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出金伝票の書き方 — 「出金伝票」という語は、日本の法令に一度も出てこない

結論から言うと、出金伝票は領収書の代わりにはなりません。出金伝票が帳簿の記載を補充し、補助簿として帳簿の一部を構成する場合は「帳簿」に当たり、受け取った領収書は「相手方から受け取つた……書類」に当たります。保存を義務づけている号がそもそも別で、片方がもう片方を代替する関係になっていません。

そのうえで、出金伝票には意味があります。消費税法30条8項1号が帳簿に書けと求めている4項目——相手方の氏名、年月日、内容、支払対価の額——は、そのまま出金伝票の欄です。出金伝票は「領収書の代用品」ではなく「帳簿の記入用紙」だと考えると、条文と一致します。

そして、いちばん実務に効く変更点があります。2023年9月30日まで、消費税法施行令49条1項は「三万円未満である場合」と「やむを得ない理由があるとき」という2つの号を置いていて、その場合は帳簿だけを保存すれば仕入税額控除が受けられました。この2つの号は、どちらも現在の条文から消えています。現行の同項1号はイからニまでの4類型を挙げています。別に少額特例があり、基準期間の課税売上高が1億円以下または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者は、2023年10月1日から2029年9月30日までの国内における税込1万円未満の課税仕入れについて、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられます(ただし金・白金地金の課税仕入れは相手方の本人確認書類の保存も必要です)。

「出金伝票」という語は、日本の法令に一度も出てこない

「出金伝票」という語は日本の法令にありません。対照として「伝票」は14法令に出ます。

検索語該当法令該当箇所
出金伝票0本0か所
入金伝票0本0か所
振替伝票2本2か所
伝票14本80か所
仕訳帳(対照用)6本11か所

税法側でも、「伝票」は法人税法施行令・同施行規則・消費税法・同施行令・電子帳簿保存法にありません。

法令「伝票」「領収書」
法人税法施行令無い無い
法人税法施行規則無いある
消費税法無い無い
消費税法施行令無い無い
電子帳簿保存法無いある
「法令に無い」は「作らなくてよい」ではありません 出金伝票は、名前で義務づけられている書類ではなく、他の条文が求める記載事項を書き留めるための器です。器の名前は自由ですが、器に入れるべき中身は条文が決めています。この記事は「何を書くか」を条文の側から特定していきます。
領収書がもらえない支出 (自販機・慶弔金・立替) 出金伝票を1枚おこす 法人税の側(帳簿) 帳簿の一部を構成する場合に限る 記載事項は別表二十四 7年保存(起算日は2項) 消費税の側(仕入税額控除) 30条8項1号の4項目は書ける 内部記録だけでは請求書等にならない 帳簿のみの特例・少額特例は下記参照 名称だけで帳簿・請求書等とは決まらない
出金伝票は、帳簿の一部を構成する運用の場合に帳簿となり、消費税の記帳にも利用できます。内部で作成しただけでは消費税の請求書等にはなりませんが、必要事項を備え相手方の確認を受けた仕入明細書等は該当します。

三伝票制を条文で定めている唯一の例は、「入金・出金」と呼んでいない

「伝票」を条文に持つ14本のうち、三伝票制そのものを定義している法令が2本だけあります。国家公務員共済組合法施行規則と、地方公務員等共済組合法施行規程です。どちらも同じ一文を置いています。

まず、伝票会計を義務づけている条文です。国家公務員共済組合法施行規則56条1項は次のように定めます。

取引は、すべて、伝票によつて処理しなければならない。ただし、単位所属所以外の所属所においては、伝票に代え日記帳に記入して、処理することができる。

そして同条2項が、その伝票の種類を定義します。

伝票は、収入伝票、支払伝票及び振替伝票とする。

条文が採用している呼称は「収入・支払・振替」で、「入金・出金・振替」ではありません。市販の伝票用紙や会計ソフトが使う「入金伝票・出金伝票」という組み合わせは、法令の用語ではなく商慣行の呼称だということが、ここではっきりします。冒頭の検索で「振替伝票」だけが2件返り、「入金伝票」「出金伝票」が0件だった理由もこれです。3つのうち1つだけ、たまたま商慣行と条文の呼称が一致していたという関係になっています。

