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領収書の書き方 — 「上様」でよいかは業種で決まる。宛名を省ける事業は政令に4号しかない

結論から言うと、領収書の宛名を「上様」で済ませてよいかどうかは、書き方のマナーの問題ではなく、自分の事業がどの業種かで決まります。消費税の仕入税額控除に使える領収書には、原則として「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」を書かなければなりません(消費税法57条の4第1項6号)。この号がまるごと無い簡易版=適格簡易請求書を交付できるのは、消費税法施行令70条の11が挙げる4号の事業だけです。

そしてその4号は、よく言われる「小売業・飲食店業・タクシー」だけではありません。条文には写真業と旅行業が並んでおり、駐車場業には「不特定かつ多数の者に」という限定が付いています。月極駐車場のように相手が決まっている貸し方は、この号の読み方では当てはまりません。

もう一つ、実務でよく混同されるのが「上様」と「お品代」です。この2つは別々の号の話で、通る条件も違います。宛名は業種によって省けますが、品物・サービスの内容は適格請求書でも適格簡易請求書でも必須です(どちらも3号)。つまり「うちは飲食店だから上様でいい」は成り立っても、「うちは飲食店だからお品代でいい」は成り立ちません。以下、条文で順に確かめます。

領収書を出す義務は、税法ではなく民法にある

「領収書をください」と言われたら出さなければならない、その根拠を税法に探しても見つかりません。根拠は民法にあります。

弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。

民法486条1項です。条文の言葉は「領収書」ではなく受取証書で、支払った側に請求権があるという形で書かれています。ここから2つのことが読めます。

同じ条には2項があり、こちらは紙以外の形を扱っています。

弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。

ただし、無条件ではありません。同じ項に続けてこう書かれています。

ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。

つまり「PDFでください」と請求する権利は条文にある一方で、それが受け取る側に不相当な負担になるなら応じなくてよい、という線引きです。手書きの領収書しか出していない小さな店に、特定の様式の電子データを求めるようなケースが、この但書の想定する場面にあたります。

民法の義務と、消費税の要件は別物領収書を「出す・出さない」を決めるのが民法486条、その領収書が「仕入税額控除に使えるか」を決めるのが消費税法57条の4です。前者を満たしても後者を満たすとは限りません。以下は後者の話です。

領収書に書く6項目 — 適格請求書の記載事項

消費税の仕入税額控除に使える書類は、名前が「領収書」である必要はありません。消費税法57条の4第1項は「請求書、納品書その他これらに類する書類」と書いており、レシートも領収書もここに入ります。決めるのは題名ではなく記載事項です。

同項が挙げる記載事項は6号あります(号の数は条文の木構造から機械的に数えました。枝番号を目で数え落とさないためです)。

書くこと実務での落とし穴
1号発行者の氏名または名称と登録番号登録番号(T+13桁)が無いと、他が完璧でも要件を満たさない
2号取引を行った年月日一定期間をまとめる場合はその期間でよい(同号かっこ書き)
3号資産または役務の内容(軽減対象ならその旨)「お品代」はここで欠ける
4号税率ごとに区分して合計した金額と適用税率税抜・税込どちらでもよいが、税率ごとの区分は必須
5号税率ごとに区分した消費税額等4号の適用税率と両方必要(簡易版と違う点)
6号書類の交付を受ける事業者の氏名または名称「上様」はここで欠ける

6号の条文はごく短い一文です。

書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

宛名を省けるのは、政令が挙げる4号の事業だけ

57条の4には第2項があり、こちらは適格簡易請求書という簡易版を定めています。記載事項は5号で、上の表の6号にあたる宛名の号がそもそも存在しません。だから宛名を省けます。

問題は「誰が簡易版を出せるか」です。条文は「小売業その他の政令で定める事業」とだけ書き、中身を政令に委ねています。その政令が消費税法施行令70条の11です。

法第五十七条の四第二項に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業とする。

そして挙げられているのは、次の4号です。

小売業、飲食店業、写真業及び旅行業

1号がこれで、写真業と旅行業が入っているのが見落とされやすい点です。2号は一般乗用旅客自動車運送事業、つまりタクシーですが、営業所のみで引受けを行う認可運賃が適用されるものを除く、というかっこ書きが付いています。3号が駐車場業で、こちらにも限定があります。

