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安全衛生委員会とは — 常時50人以上で設置義務、毎月1回開催、記録は3年保存。衛生委員会との違いと、2028年に変わること

結論から言うと、常時50人以上の労働者を使用する事業場は、業種を問わず衛生委員会を設けなければなりません(労働安全衛生法18条1項と、その「政令で定める規模」を受けた施行令9条)。一定の業種ではこれに加えて安全委員会も必要になり、両方を設けなければならないときは、それぞれに代えて安全衛生委員会を1つ設置することができます(法19条1項)。世の中で見かける委員会の多くがこの安全衛生委員会なのは、2つ作るより1つで済ませたほうが楽だからです。

運営で押さえるのは3つで、しかもこれは別々の義務です。①毎月1回以上開催する(規則23条1項)、②開催の都度、議事の概要を労働者に周知する(同条3項)、③開催の都度、一定の事項を記録して3年間保存する(同条4項)。②と③は似て見えますが、周知するのは概要、保存するのは記録で、しかも保存が求められている中身は議事録の全文ではありません。ここは後半で条文のまま確認します。

そしてこの記事のいちばん踏み込んだところが、「50人」という数字は労働安全衛生法の本則に一度も出てこないという点です。50人はすべて政令の側にあり、しかもストレスチェックの「50人未満は努力義務」に至っては、条文に50人とすら書かれていません。それは附則の読替え規定で作られていて、2028年4月1日に消えます。e-Gov法令APIで施行日の異なる8つのリビジョンを1つずつ当たり、どの段階で消えるのかまで確認しました。

50人になった事業場に発生する義務を、先に一覧で

常時使用する労働者が50人に達すると、その事業場には次の義務がまとめて発生します。労務の現場で「50人の壁」と呼ばれるのはこの塊のことです(社会保険の適用拡大で語られる50人とは別の話なので、混ぜないよう注意してください)。

発生する義務根拠期限・頻度業種
衛生管理者の選任法12条1項+施行令4条事由発生から14日以内(規則7条1項1号)問わない
産業医の選任法13条1項+施行令5条事由発生から14日以内(規則13条1項1号)問わない
衛生委員会の設置法18条1項+施行令9条毎月1回以上開催(規則23条1項)問わない
安全委員会の設置法17条1項+施行令8条毎月1回以上開催(規則23条1項)一部の業種だけ
ストレスチェックの実施法66条の10第1項1年以内ごとに1回(規則52条の9)問わない
ストレスチェック結果の労基署への報告規則52条の211年以内ごとに1回問わない

選任の2つは14日以内と日数が切られています。委員会は「設置期限は何日以内」という書き方ではなく、毎月1回以上開催するという頻度で縛られる形です。

常時使用する労働者が 50人 に達した事業場 14日以内に選任 ・衛生管理者(法12条1項) ・産業医(法13条1項) 規則7条1項1号・13条1項1号 毎月1回以上開催 ・衛生委員会(法18条1項) ・安全委員会(業種による) 規則23条1項 1年以内ごとに1回 ・ストレスチェック ・労基署へ結果を報告 規則52条の9・52条の21 両方を設けなければならないとき ↓ 安全衛生委員会に一本化できる 法19条1項(義務ではなく選択) 委員会を設けなかったとき … 50万円以下の罰金(法120条1号) ストレスチェックを実施しなかったとき … 法120条の列挙に無い(直接の罰則なし) ※ただし規則52条の21の報告義務は別に課されている
50人に達した事業場に発生する義務と、その期限・頻度。罰則の掛かり方が委員会とストレスチェックで違う点は後半で扱う。

安全委員会・衛生委員会・安全衛生委員会の違い

まず衛生委員会の設置義務です。条文はこうなっています。

事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。

この「政令で定める規模」を受けているのが施行令9条です。

法第十八条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

ここに業種の限定はありません。製造業でも、飲食店でも、クリニックでも、ソフトウェア会社でも、常時50人以上なら衛生委員会が要ります。

一方、安全委員会は業種で分かれます(法17条1項と施行令8条)。施行令8条は業種を2つのグループに分け、それぞれ50人・100人としています。

人数業種(施行令8条)
50人以上
(1号)
林業、鉱業、建設業、製造業のうち木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業及び輸送用機械器具製造業、運送業のうち道路貨物運送業及び港湾運送業、自動車整備業、機械修理業並びに清掃業
100人以上
(2号)
施行令2条1号・2号に掲げる業種のうち、上の1号に掲げる業種を除いたもの。具体的には、1号に挙がっていない製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業
多くの会社は、安全委員会は不要で衛生委員会だけになる