役割市販の伝票・会計ソフトの呼称条文の呼称(共済組合の2省令)全法令の出現
現金が入る取引入金伝票収入伝票0件
現金が出る取引出金伝票支払伝票0件
現金が動かない取引振替伝票振替伝票2件(一致)

同じ規則には、伝票が単なる記録ではなく支払の承認手続そのものとして組み込まれていることを示す条文もあります。

小切手は、出納役が印を押した当該取引に係る伝票に基かなければ振り出すことができない。

民間企業に同じ規定はありませんが、出金伝票に承認印欄がある理由は、この設計思想と同じところにあります。伝票は「支払ってよい」という決裁の記録でもあるという位置づけです。内部統制の観点から出金伝票を残す実務上の価値は、税法の要求とは別に存在します。

出金伝票の区分は使い方による。領収書は「書類」の列

ここが、この記事のいちばん重要なところです。法人税法施行規則59条1項は、青色申告法人が保存すべきものを3つの号に分けています。柱書はこうです。

青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(第三号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。

そして1号が帳簿、3号が取引書類です。

第五十四条(取引に関する帳簿及び記載事項)に規定する帳簿並びに当該青色申告法人の資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿
取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し

3号をよく読むと、対象は2種類しかありません。①相手方から受け取った書類と、②自己が作成した書類のうち、写しがあるもののその写しです。②は、自分が作って相手に渡した請求書や領収書の控えを指しています。

内部の決裁・整理だけに用いる出金伝票は、これらの取引書類とは区別します。ただし、相手から受け取った取引書類や相手に交付した書類の控えとして使う場合は、その実体に即して判断します。帳簿の記載内容を補充して補助簿を構成する伝票は帳簿となりますが、名称だけで1号の帳簿か3号の書類かは決まりません。

「領収書の代わり」という言い方が成立しない理由 領収書は3号の書類であり、出金伝票は帳簿の一部を構成する場合に1号の帳簿となります。号が違うということは、それぞれ別に保存義務がかかっているということで、片方があれば片方が要らなくなる関係ではありません。領収書をもらえた支出について出金伝票を書いても領収書の保存義務は消えませんし、領収書をもらえなかった支出について出金伝票を書いても、3号の側に何かが足されるわけではありません。

伝票で記帳に代えると「帳簿代用書類」になり、緩和から外れる

一方で、税法は「書類を帳簿の代わりに使う」という形を想定していないわけではありません。法人税法施行規則59条4項が、その名前を定義しています。

前項の表の第一号の上欄に規定する帳簿代用書類とは、第一項第三号に掲げる書類のうち、別表二十四に定める記載事項の全部又は一部の帳簿への記載に代えて当該記載事項が記載されている書類を整理し、その整理されたものを保存している場合における当該書類をいう。

読み解くと、帳簿代用書類とは「3号の書類のうち、帳簿に書く代わりとして整理・保存しているもの」です。納品書の控えを売上帳の代わりに綴じている、といった実務がこれに当たります。

注目すべきは、この定義が置かれている場所です。59条3項は、保存期間の後半について負担を軽くする方法を認めているのですが、その1号の対象から帳簿代用書類は名指しで除かれています(条文は「帳簿代用書類に該当するものを除く」と書いています)。書類を帳簿の代わりに使うと、保存の要求はむしろ厳しい側に寄るという構造です。

出金伝票という名称だけでは、帳簿代用書類に当たるかは決まりません。3号の取引書類に当たり、記帳に代えて整理・保存する運用かを確認します。帳簿の一部を構成する伝票は帳簿として保存し、それ以外は作成目的・利用実態に応じて区分を確認します。なお、帳簿そのものに何を書くかを定める別表二十四の記載事項については、現金出納帳の書き方で5項目を条文の文言ごとに扱っているので、そちらに譲ります。

