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現金出納帳の書き方 — 記載事項は5つ。「現金出納帳」を名指しする法令は2本だけ

結論から言うと、現金出納帳に書く項目は5つです。取引の年月日・事由・出納先・金額・日々の残高。これは慣行ではなく、法人税法施行規則の別表二十六という表の一番上の行に、そのまま書かれています。市販の帳簿やテンプレートの列がどれも似ているのは、元がここだからです。

ところが、この表を根拠にできる人は限られています。別表二十六は白色申告の法人のための表です。そして e-Gov法令検索の全法令を機械的に検索すると、条文本文に「現金出納帳」という語をそのまま含む法令は、日本にある全法令の中で2本しかありません。しかもそのどちらも、個人事業主に向けたものではありません。

つまり個人事業主にとって、現金出納帳は条文をたどっていくと省令の外に出てしまう帳簿です。所得税法施行規則は簡易な記録の方法を「財務大臣の定める」に委ねており、省令を最後まで読んでも項目は書いていません。この記事では、書く項目そのものと、その根拠が人によってどこにあるのか、そして「現金出納帳を中心に回す」という選択が青色申告特別控除にどう効くのかを、条文にあたって整理します。

書くのは5項目 — 出所は法人税法施行規則の別表二十六

法人税法150条の2第1項は、青色申告の承認を受けていない法人(条文では「普通法人等」)に対して、帳簿を備え付けて取引を「財務省令で定める簡易な方法により記録」せよと定めています。この「簡易な方法」の中身を決めているのが、法人税法施行規則66条2項です。

法第百五十条の二第一項に規定する財務省令で定める簡易な方法は、別表二十六の区分の欄に掲げる事項の区分に応じ同表の記録方法の欄に定める方法とする。

別表二十六は「普通法人等の帳簿の記録方法」という表題で、区分と記録方法の2列からなり、見出し行を除いて14の区分があります(区分の数は e-Gov が返す法令データの木構造から数えたもので、目で数えたものではありません)。その一番上、(一)現金の出納に関する事項の欄がこう定めています。

取引の年月日、事由、出納先及び金額並びに日々の残高を記載する。ただし、少額な取引については、その科目ごとに、日々の合計金額を一括記載することができる。

ここが現金出納帳の書き方の実体です。列の名前を言い換えると次のようになります。

条文の言葉帳簿の列何を書くか
取引の年月日日付現金が動いた日。伝票を起こした日ではない
事由摘要・科目何のための出入りか(消耗品購入、売上入金など)
出納先相手先誰に払ったか・誰から受け取ったか
金額入金・出金入りと出を分けて書くのが一般的だが、条文は分割を求めていない
日々の残高残高その日の締めの現金有高。5項目のうちここだけ計算値
「日々の残高」が条文に入っていることの意味市販の帳簿に必ず残高欄があるのは、装飾ではなく条文の要求だからです。しかも「日々の」と書かれているので、月末にまとめて1回計算するのでは形式を満たしません。実務上これは毎日、帳簿の残高と金庫の実際の有高が一致するかを確かめられる状態にしておくということを意味します。現金出納帳が「合わない」ことが問題になるのは、この列が毎日の検算装置として設計されているからです。合わなかった差額をいったん受ける科目と、その期末処理については小口現金と現金過不足で扱っています。
別表二十六(一)が求める5項目 年月日 事由 出納先 金額 日々の残高 ←ここだけ計算値 残高は前日から連鎖する 8/17 締め 52,400円 8/18 入 30,000 / 出 3,780 78,620円 8/19 出 12,000 66,620円 根拠がどこにあるかは、申告の区分で変わる 白色申告の法人 法人税法施行規則 別表二十六 個人事業主(青色・白色) 省令の外=財務大臣の告示 青色申告の法人 複式簿記(別表二十四)
別表二十六(一)が挙げる5項目と、残高が前日から連鎖する仕組み。金額は説明のための例。

「現金出納帳」を名指しする法令は、全法令で2本だけ

e-Gov法令検索の全文検索で「現金出納帳」を引くと、条文本文にこの語を含む法令は2本しか返りません。1本目が上で見た法人税法施行規則、2本目は投資信託及び投資法人に関する法律施行規則です。