駐車場業(不特定かつ多数の者に自動車その他の車両の駐車のための場所を提供するものに限る。)

コインパーキングは「不特定かつ多数」に当たりますが、契約者が決まっている月極駐車場は、この限定の文言に素直には当てはまりません。4号は受け皿の規定です。

前三号に掲げる事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行うもの

4号にも「不特定かつ多数」が入っています。この政令を貫いているのは業種名そのものではなく、相手が特定できない取引かどうかという考え方です。宛名を書きようがないから省けるのであって、書くのが面倒だから省けるのではありません。

国税庁の要約と条文で、粒度が違う国税庁タックスアンサーNo.6625は、この簡易版を出せる事業を「小売業、飲食店業、タクシー等を営む事業者」と書いています。「等」の中に写真業・旅行業・駐車場業が入っています。自分の業種が該当するか判断するときは、要約ではなく施行令70条の11の4号を見るほうが確実です。
領収書を発行する その取引は、施行令70条の11 の4号に当たるか 当たる 適格簡易請求書でよい(5号) 宛名は不要。「上様」でも要件を欠かない 当たらない 適格請求書(6号) 宛名が必須。「上様」は6号を欠く どちらの道でも「内容」(3号)は必須 =「お品代」はこの分岐と無関係に要件を欠く
宛名が要るかどうかは業種で分岐するが、品目の記載は分岐しない。図の下段が「お品代」の問題で、上下は別の号の話。

「上様」と「お品代」は、欠ける号が違う

ここまでで、2つの定番の疑問に条文から答えが出ます。

「上様」でよいか。自分の事業が施行令70条の11に当たるなら、宛名の号がそもそも無いので要件は欠けません。当たらないなら、6号「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」を満たさないことになります。飲食店で受け取った「上様」の領収書と、内装工事の会社が出した「上様」の領収書とでは、同じ4文字でも意味が違います

「お品代」でよいか。3号は適格請求書にも適格簡易請求書にも同じ文言で入っており、業種による分岐がありません。

課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)

ただし、個々の商品名を1つずつ書けという意味ではありません。国税庁はNo.6625で、記載内容について「商品名等について、個々の名称でなく包括的な記載であっても、課税資産の譲渡等に当たることを明らかにする方法」も認められるとしています。基準は細かさではなく、何を売ったのかが分かるかどうかです。「文房具」「書籍」は包括的でも内容が分かりますが、「お品代」は分かりません。そこが分かれ目です。

さらに3号のかっこ書きは、軽減税率の対象なら資産の内容に加えて「軽減対象である旨」も求めています。飲食料品を持ち帰りで販売したのに、税率8%で計算しただけで軽減対象である旨を書いていない領収書は、金額が合っていても3号を満たしません。

レシートと手書き領収書に、税法上の優劣はない

「レジのレシートではなく、手書きの領収書をください」と言われることがあります。消費税法上、この2つに優劣はありません。57条の4が求めているのは記載事項であって、書式や手書きかどうかではないからです。

むしろ実務では、レシートのほうが要件を満たしやすいという逆転が起きます。理由は3号です。レジのレシートには品目が1行ずつ印字され、軽減税率の対象品には記号が付き、税率ごとの区分と消費税額も自動で入ります。手書きの領収書は、そのすべてを人が書くので、いちばん落としやすい3号が空欄になりがちです。

レジのレシート手書きの領収書
1号 登録番号レジ設定で自動印字ゴム印の押し忘れが起きる
3号 内容品目が1行ずつ印字される「お品代」で済ませがち
3号 軽減対象である旨※印などで自動付与手で書かないと落ちる
5号 消費税額等税率ごとに自動計算合計だけ書いて区分が無いことがある
6号 宛名印字されない(簡易版の業種なら不要)書ける

注意したいのは、両方を受け取ってしまうケースです。レシートを受け取ったあとに手書きの領収書も出してもらうと、同じ支払いを証する書類が2枚になります。片方を捨てるか、どちらか一方だけを保存する運用にしないと、経費の二重計上の原因になります。

