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減価償却累計額とは|負債ではなく資産の控除項目。間接法が原則で直接法が例外

結論から言うと、減価償却累計額とは、その資産についてこれまでに計上した減価償却費の合計額を、資産のマイナスとして貸借対照表に置いた項目です。仕訳では貸方に立つので負債のように見えますが、負債ではありません。条文はこれを「控除項目」と呼んでおり、負債の部に何を並べるかを列挙した会社計算規則75条2項のどこにも入っていません。

この違いは見た目の話では終わりません。累計額を負債と読み違えると、自己資本比率70.0%の会社が59.3%に見えます(後述の設例)。しかも誤った読み方でも貸借は一致してしまうので、数字が合っていることは何の安全装置にもなりません。

そしてもう一つ。実務で誰もが使う「間接法」「直接法」という呼び名は、法令に一度も出てきません。会社法・会社計算規則・財務諸表等規則・法人税法・同施行令・同施行規則・所得税法・商法の本文をすべて取得して数えたところ、合計 4,253,426字に対して0回でした。条文は方式に名前を与えず、形だけを書き分けているのです。そして原則と例外は、多くの人の感覚とは逆向きに書かれています。

貸方に立つが、負債ではない — 条文は「控除項目」と呼んでいる

減価償却の仕訳を間接法で書くと、こうなります。

借方金額貸方金額
減価償却費600,000減価償却累計額600,000

貸方に立ち、期を追うごとに残高が増えていく。ここまでは負債とまったく同じ動き方です。だから「これは負債なのか」という疑問が出ます。答えは、条文がどこに置いているかで決まります。

会社計算規則は、貸借対照表を資産・負債・純資産の3つの部に分け(73条1項)、負債の部に属するものを75条2項で列挙しています。そこに並ぶのは支払手形・買掛金・前受金・引当金・未払費用・前受収益・リース負債・資産除去債務・社債・長期借入金・退職給付引当金・繰延税金負債・のれんなどで、減価償却累計額はここに1つも出てきません。

では、どこに書かれているのか。資産の側です。減価償却累計額の表示を定めているのは79条で、貸借対照表の「資産」を扱う一連の条文(74条以下)の中に置かれています。条文の言葉はこうです。

各有形固定資産に対する減価償却累計額は、次項の規定による場合のほか、当該各有形固定資産の項目に対する控除項目として、減価償却累計額の項目をもって表示しなければならない。

「当該各有形固定資産の項目に対する控除項目として」。つまりこの科目の身分は、資産のマイナスです。負債ではなく、資産の部の中で資産を減らす役をしています。

同じ棚に置かれているのは、貸倒引当金
一つ前の78条1項は、貸倒引当金について同じ構文で書かれています。
各資産に係る引当金は、次項の規定による場合のほか、当該各資産の項目に対する控除項目として、貸倒引当金その他当該引当金の設定目的を示す名称を付した項目をもって表示しなければならない。
「引当金」という名前が付いていても、資産に係る引当金は負債ではなく控除項目です。会社計算規則75条2項1号ニ・2号ハが、負債に属する引当金からわざわざ「資産に係る引当金」を除いているのは、そのためです。減価償却累計額は、この貸倒引当金と同じ棚にあります。

負債と読み違えると、自己資本比率が10.7ポイント狂う

「表示上の分類の話でしょう」と流せない理由が、ここにあります。取得価額6,000,000円・累計額1,800,000円の機械だけを持つ会社を考えます。ほかの資産が5,800,000円、負債が3,000,000円、純資産が7,000,000円だとします。

正しい読み方
(資産の控除項目)
誤った読み方
(負債として足す)
機械装置4,200,0006,000,000
その他の資産5,800,0005,800,000
資産合計10,000,00011,800,000
負債(累計額を含めるか)3,000,0004,800,000
純資産7,000,0007,000,000
自己資本比率70.0%59.3%

