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労働者名簿 — 記載事項は9項目、様式第19号は義務ではない。保存3年の起算日は「退職の日」

結論から言うと、労働者名簿に書く事項は9項目です。労働基準法107条1項が氏名・生年月日・履歴の3つを直接定め、残りを「その他厚生労働省令で定める事項」として省令に委ねています。それを受けた労働基準法施行規則53条1項が性別・住所・従事する業務の種類・雇入の年月日・退職の年月日及びその事由・死亡の年月日及びその原因の6つを挙げています。3+6で9項目です。

そして実務でいちばん問い合わせが多い「テンプレートは何を使えばよいか」には、条文がはっきり答えています。様式第19号を使う義務はありません。労働基準法施行規則59条の2第1項が、労働者名簿に用いるべき様式は「必要な事項の最少限度を記載すべきことを定めるものであつて、横書、縦書その他異なる様式を用いることを妨げるものではない」と明記しているからです。9項目が漏れていなければ、自社のExcelでも人事システムの出力でも構いません。

もうひとつ、実務が取り違えやすいのが保存期間です。「労働者名簿は3年」と覚えている方が多いはずですが、労働基準法109条の本則にはそう書いてありません。本則は「五年間」です。3年になっているのは附則143条1項が読み替えているからで、条文を検索して109条だけを読むと5年と書いてあるように見えます。しかも保存期間の起算日は作成日でも最後の記入日でもなく、退職・解雇・死亡の日です(施行規則56条1号)。ここは賃金台帳と数え方が違います。この記事では、その2点を最も詳しく書きます。

労働者名簿とは — 誰について、どの単位で作るか(法107条)

労働基準法107条1項は次のように定めています。

労働基準法107条1項

使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。

ここから3つのことが読めます。

第一に、単位は「事業場ごと」です。会社ごとではありません。本社と支店、本店と工場が別の事業場であれば、それぞれの事業場で、その事業場に所属する労働者について調製することになります。全社で1つのファイルにまとめて管理している場合でも、事業場ごとに切り出して提示できる状態になっているかどうかが実務上の分かれ目になります。

第二に、対象は「各労働者」です。正社員に限る、という限定はどこにも書かれていません。パート・アルバイト・契約社員・嘱託も、労働者である以上は対象です。「短時間勤務だから作らなくてよい」という例外は条文にありません。

第三に、除かれるのは「日日雇い入れられる者」だけです。条文が明示的に除外しているのはこの一種類だけで、いわゆる日雇いを指します。したがって、週2日勤務のアルバイトであっても、期間の定めのある契約で継続して雇い入れている以上は日日雇い入れられる者にはあたらず、名簿の対象になります。「パートは対象外」という理解は、条文の除外範囲を広げすぎています。

なお、法107条2項は「前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない」と定めています。名簿は入社時に作って終わりではなく、住所変更や業務の変更があるたびに直す義務がある帳簿です。この点は後述の訂正義務と罰則で詳しく扱います。

記載事項は9項目。ただし30人未満なら8項目でよい

記載事項は、法律に3つ、省令に6つ書かれています。法107条1項が「氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項」と書き、その「厚生労働省令で定める事項」を施行規則53条1項が具体化する、という構造です。

労働者名簿の記載事項は「法3つ+省令6つ」で9項目 労働基準法107条1項(3項目) 1. 氏名 2. 生年月日 3. 履歴 労基則53条1項(6項目) 4. 性別 5. 住所 6. 従事する業務の種類 ※ 7. 雇入の年月日 8. 退職の年月日及びその事由 9. 死亡の年月日及びその原因 ※ 常時30人未満の事業では   6を記入しなくてよい   (労基則53条2項)=8項目
記載事項は法107条1項の3項目と労基則53条1項の6項目の合計9項目。常時30人未満の事業では「従事する業務の種類」の記入を要しない(労基則53条2項)。

施行規則53条1項の条文は、次のように「同条同項に規定するもののほか」と書き出しています。つまり法律の3項目に上乗せする形です。

労働基準法施行規則53条

1項 法第百七条第一項の労働者名簿(様式第十九号)に記入しなければならない事項は、同条同項に規定するもののほか、次に掲げるものとする。
一 性別/二 住所/三 従事する業務の種類/四 雇入の年月日/五 退職の年月日及びその事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)/六 死亡の年月日及びその原因