施行令8条が挙げているのは上の2グループだけです。施行令2条3号の「その他の業種」は安全委員会の対象に入っていません。金融・保険、不動産、医療・福祉、飲食、教育、情報サービス、士業、各種商品小売業以外の小売業などは、何人になっても安全委員会の設置義務は生じません。したがって多くの会社にとって、50人で立ち上げる委員会は衛生委員会1つです。この場合は「安全衛生委員会」という名前にはなりません(安全衛生委員会は、両方を設けなければならないときの代替だからです)。

その代替を定めているのが法19条1項です。

事業者は、第十七条及び前条の規定により安全委員会及び衛生委員会を設けなければならないときは、それぞれの委員会の設置に代えて、安全衛生委員会を設置することができる。

読みどころは「することができる」で、これは義務ではなく選択です。安全委員会と衛生委員会を別々に開き続けても違反にはなりません。実務上は、委員が重なり議題も隣接するので、1つにまとめるのが通例です。

「50人」は安衛法の本則に一度も出てこない

ここが、条文を自分で引かないと気づきにくいところです。労働安全衛生法の本則には、委員会や産業医の「50人」という数字が書かれていません。法律側はすべて次のような書き方をしています。

数字は全部、施行令(労働安全衛生法施行令)の側にあります。衛生管理者は4条、産業医は5条、安全委員会は8条、衛生委員会は9条。法律を検索して「50人」が出てこなかったことを、「50人という基準が無い」と読んではいけません。基準の数字を政令に預けるのは、改正の手続きを軽くするための立法の作法で、安衛法はこれを徹底しています。

この二段構えは、次のストレスチェックの節でもっと極端な形で出てきます。そこでは政令にすら50人と書かれておらず、産業医の選任義務があるかどうかを経由して間接的に決まります。

数えるのは会社単位ではなく事業場単位

条文はどれも「事業場ごとに」と書いています。会社全体の従業員数ではありません。本社40人・支店30人・工場45人で合計115人という会社は、どの事業場も50人未満なので、衛生委員会の設置義務はどこにも発生しません(安全委員会の対象業種でもない場合)。逆に、会社は1つでも1か所に55人いれば、その事業場に義務が生じます。

「常時使用する労働者」には、パート・アルバイトも、日雇いも、原則として含めて数えます。正社員だけを数えて50人未満だと判断するのは、いちばん多い誤りです。派遣労働者については、衛生管理者・産業医・衛生委員会に関しては派遣先でも数える取扱いが行われています(派遣労働者は派遣元と派遣先の双方で数えられる場面があります)。自社の構成が複雑な場合は、所轄の労働基準監督署に事業場の単位と人数の数え方を確認するのが確実です。

「常時50人」は、たまたま50人になった日で判定するものではない

繁忙期に一時的に50人を超えたかどうかではなく、常態として50人以上を使用しているかで見ます。逆に、常態として50人を超えているのに、たまたま数えた日が49人だったから不要、という理屈も通りません。

委員の構成 — 議長は事業者側、半数は労働者側の推薦

衛生委員会の委員は、法18条2項が4つの号で定めています。安全衛生委員会にする場合は法19条2項で、安全管理者と「安全に関し経験を有する労働者」が加わって5つの号になります。

衛生委員会(法18条2項)安全衛生委員会(法19条2項)
1号総括安全衛生管理者、または総括安全衛生管理者以外の者でその事業場において事業の実施を統括管理する者もしくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者 ※1人とする
2号衛生管理者のうちから事業者が指名した者安全管理者及び衛生管理者のうちから事業者が指名した者
3号産業医のうちから事業者が指名した者産業医のうちから事業者が指名した者
4号その事業場の労働者で、衛生に関し経験を有する者のうちから事業者が指名した者その事業場の労働者で、安全に関し経験を有する者のうちから事業者が指名した者
5号その事業場の労働者で、衛生に関し経験を有する者のうちから事業者が指名した者

そのうえで、運営の骨格を決めているのが法17条3項〜5項です(法18条4項・法19条4項がこれを準用します)。議長は1号の委員がなります。つまり議長は事業者側の人間で、労働者側から選ぶものではありません。

そして、実務でいちばん見落とされるのが4項です。

事業者は、第一号の委員以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。
「半数」の分母は、議長を除いた委員

