法定福利費の計算
従業員1人あたり、会社が給与に上乗せして負担している額を出します。折半でないものが3つあります — 労災保険と子ども・子育て拠出金は全額事業主負担、雇用保険は労使で率が違います。
課税ベースが2種類あります。健康保険・介護保険・厚生年金・子ども子育て拠出金は標準報酬月額(等級表の額)、雇用保険と労災保険は賃金総額(通勤手当・残業代を含む実際の支払額。徴収法11条1項)にかかります。全部を標準報酬月額で計算すると、通勤手当の多い人の労働保険料が過少に出ます。
健保・厚年・子育て拠出金のベース。社会保険料の計算で等級が出せます。
雇用保険・労災のベース。通勤手当・残業代を含む実際の支払額。
折半でないものが3つ
| 保険料 | 負担のしかた | ベース |
|---|---|---|
| 健康保険 | 労使折半 | 標準報酬月額 |
| 介護保険(40〜64歳) | 労使折半 | 標準報酬月額 |
| 厚生年金 | 労使折半 | 標準報酬月額 |
| 子ども・子育て拠出金 | 全額事業主(本人負担なし) | 標準報酬月額 |
| 雇用保険 | 労使で率が違う(事業主だけが二事業分を負担) | 賃金総額 |
| 労災保険 | 全額事業主 | 賃金総額 |
雇用保険を「折半」と書くと会社の負担を過少に見せます。一般の事業なら本人5/1000・事業主8.5/1000で、差の3.5/1000が雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)の分です(徴収法31条1項1号)。
標準報酬月額と賃金総額
社会保険(健保・介護・厚年)の保険料は標準報酬月額という等級表の額にかかります。実際の給与そのものではありません。一方、労働保険(雇用・労災)は賃金総額=実際に支払った額にかかります(徴収法11条1項)。
通勤手当が月2万円ある人なら、雇用保険と労災の課税ベースだけが2万円多くなります。ここを揃えてしまうと、会社の負担が毎月わずかに過少に出続けます。
労災保険率は業種で35倍違う
労災保険率は徴収法施行規則の別表第1(労災保険率表)に53の事業の種類ごとに定められています。最小2.5/1000(通信・放送・新聞・出版、金融・保険・不動産)から最大88/1000(金属鉱業・非金属鉱業・石炭鉱業)まで、35倍の開きがあります。
「法定福利費はだいたい給与の15%」という目安は、その他の各種事業(3/1000)を前提にしたものです。建設・林業・鉱業では労災だけで数%上乗せになるため、この目安は使えません。上の欄で実際の業種を選んでください。
このツールが計算しないこと
このツールは入力した前提での月額の計算例で、次はしていません。
- メリット制 — 継続事業では労災の収支率に応じて労災保険率が最大±40%増減しますが(徴収法12条3項)、適用の有無と増減率は個別に決まります
- 賞与にかかる保険料 — 標準賞与額には上限(健保は年度累計573万円、厚年は1回150万円)があり、別に計算します
- 建設業の請負金額×労務費率による賃金総額の特例(徴収法11条3項・施行規則13条・別表第2)
- 健康保険組合・厚生年金基金の独自料率 — ここは協会けんぽの都道府県料率で計算します
- 年度更新の申告額 — 概算・確定の精算はこのツールの外です
- 法定外福利費(住宅手当・健康診断・慶弔見舞金など)
当サイトは社会保険労務士ではありません。実際の申告は年金事務所・労働局または顧問の社会保険労務士にご確認ください。
よくある質問
Q. 社会保険料は労使折半ではないのですか?
A. 健康保険・介護保険・厚生年金は折半です。ただし子ども・子育て拠出金は全額事業主負担(本人負担はありません)、労災保険も全額事業主負担、雇用保険は労使で率が違います。この3つを折半として計算すると、会社の負担を過少に見積もります。
Q. 雇用保険はなぜ会社のほうが高いのですか?
A. 事業主だけが雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)の分を負担するためです(徴収法31条1項1号)。令和8年度の一般の事業なら、本人5/1000に対して事業主8.5/1000で、差の3.5/1000がその分です。
Q. 労災保険料は給与から引かれますか?
A. 引かれません。全額が事業主負担です。徴収法31条は雇用保険の被保険者負担額だけを定めており、労災保険には対応する規定がありません。
Q. 法定福利費は給与の何%くらいですか?
A. 業種によります。その他の各種事業(労災3/1000)なら給与の15%前後ですが、労災保険率は業種で2.5/1000〜88/1000と35倍の開きがあるため、建設・林業・鉱業ではもっと高くなります。上の欄で業種を選んで計算してください。
Q. 標準報酬月額と賃金総額のどちらを入れればよいですか?
A. 両方です。健保・厚年・子育て拠出金は標準報酬月額、雇用保険と労災は賃金総額(実際の支払額)にかかるためです。標準報酬月額は算定基礎届の計算で出せます。
Q. 介護保険料はいつからいつまでかかりますか?
A. 40歳以上65歳未満(介護保険第2号被保険者)の期間です。65歳になると第1号被保険者になり、給与からの控除ではなく年金からの特別徴収などに変わります。
Q. メリット制で労災保険率が下がっている場合はどうすればよいですか?
A. このツールは別表第1の率(メリット制適用前)で計算します。メリット制の増減率は事業ごとに労働局から通知されるので、その率で計算し直してください。
出典
労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則 別表第1(労災保険率表。53の事業の種類と率を e-Gov 法令API v2 のレスポンスから機械抽出。手で書き写していません)。労働保険の保険料の徴収等に関する法律 11条1項(賃金総額)・12条3項(メリット制)・31条1項1号(雇用保険の被保険者負担=労災には対応する規定が無い)。健康保険・介護保険・厚生年金・子ども子育て拠出金の料率と雇用保険料率はこのサイトについてに出典を書いています(協会けんぽ・厚生労働省の公表値)。条文は 2026-08-08 に確認しています。
関連する解説
- 偽装請負とは — 法令に一度も出てこない言葉。判定は37号告示の9項目で、いちばん重い結果は罰金ではない法令に「偽装請負」は0回。37号告示の9項目は「全部そろって初めて請負」。発注者に来るのは罰金ではなく直接雇用の申込み。
- 福利厚生費とは — 法律に定義は無い。給与・交際費・寄附金から「除かれた残り」がこの科目になる福利厚生費とは、役員・従業員の生活や健康のために会社が負担する費用の勘定科目ですが、法人税法がこの語を使うのは25条の2・37条の括弧書き「
- 安全衛生委員会とは — 常時50人以上で設置義務、毎月1回開催、記録は3年保存。衛生委員会との違いと、2028年に変わること「50人」は安衛法の本則に一度も出てこない。ストレスチェックの努力義務は附則の読替えで作られていて、2028年4月1日に消える。
- 安全衛生推進者 — 常時10人で選任義務が発生する。「50人未満だから何も要らない」は誤り常時10人以上50人未満の事業場には安全衛生推進者等の選任義務がある。14日以内・専属。衛生管理者や産業医と違い労基署への選任報告はなく、作
- 一人親方労災保険の保険料と経理 — 料率は事業の種類で17倍違い、保険料は必要経費ではなく社会保険料控除です一人親方の特別加入保険料は「給付基礎日額に応ずる保険料算定基礎額 × 第二種特別加入保険料率」で決まる(労働保険徴収法14条1項)。給付基礎