2項 常時三十人未満の労働者を使用する事業においては、前項第三号に掲げる事項を記入することを要しない。

ここに市販のテンプレートがほとんど触れていない例外があります。施行規則53条2項により、常時30人未満の労働者を使用する事業では「従事する業務の種類」を記入する必要がありません。9項目ではなく8項目でよい、ということです。小規模な事業場で職種欄が空欄になっている名簿を見て「不備だ」と判断する前に、この条文を確認する価値があります。

もう1点、5号の書き方に注意が必要です。「退職の年月日及びその事由」であって、事由まで書く必要があります。しかもかっこ書きで「退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む」と念押しされています。退職日だけを記入して事由欄を空けている運用は、条文の要求を満たしていません。

条文に「マイナンバー」は出てきません

法107条1項と施行規則53条1項を通しても、個人番号(マイナンバー)は記載事項として挙げられていません。労働者名簿に個人番号を書く義務は、この2つの条文からは生じません。社会保険や源泉徴収の手続で番号を扱う場合でも、それは各手続の根拠法に基づくものであって、労働者名簿の記載事項とは別の話です。

9項目のうち「雇入の年月日」は、名簿の外でも繰り返し使う日付です。労働基準法39条1項が有給休暇の発生を「その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し」と定めているため、有給の初回付与日と付与日数はこの日から決まります。名簿の雇入年月日が実態とずれていると、有給の管理まで一緒にずれます。

名簿の「雇入の年月日」を入れるだけ ― 有給休暇の付与日数 計算機

様式第19号は義務ではない(施行規則59条の2第1項)

施行規則53条1項は「労働者名簿(様式第十九号)」とかっこ書きで様式を指定しています。ここだけを読むと、指定の書式で作らなければならないように見えます。しかし同じ施行規則の59条の2第1項が、その読み方を明示的に否定しています。

労働基準法施行規則59条の2第1項

法及びこれに基く命令に定める許可、認可、認定若しくは指定の申請、届出、報告、労働者名簿又は賃金台帳に用いるべき様式(様式第二十四号を除く。)は、必要な事項の最少限度を記載すべきことを定めるものであつて、横書、縦書その他異なる様式を用いることを妨げるものではない。

この条文が言っているのは、様式第19号は「最低限これだけは書け」という中身のリストであって、レイアウトの指定ではないということです。したがって次のような運用はいずれも条文上問題ありません。

逆に、この条文が許していないのは「9項目を欠くこと」だけです。テンプレートを探すときに本当に確かめるべきなのは書式の見た目ではなく、9項目(30人未満なら8項目)が漏れていないかどうかです。無料で配布されているテンプレートの中には、履歴欄や退職事由欄を省いたものもあります。

なお、59条の2第1項はかっこ書きで様式第24号を除くとしています。様式を自由に変えてよいという原則には例外があるという点だけ、条文の構造として押さえておくとよいでしょう。

保存期間3年の正体 — 本則は「五年間」、附則143条1項が読み替えている

ここがこの記事でいちばん踏み込みたいところです。労働基準法109条を検索して読むと、保存期間は「五年間」と書いてあります。

労働基準法109条(記録の保存)

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

実際、労働基準法の本則(約60,417字)を機械で数えると、「三年間」は0回、「五年間」は2回(109条と115条)しか出てきません。それでも実務の答えが「3年」なのは、附則143条1項が次のように読み替えているからです。

労働基準法附則143条1項

第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。

これは2020年(令和2年)の改正によるものです。改正前の条文を確認すると、2019年4月1日時点の109条は「……重要な書類を三年間保存しなければならない」となっており、本則そのものが3年でした。民法改正にあわせた令和2年法律第13号がこれを5年に引き上げ、同時に附則143条を置いて、実際の適用は当分の間3年に据え置いたという経緯です。その結果、本則と実際の運用が食い違ったまま今日に至っています。「当分の間」がいつ終わるかは条文に書かれていないため、将来5年に切り替わる可能性が残っている、という読み方になります。

そして同じ構造が、年次有給休暇管理簿にも別の場所に置かれています。年休管理簿の根拠は法109条ではなく施行規則24条の7で、そこには「当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後五年間保存しなければならない」と書かれています。これを3年に読み替えているのは、法の附則ではなく施行規則の附則71条です。