自分で作った書類が「請求書等」になる道は、条文上1本だけ

消費税の側に移ります。仕入税額控除の要件を定める消費税法30条7項は、こう書いています。

第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。

原則は「帳簿及び請求書等」の両方で、括弧の中が例外です。内部で作成しただけの出金伝票は記帳に用いるもので、それだけでは請求書等にはなりません。

ただし、条文をよく読むと自分で作った書類が「請求書等」になる道が1本だけあります。30条9項3号です。

事業者がその行つた課税仕入れ(他の事業者が行う課税資産の譲渡等に該当するものに限るものとし、当該課税資産の譲渡等のうち、第五十七条の四第一項ただし書又は第五十七条の六第一項本文の規定の適用を受けるものを除く。)につき作成する仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類で課税仕入れの相手方の氏名又は名称その他の政令で定める事項が記載されているもの(当該書類に記載されている事項につき、当該課税仕入れの相手方の確認を受けたものに限る。)

末尾の括弧が決定的です。「当該課税仕入れの相手方の確認を受けたものに限る」。自分で作った書類が請求書等になるための条件は、相手方の確認です。仕入明細書はこの確認があるから請求書等になれます。

出金伝票には、この確認がありません。相手に見せず、自分の机の上で完結するのが出金伝票だからです。ただし、出金伝票という名称でも、法定の記載事項を備え相手方の確認を受けた仕入明細書等に当たれば、請求書等になります。「相手方の確認」の有無が、両者を分けている一線です。

「3万円未満なら領収書は要らない」は2023年9月30日で終わっている

実務でいまも語り継がれている「3万円未満なら領収書がなくても出金伝票でよい」という扱いは、根拠となる条文が存在した時期のものです。2023年9月30日まであった号は、現行の消費税法施行令にはありません。

2023年9月30日まで有効だった消費税法施行令49条1項は、1号でこう定めていました。

法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が三万円未満である場合

そして2号が、3万円以上の場合の受け皿を置いていました。

法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が三万円以上である場合において、同条第七項に規定する請求書等の交付を受けなかつたことにつきやむを得ない理由があるとき(同項に規定する帳簿に当該やむを得ない理由及び当該課税仕入れの相手方の住所又は所在地(国税庁長官が指定する者に係るものを除く。)を記載している場合に限る。)。

この2つの号は、現在の条文にはどちらもありません。インボイス制度の開始に合わせて差し替えられ、いまの1号は類型を限定列挙する形になっています。

2023年9月30日まで2023年10月1日から(現行)
1号三万円未満である場合イ〜ニの4類型に該当する場合(該当する旨を記載。住所の記載が不要な取引もある)
2号三万円以上でやむを得ない理由があるとき特定課税仕入れに係るものである場合
3号特定課税仕入れに係るものである場合(号なし)
消えたのは金額基準だけではありません 「やむを得ない理由があるとき」という受け皿の号が、丸ごと無くなっています。領収書をもらえなかった事情を帳簿に書けば通る、という一般的な逃げ道は現行法には存在しません。ただし、次章の4類型とは別に少額特例があり、基準期間の課税売上高が1億円以下または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者は、2023年10月1日から2029年9月30日までの国内における税込1万円未満の課税仕入れについて、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられます(ただし金・白金地金の課税仕入れは相手方の本人確認書類の保存も必要です)。

なお、この3万円という数字は現行法から完全に消えたわけではなく、別の場所に、別の意味で残っています。次章のイに当たる公共交通機関の特例は「税込価額が三万円未満のもの」という条件を持っています。かつての「支出全般が3万円未満」とは対象が違うので、同じ数字を見ても同じ基準だと読まないでください。

施行令49条の4類型と追加記載事項(少額特例とは別)

現行の消費税法施行令49条1項1号は、柱書に条件を書いたうえで、イからニまでの4類型を挙げています。柱書はこうです。

課税仕入れが次に掲げる課税仕入れに該当する場合(法第三十条第七項に規定する帳簿に次に掲げる課税仕入れのいずれかに該当する旨及び当該課税仕入れの相手方の住所又は所在地(国税庁長官が指定する者に係るものを除く。)を記載している場合に限る。)

4類型の中身は次のとおりです。

号類型身近な例
イ適格請求書の交付が免除される課税資産の譲渡等(施行令70条の9第2項1号)に係る課税仕入れ税込3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
ロ適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除く)を記載した入場券等が、使用時に回収される取引(イを除く)必要事項を記載した入場券本体が回収され、手元の半券には必要事項が残らない場合
ハ適格請求書発行事業者でない者からの仕入れで、棚卸資産となるもの。古物商は古物、質屋は質物、宅建業者は建物が対象。再生資源・再生部品(特定金属くずを除く)も対象。特定金属くずは届出を行った買受業者の2026年9月1日以後の購入が対象中古品の買取仕入れ
ニ財務省令(消費税法施行規則15条の4)で定める課税仕入れ税込3万円未満の自動販売機等からの購入、従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費・通勤手当など