同じ会社が、70.0%にも59.3%にも見えます。差は10.7ポイント。融資や取引先の与信でこの水準の差は小さくありません。

いちばん怖いのは、誤った側でも貸借が一致すること
誤った読み方でも、負債4,800,000+純資産7,000,000=11,800,000で資産合計と一致します。「貸借が合っているから正しい」は、この誤りに対して何の検算にもなりません。累計額を資産から引いても負債に足しても、差額はどちらも同じ1,800,000だからです。検算するなら、資産合計が簿価ベースになっているかを直接見るしかありません。
同じ機械(取得600万円・累計180万円)の見え方 控除項目として示す(通称 間接法) 機械装置 6,000,000 減価償却累計額 △1,800,000 差引 4,200,000 取得原価と使い減りの両方が見える 直接控除する(通称 直接法) 機械装置 4,200,000 取得原価も累計額も表からは消える 財規なら注記で残る/計規なら残らない (本文「直接法にすると…」参照) どちらでも資産合計は 4,200,000 で同じ 控除項目は資産の部の中で資産を減らすので、総資産は増えない。 もし負債だったら、総資産は 6,000,000 のまま・負債が 1,800,000 増える。 = 自己資本比率が 70.0% から 59.3% に見える(10.7ポイントの差)。 条文の言葉は「控除項目」(会社計算規則79条1項)。負債の部を列挙した75条2項には無い。
控除項目として示すか直接控除するかで、資産合計は変わらない。変わるのは「取得原価と使い減りが読めるかどうか」。負債と読み違えたときだけ、総資産と自己資本比率が動く。

「間接法」「直接法」は、どの法令にも1回も出てこない

ここからは条文の側を見ます。まず実測から示します。e-Gov法令検索のAPIで各法令の本文全文を取得し、語の出現回数を数えました。

法令種別本文の字数減価償却
累計額
間接法直接法
会社法法律457,3930回0回0回
商法法律84,3510回0回0回
法人税法法律600,5200回0回0回
法人税法施行令政令1,184,2210回0回0回
法人税法施行規則省令545,4750回0回0回
所得税法法律1,095,6380回0回0回
会社計算規則省令112,44216回0回0回
財務諸表等規則省令173,38622回0回0回
合計4,253,42638回0回0回

簿記の教科書にも、会計ソフトの画面にも、税理士との会話にも出てくる「間接法」「直接法」という呼び名は、425万字を数えて1回も出てきません。「控除形式」という言い方も0回でした。

これは言葉遊びではなく、読み方の指針になります。条文は方式に名前を付けず、やり方だけを二通り書き分けている。だから「うちは間接法だが法令上どうか」と条番号を探しても見つかりません。探すべきは名前ではなく、控除項目として表示することを義務づけた文(会社計算規則79条1項・財務諸表等規則25条)と、直接控除を認めた文(同79条2項・同26条1項)の2か所です。

名前を与えているのは省令2本 — 税法には0回

上の表がもう一つ示しているのは、減価償却累計額という科目に名前を与えているのが省令2本だけだということです。会社法にも商法にも0回。法人税法にも、その施行令・施行規則にも、所得税法にも0回です。

会社計算規則財務諸表等規則
根拠会社法(計算書類)金融商品取引法(財務諸表)
適用される会社株式会社・持分会社有価証券報告書などを提出する会社
有形固定資産の累計額79条25条・26条
無形固定資産の累計額81条30条
繰延資産の償却累計額84条
減損損失累計額80条26条の2

ふだんの中小企業の決算書に効くのは、左の会社計算規則です。財務諸表等規則は上場会社などが金融商品取引法にもとづいて提出する財務諸表の規則で、両者は似ていますが、後述のとおり注記の要否が違います

2本の条文を引き写すときの注意
会社計算規則は「もって」、財務諸表等規則は「もつて」と書きます。財務諸表等規則は昭和38年の省令で、当時の公用文の表記が残っているためです。無形固定資産の条文も、会社計算規則81条が「当該各無形固定資産の金額から」、財務諸表等規則30条が「当該無形固定資産の金額から」と、「各」の有無が違います。逐語で引くつもりなら、どちらの条文かを確かめてから写してください。

原則と例外は逆 — 控除項目が「しなければならない」

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。多くの人の感覚とは逆で、条文の原則は控除項目として示すこと(通称 間接法)です。

会社計算規則79条1項は、先に引いたとおり「表示しなければならない」と書いています。ただし書で、資産ごとではなく一括して示すことも認めています。

ただし、これらの有形固定資産に対する控除項目として一括して表示することを妨げない。

これに対して、直接減らす方(通称 直接法)は次の項に、「できる」として置かれています。

各有形固定資産に対する減価償却累計額は、当該各有形固定資産の金額から直接控除し、その控除残高を当該各有形固定資産の金額として表示することができる。

財務諸表等規則も同じ構造です。25条が原則で「掲記しなければならない」、26条が例外で「表示することができる」。

第二十三条第一項各号に掲げる建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及びその他の陸上運搬具、工具、器具及び備品、使用権資産又はその他の有形固定資産に対する減価償却累計額は、次条の規定による場合のほか、当該各資産科目に対する控除科目として、減価償却累計額の科目をもつて掲記しなければならない。
第二十三条第一項各号に掲げる建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及びその他の陸上運搬具、工具、器具及び備品、使用権資産又はその他の有形固定資産に対する減価償却累計額は、当該各資産の金額から直接控除し、その控除残高を当該各資産の金額として表示することができる。