適格請求書(1項・6号) 適格簡易請求書(2項・5号) 1号 氏名・名称 + 登録番号 1号 氏名・名称 + 登録番号 2号 取引年月日 2号 取引年月日 3号 内容(軽減ならその旨) 3号 内容(軽減ならその旨) 4号 区分合計 + 適用税率 4号 区分合計 5号 消費税額等 5号 消費税額等 または 適用税率 6号 宛名(交付を受ける事業者) — 宛名の号が無い 適用税率と税額は両方要る どちらか一方でよい
違いは宛名だけではない。4号・5号を合わせて読むと、適格請求書は適用税率と消費税額等の両方が要るのに対し、簡易版は5号が「又は」で結ばれており一方でよい。

書き間違えたら、修正したものを交付する義務がある

金額や日付を書き間違えた領収書を渡してしまったとき、受け取った側が赤ペンで直す、という処理を見かけますが、条文の建て付けは逆です。

適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付した適格請求書発行事業者は、これらの書類の記載事項に誤りがあつた場合には、これらの書類を交付した他の事業者に対して、修正した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付しなければならない。

57条の4第4項です。直すのは発行した側で、しかも「しなければならない」と義務の形で書かれています。受け取った側が自分で追記して要件を満たしたことにする、という処理は、この条文の想定していない形です。

実務上は、修正した領収書を丸ごと出し直す方法と、誤った箇所と正しい内容だけを示した書類を追加で出す方法があり、どちらでも差し支えないとされています。いずれにしても発行側の作業です。

収入印紙は5万円未満なら不要

領収書は印紙税法別表第一の第17号「金銭又は有価証券の受取書」に当たり、原則として収入印紙が必要です。ただし同号の非課税物件欄に、金額の線が引かれています。

記載された受取金額が五万円未満の受取書

これが非課税です。したがって5万円ちょうどは課税、49,999円は非課税という境界になります。「5万円以下は不要」と覚えていると1円ずれます。

もう1つ、同じ非課税物件欄には営業に関しない受取書を非課税とする項目もあります。条文はこの「営業」に長い括弧書きを付けており、会社以外の法人が出資者以外の者に対して行う事業を含める一方、出資者がその出資をした法人に対して行う営業を除いています。個人が自宅を売ったときの領収書のように営業に関しない受取書は、金額にかかわらず非課税です。

境界の判定では、消費税額を区分して書いてあるかどうかで結論が変わることがあります。税込で5万円を超えていても、消費税額が区分記載されていれば税抜の本体価格で判定できる、という取扱いです。この判定と印紙税額の一覧は、金額を入れて確かめられるツールにまとめてあります。

収入印紙はいくら? 印紙税額の判定ツールで確かめる

発行した側にも、写しの保存義務がある

領収書は「渡したら終わり」ではありません。57条の4第6項が発行側に保存を義務づけています。

適格請求書、適格簡易請求書若しくは適格返還請求書を交付し、又はこれらの書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を提供した適格請求書発行事業者は、政令で定めるところにより、これらの書類の写し又は当該電磁的記録を保存しなければならない。

複写式の領収書帳を使う習慣は、この写しの保存とかみ合っています。1枚ものの用紙に手書きして渡してしまうと、写しが手元に残りません。

保存期間について、国税庁はNo.6625で、その閉鎖または受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間としています。起算日が「取引の日」でも「決算日」でもない点に注意が要ります。3月決算の法人が令和8年5月に受け取った領収書なら、課税期間の末日は令和9年3月31日、その翌日から2か月を経過した日は令和9年6月1日で、そこから7年です。受け取った日から7年と考えると、1年以上早く捨てることになります。

なお、メールで受け取ったPDFの領収書は、紙に印刷して保存するのではなく電子データのまま保存することが求められます。これは57条の4第5項が電磁的記録での提供を認めていることの裏側にある話で、要件は電子帳簿保存法の側にあります。

再発行に応じる義務は、条文からは出てこない

「領収書をなくしたので再発行してほしい」と言われたとき、応じなければならないかというと、根拠になりそうな条文は民法486条1項しかありません。そしてその条文は「弁済と引換えに」と書いています。支払いの場面で請求できる権利であって、後日あらためて発行を求める権利までは、この条文からは出てきません。

実際には取引関係の中で再発行することが多いはずですが、その場合は「再発行」と明記するのが安全です。同じ内容の領収書が2枚存在すると、受け取った側で二重に経費計上される余地が生まれます。印紙税の面でも、5万円以上の領収書を再発行すれば、その再発行分にも印紙が必要になります。

