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出勤簿とは — 「出勤簿」は労働基準法に1度も出てこない。それでも作る理由と保存3年の根拠

結論から言うと、「出勤簿」という言葉は労働基準法にも労働基準法施行規則にも1回も出てきません。労働者名簿には法107条、賃金台帳には法108条という名指しの根拠条文がありますが、出勤簿にはそれがありません。様式も定められていません。労働者名簿の様式第19号、賃金台帳の様式第20号にあたるものが、出勤簿には存在しないのです。

それどころか、e-Gov法令検索で日本の全法令を横断して「出勤簿」を検索しても、ヒットするのは7か所・4法令だけです。しかもその内訳は学校教育法施行規則、人事院規則が2本、そして雇用保険法施行規則で、民間の事業主に関係するのは雇用保険法施行規則の2か所しかありません。そこでの出勤簿の役割は「作りなさい」ではなく、「出勤簿その他の……証明することができる書類」という証明手段の例示です。

ではなぜ、労働基準監督署の調査で出勤簿を求められるのか。答えは、出勤簿が名前ではなく機能で、4つの別々の義務を下から支えているからです。賃金台帳の記載事項(施行規則54条1項4号・5号)、労働時間の状況の把握(労働安全衛生法66条の8の3)、記録の保存(法109条)、そして年次有給休暇の8割出勤要件(法39条1項)。この4つは根拠法も、対象者の範囲も、保存期間の数え方も、罰則の有無すら違います。この記事では、その4つを1つずつ条文で確かめていきます。

出勤簿とは — 全法令を横断しても7か所しかない

出勤簿は、労働者ごとに労働日と始業・終業時刻を記録した書類の通称です。「通称」と書いたのは、それが法令用語ではないからです。

e-Gov法令検索の全法令キーワード検索で「出勤簿」を引くと、該当は7か所・4法令でした(2026年8月20日時点)。内訳は次のとおりです。

法令件数そこでの役割
学校教育法施行規則1学校が備える表簿の列挙(職員の名簿、履歴書、出勤簿……)
人事院規則九―五(給与簿)3国家公務員の勤務時間管理の記録の定義
雇用保険法施行規則2給付の申請に添える「証明することができる書類」の例示
人事院規則一―三四1人事管理文書の保存期間の表

民間企業の経理・労務が読むべきものは、実質雇用保険法施行規則の2か所だけです。その2か所は、どちらも次の形をしています。

出勤簿その他の同一事業主の適用事業に雇用され、その職業に就いた日から六箇月間のうち賃金の支払の基礎となつた日数を証明することができる書類
出勤簿その他の介護休業の開始日及び終了日並びに介護休業期間中の休業日数を証明することができる書類

どちらも「出勤簿を作れ」とは書いていません。「出勤簿その他の……証明することができる書類」という書き方で、出勤簿は証明手段の一例として挙がっているだけです。同じ日数を証明できる別の書類があれば、それでも構わないという構造です。

一方、労働基準法とその施行規則の本文には、「出勤簿」の語が1回も現れません。労働者名簿・賃金台帳・出勤簿を「法定三帳簿」と並べる整理が実務では一般的ですが、この呼び名自体が条文の用語ではないことは労働者名簿の記事で詳しく扱っています。この記事では呼び名の話には立ち入らず、出勤簿そのものが何に支えられているかだけを追います。

名前が無いのに要る理由 — 出勤簿が支えている4つの義務

名指しの根拠条文が無いにもかかわらず出勤簿が実務で不可欠なのは、次の4つの義務が「労働日と労働時間の記録」を前提にしているからです。4つは根拠法も対象者も保存期間も別々で、1つにまとめて理解すると必ずどこかで取り違えます。

「出勤簿」という名前の義務は無い。4つの別々の義務が下から要求している 出勤簿 労基法・同施行規則に0回/様式なし ① 賃金台帳の記載事項 則54条1項4号「労働日数」 同5号「労働時間数」 罰則あり(法120条1号) ② 労働時間の状況の把握 安衛法66条の8の3 安衛則52条の7の3(3年保存) 罰則なし ③ 記録の保存 法109条「五年間」 附則143条1項で当分の間3年 罰則あり(法120条1号) ④ 年休の8割出勤要件 法39条1項「全労働日の八割以上出勤」 判定の材料が出勤の記録
出勤簿は「作れ」と言われている帳簿ではなく、4つの義務が共通して必要とする材料。根拠が4本あるので、対象者・保存年数・罰則が1つに揃わない。