つまり条文の建て付けでは、累計額を見せるのが原則で、消すのは認められた例外ということです。取得原価がいくらで、そのうちどれだけ使い減ったのかという情報を、規則は既定では残そうとしています。

「原則だから直接法は不適切」ではありません
79条2項・26条は正面から認められた選択肢です。ここで言っているのは優劣ではなく、条文の書き方の向きです。実務では固定資産台帳を別に持っているため直接法でも困らない場面が多く、実際に直接法を採る会社もあります。ただし「直接法が普通で、間接法が丁寧なやり方」という理解は条文と逆で、この向きを取り違えると次の注記の話も逆に読んでしまいます。

直接法にすると、累計額はどこへ行くのか

直接控除すると、貸借対照表の表からは累計額が消えます。では情報も消えるのか。ここで会社計算規則と財務諸表等規則が分かれます。

財務諸表等規則26条1項は、直接控除を認める文のすぐ後に、こう続けています。

この場合においては、当該減価償却累計額は、当該各資産の資産科目別に、又は一括して注記しなければならない。

表から消しても、注記には書けということです。さらに2項で、連結財務諸表を作っている会社は個別の側でこの記載を要しないとしています。

前項に規定する事項は、財務諸表提出会社が連結財務諸表を作成している場合には、記載することを要しない。

いっぽう会社計算規則79条2項には、この注記の定めがありません。先に引いた条文をもう一度見てください。「直接控除し、その控除残高を当該各有形固定資産の金額として表示することができる。」で文が終わっており、注記を求める文が続いていません。

控除項目として示す直接控除する
会社計算規則(計算書類)原則(79条1項)できる(79条2項)/注記の定めなし
財務諸表等規則(財務諸表)原則(25条)できる(26条1項前段)/注記しなければならない(同項後段)

結果として、会社法にもとづく計算書類で直接法を採ると、減価償却累計額はどこにも出てこなくなります。その会社の固定資産が新しいのか、ほとんど償却し終えた古い資産なのかは、計算書類の表面からは読めません。取引先の決算書を見て「固定資産が3,000万円ある」と分かっても、それが取得価額なのか償却後の残高なのかは、方式が分からなければ確定できないということです。

その資産は、表示方式を選べるか 有形固定資産 建物・機械・車両など 無形固定資産 ソフトウエア・のれんなど 繰延資産 創立費・開業費など 選べる。控除項目が原則、直接控除は「できる」 計規79条1項・2項/財規25条・26条 ※財規で直接控除するなら注記が要る 選べない。直接控除して残高だけを示す 計規81条・財規30条 いずれも「しなければならない」 選べない。直接控除して残高だけを示す 計規84条 「しなければならない」 つまり貸借対照表に「減価償却累計額」の行が立つのは、有形固定資産だけ。 ソフトウエアの累計額を控除項目で並べた決算書は、条文の側から見ると誤り。
方式を選べるのは有形固定資産だけ。無形固定資産と繰延資産は、条文が直接控除を「しなければならない」と定めている。

無形固定資産と繰延資産は、方式を選べない

ここは実務でよく取り違えられる点です。「間接法か直接法か」を選べるのは、有形固定資産だけです。

会社計算規則81条は、無形固定資産についてこう定めています。

各無形固定資産に対する減価償却累計額及び減損損失累計額は、当該各無形固定資産の金額から直接控除し、その控除残高を当該各無形固定資産の金額として表示しなければならない。

財務諸表等規則30条も同じです。

各無形固定資産に対する減価償却累計額及び減損損失累計額は、当該無形固定資産の金額から直接控除し、その控除残高を各無形固定資産の金額として表示しなければならない。

どちらも「できる」ではなく「しなければならない」。選択の余地がありません。繰延資産も同様で、会社計算規則84条が直接控除を求めています。

各繰延資産に対する償却累計額は、当該各繰延資産の金額から直接控除し、その控除残高を各繰延資産の金額として表示しなければならない。

したがって、ソフトウエアやのれんに「減価償却累計額」の行を立てるのは、条文の側から見ると誤りです。ソフトウエアは残高だけを示します。会計ソフトの設定で全資産を一律に間接法にしていると、無形固定資産まで累計額が立ってしまうことがあるので、決算書を出す前に区分ごとに確かめてください。

