減価償却とは? 法人は「やらなくてもいい」、個人は「やらなければならない」
- 減価償却とは、固定資産の取得価額を、使う年数にわたって少しずつ費用に振り替える手続きです。買った年に全額を経費にはできません。
- ただし法人と個人で義務が違います。法人税法31条は「損金経理をした金額のうち償却限度額に達するまで」と書き、所得税法49条は同じ位置にその2つを書いていません。結果、法人は償却しない自由があり、個人にはありません。
- 届出をしないときの償却方法も逆です。法人は定率法・個人は定額法(法人税法施行令53条/所得税法施行令125条)。同じ構造の政令で、結論だけが入れ替わっています。
- 土地は減価償却できません。条文が挙げる9種類に入っておらず、柱書が「時の経過によりその価値の減少しないもの」を除いているためです。
減価償却は「30万円のパソコンを買ったのに、今年の経費は6万円だけ」という、経理でいちばん納得しづらい処理です。会計の教科書は「費用収益対応の原則」と説明しますが、実務で効いてくるのはそこではありません。税法が、いくらまでを損金・必要経費として認めるかという上限の話です。
そしてこの上限の決まり方が、法人と個人でまったく違います。条文を並べると差は2か所しかないのに、実務上の結論は「やってもやらなくてもいい」と「やらないという選択肢がない」に分かれます。ここを取り違えると、法人では黒字調整の手段を一つ知らないまま決算を組むことになり、個人では「今年は赤字だから償却をやめておく」という、認められない処理をしてしまいます。
この記事では、減価償却の意味から始めて、その法人・個人の差、方法の選び方、そして平成19年改正で条文から何が消えたのかまでを、条文の実物で確認します。耐用年数の決め方は減価償却の耐用年数、10万円・20万円・30万円の判定は少額減価償却資産と一括償却資産に譲ります。
減価償却とは何か — 条文は9種類しか挙げていない
減価償却とは、建物や機械のように長く使う資産について、買ったときに全額を費用にせず、使う年数(耐用年数)にわたって分けて費用にしていく手続きです。分けた1年分を減価償却費といいます。
では何が対象になるのか。法人税法2条23号は「減価償却資産」をこう定義します。
建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう。
「政令で定めるもの」の中身が法人税法施行令13条です。その柱書に、対象外がまとめて書かれています。
棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。
ここから3つのことが読めます。
- 棚卸資産・有価証券・繰延資産は最初から外。売る目的の在庫は減価償却しません。
- 事業の用に供していないものは外。買っただけで倉庫に置いてある機械は、まだ償却が始まりません(この「いつから」は後述の落とし穴で扱います)。
- 時の経過によりその価値の減少しないものは外。土地がここに当たります。美術品も一定のものはここに落ちます(後述)。
そして「次に掲げるもの」として列挙されているのは9号までです。1号 建物及びその附属設備/2号 構築物/3号 機械及び装置/4号 船舶/5号 航空機/6号 車両及び運搬具/7号 工具、器具及び備品/8号 無形固定資産(鉱業権・漁業権・ソフトウエアなど)/9号 生物。この列挙のどこにも土地はありません。
減価償却は相場の変動を写す手続きではないからです。条文が見ているのは「時の経過によって価値が減るか」であって、市況で上下するかどうかではありません。土地は使っても時の経過では減らないと整理されているため、値下がりしても償却の対象になりません(評価損の可否は別の条文の話です)。
法人は任意、個人は強制 — 条文の差はたった2か所
ここが、実務でいちばん効くのに解説記事であまり書かれない論点です。法人と個人では、減価償却をやるかどうかの自由度が違います。
法人税法31条1項は、こう始まります。
内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につきその償却費として第二十二条第三項(各事業年度の所得の金額の計算の通則)の規定により当該事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額
そして「…のうち」と続き、政令で計算した金額(=償却限度額)「に達するまでの金額とする」で終わります。
一方、所得税法49条1項は、ほとんど同じ文型です。
居住者のその年十二月三十一日において有する減価償却資産につきその償却費として第三十七条(必要経費)の規定によりその者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、