① 賃金台帳の記載事項。労働基準法108条は賃金台帳の調製を義務づけ、その中身を省令に委ねています。受けた施行規則54条1項が、労働者ごとに記入すべき事項として8つの号を挙げます。

使用者は、法第百八条の規定によつて、次に掲げる事項を労働者各人別に賃金台帳に記入しなければならない。

この8号のうち4号が「労働日数」、5号が「労働時間数」です。さらに6号が、時間外・休日・深夜の各時間数を求めています。賃金台帳にこれらを書くためには、その材料になる日々の記録が要ります。それが出勤簿です。順序としては、出勤簿が独立に義務づけられているのではなく、賃金台帳の記載義務が出勤簿を要求している、という向きになります。

② 労働時間の状況の把握。これは労働基準法ではなく労働安全衛生法の義務です。2019年4月に施行された66条の8の3が、面接指導を実施するための前提として定めています。

事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

③ 記録の保存。労働基準法109条は、保存すべきものとして労働者名簿と賃金台帳を名指ししたうえで、包括的な受け皿を置いています。

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。

出勤簿はここに名指しされていません。入るとすれば末尾の「その他労働関係に関する重要な書類」です。厚生労働省のガイドラインは、この読み方を明示しています。

使用者は、労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第 109 条に基づき、3年間保存しなければならないこと。

④ 年次有給休暇の8割出勤要件。法39条1項は、有給休暇の発生要件として出勤率を定めています。

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

「全労働日の八割以上出勤した」かどうかを後から判定するには、日ごとの出勤・欠勤の記録が要ります。出勤簿を捨ててしまうと、付与するかどうかの判断そのものができなくなります。

出勤簿の「雇入の年月日」を入れるだけ ― 有給休暇の付与日数 計算機

書く項目 — 決まっているのは出勤簿の側ではなく賃金台帳の側

「出勤簿に何を書けばよいか」を条文に探しても見つかりません。出勤簿を定義した条文が無いからです。決まっているのは、出勤簿から転記される先である賃金台帳の側です。逆算すると、出勤簿が持っているべき項目が決まります。

賃金台帳に必要な事項(則54条1項)出勤簿が持っていなければならないもの
4号 労働日数労働日かどうかが日ごとに分かること
5号 労働時間数始業時刻・終業時刻・休憩時間
6号 時間外労働時間数・休日労働時間数・深夜労働時間数法定休日に働いた日の区別、22時以降・5時前の労働の区別

「労働時間数」だけでは6号が埋まらない6号は、時間外・休日・深夜を別々の時間数として求めています。総労働時間だけを記録した出勤簿では、深夜割増(法37条4項)の計算根拠が残りません。始業・終業の時刻を記録する必要があるのは、時間数の合計からは深夜帯の重なりを復元できないためです。

年次有給休暇を取得した日をどう扱うかも、出勤簿の設計で迷いやすい点です。有給の取得日は賃金は支払われるが労働はしていない日なので、労働時間数は0になります。一方で法39条の出勤率判定では出勤したものとして扱う運用が一般的です。1つの欄に「出勤」「有給」を混ぜず、別の記号で残すと、後から両方の目的に使えます。なお、有給を与えた時季・日数・基準日については、施行規則24条の7が年次有給休暇管理簿という別の書類を求めており、これは出勤簿とは別建てです。

記録の方法 — 原則は客観的な記録、自己申告は例外

記録の方法については、労働安全衛生規則52条の7の3が具体的に定めています。

法第六十六条の八の三の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。
事業者は、前項に規定する方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、三年間保存するための必要な措置を講じなければならない。