ニが指す財務省令の条文は、次のように始まります。

令第四十九条第一項第一号ニに規定する財務省令で定める課税仕入れは、次に掲げる課税仕入れとする。

この規則15条の4が挙げるのは3つで、自動販売機等・出張旅費等・通勤手当です。出張旅費と通勤手当の扱いは範囲が細かく、金額基準の有無が誤解されやすいところなので、出張旅費規程と日当の相場で条文ごとに扱っています。そちらを参照してください。

追加記載は取引別に確認する(住所が不要な取引もある)

公共交通機関特例などでは、通常の記載事項に特例に該当する旨を加え、住所は記載不要となる取引かを確認します。少額特例では適用の旨や住所の追加記載は不要です。まず、通常の記載事項は消費税法30条8項1号のイからニまでで、イは次の一言です。

課税仕入れの相手方の氏名又は名称

ロも同じく短い規定です。

課税仕入れを行つた年月日

ハが資産または役務の内容、ニが支払対価の額で、合わせて4項目になります。これに、さきほどの柱書の括弧が求める「該当する旨」を加えます。「相手方の住所又は所在地」は、税込3万円未満の公共交通機関、自動販売機等、通常必要な出張旅費等では記載不要です。

記載事項根拠市販の出金伝票に欄があるか
1相手方の氏名又は名称法30条8項1号イ支払先欄
2課税仕入れを行った年月日同ロ日付欄
3資産又は役務の内容同ハ摘要欄
4支払対価の額同ニ金額欄
5特例のいずれかに該当する旨令49条1項1号 柱書無い(摘要欄に書く)
6相手方の住所又は所在地同上無い(摘要欄に書く)

市販の出金伝票の様式は、4項目までは自然に埋まりますが、5と6の欄を持っていません。帳簿のみの特例に用いるなら、該当する旨を摘要欄等に記載し、住所はその取引で必要な場合だけ補います。少額特例にはこの追加記載は不要です。ここが、様式をそのまま使っているだけでは抜け落ちるところです。

6の住所は、国税庁長官が指定する者に係るものは除かれます(柱書の括弧書き)。同条2項は、その指定を受けた者から不特定多数を相手に行う課税仕入れについて、30条8項1号イ(相手方の氏名又は名称)の記載を省略できるとも定めています。省略できるものと、追加で要るものが同じ条文の中に同居しているので、どちらの話をしているかを取り違えないでください。

手書きの出金伝票は、スキャンして原本を捨てられない

紙の伝票を電子化したいという要望はよくありますが、手書きの出金伝票については、条文上その道がありません。理由は、電子帳簿保存法が帳簿と書類を別々の項で扱っているからです。

4条1項が帳簿の電子保存を定めています。

保存義務者は、国税関係帳簿(財務省令で定めるものを除く。以下この項、次条第一項及び第三項並びに第八条第一項及び第四項において同じ。)の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。

条件は「自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合」です。手書きで起票した時点で、最初の記録段階が紙になるため、この項には乗れません。

次に、いわゆるスキャナ保存を定める4条3項です。

前項に規定するもののほか、保存義務者は、国税関係書類(財務省令で定めるものを除く。以下この項において同じ。)の全部又は一部について、当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合には、財務省令で定めるところにより、当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。

この項の対象は「国税関係書類」だけで、国税関係帳簿は入っていません。2条2号が両者を明確に別の概念として定義しているため、帳簿をスキャナ保存する余地はありません。

結論として、選べるのは2つだけです ①最初から会計ソフトやスプレッドシートで起票して4条1項に乗せる、②紙のまま保存する。手書きで起票してから後でスキャンし、紙を捨てるという運用は、出金伝票が帳簿である限り条文上の根拠を持ちません。電子化したいなら、起票の段階から電子にする必要があります。スキャナ保存の要件そのものは電子帳簿保存法をわかりやすくで扱っています。