半数の推薦が必要なのは1号の委員(議長)以外の委員についてです。委員全体の半数ではありません。たとえば議長1人+他4人の計5人なら、4人のうち2人が労働組合または過半数代表者の推薦にもとづく指名でなければなりません。会社が5人全員を一方的に指名して発足させると、この4項に反することになります。なお5項により、過半数労働組合との労働協約に別段の定めがあるときは、その限度でこの3項・4項は適用されません。

産業医は委員に指名される側であると同時に、委員会に対して能動的な権限も持っています。規則23条5項は、産業医が衛生委員会または安全衛生委員会に対し、労働者の健康を確保する観点から必要な調査審議を求めることができると定めています。さらに法13条6項は、産業医が事業者に勧告をしたときの流れをこう定めています。

事業者は、前項の勧告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該勧告の内容その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

産業医の勧告は事業者の中で握りつぶせない作りになっていて、委員会が受け皿として指定されています。委員会は形式だけの月次行事ではなく、この報告先としての役割を条文上与えられています。

毎月1回・周知・3年保存は、それぞれ別の義務

運営を定めているのは規則23条です。1項が開催頻度です。

事業者は、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「委員会」という。)を毎月一回以上開催するようにしなければならない。

次に3項が周知で、開催の都度、遅滞なく、議事の概要を労働者に周知させなければならないとし、その方法を3つ挙げています。①常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付ける、②書面を労働者に交付する、③電子計算機のファイル等に記録し、かつ各作業場に労働者が常時内容を確認できる機器を設置する。この3つのいずれかです。社内グループウェアに掲載する運用は③に当たりますが、③は「各作業場に確認できる機器を設置すること」までを含んでいる点に注意してください。全員に端末が行き渡っていない現場では、①や②との併用が要ることになります。

そして4項が保存です。

事業者は、委員会の開催の都度、次に掲げる事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。
保存が求められているのは、議事録の全文ではない

4項が記録・保存を求めている「次に掲げる事項」は2つの号だけです。1号 委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容、2号 前号に掲げるもののほか、委員会における議事で重要なもの。つまり法が保存を義務づけているのは、①委員会が出した意見と、それを受けて会社が何をしたか、②その他の重要な議事です。発言をすべて書き起こした議事録を作る義務は、この条文からは出てきません。逆に言えば、出席者と議題だけを並べて「委員会の意見」と「講じた措置」が書かれていない議事録は、4項が求めている記録になっていません。実務で作りがちなのは後者なので、様式を作るときはこの2つの欄を必ず立ててください。

3項の周知と4項の保存は、対象も期間も違う別の義務です。3項は議事の概要労働者に届けるもの、4項は意見と講じた措置3年間手元に残すもの。片方だけをやって済ませることはできません。

なお2項は、開催頻度以外の運営に必要な事項は委員会が定めるとしています。定足数、任期、招集の方法、代理出席の可否といったものは法令に書かれていないので、委員会自身が決めることになります。ここを決めずに走り出すと、後で「その決議は有効か」でもめます。

関連して、選任した衛生管理者と産業医には、それぞれ職場を巡視する義務があります。衛生管理者は少なくとも毎週1回(規則11条1項)、産業医は少なくとも毎月1回(規則15条1項)です。産業医については、衛生管理者の巡視結果などの情報が毎月1回以上提供されていて、事業者の同意を得ているときは2か月に1回に緩めることができます。委員会を月1回開くだけでは足りず、巡視は別に回っている必要があります。産業医の側は、この巡視のほかに職務が規則14条1項で9つ定められ、事業者の側にも情報提供・権限の付与・業務内容の周知という3つの義務が発生します。専属が必要になる人数の線(1,000人、ただし深夜業を含む業務なら500人)とあわせて、産業医の選任と職務の記事で条文ごとに整理しています。

何を調査審議するのか(規則22条の12項目)

法18条1項は衛生委員会の付議事項を4つの号で挙げ、その4号「労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項」の中身を、規則22条が12の号に展開しています。毎月の議題に困ったら、この12項目から拾うのが正攻法です。