厚生労働省のガイドラインも、原則的な方法として同じ趣旨を挙げています。

タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。

ここで、条文の末尾の1句が実務上の分かれ目になります。安衛則52条の7の3第1項は「客観的な方法その他の適切な方法」で終わっています。この「その他の適切な方法」があるために、一般の労働者については自己申告制が完全に閉ざされてはいません。ガイドライン4(3)が、自己申告制による場合に講ずべき措置を5つ挙げているのはそのためです。

高度プロフェッショナル制度だけは「その他の適切な方法」が無い高度プロフェッショナル制度の対象者について健康管理時間を把握する方法を定めた労働基準法施行規則34条の2第8項は、安衛則52条の7の3第1項とほぼ同じ文言でありながら、末尾の「その他の適切な方法」を持ちません。条文を並べると違いは一目で分かります。

法第四十一条の二第一項第三号の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法とする。

同じ立法者が、同じ列挙のあとに、片方だけ逃げ道を置き、片方には置かなかったという構造です。高度プロフェッショナル制度の対象者について、条文上は客観的な方法以外の選択肢が用意されていません。

管理監督者に出勤簿は要るか — ガイドラインは除外し、安衛法は除外しない

ここが、この記事でいちばん取り違えが多い論点です。「管理監督者は労働時間の適用除外だから出勤簿は要らない」という理解は、半分しか合っていません。

まず、労働基準法41条2号が「監督若しくは管理の地位にある者」を、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用除外としています。これを受けて施行規則54条5項が、賃金台帳の記載事項の一部を免除します。

法第四十一条各号のいずれかに該当する労働者及び法第四十一条の二第一項の規定により労働させる労働者については第一項第五号及び第六号は、これを記入することを要しない。

免除されるのは5号(労働時間数)と6号(時間外・休日・深夜の時間数)です。4号の「労働日数」は免除されていません。そして厚生労働省のガイドラインも、対象労働者から41条の者を明示的に外しています。

労働時間の適正な把握を行うべき対象労働者は、労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除く全ての者であること。

ここまでを読むと「管理監督者は対象外」で話が終わりそうですが、ガイドラインは平成29年1月20日の策定で、労働安全衛生法66条の8の3が施行されたのは2019年4月です。後から来た安衛法の側を見ると、除外の範囲が違います。

根拠除外される者管理監督者は
ガイドライン 2(平成29年)労基法41条に定める者、みなし労働時間制が適用される労働者対象外
安衛法66条の8の2第1項労基法41条各号に掲げる者、66条の8の4第1項に規定する者対象外
安衛法66条の8の366条の8の4第1項に規定する者(高度プロフェッショナル)のみ対象に含まれる

隣り合った2条を並べると、書き分けが意図的であることが分かります。66条の8の2第1項は、対象者を絞る括弧書きの中で41条各号を名指しで除いています。

労働基準法第三十六条第十一項に規定する業務に従事する者(同法第四十一条各号に掲げる者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。)

ところが、その次の条である66条の8の3の括弧書きは「次条第一項に規定する者を除く。」だけです。次条第一項=66条の8の4第1項は高度プロフェッショナル制度の対象者を指しますから、除かれるのは高度プロフェッショナルだけで、管理監督者は除かれていません。立法者は隣の条で41条各号を除く書き方を実際に使っておきながら、66条の8の3ではそれを使わなかったことになります。

結論管理監督者について、賃金台帳に労働時間数を記入する義務は免除されます(則54条5項)。しかし労働時間の状況を客観的な方法で把握し、その記録を3年間保存する義務は免除されていません(安衛法66条の8の3・安衛則52条の7の3)。「管理職だから出勤簿を作らなくてよい」とはなりません。なお高度プロフェッショナル制度の対象者は66条の8の3から外れますが、代わりに健康管理時間の把握(則34条の2第8項)が課されるので、記録が不要になる者はいません。

ガイドライン自身も、対象から外れる労働者について次のように付言しています。

本ガイドラインが適用されない労働者についても、健康確保を図る必要があることから、使用者において適正な労働時間管理を行う責務があること。

保存期間3年 — 根拠は2020年に本則から附則へ移った

出勤簿の保存期間は3年です。この数字自体は多くの解説と一致しますが、その根拠は2020年に条文の別の場所へ移動しています。現行の109条本則を読んでも「3年」は出てきません。