「5年」と書いてある条文が、別の場所で「3年」に読み替えられている 労働者名簿・賃金台帳 労働基準法109条 「五年間」 同法 附則143条1項 当分の間 読み替え いま適用されるのは 3年間 年次有給休暇管理簿 労基則24条の7 「五年間」 労基則 附則71条 当分の間 読み替え いま適用されるのは 3年間 読み替えの条文は「法の附則」と「省令の附則」に分かれている。109条や24条の7だけを読むと5年に見える。 どちらも「当分の間」で、終期は条文に書かれていない。
保存期間の「3年」は本則ではなく経過措置による。労働者名簿は法の附則143条1項、年次有給休暇管理簿は施行規則の附則71条と、読み替えの置き場所が異なる。

実務上の含意は2つあります。ひとつは、条文を確認するときに109条だけを見ると間違えること。「5年に延びたはずだ」という記憶も、「ずっと3年だ」という記憶も、どちらも半分正しく半分誤りです。正確には本則5年・当分の間3年です。

もうひとつは、社内規程に「法定保存期間」とだけ書いている場合、附則が終了した時点で規程の意味が自動的に変わることです。年数を明示しておくか、根拠条文を併記しておくほうが安全です。

起算日は「退職の日」。賃金台帳とは数え方が違う(施行規則56条)

保存期間の年数以上に間違えやすいのがいつから数えるかです。施行規則56条1項は、帳簿の種類ごとに起算日を別々に定めています。

書類起算日(労基則56条1項)保存期間
労働者名簿労働者の死亡、退職又は解雇の日3年(本則5年・附則143条1項)
賃金台帳最後の記入をした日3年(本則5年・附則143条1項)
雇入れ又は退職に関する書類労働者の退職又は死亡の日3年(同上)
災害補償に関する書類災害補償を終わった日3年(同上)
賃金その他労働関係に関する重要な書類その完結の日3年(同上)

労働者名簿の起算日は「作成した日」でも「最後に記入した日」でもありません。在職中はそもそも保存期間のカウントが始まらず、退職・解雇・死亡によって初めて時計が動き出します。20年勤めた社員の名簿は、在職20年+退職後3年で、合計23年間手元に置くことになります。「作成から3年で捨てられる」という理解は、条文と一致しません。

賃金台帳の起算日が「最後の記入をした日」であるのと対比すると違いがはっきりします。さらに施行規則56条2項は、賃金台帳と「賃金その他労働関係に関する重要な書類」については、賃金の支払期日が1号・5号の日より遅い場合には支払期日を起算日とするという調整規定を置いています。締日と支払日がずれる会社では、この2項の分だけ起算日が後ろにずれます。

退職者の名簿を「退職者フォルダ」に移すときの落とし穴

起算日が退職日である以上、退職者の名簿は退職後3年間は保存義務の対象です。退職時に個人情報を整理する運用そのものは自然ですが、労働者名簿を含めて即時に廃棄すると109条違反になります。廃棄してよいのは、退職・解雇・死亡の日から3年を経過した後です。

「法定三帳簿」という言葉は法令に無い。3つをまとめて作ることはできる

労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の3つを「法定三帳簿」と呼ぶ言い方が広く使われています。ただしこれは実務上の通称であって、条文の用語ではありません。労働基準法の本則(約60,417字)と労働基準法施行規則の本則(約63,353字)のいずれを機械で数えても、「法定三帳簿」も「三帳簿」も0回です。

さらに言えば、「出勤簿」という語も、労働基準法・同施行規則の本則に0回しか出てきません。労働者名簿は法107条、賃金台帳は法108条という明確な根拠条文を持ちますが、出勤簿という名前の帳簿を直接義務づけた条文は労働基準法にはありません。労働日数や労働時間数は、施行規則54条1項が賃金台帳の記載事項(4号「労働日数」・5号「労働時間数」)として求めているものです。3つを対等な法定帳簿として並べる整理は、条文の構造とはややずれています。では名前を持たない出勤簿は何に支えられているのかというと、この賃金台帳の記載事項のほかに、労働安全衛生法66条の8の3の労働時間の状況の把握、法109条の保存、法39条1項の8割出勤要件を加えた合計4本の義務です。根拠が4本あるため対象者も保存年数も罰則の有無も1つに揃わず、とくに管理監督者の扱いはガイドラインと安衛法で結論が分かれます(則54条5項は賃金台帳の労働時間数を免除しますが、安衛法66条の8の3は41条各号を除いていません)。その4本を条文ごとに追ったものが出勤簿の記事です。