規則22条が挙げる事項
1衛生に関する規程の作成に関すること
2法28条の2第1項または法57条の3第1項・第2項の危険性・有害性等の調査(リスクアセスメント)およびその結果にもとづき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること
3安全衛生に関する計画(衛生に係る部分に限る)の作成、実施、評価及び改善に関すること
4衛生教育の実施計画の作成に関すること
5法57条の4第1項・法57条の5第1項の規定により行われる有害性の調査およびその結果に対する対策の樹立に関すること
6法65条第1項・第5項の作業環境測定の結果およびその評価にもとづく対策の樹立に関すること
7定期健康診断、法66条4項の指示による臨時の健康診断、法66条の2の自ら受けた健康診断、その他省令にもとづく医師の診断・診察・処置の結果および対策の樹立に関すること
8労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること
9長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること
10労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること
11規則577条の2第1項・第2項・第8項により講ずる措置、および同条3項・4項の医師または歯科医師による健康診断の実施に関すること
12厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官または労働衛生専門官から文書により命令、指示、勧告または指導を受けた事項のうち、労働者の健康障害の防止に関すること

10号の「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立」が、ストレスチェックの結果を委員会で扱う根拠になります。法66条の10第6項も、面接指導後の医師の意見を衛生委員会もしくは安全衛生委員会または労働時間等設定改善委員会へ報告することを、講ずべき措置の1つとして挙げています。

ストレスチェックは2028年4月1日から50人未満でも義務になる

ストレスチェックの根拠は法66条の10第1項で、条文はこう書いています。

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

この条文には、規模の限定が一切ありません。「50人以上の事業場は」とも「政令で定める規模の」とも書かれておらず、素直に読めば全事業場の義務です。それでも実務で「50人未満は努力義務」と説明されるのは、制定附則の4条が次の読替えを置いているからです。

第十三条第一項の事業場以外の事業場についての第六十六条の十の規定の適用については、当分の間、同条第一項中「行わなければ」とあるのは、「行うよう努めなければ」とする。
ここに「50人」は書かれていない — 二段の参照でそうなっている

読替えの対象は「第十三条第一項の事業場以外の事業場」、つまり産業医を選任しなければならない事業場ではないところです。そして法13条1項の規模は施行令5条が定めていて、そこで初めて常時五十人以上という数字が出てきます。
= ストレスチェックの50人は、①66条の10には無く、②附則4条にも無く、③産業医の条を経由した先の施行令5条にある、という三段の作りです。条文を「ストレスチェック 50人」で検索しても、根拠にはたどり着けません。

そしてこの附則4条には「当分の間」と書かれています。その当分の間が、いつ終わるのか。労働安全衛生法は現在、令和7年法律第33号による段階施行の途中にあり、e-Gov法令APIには施行日の異なる8つのリビジョンが並んでいます。そこで、附則4条がどの段階まで存在するのかを1つずつ取得して確認しました。

施行日制定附則4条(読替えの特例)
2025年6月1日在り
2026年1月1日在り
2026年4月1日(現行)在り
2026年10月1日在り
2027年1月1日在り
2027年4月1日在り
2028年4月1日消える
2030年4月1日消えたまま

つまり2028年4月1日をもって読替えの特例が失われ、法66条の10第1項が本来の姿(行わなければならない)で全事業場に適用されます。常時50人未満の事業場も、その日からストレスチェックが義務になります。

いま50人未満の会社が、2028年4月1日までにやっておくこと

ストレスチェックには実施者(医師、保健師など規則が定める者)が必要で、50人未満の事業場には産業医の選任義務がありません。実施者をどう確保するかが、そのまま準備の中身になります。産業保健総合支援センターの地域窓口(地域産業保健センター)は、常時50人未満の事業場に対して産業保健サービスを無料で提供しており、ここを使う選択肢があります。あわせて、規則52条の9が求める検査項目は①心理的な負担の原因に関する項目、②心身の自覚症状に関する項目、③他の労働者による支援に関する項目の3領域なので、この3つを満たす調査票を用意する必要があります。

なお、規則52条の21が定める労働基準監督署への報告義務は、条文上常時五十人以上の労働者を使用する事業者に課されています。2028年4月1日以後にこの報告義務の範囲がどう扱われるかは、施行までに省令が改正される可能性があるため、施行が近づいた時点で厚生労働省の公表資料を確認してください。この記事の時点で確認できているのは、法律の附則4条が2028年4月1日施行のリビジョンで消えることまでです。

罰則は非対称 — 委員会には罰金、ストレスチェックには無い

法120条は、次のように始まります。

次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。

その1号が違反対象の条文を長く列挙しています。この記事に関係するところを抜き出すと、第十二条第一項(衛生管理者)、第十三条第一項(産業医)、第十七条第一項(安全委員会)、第十八条第一項(衛生委員会)が並んでいます。衛生委員会を設けない、産業医を選任しない、というのは50万円以下の罰金の対象です。