第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。

e-Gov法令API v2で2019年4月1日時点の版を取得して現行版と比べると、入れ替わりがはっきりします。当時の109条本則はこうでした。

使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。

同版には附則143条が存在しません。2020年の改正で本則が「五年間」に引き上げられ、同時に当分の間3年に据え置く経過措置が附則143条1項として新設されたという経緯です。前掲のガイドラインが「3年間保存しなければならない」と書いているのは平成29年の策定時点で本則がそうだったからで、結果の年数は同じでも、いま3年である理由は本則ではなく附則にあります。

「当分の間」に終期は書かれていない附則143条1項は期限を定めていません。読み替えが外れれば、出勤簿を含む「労働関係に関する重要な書類」の保存は自動的に5年になります。3年で廃棄する運用を組んでいる場合、この読み替えが前提であることを社内の文書管理規程に書き残しておくと、改正時に見落としません。

さらに、出勤簿には保存の時計が2本あります。労働基準法109条の3年(本則5年の読み替え)と、労働安全衛生規則52条の7の3第2項の3年です。後者は読み替えではなく、規則に直接「三年間」と書かれています。同じ3年でも、片方は当分の間の経過措置、片方は本文そのものという違いがあります。

起算日は3つの帳簿で全部違う(施行規則56条)

保存年数が同じ3年でも、いつから数えるかは書類の種類ごとに別々に決められています。施行規則56条1項が5つの号でそれを定めています。

書類起算日(則56条1項)該当する号
労働者名簿労働者の死亡、退職又は解雇の日1号
賃金台帳最後の記入をした日2号
出勤簿その完結の日5号(賃金その他労働関係に関する重要な書類)

出勤簿に当たる5号は、次の一文だけです。

賃金その他労働関係に関する重要な書類については、その完結の日

出勤簿は109条に名指しされていないため、5号の「賃金その他労働関係に関する重要な書類」として「その完結の日」から数えることになります。労働者名簿のように退職を待つ必要はなく、賃金台帳のように最後の記入日でもありません。

そのうえで、同条2項が支払期日による調整を置いています。

前項の規定にかかわらず、賃金台帳又は賃金その他労働関係に関する重要な書類を保存すべき期間の計算については、当該記録に係る賃金の支払期日が同項第二号又は第五号に掲げる日より遅い場合には、当該支払期日を起算日とする。

この2項は5号を名指ししているので、出勤簿にも及びます。末締め翌月25日払いのように締日と支払日がずれる会社では、出勤簿の完結の日より賃金の支払期日のほうが後になるため、起算日は支払期日側にずれます。1か月分の出勤簿を捨ててよくなる日は、その月の給与を払った日から3年後、という数え方になります。

罰則 — 「記録しないこと」を直接罰する条文は無い

出勤簿まわりの罰則は、直感に反する形で非対称になっています。結論から言うと、労働時間の状況を把握しなかったこと自体を罰する条文はありません。罰されるのは、その前後にある義務のほうです。

労働安全衛生法の罰則は116条から121条に置かれています。この範囲を機械で数えると、66条の8の2第1項と66条の8の4第1項は120条1号に列挙されているのに、その間にある66条の8の3は119条にも120条にも一度も現れません。把握義務は義務として書かれていますが、違反に対する罰条が用意されていないということです。

一方、労働基準法の側には罰則があります。120条1号が「第百六条から第百九条まで」の違反を掲げており、賃金台帳の108条と記録の保存の109条はこの範囲に入ります。

次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

厚生労働省のガイドラインも、賃金台帳の側の罰則を明示しています。

賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚偽の労働時間数を記入した場合は、同法第 120 条に基づき、30 万円以下の罰金に処されること。
していないこと根拠罰則
労働時間の状況を把握していない安衛法66条の8の3罰条なし(119条・120条のいずれにも列挙が無い)
賃金台帳に労働日数・労働時間数を記入していない法108条・則54条1項4号5号30万円以下の罰金(法120条1号)
作った記録を保存期間内に廃棄した法109条30万円以下の罰金(法120条1号)