この続きは「…政令で定めるところにより計算した金額とする」です。並べると、法人側にだけ存在するものが2つあります。
| 法人(法人税法31条1項) | 個人(所得税法49条1項) | |
|---|---|---|
| 金額の入口 | 損金経理をした金額のうち | (この条件が無い) |
| 金額の出口 | 償却限度額に達するまでの金額 | 計算した金額とする |
| 帳簿に計上しなかったら | 損金にならない(経理した分だけ) | 関係なく必要経費になる |
| 実務上の呼び方 | 任意償却(限度額が天井) | 強制償却 |
法人側の「損金経理をした金額のうち」は、帳簿に減価償却費として計上していない限り、税務上も損金にならないという意味です。そして「達するまでの金額」は、限度額が天井であって床ではないことを意味します。0円でもよく、限度額の半分でもよい。足りない分は翌期以降に繰り越して使えます(償却不足額)。
個人側にはその2つがありません。「計算した金額とする」と書き切っているので、帳簿にどう書こうと、その年の必要経費はその金額です。青色申告決算書に償却費を書かなかったからといって、翌年に持ち越せるわけではありません。
法人税は「確定した決算に基づいて申告する」建て付け(確定決算主義)を取っており、損金経理という橋を渡さないと税務に反映しない項目があります。減価償却費はその代表です。所得税にはこの橋が無く、条文が金額を直接決めています。用語の違いではなく、税目の構造の違いだと考えると覚えやすくなります。
なお法人の任意償却は「償却しない自由がある」という意味であって、会計上は毎期規則的に償却すべきとされている点は別問題です。金融機関に決算書を出す場面では、償却不足は利益の水増しとして読まれます。
定額法と定率法 — 届出をしないと法人は定率法、個人は定額法
償却の方法は主に2つです。
- 定額法… 毎年同じ金額を償却する。取得価額 × 定額法償却率。
- 定率法… 毎年同じ割合で減っていく。期首の帳簿価額 × 定率法償却率。最初が大きく、後になるほど小さい。
どちらを使うかは届出(償却方法の選定の届出)で選べます。問題は、届け出なかったときにどうなるかです。ここで法人と個人が入れ替わります。
法人税法施行令53条は、こう始まります。
法第三十一条第一項(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)に規定する償却の方法を選定しなかつた場合における政令で定める方法は、次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める方法とする。
所得税法施行令125条も、条番号が変わるだけでまったく同じ文型です。ところが、平成19年4月1日以後に取得した資産についての結論が逆になっています。
| 取得した時期 | 法人(法令53条) | 個人(所令125条) |
|---|---|---|
| 平成19年3月31日以前 | 旧定率法 | 旧定額法 |
| 平成19年4月1日以後 | 定率法 | 定額法 |
つまり同じ機械を買っても、法人なら何もしなければ定率法、個人事業主なら何もしなければ定額法になります。法人が定額法を使いたい、個人が定率法を使いたい場合は、それぞれ届出が要ります。
個人事業主が法人成りした年に、同種の資産を「去年と同じ計算でいいだろう」と定額法のまま組むと、法人側では届出をしていない限り法定は定率法なので、償却限度額の計算が変わります。法人は任意償却なので限度額を下回る分には問題になりませんが、限度額を超えて償却していれば否認されます。逆に個人側で定率法を使うつもりなら、その年の確定申告期限までに届出が必要です。
建物だけは選べない。平成28年4月1日でもう一段狭まった
「定額法か定率法かを選べる」と書きましたが、資産の種類によっては選べません。法人税法施行令48条の2第1項1号は、建物・建物附属設備・構築物についてこう区切っています。
平成二十八年三月三十一日以前に取得をされた減価償却資産(建物を除く。)
この括弧書きが効きます。建物はこの区分から外れるため、定額法・定率法を選べる枠に入りません。そして「イに掲げる減価償却資産以外の減価償却資産」は定額法と定められています。
| 資産の種類 | 平成28年3月31日以前に取得 | 平成28年4月1日以後に取得 |
|---|---|---|
| 建物 | 定額法のみ(時期を問わない) | |
| 建物附属設備・構築物 | 定額法・定率法から選べる | 定額法のみ |
| 機械及び装置・車両及び運搬具・工具器具備品 など | 定額法・定率法から選べる(法人の法定は定率法/個人の法定は定額法) | |
| 無形固定資産(ソフトウエア等) | 定額法 | |