再発行より、支払いの事実を示すほうが早い振込であれば通帳やネットバンキングの明細、クレジットカードであれば利用明細が支払いの記録になります。ただし、消費税の仕入税額控除の要件は57条の4の記載事項なので、「支払った事実が分かること」と「仕入税額控除に使えること」は別です。混同しないほうが安全です。

よくある質問

Q. 領収書の宛名を「上様」にしてもよいですか?

A. 自分の事業が消費税法施行令70条の11に挙げられているかどうかで決まります。同条は、小売業、飲食店業、写真業及び旅行業、一定のタクシー、不特定かつ多数の者に場所を提供する駐車場業、これらに準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行うものの4号を挙げています。これに当たる事業は適格簡易請求書を交付でき、その記載事項には宛名の号がないため、上様でも要件を欠きません。当たらない事業では、消費税法57条の4第1項6号の「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」を満たさないことになります。

Q. 但し書きを「お品代」にしてもよいですか?

A. 何を売ったのかが分からないため、要件を満たさないと考えられます。消費税法57条の4第1項3号と第2項3号は、いずれも課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容を求めており、簡易版でも省略できません。ただし個々の商品名を1つずつ書く必要はなく、国税庁はNo.6625で、商品名等について個々の名称でなく包括的な記載であっても課税資産の譲渡等に当たることを明らかにする方法が認められるとしています。「文房具」「書籍」のように、何の取引かが分かる程度の記載が目安です。

Q. レシートしかもらえませんでした。経費にできますか?

A. 消費税法57条の4は「請求書、納品書その他これらに類する書類」と定めており、レシートもここに含まれます。書式や題名ではなく記載事項で判断するため、レシートに登録番号・取引年月日・内容・税率ごとの区分合計・消費税額等が印字されていれば要件を満たします。むしろ手書きの領収書のほうが、品目や軽減対象である旨といった3号の記載を落としやすい傾向があります。

Q. 5万円の領収書に印紙は必要ですか?

A. 必要です。印紙税法別表第一第17号の非課税物件欄が非課税としているのは、記載された受取金額が五万円未満の受取書です。5万円ちょうどは「未満」に当たらないため課税文書になります。なお、消費税額を区分して記載している場合には税抜の金額で判定できる取扱いがあるため、税込50,000円でも消費税額の記載があれば結論が変わることがあります。金額ごとの税額は印紙税額の判定ツールで確認できます。

Q. 領収書を書き間違えました。受け取った側で直してもらってよいですか?

A. 消費税法57条の4第4項は、記載事項に誤りがあった場合には、交付した事業者が修正したものを交付しなければならないと定めています。直すのは発行した側で、受け取った側が追記して要件を満たしたことにする形は想定されていません。修正した領収書を出し直す方法のほか、誤った箇所と正しい内容を示した書類を追加で交付する方法もあります。

Q. 領収書はいつまで保存すればよいですか?

A. 国税庁はNo.6625で、その閉鎖または受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間としています。起算日が受け取った日ではない点に注意が必要です。3月決算の法人が令和8年5月に受け取った領収書であれば、課税期間の末日は令和9年3月31日、その翌日から2か月を経過した日は令和9年6月1日で、そこから7年間となります。なお6年目と7年目は帳簿または請求書等のいずれか一方の保存でよいとされています。

Q. 領収書はPDFで送ってもらえますか?

A. 民法486条2項は、受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができると定めています。ただし同項ただし書は、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときはこの限りでないとしており、無条件の権利ではありません。消費税の側でも、消費税法57条の4第5項が記載すべき事項に係る電磁的記録の提供を認めています。受け取った電子データは、電子帳簿保存法の要件に沿って電子のまま保存することになります。

Q. 月極駐車場でも宛名なしの領収書を出せますか?

A. 消費税法施行令70条の11第3号は駐車場業のうち不特定かつ多数の者に自動車その他の車両の駐車のための場所を提供するものに限る、としています。契約者が特定されている月極の貸し方は、この文言に素直には当てはまらないと読むのが自然です。同条は4号でも不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行うものという条件を置いており、宛名を省ける趣旨は相手を特定できない取引にあると考えられます。判断に迷う場合は所轄の税務署または顧問の税理士に確認するのが安全です。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

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