実務上の含意「把握義務に罰則が無い」ことは、記録しなくてよいという意味ではありません。記録しなければ賃金台帳の4号・5号・6号が埋まらず、そちらで罰則の対象になります。また、把握していないことは割増賃金の未払いを立証されたときに反証手段を失うことでもあります。罰条の有無は、義務の軽重ではなく制裁の設計の問題です。

エクセルやテンプレートで作ってよいか

結論として差し支えありません。そもそも出勤簿には法定様式が存在しないので、様式の適否という論点自体が発生しません。労働者名簿の様式第19号や、賃金台帳の様式第20号(則55条)にあたるものが、出勤簿には無いためです。

テンプレートを選ぶときに確かめるべきなのは、見た目ではなく前掲の項目が復元できるかです。具体的には次の4点です。

電子データで保存すること自体にも制限はありません。安衛則52条の7の3第1項が例示しているのはタイムカードによる記録とパソコンの使用時間の記録であり、紙を前提にした書き方ではありません。ただし保存期間中に読み出せる状態を維持することが前提になります。勤怠システムを乗り換える際、旧システムのデータを引き継がずに解約すると、3年の保存義務が残っている期間の記録を失います。

よくある質問

Q. 出勤簿を作らないと法律違反になりますか?

A. 「出勤簿を作らないこと」を直接罰する条文はありませんが、作らなければ他の義務に違反することになります。労働基準法にも同施行規則にも「出勤簿」という語は1回も出てこないため、出勤簿そのものを名指しで義務づけた規定は存在しません。ただし法108条と施行規則54条1項が、賃金台帳に4号「労働日数」・5号「労働時間数」・6号の時間外・休日・深夜の各時間数を記入するよう求めており、日々の記録が無ければこれらを書けません。賃金台帳への記入を欠くと法120条1号により30万円以下の罰金の対象になります。また労働安全衛生法66条の8の3が労働時間の状況の把握を義務づけており、こちらには罰条が用意されていないものの義務であることに変わりはありません。名前ではなく機能で必要になる書類だと理解するのが正確です。

Q. 出勤簿の保存期間は3年ですか、5年ですか?

A. 適用されるのは3年ですが、労働基準法109条の本則は「五年間」です。3年になっているのは附則143条1項が、109条中の「五年間」を当分の間「三年間」と読み替えているためで、109条だけを読むと5年と書いてあるように見えます。e-Gov法令API v2で2019年4月1日時点の版を取得すると、当時の109条本則は「三年間保存しなければならない」で、附則143条は存在しませんでした。2020年の改正で本則が5年に引き上げられ、同時に当分の間3年に据え置く経過措置が置かれた形です。「当分の間」の終期は条文に書かれていないため、読み替えが外れれば5年になります。なお労働安全衛生規則52条の7の3第2項は、労働時間の状況の記録について読み替えではなく直接「三年間保存する」と定めており、こちらは別建ての義務です。

Q. 出勤簿の保存期間は、いつから数えますか?

A. 「その完結の日」からです。出勤簿は労働基準法109条に名指しされていないため、同条の「賃金その他労働関係に関する重要な書類」に当たるものとして扱われ、労働基準法施行規則56条1項5号が起算日を「その完結の日」と定めています。労働者名簿の1号「労働者の死亡、退職又は解雇の日」とも、賃金台帳の2号「最後の記入をした日」とも異なります。さらに同条2項が、賃金その他労働関係に関する重要な書類について、賃金の支払期日が5号の日より遅い場合には支払期日を起算日とする調整を置いています。末締め翌月25日払いのように締日と支払日がずれる場合、出勤簿の完結の日より支払期日のほうが後になるため、起算日は支払期日側にずれます。実務上は「その月の給与を支払った日から3年」と数えるのが安全側です。