実務では内装工事でこれが効きます。テナントの内装は建物附属設備に振り分けられる部分が多く、平成28年4月1日以後に取得したものは定率法を選べません。「初年度に大きく落としたい」という期待は、この一段でほぼ封じられています。
平成19年に条文から消えた一句 — 残存価額
減価償却の説明で「残存価額10%」という言葉を見かけることがありますが、これは今の制度の話ではありません。何が変わったのかは、旧制度と新制度の定義文を並べると一目で分かります。
まず旧定額法(平成19年3月31日以前に取得した資産)の定義です。
当該減価償却資産の取得価額からその残存価額を控除した金額にその償却費が毎年同一となるように当該資産の耐用年数に応じた償却率を乗じて計算した金額
次に、現行の定額法の定義です。
当該減価償却資産の取得価額にその償却費が毎年同一となるように当該資産の耐用年数に応じた償却率
消えたのは「からその残存価額を控除した金額」という一句だけです。それ以外はそのまま残っています。平成19年度改正がやったのは、計算式の起点を「取得価額-残存価額」から「取得価額」に変えることでした。
この一句が消えた効果は大きく2つあります。
- 償却の基礎が増えた。取得価額の90%ではなく100%を割り振ることになり、1年あたりの償却費が上がりました。
- 「償却率=1÷耐用年数」で素直に出るようになった。耐用年数5年なら0.200、10年なら0.100です。旧定額法の償却率は残存価額を前提に別に定められていました。
なお定率法の償却率も、条文が定額法償却率から導く形で書かれています。平成24年4月1日以後に取得した資産の定率法償却率は定額法償却率の2倍(それ以前は2.5倍)です。耐用年数5年なら 0.200 × 2 = 0.400 になります。
償却の天井も動いた — 95%から「1円」へ
もう一つ、平成19年で変わったのがどこまで償却できるかです。法人税法施行令61条1項が、取得時期で2つに分けています。
| 取得した時期 | 償却できる累計額の上限(条文の言葉) | 残る帳簿価額 |
|---|---|---|
| 平成19年3月31日以前(1号) | 取得価額の百分の九十五に相当する金額 | 取得価額の5% |
| 平成19年4月1日以後(2号) | その取得価額から一円を控除した金額に相当する金額 | 1円 |
条文はそれぞれこう書いています。まず現行(2号)。
その取得価額から一円を控除した金額に相当する金額
旧制度(1号)は次のとおりです。
百分の九十五に相当する金額
この1円が「備忘価額」です。帳簿価額を0円にしてしまうと資産が帳簿から消えてしまうため、まだ持っていることを示す1円だけを残します。売却も除却もしていないのに帳簿から消えることを防ぐための1円であって、税額を1円分だけ守っているわけではありません。
平成19年3月31日以前に取得した資産は、95%まで償却したあと5%が残ったまま止まります。この残りは、そこから5年間の均等償却で1円まで落とす扱いが別途用意されています(法人税法施行令61条2項)。「なぜかこの資産だけ残高が動かない」という固定資産台帳を引き継いだら、まず取得日を見てください。
120万円・5年で並べてみる
取得価額 1,200,000円、耐用年数 5年、期首に事業供用、平成24年4月1日以後の取得として、定額法と定率法を並べます。使う率は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表からの値です。
- 定額法償却率(5年)… 0.200
- 定率法償却率(5年)… 0.400/改定償却率 0.500/保証率 0.10800
定率法では、その年の償却額が償却保証額(取得価額 × 保証率 = 1,200,000 × 0.10800 = 129,600円)を下回った年から、計算の仕方が切り替わります。その年の期首帳簿価額を「改定取得価額」として、以後は改定償却率を掛けた同額を償却します。
| 年 | 定額法の償却費 | 定額法の期末簿価 | 定率法の償却費 | 定率法の期末簿価 |
|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 240,000 | 960,000 | 480,000 | 720,000 |
| 2年目 | 240,000 | 720,000 | 288,000 | 432,000 |
| 3年目 | 240,000 | 480,000 | 172,800 | 259,200 |
| 4年目 | 240,000 | 240,000 | 129,600 (切替) | 129,600 |
| 5年目 | 239,999 | 1 | 129,599 | 1 |