法令どう出てくるか
法人税法施行規則66条1項「現金出納帳その他必要な帳簿」=例示のひとつ
投資信託及び投資法人に関する法律施行規則254条投資法人が作成すべき帳簿書類の列挙の2号(1号は総勘定元帳)

法人税法施行規則66条1項の書き方はこうです。

は、現金出納帳その他必要な帳簿を備え、その取引
に関する事項を整然と、かつ、明瞭に記録し、その記録に基づいて決算を行わなければならない。

「その他必要な帳簿」と続くので、現金出納帳は必ず備えるべき帳簿として指定されているのではなく、例示です。一方の投資法人の側は違い、施行規則254条が「法第二百十一条第一項の規定により投資法人が作成すべき帳簿書類は、次に掲げるものとする。」として号を並べ、その2号が現金出納帳です。日本の法令で現金出納帳が名前入りで義務づけられているのは、投資法人だけということになります。

「その他必要な帳簿」なのに、なぜ実務では必須のように扱われるのか66条1項は同じ文の中で「その記録に基づいて決算を行わなければならない」と続けています。現金商売で現金の出入りを記録せずに決算はできないので、現金取引がある事業では結果として必要な帳簿になる、という構造です。逆に言えば、現金をいっさい扱わずすべて口座で完結している事業では、条文上この帳簿が必要だとは書かれていません。

少額の一括記載を認めているのは、青色ではなく白色の表

ここが直感に反するところです。青色申告法人の記載事項は別表二十四(表題は「青色申告書の提出の承認を受けようとする法人の帳簿の記載事項」)にあり、その(一)現金の出納に関する事項の欄はこうなっています。

取引の年月日、事由、出納先及び金額並びに日々の残高

白色(別表二十六)と要求する項目は完全に同じ5つです。違うのは、白色の表にだけただし書があることです。

青色申告法人(別表二十四)普通法人等=白色(別表二十六)
表題青色申告書の提出の承認を受けようとする法人の帳簿の記載事項普通法人等の帳簿の記録方法
区分/記載事項/備考の3列区分/記録方法の2列
区分の数1414
(一)現金の項目年月日・事由・出納先・金額・日々の残高同じ5つ
少額取引の一括記載ただし書なし「少額な取引については、その科目ごとに、日々の合計金額を一括記載することができる」

帳簿の簡便化は青色申告の特典だと考えられがちですが、現金出納の一括記載を明文で認めているのは白色の表のほうです。理由は、青色側にはそもそも別の負担が課されているからだと読めます。法人税法施行規則53条は青色申告法人に対して次のように求めています。

その資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引につき、複式簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りように記録し

複式簿記を前提にしている以上、現金出納帳という単票の中で合計をまとめる余地を条文に書く必要がない、という整理です。白色(66条1項)にはこの複式簿記の要求がありません。青色申告法人が総勘定元帳や仕訳帳の側でどう記載を求められているかは、総勘定元帳の書き方で別途扱っています。

個人事業主の根拠は、条文をたどると省令の外に出る

ここまでは法人の話です。個人事業主の場合、親の法律の書き方は法人とほとんど同じです。所得税法232条1項は、青色申告の承認を受けていない者について、帳簿を備え付けて取引を記録せよと定めています。

のうち総収入金額及び必要経費に関する事項を財務省令で定める簡易な方法により記録し

法人(法150条の2第1項)と同じ「財務省令で定める簡易な方法」です。ところが、その財務省令の行き先が違います。法人は別表二十六という表を省令の中に持っていましたが、所得税法施行規則102条2項はこうなっています。

法第二百三十二条第一項に規定する財務省令で定める簡易な方法は、財務大臣の定める記録の方法とする。
財務大臣は、第二項の規定により記録の方法を定めたときは、これを告示する。

省令の中に表はなく、告示に飛ばされて終わりです。青色申告の個人についても事情は同じで、所得税法施行規則56条1項ただし書が簡易な記録の方法を認めていますが、その中身はやはり財務大臣の定めです。