Q. 管理監督者の出勤簿は作らなくてよいのですか?

A. 作る必要があります。労働基準法施行規則54条5項が「法第四十一条各号のいずれかに該当する労働者……については第一項第五号及び第六号は、これを記入することを要しない」と定めているため、管理監督者について賃金台帳に労働時間数と時間外・休日・深夜の時間数を記入する義務は免除されます。4号の労働日数は免除されていません。また厚生労働省のガイドラインも対象労働者から労基法41条に定める者を除いています。しかし労働安全衛生法66条の8の3は、除外を「次条第一項に規定する者」つまり高度プロフェッショナル制度の対象者のみとしており、41条各号を除いていません。隣の66条の8の2第1項が括弧書きで「同法第四十一条各号に掲げる者……を除く」と明記しているのと対照的です。したがって管理監督者についても、客観的な方法で労働時間の状況を把握し、その記録を3年間保存する義務があります。

Q. タイムカードがあれば出勤簿は別に要りませんか?

A. タイムカードそのものが出勤簿として機能します。労働安全衛生規則52条の7の3第1項が把握の方法として「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」を挙げており、厚生労働省のガイドライン4(5)も「出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類」と並列で扱っています。出勤簿という名前の帳簿を別に作り直す必要はありません。ただしタイムカードの打刻だけでは、法定休日に働いた日の区別や、年次有給休暇を取得した日と欠勤日の区別が残らないことがあります。施行規則54条1項6号は休日労働時間数を時間外労働時間数と別に求めており、法39条1項の出勤率判定には有給取得日の扱いが必要です。打刻データに区分を補う欄があるかを確かめてください。

Q. 出勤簿をエクセルで作ってもよいですか?

A. 差し支えありません。労働者名簿には様式第19号、賃金台帳には施行規則55条が定める様式第20号がありますが、出勤簿には法定様式が存在しません。条文に名前が無い以上、様式も定めようがないためです。したがって市販のテンプレートでも自社で作ったエクセルでも、勤怠システムからの出力でも構いません。確かめるべきは体裁ではなく、始業時刻と終業時刻が時刻として入っていること、法定休日の労働を区別できること、有給取得日を欠勤と区別できること、の3点です。時間数の合計だけを記録した様式だと、施行規則54条1項6号が求める深夜労働時間数を後から復元できません。なお電子データで保存する場合は、保存期間中に読み出せる状態を維持することが前提になります。勤怠システムを乗り換えるときに旧データを引き継がないと、保存義務が残っている期間の記録を失います。

Q. 雇用保険の手続で出勤簿を求められるのはなぜですか?

A. 雇用保険法施行規則が、給付の要件を証明する書類の例として出勤簿を挙げているためです。同規則83条の4は「出勤簿その他の同一事業主の適用事業に雇用され、その職業に就いた日から六箇月間のうち賃金の支払の基礎となつた日数を証明することができる書類」と定め、101条の19は「出勤簿その他の介護休業の開始日及び終了日並びに介護休業期間中の休業日数を証明することができる書類」と定めています。どちらも「出勤簿その他の……証明することができる書類」という書き方で、出勤簿を作れという義務ではなく、日数を証明する手段の例示です。実際、日本の全法令をe-Gov法令検索で横断しても「出勤簿」の語は7か所4法令にしか現れず、そのうち民間の事業主に関係するのはこの2か所だけです。同じ日数を証明できる別の書類があれば、それでも足ります。

Q. 高度プロフェッショナル制度の対象者は記録が不要ですか?

A. 不要にはなりません。労働安全衛生法66条の8の3は括弧書きで「次条第一項に規定する者を除く」としており、高度プロフェッショナル制度の対象者はこの把握義務からは外れます。しかし代わりに、労働基準法41条の2第1項3号が健康管理時間の把握を求めており、その方法を定めた施行規則34条の2第8項が「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法とする」としています。ここで注意したいのは、安衛則52条の7の3第1項が「客観的な方法その他の適切な方法」で終わっているのに対し、則34条の2第8項には「その他の適切な方法」が無いことです。ほぼ同一の列挙でありながら末尾の逃げ道だけが違うため、高度プロフェッショナル制度の対象者については条文上、客観的な方法以外の選択肢が置かれていません。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の取扱いは事業場の実情や契約内容により異なる場合があるため、判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。

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