一方で、120条1号の列挙を全部当たると、次の2つが入っていません

条文法120条1号の列挙意味
法12条1項(衛生管理者)在り50万円以下の罰金
法13条1項(産業医)在り50万円以下の罰金
法17条1項(安全委員会)在り50万円以下の罰金
法18条1項(衛生委員会)在り50万円以下の罰金
法66条1項〜3項(健康診断)在り50万円以下の罰金
法19条(安全衛生委員会)無し設置は義務ではなく選択なので、そもそも違反が観念できない
法66条の10(ストレスチェック)無し実施しないこと自体に直接の罰則は無い
罰則が無いことを「やらなくてよい」と読まない

法66条の10第1項は行わなければならないと書かれた義務規定です。罰則が付いていないのは、違反の有無を罰金で裁く設計になっていないというだけで、義務でないという意味ではありません。労働基準監督署の指導の対象にはなりますし、規則52条の21の報告義務のほうは別に課されています。加えて、メンタル不調による労災請求や安全配慮義務をめぐる争いでは、ストレスチェックとその後の措置を行っていたかどうかが会社側の対応の履歴として問われます。罰金の有無と、民事上のリスクの有無は別の話です。

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50人未満の事業場がやること

50人未満なら何も要らない、ではありません。規則23条の2が、委員会を設けていない事業者に次の義務を課しています。

委員会を設けている事業者以外の事業者は、安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければならない。

文末が「設けるようにしなければならない」なので努力義務ですが、対象は「委員会を設けている事業者以外の事業者」で、人数の下限はありません。10人の事業場にも掛かります。朝礼やミーティングの中に安全衛生の議題を入れて記録を残す、という形で足りることが多い規定です。

また、健康診断の義務は委員会とは別枠で、規則44条1項が常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、11項目の健康診断を行うことを求めています。こちらは人数の要件がありません。1人でも労働者を使用していれば必要で、しかも法66条1項〜3項は法120条1号の列挙に入っている=50万円以下の罰金の対象です。50人未満の会社が優先して確認すべきは、委員会よりまずこちらです。

まとめ
  • 常時50人以上の事業場は業種を問わず衛生委員会が必要(法18条1項+施行令9条)。安全委員会は業種で50人・100人に分かれ、「その他の業種」は対象外
  • 両方必要なときだけ、代えて安全衛生委員会にできる(法19条1項・義務ではなく選択)
  • 運営は毎月1回以上の開催・議事の概要の周知・記録の3年保存の3つで、それぞれ別の義務(規則23条1項・3項・4項)
  • 保存が求められているのは委員会の意見と、それを踏まえて講じた措置。議事録の全文ではない
  • 議長は事業者側の1号委員。1号以外の委員の半数は過半数労働組合または過半数代表者の推薦にもとづく指名(法17条4項)
  • ストレスチェックの「50人未満は努力義務」は制定附則4条の読替えで作られており、2028年4月1日に消える
  • 委員会の不設置は50万円以下の罰金。ストレスチェック未実施に直接の罰則は無いが、義務であることは変わらない

よくある質問

Q. 常時50人以上かどうかは、会社全体で数えるのですか、事業場ごとに数えるのですか?

A. 事業場ごとに数えます。労働安全衛生法12条1項、13条1項、17条1項、18条1項はいずれも「政令で定める規模の事業場ごとに」という書き方をしており、会社全体の人数を基準にしていません。本社40人・支店30人・工場45人で合計115人という会社であれば、どの事業場も50人未満なので衛生委員会の設置義務は生じないことになります。逆に1か所に55人いれば、その事業場について義務が生じます。なお常時使用する労働者にはパート・アルバイトも含めて数えるのが原則で、正社員だけを数えて判断するのは誤りです。

Q. 衛生委員会と安全衛生委員会は、どちらを作ればよいのですか?

A. 安全委員会を設けなければならない業種かどうかで決まります。労働安全衛生法19条1項は、17条と18条により安全委員会および衛生委員会を設けなければならないときに、それぞれの委員会の設置に代えて安全衛生委員会を設置することができると定めています。つまり安全衛生委員会は両方が必要な場合の代替であり、安全委員会の対象業種でなければ、作るのは衛生委員会です。安全委員会の対象は施行令8条が定めており、施行令2条3号のその他の業種は含まれていません。