定額法・定率法の償却費を計算する

「減価償却累計額」に減損が混ざっていることがある

もう一つ、決算書を読む側が知っておきたい仕掛けがあります。貸借対照表に「減価償却累計額」と書いてあっても、その中身が減価償却だけとは限りません。

会社計算規則80条3項は、こう定めています。

前条第一項及び前項の規定により減価償却累計額及び減損損失累計額を控除項目として表示する場合には、減損損失累計額を減価償却累計額に合算して、減価償却累計額の項目をもって表示することができる。

減損損失累計額を減価償却累計額に合算して、減価償却累計額という名前で表示してよいということです。減損は使い減りではなく、投資額を回収できる見込みがなくなったことによる帳簿価額の切り下げで、原因がまったく違います。それが同じ行にまとめられます。

そしてここでも、財務諸表等規則には注記の定めがあり、会社計算規則にはありません。財務諸表等規則26条の2第4項はこう書いています。

前項の場合には、減価償却累計額に減損損失累計額が含まれている旨を注記しなければならない。
同じ非対称が2度出てくる
① 直接控除して累計額を表から消すとき、② 減損損失累計額を減価償却累計額に混ぜるとき。どちらも、情報が減る場面です。財務諸表等規則はそのたびに注記で補わせ、会社計算規則は補わせません。会社法の計算書類は、金融商品取引法の財務諸表より情報が落ちうる——これは条文を並べて初めて見える差で、決算書を読むときの前提になります。

ですから、取引先の計算書類で固定資産が急に減っていても、それだけでは売却したのか、償却が進んだのか、減損したのかは区別できません。会社計算規則の世界では、減損は「減価償却累計額」という名前の中に入っていることがあります。減損そのものの扱いは減損損失とはで扱っています。

設例 — 機械600万円、3年目の貸借対照表と売却

取得価額6,000,000円の機械を、定額法・耐用年数10年で償却するとします。平成19年4月1日以後に取得した資産の定額法の償却率は「1÷耐用年数」で求まるので、耐用年数10年なら0.100、1年あたりの償却費は600,000円です(この導き方は減価償却とはで扱っています)。

毎期の仕訳は、方式によって貸方が変わるだけです。

方式借方金額貸方金額
控除項目(間接法)減価償却費600,000減価償却累計額600,000
直接控除(直接法)減価償却費600,000機械装置600,000

3年経過した時点の貸借対照表(累計額は600,000×3=1,800,000円)は、次のようになります。

控除項目(間接法)直接控除(直接法)
機械装置6,000,0004,200,000
減価償却累計額△1,800,000—(財規なら注記)
固定資産の帳簿価額4,200,0004,200,000

4年目の期首に3,500,000円で売却した場合の仕訳も見ておきます。帳簿価額4,200,000円に対して3,500,000円なので、売却損は700,000円です。

方式借方金額貸方金額
控除項目(間接法)現金預金3,500,000機械装置6,000,000
減価償却累計額1,800,000
固定資産売却損700,000
直接控除(直接法)現金預金3,500,000機械装置4,200,000
固定資産売却損700,000

売却損は、どちらも700,000円で同じです。間接法では累計額を借方で取り崩して資産を取得価額のまま落とし、直接法では簿価をそのまま落とす。行数は違いますが、損益に出る金額は1円も変わりません。

間接法で消し忘れると、資産が残り続ける
間接法の落とし穴は、売却・除却のときに累計額の取り崩しを忘れることです。上の仕訳で減価償却累計額1,800,000円の行を落とすと貸借が合わなくなるのですぐ気づきますが、複数の資産の累計額を一括表示している場合は、どの資産にいくら対応していたかが帳簿上あいまいになりがちです。会社計算規則79条1項ただし書は一括表示を認めていますが、固定資産台帳の側では資産ごとに累計額を持っておく必要があります。

方式を変えても、法人税額は1円も変わらない

最後に税務です。結論から言うと、間接法にしても直接法にしても、法人税の計算は同じです。理由は損金経理の定義にあります。法人税法2条25号は、こう定めています。

法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することをいう。

この定義が求めているのは「費用又は損失として経理すること」だけで、相手方の科目には一言も触れていません。減価償却費というかたちで費用に計上してあれば、その貸方が減価償却累計額であろうと機械装置であろうと、損金経理の要件は同じように満たします。

そして法人税法31条1項は、損金に算入できる金額を「その償却費として損金経理をした金額」のうち償却限度額に達するまで、と定めています。上の設例なら損金経理額は600,000円、償却限度額も600,000円で、どちらの方式でも申告調整はゼロです。

控除項目(間接法)直接控除(直接法)
損益計算書の減価償却費600,000600,000
損金経理額(法法31条1項)600,000600,000
償却限度額600,000600,000
申告調整(加算)00

