償却資産税とは|免税点150万円・税率1.4%と、1月31日までの償却資産申告
結論から言うと、償却資産税という名前の税目は存在しません。あるのは固定資産税で、その課税対象のうち土地でも家屋でもない事業用の資産にかかる部分を、実務上そう呼んでいるだけです。だから税率も免税点も賦課期日も、根拠は全部地方税法の固定資産税の条文にあります。
数字だけ先に置きます。標準税率は1.4%(350条1項)、免税点は課税標準の合計150万円(351条)、賦課期日は1月1日(359条)、申告期限は1月31日(383条)。土地・家屋と違って役所が勝手に評価してくれるわけではなく、持っている側が毎年申告するのがこの税の特徴です。
そしてこの記事のいちばんの要点は、最後の見出しにあります。同じ15万円のパソコンでも、法人税・所得税でどの処理を選んだかによって、償却資産税がかかったりかからなかったりします。これは会計処理の好みの問題ではなく、地方税法施行令49条がどの規定を名指しで除外しているかで決まっています。
償却資産税は「固定資産税の一部」であって別の税ではない
地方税法341条は固定資産税の用語を定義した条文で、その4号が「償却資産」です。固定資産税の課税対象は土地・家屋・償却資産の3つに分かれており、償却資産はその3つ目にあたります。市町村から届く納税通知書が土地・家屋とは別便で来ることが多いので別の税だと思われがちですが、税率も免税点も同じ条文で決まっています。
ただし土地・家屋との間には、実務上とても大きな違いが1つあります。土地と家屋は登記簿があるので市町村が把握できますが、償却資産には登記簿がありません。だから383条が所有者に申告義務を課しています。この「自分から申告する」という構造が、償却資産税の手間のほとんどを生んでいます。
何が対象で、何が対象外か(341条4号)
341条4号の定義は長いのですが、除外されるものを拾っていくと輪郭がはっきりします。土地・家屋以外の、事業の用に供することができる資産のうち、次のものが外れます。
| 区分 | 対象になるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 機械・装置、器具・備品、パソコン、看板、駐車場の舗装などの構築物 | 対象 | 341条4号の本体 |
| 社用車・営業車(自動車税、軽自動車税の課税客体) | 対象外 | 341条4号ただし書き |
| ソフトウェア、特許権、営業権などの無形固定資産 | 対象外 | 341条4号の括弧書き(鉱業権・漁業権・特許権その他の無形減価償却資産を除く) |
| 土地・家屋 | 対象外(ただし固定資産税は別途かかる) | 341条4号の本体 |
| 10万円未満で全額を損金・必要経費にしたもの/20万円未満で一括償却資産にしたもの | 対象外 | 341条4号+施行令49条(後述) |
社用車が外れる理由は、二重課税を避けるためです。自動車には自動車税・軽自動車税がすでにかかっているので、同じものに固定資産税をかけない、という整理になっています。ただし公道を走らない構内車両やフォークリフト(小型特殊自動車に当たらないもの)は、自動車税の課税客体ではないので償却資産として対象になります。ここは実際によく漏れるところです。
もう1つ、条文には見落とされやすい括弧書きがあります。341条4号は「これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む」と書いています。つまり減価償却費を損金に入れる余地のない非課税法人が持っていても、償却資産税の対象からは外れません。「うちは法人税を払っていないから関係ない」は成り立たない、ということです。
逆に、帳簿の勘定科目は判定基準になりません。341条4号が要件にしているのは「事業の用に供することができる」ことと「その減価償却額又は減価償却費が…損金又は必要な経費に算入されるもの」であることで、どの科目に載せているかは出てきません。たとえば工事の途中で先に立ち上がった設備を建設仮勘定に置いたままにしていても、法人税基本通達7-1-4が「建設仮勘定として表示されている場合であっても、その完成した部分が事業の用に供されているときは、その部分は減価償却資産に該当する」としているため、2つ目の要件も満たします。12月に動き始めた設備は、科目を振り替えていなくても翌1月1日時点の申告対象です。ここも構内車両と並んで漏れやすいところです。
免税点150万円は「市町村ごと」に判定する(351条)
351条は、同一の者について当該市町村の区域内におけるその者の所有に係る償却資産に対して課する固定資産税の課税標準となるべき額が150万円に満たない場合は、固定資産税を課することができないと定めています(土地は30万円、家屋は20万円)。
ここで実務上の分岐が2つ出ます。
1つ目は「市町村ごと」という点です。全社で合計して判定するのではありません。A市の工場に120万円、B市の事務所に90万円の償却資産があるなら、合計は210万円ですが、どちらの市でも150万円に届いていないので、どちらも課税されません。逆に言えば、1つの市町村に集中していれば同じ総額でも課税されます。
2つ目は「課税標準となるべき額」で判定するという点です。取得価額の合計ではありません。課税標準は、賦課期日における価格(=適正な時価。341条5号)として償却資産課税台帳に登録された額です(349条の2)。その評価は、総務大臣が告示する固定資産評価基準によります(388条1項)。取得価額の合計が200万円あっても、何年か使って評価額が下がっていれば150万円を割ることがあり、その年から課税されなくなります。取得価額で見て「うちは超えている」と決めつけないでください。
1月31日までの申告義務と、申告しなかったときの過料