| 累計 | 1,199,999 | 1,199,999 |
4年目の計算を追うと切替が分かります。期首簿価 259,200 × 0.400 = 103,680 で、これは償却保証額 129,600 を下回ります。そこで 259,200 を改定取得価額とし、259,200 × 0.500 = 129,600 を償却します。5年目も同じ 129,600 ですが、1円を残すため 129,599 になります。
どちらも5年間の合計は 1,199,999円で同じです。違うのは配分だけで、定率法は1年目に定額法の2倍を落とします。総額が同じである以上、定率法は「得」ではなく「前倒し」です。初年度に利益が出ている年ほど効きますが、5年通算では変わりません。
実務の落とし穴
1. 償却が始まるのは「買った日」ではなく「使い始めた日」
施行令13条の柱書が「事業の用に供していないもの」を除いているとおりです。3月に納品されて4月から稼働した機械は、3月末決算ならその期の償却はゼロです。そして期の途中で使い始めた場合は月割りになります(使い始めた月を1か月と数えます)。
2. 稼働を止めていても、償却が止まるとは限らない
「事業の用に供していない」に当たるかどうかは、動かしているかどうかだけでは決まりません。法人税基本通達7-1-3は、稼働を休止している資産について次のように扱うとしています。
稼働を休止している資産であっても、その休止期間中必要な維持補修が行われており、いつでも稼働し得る状態にあるものについては、減価償却資産に該当するものとする。
維持補修をして、いつでも動かせる状態にしてあるなら償却を続けられます。逆に、放置して動かせなくなっている設備は、置いてあるだけでは償却できません。季節稼働の設備やライン停止中の機械で必ず問われる論点です。
3. 美術品は「1点100万円」で扱いが割れる
法人税基本通達7-1-1は、①古美術品・古文書・出土品・遺物等のように歴史的価値または希少価値があって代替性のないもの、②それ以外の美術品等で取得価額が1点100万円以上のもの(時の経過により価値が減少することが明らかなものを除く)を、「時の経過によりその価値の減少しない資産」として扱うとしています。そしてその注記が逆側を定めています。
取得価額が1点100万円未満であるもの(時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなものを除く。)は減価償却資産と取り扱う。
つまり応接室に飾る100万円未満の絵は、原則として減価償却できます。100万円は消費税込みか抜きかで動くので、経理方式の影響を受ける点にも注意が必要です。
4. 法人の「償却不足額」は消えないが、決算書には効く
限度額まで償却しなかった分は、翌期以降に限度額の枠として残ります。税金の面では取り返せますが、その期の決算書の利益は実力より大きく見えます。銀行に出す資料では、償却不足を注記なしに放置すると信用の話になります。
5. 個人は「赤字だから償却をやめる」ができない
所得税法49条が「計算した金額とする」と書き切っているためです。赤字の年に償却を止めて翌年に回す、という調整はできません。青色申告なら純損失の繰越という別の制度で受けます。
6. 10万円未満・20万円未満・40万円未満(令和8年3月31日以前の取得は30万円未満)は、そもそも別ルート
取得価額が小さい資産には、全額を経費にする道や3年均等で落とす道があります。判定の順序と、一括償却資産だけ償却資産税がかからないという差は、少額減価償却資産と一括償却資産にまとめています。
7. 耐用年数は自分では決められない
「うちは3年で使い潰すから3年」は通りません。省令の別表で資産ごとに決まっています。中古資産だけは簡便法で短くできます(減価償却の耐用年数)。
8. 修繕したつもりが資産になることがある
修理の支出でも、使用可能期間を延ばしたり価値を高めたりする部分は資本的支出として資産計上し、減価償却の対象になります(修繕費と資本的支出の違い)。
9. 償却した分を貸借対照表でどう見せるかは、別に決まっている
ここまでは「いくら償却するか」の話でした。償却した累計をどう表示するかは、税法ではなく会社計算規則と財務諸表等規則が決めています。そして条文の原則は、多くの人の感覚とは逆に、減価償却累計額を資産の控除項目として見せる方(通称 間接法)です(会社計算規則79条1項は「表示しなければならない」、直接控除する方は同条2項の「できる」)。方式を変えても損金経理額は同額なので法人税額は1円も変わりませんが、直接控除にすると計算書類から取得原価と累計額が消えます。上の「4. 償却不足額は決算書に効く」と同じで、これは銀行や取引先に何が見えるかの話です。詳しくは減価償却累計額とはにまとめました。