ただし、当該帳簿書類については、次条から第五十九条まで(青色申告者の帳簿書類)、第六十一条(貸借対照表及び損益計算書)及び第六十四条(帳簿書類の記載事項等の省略又は変更)の規定に定めるところに代えて、財務大臣の定める簡易な記録の方法及び記載事項によることができる。
記録方法の行き先「現金出納帳」の語
白色の法人法人税法施行規則66条2項 → 別表二十六(省令の中)66条1項にあり
青色の法人法人税法施行規則54条 → 別表二十四(省令の中)なし
白色の個人所得税法施行規則102条2項 → 財務大臣の告示(省令の外)なし
青色の個人所得税法施行規則56条1項ただし書 → 財務大臣の告示(省令の外)なし

個人事業主が現金出納帳という帳簿名に出会うのは、条文ではなく国税庁の説明です。国税庁タックスアンサー No.2070「青色申告制度」は、青色申告の記帳は正規の簿記が原則としつつ、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよい、と書いています。いわゆる簡易帳簿の5点セットで、現金出納帳はその筆頭です。

実務上の帰結「どこに書いてあるのか」を確かめたい個人事業主が e-Gov で所得税法施行規則を最後まで読んでも、記載項目は出てきません。探す場所が違うだけで、条文が欠けているわけではありません。項目の実体を条文の言葉で確かめたい場合は、上で見た法人側の別表二十六(一)が、内容としては同じ5項目を挙げています。

現金出納帳だけで決算まで行けるか — 現金主義とその例外

現金出納帳を帳簿の中心に据えて、入金と出金だけで所得を計算する方法は、条文上も用意されています。所得税法67条1項の「小規模事業者等の収入及び費用の帰属時期」、いわゆる現金主義です。要件は所得税法施行令195条1号にあります。

その年の前々年分の不動産所得の金額及び事業所得の金額
の合計額が三百万円以下であること。

ここには2つ落とし穴があります。1つは「前々年分」であること。今年の所得ではなく2年前の所得で判定します。もう1つは、この300万円が事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例(所得税法57条)を適用しないで計算した金額とされている点です。専従者給与を引く前の金額で見るので、手取りの感覚より大きく出ます。

そして最も見落としやすいのが、現金主義を選んでも現金の動きだけでは終わらないことです。所得税法施行令196条2項が必要経費の範囲を定めていますが、そこには除外がついています。

償却費並びに法第五十一条第一項及び第四項(資産損失の必要経費算入)の規定の適用を受けるものを除き、その年においてこれらの所得の総収入金額を得るために直接支出した費用の額及びその年においてこれらの所得を生ずべき業務について支出した費用の額とする。

減価償却費と資産損失は、現金主義でも現金の動きとは無関係に計上します。減価償却費はその年に1円も現金が動いていないのに必要経費に入る典型なので、現金出納帳だけでは絶対に出てきません。固定資産台帳が簡易帳簿の5点セットに入っているのは、この穴を埋めるためです。

逆に、現金主義を選んだ青色申告者には棚卸の免除があります。所得税法施行規則56条2項です。

法第六十七条第一項(小規模事業者等の収入及び費用の帰属時期)の規定の適用を受ける青色申告者は、前項の規定にかかわらず、第六十条(決算)の規定による棚卸資産の棚卸を行うことを要しない。

簡易帳簿を選ぶと控除が10万円になる、条文上の仕組み

現金出納帳を含む簡易帳簿で記帳すると青色申告特別控除は10万円まで、という説明は広く知られています。ただ、その理由は「簡易帳簿だから」ではなく、条文が名指ししている条の範囲が食い違うからです。

55万円控除(租税特別措置法25条の2第3項)は「一切の取引の内容を詳細に記録している場合」を要件にしていて、その中身を租税特別措置法施行規則9条の6第1項がこう定めています。

所得税法施行規則第五十七条から第六十二条まで及び第六十四条の規定に定めるところにより記録し、かつ、作成している場合とする。

一方、簡易な記録の方法(所得税法施行規則56条1項ただし書)が置き換えるのは、57条から59条まで・61条・64条でした。並べると重なり方が見えます。

所得税法施行規則見出し55万円控除が求める簡易帳簿が置き換える
57条取引の記録等置き換える
58条取引に関する帳簿及び記載事項置き換える
59条仕訳帳及び総勘定元帳の記載方法置き換える
60条決算置き換えない
61条貸借対照表及び損益計算書置き換える
62条親族の労務に従事した期間等の記帳置き換えない
64条帳簿書類の記載事項等の省略又は変更置き換える