383条は、固定資産税の納税義務がある償却資産の所有者は、毎年1月1日現在における償却資産について、その所在、種類、数量、取得時期、取得価額、耐用年数、見積価額その他必要な事項を、1月31日までにその償却資産の所在地の市町村長に申告しなければならない、と定めています。
申告するのは「所在地」の市町村です。本店所在地ではありません。支店や工場、倉庫が他の市町村にあるなら、その市町村それぞれに申告します。免税点も市町村ごとの判定なので、この単位は最後まで揃っています。
少額資産の処理の選び方が、そのまま課税・非課税を決める
ここがこの記事の核心です。341条4号は「その取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの」と書いて、除外の中身を政令に投げています。その政令が地方税法施行令49条で、原文はこうです。
法第三百四十一条第四号に規定する政令で定める資産は、法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上、法人税法施行令第百三十三条第一項若しくは第百三十三条の二第一項又は所得税法施行令第百三十八条第一項若しくは第百三十九条第一項の規定によりその取得価額の全部又は一部が損金又は必要な経費に算入される資産とする。ただし、(中略)リース資産にあつては、当該リース資産の所有者が当該リース資産を取得した際における取得価額が二十万円未満のものとする。
名前が挙がっているのは、法人なら法人税法施行令133条1項(10万円未満の全額損金)と133条の2第1項(20万円未満の一括償却資産・3年均等)の2つだけです。個人事業主はこれに対応する所得税法施行令138条1項・139条1項が挙がっています。
そして挙がっていないものがあります。中小企業者等の少額減価償却資産の特例(租税特別措置法67条の5)です。これは租税特別措置法の規定であって、施行令49条が名指しした法人税法施行令の2つの条文ではありません。だからこの特例で全額を損金にしても、償却資産税の対象からは外れません。
| 取得価額 | 選べる処理 | 損金算入 | 償却資産税 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 全額損金(法令133条1項) | その年に全額 | かからない |
| 20万円未満 | 一括償却資産(法令133条の2第1項) | 3年で均等に | かからない |
| 40万円未満 (中小企業者等・青色申告) | 少額減価償却資産の特例(措置法67条の5) | その年に全額(年300万円まで) | かかる |
| 金額の上限なし | 通常の減価償却 | 耐用年数にわたって | かかる |
措置法67条の5の上限が40万円未満になったのは令和8年4月1日以後に取得したものからで、それ以前の取得は30万円未満です。適用期限も令和11年3月31日まで延長されています(e-Gov で改正前後の条文を突き合わせて確認)。金額の区分そのものの詳しい判定は 少額減価償却資産と一括償却資産の記事 にまとめています。
どの区分に入るかは取得価額で決まります。通常の減価償却を選んだ場合に毎年いくら費用になるかは、上のツールで取得価額と耐用年数を入れると確認できます(国税の減価償却費の計算です。償却資産税の評価額とは別の計算になります)。
税額の計算と、間違えやすいところ
税額は課税標準 × 1.4%です(350条1項)。課税標準は、賦課期日における価格として償却資産課税台帳に登録された額(349条の2)で、取得価額そのものではありません。
たとえば、ある市に所在する償却資産について、台帳に登録された価格の合計が1,800,000円だったとします。150万円以上なので免税点は超えており、税額は次のようになります。
| 項目 | 金額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 課税標準(台帳登録価格の合計) | 1,800,000円 | 349条の2 |
| 免税点の判定 | 1,800,000円 ≧ 1,500,000円 → 課税 | 351条 |
| 標準税率 | 1.4% | 350条1項 |
| 年税額 | 25,200円(1,800,000 × 0.014) | — |
1.4%は標準税率なので、市町村がこれと違う税率を条例で定めることもできます。350条2項は、1.7%を超える税率を定めようとする場合について、その市町村の固定資産税の課税標準の総額の3分の2を超える課税標準を占める納税義務者がいるときは、議会でその納税義務者の意見を聴く手続を定めています。1つの大工場に税収が偏っている自治体を想定した規定です。
間違えやすい点を3つ挙げます。
| よくある誤解 | 実際 |
|---|---|
| 免税点未満なら申告しなくてよい | 383条の申告義務は納税義務がある所有者に課されており、課税されるかどうかは申告された内容を評価してはじめて決まります。実務上は該当なしを含めて申告を求める市町村が多く、免税点未満を理由に自己判断で出さないのは危険です |
| 年の途中で買った資産はその年から課税される | 賦課期日は1月1日(359条)。12月に買った資産は翌年1月1日時点で所有しているので翌年度から、1月に買った資産は翌年の1月1日を待つことになります |
| 年の途中で捨てた資産は日割りで減る | 賦課期日主義なので日割りはありません。1月1日に持っていたかどうかだけで決まります。逆に言えば、除却するなら年末までに実際に処分しておくことに意味があります |
もう1つ、決算前によく確認が必要になるのが修繕費と資本的支出の切り分けです。資本的支出として資産に計上したものは、償却資産としての申告対象にもなります。判定基準は 修繕費と資本的支出の違いの記事 にまとめています。