先に見たとおり、法人税法にも同施行令にも同施行規則にも「減価償却累計額」は0回でした。税法はこの科目を知りません。税法が見ているのは費用に計上した金額であって、貸借対照表での見せ方ではないからです。

だからこそ、方式は「読み手のため」に選ぶ
税額が変わらない以上、方式の選択は税務上の有利不利で決める話ではありません。決めるべき基準は誰がその決算書を読むかです。金融機関や取引先に固定資産の状態を見せたいなら控除項目として示す(条文の原則でもある)、社内で固定資産台帳を精緻に持っていて決算書を簡潔にしたいなら直接控除する、という選び方になります。なお、期の途中で方式を変えるのは会計方針の変更に当たります。毎期同じ方式で通すのが基本です。

よくある質問

Q. 減価償却累計額は負債ですか?

A. 負債ではありません。会社計算規則79条1項は、減価償却累計額を「当該各有形固定資産の項目に対する控除項目として」表示すると定めており、資産の部の中で資産を減らす項目として位置づけています。負債の部に属するものを列挙した会社計算規則75条2項にも、減価償却累計額は挙げられていません。仕訳で貸方に立つため負債に見えますが、身分は資産のマイナスです。同じ構造の項目として、資産に係る引当金である貸倒引当金が78条1項に置かれています。

Q. 減価償却累計額の勘定科目としての区分は何ですか?

A. 資産の評価勘定(控除項目)です。貸借対照表では有形固定資産の各科目の下に「減価償却累計額」として置き、マイナスで示します。会社計算規則79条1項ただし書は、資産ごとではなく有形固定資産に対する控除項目として一括して表示することも認めています。なお、この行が立つのは有形固定資産だけです。無形固定資産は会社計算規則81条・財務諸表等規則30条により、繰延資産は会社計算規則84条により、いずれも直接控除して残高だけを示すことが義務づけられています。

Q. 間接法と直接法は、どちらが正しいのですか?

A. どちらも認められていますが、条文の建て付けでは控除項目として示す方(通称 間接法)が原則です。会社計算規則79条1項と財務諸表等規則25条が「表示しなければならない」「掲記しなければならない」と定め、直接控除する方(通称 直接法)は会社計算規則79条2項・財務諸表等規則26条に「することができる」として置かれています。なお「間接法」「直接法」という呼び名自体は、会社法・会社計算規則・財務諸表等規則・法人税法・同施行令・同施行規則・所得税法・商法の本文合計4,253,426字を数えて0回で、法令上の用語ではありません。

Q. 直接法にすると、減価償却累計額は開示されなくなりますか?

A. どの規則が適用されるかで変わります。財務諸表等規則26条1項は、直接控除した場合に「当該減価償却累計額は、当該各資産の資産科目別に、又は一括して注記しなければならない」と定めているため、金融商品取引法にもとづく財務諸表では注記に残ります。一方、会社法にもとづく計算書類を規律する会社計算規則79条2項には、これに対応する注記の定めがありません。したがって計算書類で直接控除を採ると、減価償却累計額はどこにも表示されないことになります。

Q. 減価償却累計額に減損損失が含まれていることはありますか?

A. あります。会社計算規則80条3項は、減価償却累計額と減損損失累計額をいずれも控除項目として表示する場合に、減損損失累計額を減価償却累計額に合算して減価償却累計額の項目で表示することを認めています。財務諸表等規則26条の2第3項にも同じ扱いがあり、こちらは同条第4項で「減価償却累計額に減損損失累計額が含まれている旨を注記しなければならない」とされています。会社計算規則にはこの注記の定めがないため、計算書類だけを見て中身を判別することはできません。

Q. 間接法と直接法で、支払う法人税は変わりますか?

A. 変わりません。法人税法2条25号は損金経理を「法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することをいう」と定義しており、費用として計上したかどうかだけを問い、相手方の科目には触れていません。法人税法31条1項が損金算入の限度としているのも「その償却費として損金経理をした金額」のうち償却限度額までであり、どちらの方式でも損益計算書に計上される減価償却費は同額です。したがって申告調整も生じません。なお「減価償却累計額」という語は法人税法・同施行令・同施行規則の本文に一度も出てきません。

出典

条文の計数は、e-Gov法令検索のAPIで取得した各法令の本文全文(本則および附則を含む)に対して、令和8年8月22日時点で行ったものです。設例の取得価額・耐用年数・売却価額は説明のための仮定です。減価償却の方法の選定・届出や、資産ごとの耐用年数は本記事の範囲外です。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

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