55万円控除が名指しする7か条のうち5か条を、簡易帳簿がまるごと置き換えてしまうので、施行規則9条の6第1項が名指しした条のとおりに記録し、かつ作成しているとは言えなくなる、というのが仕組みです。簡易帳簿を選んだ人が損をしているのではなく、条文が指している対象がずれるだけです。

あわせて、現金主義を選んだ場合は措置法25条の2第3項のかっこ書き(所得税法第六十七条第一項の規定の適用を受ける者を除く)で対象から外れます。65万円の電子帳簿ルートで電子化が求められる帳簿も、租税特別措置法施行規則9条の6第2項が「仕訳帳及び総勘定元帳」と名指ししており、現金出納帳は入っていません。控除額の分かれ目そのものは青色申告特別控除 — 65万円・55万円・10万円の分かれ目で詳しく扱っています。

青色申告特別控除シミュレーターで65万・55万・10万を判定する

エクセルで作ってよい — 電子帳簿保存法4条1項は「できる」規定

現金出納帳を表計算ソフトで作ることに、条文上の制約はありません。混同されやすいのは電子帳簿保存法ですが、帳簿の電子保存を定めた4条1項は義務ではなく選択です。

自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。

末尾は「代えることができる」です。したがって、エクセルで作った現金出納帳を印刷して紙で保存する運用は今も適法です。データのまま保存したい場合に、同項の要件(財務省令)に従うという関係になります。義務なのは電子取引のデータ保存(同法7条)のほうで、これは自分が作る帳簿ではなく、やり取りした取引情報の話です。区別は電子帳簿保存法をわかりやすくで整理しています。

記入例 — 1週間ぶんを別表二十六のとおりに書く

個人事業(小売)の現金出納帳を、別表二十六(一)の5項目だけで書いた例です。前月末の繰越が52,400円だったとします。

年月日事由出納先入金出金日々の残高
令和8年8月17日前月繰越52,400
令和8年8月18日売上(現金)店頭30,00078,620
令和8年8月18日消耗品(レジロール)◯◯商店3,780
令和8年8月19日旅費交通費◯◯タクシー12,00066,620
令和8年8月20日普通預金より引出し◯◯銀行50,000116,620
令和8年8月21日水道光熱費◯◯電力18,34098,280

読み取れる点を3つ。1つ目、8月18日の残高は1行にまとめてあります。条文が求めているのは「日々の残高」であって行ごとの残高ではないので、取引ごとに残高を書かなくても形式は満たします(書いても問題ありません)。

2つ目、8月20日の預金引出しも現金出納帳に載ります。損益には一切影響しませんが、現金という資産が増えた事実なので「現金の出納に関する事項」に当たります。ここを飛ばすと残高が金庫と合わなくなります。

3つ目、事由の欄は勘定科目でなくてもかまいません。条文の言葉は「事由」です。ただし別表二十六(十四)が経費の科目として「賃金、給料手当、法定福利費、厚生費、外注工賃、動力費、消耗品費、修繕費、減価償却費、繰延資産の償却費、地代家賃、保険料、旅費交通費、通信費、水道光熱費、手数料、倉敷料、荷造包装費、運搬費、広告宣伝費、公租公課、機密費、接待交際費、寄附金、利子割引料、雑費等」を挙げているので、この語彙に寄せておくと決算のときに転記しやすくなります。

1日1行にまとめてよい場面別表二十六(十一)(2)は「小売その他これに類するものを行う法人の現金売上げについては、日々の現金売上げの総額のみを記載する。」という簡略化を認めています。(十二)にも「少額な雑収入等については、それぞれ、その日々の合計金額のみを一括記載することができる。」とあります。いずれも白色申告の法人についての表である点に注意してください。個人事業主の記帳の簡略化の範囲は、上で見たとおり告示の側にあります。