一方で、3つをまとめて1つの帳簿として作ることは条文が明示的に認めています。

労働基準法施行規則55条の2

使用者は、年次有給休暇管理簿、第五十三条による労働者名簿又は第五十五条による賃金台帳をあわせて調製することができる。

人事システムで1つの社員マスタに氏名・住所・賃金・有給付与日をまとめて持つ運用は、この条文が正面から認めているものです。ただしあわせて調製した場合でも、保存期間の起算日は帳簿の種類ごとに別々に判断されます。労働者名簿としては退職日から3年、賃金台帳としては最後の記入日から3年です。1つのファイルにまとめた結果、いちばん早く到来する起算日に合わせて全体を廃棄してしまうと、他方の保存義務を落とすことになります。まとめて作ることと、まとめて捨てることは別の話です。

訂正義務と罰則 — 作りっぱなしは107条2項違反

労働者名簿でいちばん見落とされる義務が、法107条2項の訂正義務です。

労働基準法107条2項

前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。

9項目のうち、在職中に変わりうるものは住所従事する業務の種類です。引っ越しや異動のたびに名簿を直す必要があり、「入社時に作ったまま5年間更新していない」という状態は、名簿が存在していても107条2項に反します。監督署の調査で名簿を求められたときに、現住所と実際の配属が反映されているかどうかは確認されやすい点です。

罰則は法120条1号にあります。同号は「第百六条から第百九条まで」の規定に違反した者を挙げており、107条(労働者名簿)も109条(記録の保存)もこの範囲に含まれます。法定刑は30万円以下の罰金です。

3つの義務は別々に成立する

①名簿を作っていない(107条1項違反)/②作ったが変更を訂正していない(107条2項違反)/③退職後3年以内に廃棄した(109条違反)は、それぞれ別の義務違反です。いずれも120条1号により30万円以下の罰金の対象になります。「名簿はある」ことだけでは、②と③を満たしたことにはなりません。

よくある質問

Q. 労働者名簿は様式第19号で作らないといけませんか?

A. その必要はありません。労働基準法施行規則59条の2第1項が、労働者名簿に用いるべき様式について「必要な事項の最少限度を記載すべきことを定めるものであつて、横書、縦書その他異なる様式を用いることを妨げるものではない」と定めているためです。つまり様式第19号は書式の指定ではなく、最低限これだけの事項を書きなさいという中身のリストです。自社のExcelでも、人事給与システムから出力した社員一覧でも、法107条1項の3項目と施行規則53条1項の6項目、合計9項目が漏れていなければ労働者名簿として問題ありません。項目を追加することも妨げられません。テンプレートを選ぶときに確かめるべきなのは見た目ではなく、9項目が揃っているかどうかです。無料配布のテンプレートには履歴欄や退職事由欄を省いたものもあるため、その2つは特に確認する価値があります。

Q. パートやアルバイトの労働者名簿も作る必要がありますか?

A. 必要です。労働基準法107条1項は「各労働者」について調製すると定めており、正社員に限るという限定はありません。条文が明示的に除外しているのは「日日雇い入れられる者」だけで、これはいわゆる日雇いを指します。週2日勤務のアルバイトであっても、期間の定めのある労働契約により継続して雇い入れているのであれば日日雇い入れられる者にはあたらず、名簿の対象になります。短時間勤務であること、有期契約であること、試用期間中であることは、いずれも除外事由として条文に書かれていません。なお常時30人未満の労働者を使用する事業では、施行規則53条2項により「従事する業務の種類」の記入を要しないため、記載事項は8項目になります。