よくある質問
Q. 減価償却とは、結局なんのための手続きですか?
A. 長く使う資産の取得価額を、買った年に一度に費用とせず、使う年数にわたって分けて費用にするための手続きです。税法の側から見ると、その年に損金または必要経費として認める金額の上限を決める仕組みでもあります。法人税法31条1項は「償却限度額に達するまでの金額」と書いており、限度額を超えた分はその年の損金になりません。
Q. 法人は減価償却をしなくてもよいというのは本当ですか?
A. 税務上はそのとおりです。法人税法31条1項が、損金に算入する金額を、その償却費として損金経理をした金額のうち償却限度額に達するまでの金額としているため、帳簿に減価償却費を計上しなければ税務上も損金になりません。限度額は天井であって下限ではないので、0円でも構いません。ただし会計上は毎期規則的に償却することが求められており、償却不足のある決算書は利益が実力より大きく見える点には注意が必要です。
Q. 個人事業主も、赤字の年は減価償却を見送れますか?
A. 見送れません。所得税法49条1項は必要経費に算入する金額を「政令で定めるところにより計算した金額とする」と書き切っており、法人税法にある「損金経理をした金額のうち」「達するまでの」に相当する文言がありません。帳簿への計上の有無にかかわらずその年の必要経費はその金額になるため、翌年に持ち越すことはできません。赤字は青色申告の純損失の繰越で受けることになります。
Q. 届出をしていない場合、定額法と定率法のどちらになりますか?
A. 平成19年4月1日以後に取得した資産であれば、法人は定率法、個人は定額法です。根拠は法人税法施行令53条と所得税法施行令125条で、条文の構造は同じですが定める方法が入れ替わっています。ただし建物は時期を問わず定額法のみ、建物附属設備と構築物も平成28年4月1日以後に取得したものは定額法のみで、そもそも選択の対象になりません。
Q. 土地はなぜ減価償却できないのですか?
A. 法人税法施行令13条が減価償却資産として列挙する9種類に土地が含まれておらず、さらに柱書が「時の経過によりその価値の減少しないもの」を除いているためです。ここで見ているのは相場の変動ではなく時の経過による価値の減少なので、地価が下がったことは減価償却の理由になりません。
Q. 帳簿価額を0円にせず1円を残すのはなぜですか?
A. 法人税法施行令61条1項が、平成19年4月1日以後に取得した資産について償却できる累計額の上限を「その取得価額から一円を控除した金額に相当する金額」としているためです。この1円は備忘価額と呼ばれ、まだ資産を保有していることを帳簿上に残す役割があります。売却や除却をした時点で、この1円も落とすことになります。
出典
- e-Gov法令検索 法人税法(昭和四十年法律第三十四号) — 第2条第23号(減価償却資産の定義)、第31条第1項(償却費の損金算入。損金経理額のうち償却限度額に達するまでの金額)。e-Gov法令API v2 で取得(令和8年8月19日時点の施行版)
- e-Gov法令検索 所得税法(昭和四十年法律第三十三号) — 第49条第1項(償却費の必要経費算入。政令で計算した金額とする)。同上
- e-Gov法令検索 法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号) — 第13条(減価償却資産の範囲。柱書の除外と1号〜9号の列挙)、第48条第1項(旧定額法の定義)、第48条の2第1項(平成19年4月1日以後取得の償却方法。建物の除外と平成28年3月31日の区切り)、第53条(選定しなかった場合の方法=定率法)、第61条第1項(償却の累積限度。95%と1円)。同上
- e-Gov法令検索 所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号) — 第125条(選定しなかった場合の方法=定額法)。同上
- 国税庁 法人税基本通達 第7章第1節第1款「減価償却資産」 — 7-1-1(美術品等についての減価償却資産の判定。古美術品等と1点100万円以上、注2の1点100万円未満は減価償却資産)、7-1-3(稼働休止資産)。国税庁サイトから生テキストを取得して逐語照合
- e-Gov法令検索 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四十年大蔵省令第十五号) — 別表第十(平成二十四年四月一日以後に取得をされた減価償却資産の定率法の償却率、改定償却率及び保証率の表)。耐用年数5年の定率法償却率0.400・改定償却率0.500・保証率0.10800を実取得して確認。定額法償却率0.200は、法人税法施行令48条の2第1項第1号イ(2)が定率法償却率を定額法償却率の2倍と定義していることから逆算して照合
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。