8条第4項。同施行規則 — 第5条第1項(特例国税関係帳簿の範囲)
- e-Gov法令検索 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四十年大蔵省令第十五号) — 別表第一(器具及び備品・電子計算機・パーソナルコンピュータ 4年)、別表第八(定額法の償却率表・4年 0.250)
- 国税庁 タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間(帳簿の例として固定資産台帳を列挙・欠損金が生じた事業年度は10年)、No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度
- 国税庁 令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方(PDF) — 4ページ「減価償却費の計算」欄の記入項目
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。