Q. 労働者名簿の保存期間は3年ですか、5年ですか?

A. 適用されるのは3年ですが、条文の本則は5年です。労働基準法109条は「労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない」と定めており、本則には3年という数字は出てきません。実際、労働基準法の本則全文を機械で数えると「三年間」は0回、「五年間」は2回です。3年になっているのは、附則143条1項が「第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中『五年間』とあるのは、『三年間』とする」と読み替えているためです。2020年の改正で本則を5年に引き上げつつ、当分の間の適用を3年に据え置いた経過措置がそのまま続いています。「当分の間」の終期は条文に書かれていないため、将来5年に切り替わる可能性が残っています。

Q. 保存期間の3年は、いつから数えますか?

A. 労働者の死亡、退職または解雇の日からです。労働基準法施行規則56条1項1号が、労働者名簿について起算日を「労働者の死亡、退職又は解雇の日」と定めています。作成した日でも、最後に記入した日でもありません。在職中は保存期間のカウントが始まらないため、20年勤めた社員であれば在職20年に退職後3年を加えて、合計23年間手元に置くことになります。賃金台帳の起算日が同項2号で「最後の記入をした日」とされているのと対照的で、同じ3年でも数え方が違います。なお同条2項は、賃金台帳と賃金その他労働関係に関する重要な書類について、賃金の支払期日が同項2号または5号の日より遅い場合には支払期日を起算日とする調整を定めています。

Q. 労働者名簿と賃金台帳を1つのファイルにまとめてよいですか?

A. まとめて構いません。労働基準法施行規則55条の2が「使用者は、年次有給休暇管理簿、第五十三条による労働者名簿又は第五十五条による賃金台帳をあわせて調製することができる」と明示的に認めています。人事給与システムの社員マスタに氏名・住所・賃金・有給付与日をまとめて持つ運用は、この条文が正面から想定しているものです。ただし注意点があります。あわせて調製しても、保存期間の起算日は帳簿の種類ごとに別々に判断されます。労働者名簿としては退職の日から、賃金台帳としては最後の記入をした日から数えます。1つにまとめた結果、先に到来する起算日に合わせて全体を廃棄すると、もう一方の保存義務を落とすことになります。まとめて作ることと、まとめて廃棄することは別の話です。

Q. 労働者名簿にマイナンバーを記載する必要がありますか?

A. 労働基準法107条1項と労働基準法施行規則53条1項が定める記載事項に、個人番号は含まれていません。したがって労働者名簿の記載事項としてマイナンバーを書く義務は、この2つの条文からは生じません。記載事項は氏名・生年月日・履歴・性別・住所・従事する業務の種類・雇入の年月日・退職の年月日及びその事由・死亡の年月日及びその原因の9項目です。社会保険の資格取得届や源泉徴収票の作成で個人番号を扱う場面はありますが、それらは各手続の根拠法令に基づくものであって、労働者名簿の記載事項とは別に整理されます。なお施行規則59条の2第1項により項目を追加すること自体は妨げられませんが、追加するかどうかは労働基準法上の義務とは別の判断になります。

Q. 「従事する業務の種類」を書かなくてよい場合があると聞きました。

A. 労働基準法施行規則53条2項が「常時三十人未満の労働者を使用する事業においては、前項第三号に掲げる事項を記入することを要しない」と定めています。前項第三号が「従事する業務の種類」なので、常時30人未満の事業では記載事項が9項目ではなく8項目になります。市販のテンプレートや解説記事はこの例外に触れていないものが多く、小規模な事業場で職種欄が空欄の名簿を見て不備と判断してしまう例があります。判定の単位は法107条1項が「各事業場ごとに」としている点と合わせて読むことになります。なお、記入を要しないというだけで、記入してはいけないという意味ではありません。

Q. 労働者名簿を作っていない場合、罰則はありますか?

A. 30万円以下の罰金の対象です。労働基準法120条1号が「第百六条から第百九条まで」の規定に違反した者を挙げており、107条(労働者名簿)と109条(記録の保存)はいずれもこの範囲に含まれます。ここで押さえておきたいのは、義務が1つではないことです。名簿を作っていない場合は107条1項違反、作ったものの住所変更や異動を反映していない場合は「遅滞なく訂正しなければならない」と定める107条2項の違反、退職から3年を経過する前に廃棄した場合は109条違反となり、それぞれ別に成立します。名簿が存在していることだけでは、訂正義務と保存義務を果たしたことにはなりません。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の取扱いは事業場の実情や契約内容により異なる場合があるため、判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。

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