保存期間の起算日は、伝票を書いた日ではない

青色申告法人の保存期間は、規則59条1項の柱書のとおり起算日から7年間です。その起算日を定めるのが2項で、帳簿と書類で数え方が違います。

前項に規定する起算日とは、帳簿についてはその閉鎖の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月(次の各号に掲げる事業年度にあつては、当該各号に定める月数。以下この項において同じ。)を経過した日をいい、書類についてはその作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日をいう。

出金伝票は帳簿の側なので、起算日は「その閉鎖の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月」を経過した日です。伝票を書いた日でも、支払った日でもありません。

3月決算の会社が、2026年4月10日に出金伝票を1枚起票した場合で数えてみます。

段階日付根拠
伝票を起票した日2026年4月10日(起算日ではない)
属する事業年度の終了の日2027年3月31日3月決算
その翌日2027年4月1日規則59条2項
2月を経過した日=起算日2027年6月1日同上
7年間の満了2034年5月31日規則59条1項

起票から数えると約8年2か月になります。「7年」という数字だけを覚えていると、1年以上早く廃棄してしまうことになるので、決算月と2か月分を必ず足してください。なお、確定申告書の提出期限が延長されている事業年度については、括弧書きが月数を読み替えます。

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記入例 — 自動販売機・慶弔金・立替精算

ここまでの整理を、実際の3つの場面に当てはめます。3つとも領収書が手元に残らない支出ですが、条文上の扱いは3通りに分かれます。いずれも手元の現金から払う場面なので、その現金をどう管理するか——手元残高の上限、1件あたりの上限、実査で合わなかったときの処理——は小口現金と現金過不足で扱っています。

① 自動販売機で飲料を購入した(税込150円)

令49条1項1号イの類型に当たります。帳簿だけで仕入税額控除を受けられ、この自動販売機特例では前章の5を記載しますが、6の住所は不要です。摘要欄はこう書きます。

欄記入内容
日付2026年8月20日
支払先自動販売機
勘定科目会議費
摘要来客用飲料/自動販売機特例に該当/設置場所: 東京都◯◯区◯◯1-2-3
金額150円

この例では「自動販売機」と特例に該当する旨を摘要に記載するのが要点です。所在地を任意に記録しても構いませんが、控除のための必須事項ではありません。自動販売機特例に該当する旨を記載し、通常の帳簿記載事項とともに保存します。

② 取引先へ慶弔金を包んだ(30,000円)

こちらは消費税の話がそもそも発生しません。慶弔金は対価を伴わない支出なので課税仕入れに当たらず、仕入税額控除の要件を検討する場面ではないからです。前章の5と6は不要です。

ただし、法人税の側では損金性の確認が要ります。出金伝票には相手先・関係・事由を残し、会葬礼状や案内状を一緒に保管するのが実務です。これらは相手方から受け取った書類なので、規則59条1項3号の側で保存されることになります。

1枚の支出で、2つの号が同時に動くことがあります 慶弔金の例では、出金伝票が1号(帳簿)、会葬礼状が3号(書類)です。「出金伝票を書いたから他は要らない」ではなく、受け取れた紙は3号の側に残す——これが、号を分けて考えることの実務的な意味です。

③ 従業員が立て替えた支出を精算した

従業員が受け取った領収書が会社宛でなくても、その領収書は会社にとって3号の書類として保存対象になります。出金伝票は精算という現金の動きを記録するもので、領収書を置き換えるものではありません。2枚を一組で綴じるのが素直な整理です。

税込3万円未満の自動販売機等からの購入を従業員が立て替えた場合は、①と同じ自動販売機特例の扱いになります。領収書がないだけで一般の立替購入が対象になるわけではなく、その他の購入は少額特例等の要件を別途確認します。領収書があるのに出金伝票だけを残す、という運用にはしないでください。3号の保存義務が残ったままになります。

よくある質問

領収書をもらい忘れました。出金伝票を書けば経費として認められますか?