よくある質問
Q. 償却資産税と固定資産税は別の税金ですか?
A. 別の税金ではありません。地方税法に「償却資産税」という税目はなく、固定資産税の課税対象が土地・家屋・償却資産の3つに分かれているうちの3つ目を、実務上そう呼んでいるだけです。税率1.4%も賦課期日1月1日も、土地・家屋と同じ条文(350条・359条)で決まっています。違うのは、土地・家屋には登記簿があるのに償却資産にはないため、383条で所有者に申告義務が課されている点です。
Q. 社用車には償却資産税がかかりますか?
A. かかりません。341条4号のただし書きが、自動車税の課税客体である自動車と、軽自動車税の課税客体である原動機付自転車・軽自動車・小型特殊自動車・二輪の小型自動車を、償却資産から除いています。自動車税・軽自動車税との二重課税を避けるための整理です。ただし、これらの課税客体に当たらない構内専用の車両や大型特殊自動車は除外されないため、償却資産として申告の対象になります。ナンバープレートが付いているかどうかで見当をつけ、判断に迷うものは所在地の市町村にご確認ください。
Q. 少額減価償却資産の特例で全額を経費にしました。償却資産税はかかりますか?
A. 一般に、かかります。地方税法施行令49条が償却資産から除く資産として名前を挙げているのは、法人税法施行令133条1項(10万円未満の全額損金)と133条の2第1項(20万円未満の一括償却資産)、および個人の所得税法施行令138条1項・139条1項です。中小企業者等の少額減価償却資産の特例は租税特別措置法67条の5の規定であり、この列挙に含まれていません。したがって法人税・所得税では全額が損金・必要経費になっていても、償却資産税の対象からは外れないという扱いになります。
Q. 償却資産の合計が150万円未満なら、申告しなくてよいですか?
A. 免税点を下回れば課税はされませんが(351条)、それは申告しなくてよいという意味ではありません。383条の申告義務は課税されるかどうかとは別に定められており、150万円という判定は申告された資産を市町村が評価してはじめて確定するものです。加えて351条にはただし書きがあり、財政上その他特別の必要がある場合には条例で150万円未満でも課税できるとされています。申告書の提出方法や該当なしの場合の取扱いは市町村ごとに案内が異なるので、所在地の市町村の案内をご確認ください。
Q. 東京23区に事務所がある場合、どこに申告しますか?
A. 都税事務所です。地方税法734条1項は、都は特別区の存する区域において、都を市とみなして固定資産税の規定を準用すると定めています。条文の文言は「市町村長」ですが、23区内についてはその役割を都が担う建て付けです。23区外の東京都内の市町村については、通常どおりその市町村が窓口になります。事業所が複数の市町村にまたがる場合は、それぞれの所在地に申告することになります。
出典
- e-Gov法令検索「地方税法」(昭和二十五年法律第二百二十六号)第341条第4号・第5号(償却資産と価格の定義、無形減価償却資産と自動車税の課税客体の除外、政令で定める資産の除外)・第349条の2(償却資産に対して課する固定資産税の課税標準は賦課期日における価格で償却資産課税台帳に登録されたもの)・第350条第1項第2項(標準税率100分の1.4、1.7%超の条例と議会手続)・第351条(免税点。土地30万円、家屋20万円、償却資産150万円と、条例による例外のただし書き)・第359条(賦課期日は当該年度の初日の属する年の1月1日)・第383条(1月31日までの申告と申告事項)・第386条(不申告に関する過料、条例で10万円以下)・第388条第1項(総務大臣が固定資産評価基準を定め告示する)・第734条第1項(都における普通税の特例、都を市とみなす準用)。API v2で本則を取得
- e-Gov法令検索「地方税法施行令」(昭和二十五年政令第二百四十五号)第49条(法第341条第4号の資産。法人税法施行令133条1項・133条の2第1項、所得税法施行令138条1項・139条1項により取得価額の全部または一部が損金・必要経費に算入される資産と、リース資産についての取得価額20万円未満のただし書き)。API v2で本則を取得
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」(昭和四十年政令第九十七号)第133条第1項(取得価額10万円未満または使用可能期間1年未満の減価償却資産の損金算入)・第133条の2第1項(取得価額20万円未満の一括償却資産を3年で損金算入する方法)。API v2で本則を取得
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(昭和三十二年法律第二十六号)第67条の5第1項(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例。取得価額40万円未満、年300万円限度、平成18年4月1日から令和11年3月31日までの取得)。API v2で現行の本則と、令和8年4月1日より前に施行されていたリビジョン(取得価額30万円未満、令和8年3月31日まで)の両方を取得して突き合わせ
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。償却資産税は市町村が課する税であり、税率や免税点の取扱い、申告書の様式、少額資産の取扱いの細目は条例や各市町村の運用によって異なることがあります。また、ある資産が償却資産に当たるか、資本的支出に当たるかの判定は事実関係によって分かれます。申告にあたっては、所在地の市町村および顧問税理士にご確認ください。