Q. 委員会は毎月開かなければいけませんか。参加者が集まらない月は飛ばせますか?

A. 労働安全衛生規則23条1項は、事業者は委員会を毎月一回以上開催するようにしなければならないと定めています。飛ばすことは想定されていません。定足数や代理出席の可否については法令に定めがなく、同条2項が、開催頻度以外の運営に必要な事項は委員会が定めるとしています。したがって、あらかじめ委員会自身で定足数と代理出席のルールを決めておき、それにもとづいて開催する形になります。

Q. 議事録は何年保存すればよいですか。全文を残す必要がありますか?

A. 保存期間は3年間です。ただし労働安全衛生規則23条4項が記録と保存を求めているのは2つの事項で、1号が委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容、2号がそのほか委員会における議事で重要なものです。発言を逐一書き起こした議事録の作成を求める条文ではありません。逆に、出席者と議題だけを並べて委員会の意見と講じた措置が記載されていない記録は、この4項が求めるものになっていないことになります。様式を作るときは、この2つの欄を立てておくのが確実です。

Q. 委員は会社が全員指名してよいのですか?

A. できません。労働安全衛生法17条4項が、第一号の委員以外の委員の半数については、過半数労働組合があるときはその労働組合、ないときは労働者の過半数を代表する者の推薦にもとづき指名しなければならないと定めており、これが18条4項・19条4項により衛生委員会・安全衛生委員会にも準用されます。半数の分母は委員全体ではなく、議長である1号の委員を除いた人数です。なお同条5項により、過半数労働組合との労働協約に別段の定めがあるときは、その限度で適用されません。

Q. 委員会を設けないと、どうなりますか?

A. 労働安全衛生法120条1号が、同法18条1項に違反した場合を50万円以下の罰金の対象として列挙しています。同じ列挙には12条1項の衛生管理者、13条1項の産業医、17条1項の安全委員会も含まれています。一方で19条は列挙されていませんが、これは安全衛生委員会の設置が義務ではなく、両方を設けるべき場合の選択肢だからです。

Q. ストレスチェックは、いつから50人未満の事業場でも義務になりますか?

A. 2028年4月1日からです。労働安全衛生法66条の10第1項自体には規模の限定がなく、制定附則4条が、13条1項の事業場以外の事業場については、当分の間、行わなければを行うよう努めなければと読み替えると定めていることで、50人未満が努力義務になっています。この附則4条は、令和7年法律第33号による改正後の条文をe-Gov法令APIで施行日ごとに確認すると、2027年4月1日施行のリビジョンまでは存在し、2028年4月1日施行のリビジョンで消えます。準備の中心は実施者の確保で、常時50人未満の事業場は地域産業保健センターの無料の産業保健サービスを利用できます。

Q. ストレスチェックをやらないと罰則はありますか?

A. 実施しないこと自体に対する直接の罰則はありません。労働安全衛生法120条1号の列挙に66条の10は含まれていないためです。ただし66条の10第1項は行わなければならないと書かれた義務規定であり、罰則が無いことは義務が無いことを意味しません。労働基準監督署の指導の対象になりますし、労働安全衛生規則52条の21が定める労働基準監督署長への報告義務は別に課されています。健康診断のほうは法66条1項から3項までが120条1号に列挙されており、こちらは50万円以下の罰金の対象です。

Q. 50人未満の事業場は、安全衛生について何もしなくてよいのですか?

A. そうではありません。労働安全衛生規則23条の2が、委員会を設けている事業者以外の事業者は、安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければならないと定めています。この規定に人数の下限はありません。また定期健康診断は規則44条1項が常時使用する労働者に対し1年以内ごとに1回行うことを求めており、こちらも人数の要件がなく、根拠となる法66条1項から3項までは50万円以下の罰金の対象に列挙されています。

Q. 産業医と衛生管理者は、委員会に出るだけでよいのですか?

A. 巡視の義務が別にあります。労働安全衛生規則11条1項が衛生管理者に少なくとも毎週一回、規則15条1項が産業医に少なくとも毎月一回、作業場等を巡視することを求めています。産業医については、衛生管理者の巡視結果などの情報を毎月1回以上提供されていて事業者の同意を得ているときに限り、少なくとも二月に一回とすることができます。委員会を月1回開催していることは、この巡視義務を果たしたことにはなりません。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。事業場の単位の切り方、常時使用する労働者の数え方、派遣労働者の取扱い、自社で設置すべき委員会の種類については、所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。

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