法人税の側と消費税の側で結論が違うため、分けて考えるのが正確です。法人税の側では、出金伝票が帳簿の一部を構成する場合は法人税法施行規則59条1項1号の帳簿として保存対象になり、事実として支出があったのであれば損金性そのものが伝票の有無だけで否定される仕組みにはなっていません。一方、消費税の仕入税額控除については、30条7項が原則として帳簿と請求書等の両方の保存を求めており、内部で作成しただけの出金伝票は同条9項の請求書等に当たりません。ただし、法定の記載事項を備え相手方の確認を受けた仕入明細書等に当たる場合は別です。帳簿だけで足りる場合には施行令49条1項1号の4類型があります。別に少額特例があり、基準期間の課税売上高が1億円以下または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者は、2023年10月1日から2029年9月30日までの国内における税込1万円未満の課税仕入れについて、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられます(ただし金・白金地金の課税仕入れは相手方の本人確認書類の保存も必要です)。2023年9月30日まで置かれていた「三万円未満である場合」の号と「やむを得ない理由があるとき」の号は、現行の条文にはどちらもありません。取引類型のほか、少額特例の事業者規模・取引金額・対象期間も確認してください。

出金伝票の保存期間は何年ですか?

青色申告法人であれば、法人税法施行規則59条1項が起算日から7年間と定めています。ここで注意が要るのは起算日で、同条2項は帳簿について「その閉鎖の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月」を経過した日としています。伝票を書いた日から7年ではありません。3月決算の会社が2026年4月10日に起票した伝票であれば、その事業年度の終了は2027年3月31日、翌日が2027年4月1日、2か月を経過した2027年6月1日が起算日となり、7年後の2034年5月31日まで保存することになります。起票日から数えると約8年2か月です。なお同項の括弧書きは、確定申告書の提出期限が延長されている事業年度について月数を読み替えると定めています。

手書きの出金伝票をスキャンして、紙を捨ててもよいですか?

出金伝票を帳簿として扱う限り、条文上その方法はありません。電子帳簿保存法4条3項のいわゆるスキャナ保存は、対象を「国税関係書類」と書いており、国税関係帳簿は含まれていません。同法2条2号が国税関係帳簿と国税関係書類を別の概念として定義しているためです。帳簿を電子で保存する道は4条1項ですが、こちらは「自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合」という条件が付いており、手書きで起票した時点で最初の記録段階が紙になるため要件を満たしません。一般に、電子化したい場合は起票の段階から会計ソフトや表計算ソフトで作成する方法を採ることになります。なお、支出の相手方から受け取った領収書のほうは3号の書類なので、こちらはスキャナ保存の対象です。

「出金伝票」と「支払伝票」は違うものですか?

実務上は同じ役割を指しますが、条文に現れるのは「支払伝票」のほうだけです。「出金伝票」も「入金伝票」も法令にはありません。三伝票制を定義している法令は国家公務員共済組合法施行規則と地方公務員等共済組合法施行規程の2本で、どちらも「伝票は、収入伝票、支払伝票及び振替伝票とする」と定めています。市販の伝票用紙や会計ソフトが使う「入金伝票・出金伝票」という呼称は法令の用語ではなく商慣行のもので、3つのうち「振替伝票」だけが偶然一致している関係です。名称が違っても税務上の扱いが変わるわけではありません。

3万円未満の支出なら、いまでも領収書なしで大丈夫ですか?

以前の「3万円未満」という一般的な基準は廃止されました。別に少額特例があり、基準期間の課税売上高が1億円以下または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者は、2023年10月1日から2029年9月30日までの国内における税込1万円未満の課税仕入れについて、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられます(ただし金・白金地金の課税仕入れは相手方の本人確認書類の保存も必要です)。2023年9月30日まで有効だった消費税法施行令49条1項1号は「三万円未満である場合」と定めており、この金額未満であれば帳簿の保存だけで仕入税額控除が受けられました。インボイス制度の開始に伴いこの号は差し替えられ、現行の1号はイからニまでの4類型を限定列挙する形になっています。同時に、旧2号の「三万円以上である場合において……やむを得ない理由があるとき」という受け皿も無くなりました。ただし3万円という数字自体は別の場所に残っており、現行1号イが指す公共交通機関の特例は「税込価額が三万円未満のもの」を条件としています。対象が支出全般から特定の役務に狭まっているため、同じ数字でも意味が違う点に注意が必要です。

次に読む

出典

消費税法・電子帳簿保存法の条文に基づいて作成。

この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談ではありません。実際の判断にあたっては、顧問税理士または所轄税務署にご確認ください。

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