よくある質問

Q. 現金出納帳には何を書けばよいですか?

A. 取引の年月日、事由、出納先、金額、日々の残高の5つです。法人税法施行規則の別表二十六(一)が、現金の出納に関する事項の記録方法として「取引の年月日、事由、出納先及び金額並びに日々の残高を記載する。」と定めています。青色申告法人向けの別表二十四(一)も同じ5項目を挙げているので、この5つが現金出納帳の内容だと考えて差し支えありません。残高だけが計算値で、条文が「日々の」と書いているため、月末にまとめて一度計算するのではなく日ごとに締める形が想定されています。

Q. 現金出納帳をつけないと違法になりますか?

A. 現金出納帳という帳簿名を義務として名指ししている法令は、投資信託及び投資法人に関する法律施行規則254条だけで、これは投資法人に対するものです。白色申告の法人については法人税法施行規則66条1項が「現金出納帳その他必要な帳簿」と書いていますが、これは例示です。ただし同項は同じ文で「その記録に基づいて決算を行わなければならない」と続けているため、現金取引がある事業では結果的に必要な帳簿になります。個人事業主については、所得税法232条1項が帳簿の備付けを求めており、帳簿の具体的な種類は財務大臣の告示と国税庁の説明の側にあります。

Q. 現金出納帳はエクセルで作ってもよいですか?

A. 差し支えありません。電子帳簿保存法4条1項は、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合に、電磁的記録の備付け及び保存をもって帳簿の備付け及び保存に「代えることができる」と定めています。義務ではなく選択なので、表計算ソフトで作って印刷し、紙で保存する運用も適法です。データのまま保存する場合に同項の財務省令の要件に従うという関係になります。なお義務として保存が求められるのは電子取引の取引情報(同法7条)で、これは自分で作る帳簿とは別の話です。

Q. 少額の経費を日ごとに合計して1行で書いてもよいですか?

A. 白色申告の法人については、別表二十六(一)のただし書が「少額な取引については、その科目ごとに、日々の合計金額を一括記載することができる。」と認めています。科目ごとにまとめる必要があるので、種類の違う経費を1行に合算することは想定されていません。青色申告法人向けの別表二十四(一)にはこのただし書がなく、法人税法施行規則53条が複式簿記の原則に従った記録を求めています。個人事業主の簡略化の範囲は省令ではなく財務大臣の告示の側にあるため、条文だけを読んで判断することはできません。

Q. 現金出納帳を中心にした簡易帳簿で、青色申告特別控除65万円は受けられますか?

A. 受けられません。65万円控除は租税特別措置法25条の2第4項の要件を満たす場合に同条3項の55万円を読み替えるという構造なので、まず3項の要件が必要です。その3項の「一切の取引の内容を詳細に記録している場合」は、租税特別措置法施行規則9条の6第1項により所得税法施行規則57条から62条まで及び64条のとおり記録・作成している場合とされています。簡易な記録の方法(所得税法施行規則56条1項ただし書)はこのうち57条から59条まで・61条・64条を置き換えるため、要件を満たさなくなります。結果として控除は同条1項の10万円になります。

Q. 現金主義を選ぶと、現金出納帳だけで決算できますか?

A. できません。所得税法施行令196条2項は、必要経費に算入すべき金額から「償却費並びに法第五十一条第一項及び第四項(資産損失の必要経費算入)の規定の適用を受けるもの」を除いたうえで、その年に支出した費用の額としています。減価償却費はその年に現金が動かなくても必要経費に入るため、現金出納帳には現れません。固定資産台帳が別に必要になるのはこのためです。なお現金主義の適用を受ける青色申告者は、所得税法施行規則56条2項により棚卸資産の棚卸を行うことを要しないとされています。

Q. 現金出納帳は何年保存しますか?

A. 帳簿は原則7年です。白色申告の個人については所得税法施行規則102条4項が、起算日から「七年間(その他の帳簿及び前項各号に掲げる書類にあつては、五年間)」と定めており、本体の帳簿が7年、それ以外の帳簿と書類が5年という書き分けになっています。起算日は同項が準用する63条4項により、法人の決算日基準とは異なり個人は翌年3月15日の翌日です。法人の場合は法人税法施行規則67条2項が7年としています。欠損金の繰越しを受ける場合は年数が変わるため、総勘定元帳の書き方で扱っている10年の規定もあわせて確認してください。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

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