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キャリアアップ助成金の支給額【令和8年度】— 正社員化コースは勤続年数で4倍変わり、省令が数える6コースのうち1つは附則で止まっている

結論から言うと、キャリアアップ助成金の支給額は、パンフレットではなく雇用保険法施行規則(昭和50年労働省令第3号)の第118条の2に、金額そのものが書かれています。有期契約労働者を正社員に転換したときの正社員化コースなら、対象者1人につき15万円から80万円。この幅は会社の規模だけで決まるのではなく、その労働者が何年その会社で働いてきたかで決まります。

そして、実務でいちばん誤解されやすいのがここです。有期契約労働者の通算勤続が「3年以上5年以下」のときが最高額で、「5年を超える」と最低額まで落ちます。中小企業事業主なら80万円が20万円へ、4分の1です。長く働いてもらった人ほど手厚くなる、という直感とは逆向きに設計されています。

もうひとつ。省令の第118条の2第1項は、キャリアアップ助成金を6つのコースと定義しています。ところが、そのうちの1つ(短時間労働者労働時間延長コース)は附則によって「適用しない」とされています。本則を読んだだけでは、動いていないコースを動いていると読み違えます。この記事では、条文に書かれている額をそのまま一覧にしたうえで、本則と附則のズレと、省令には数字が書かれていないため私たちが断定を避けた箇所を、はっきり分けて示します。

省令が数える6コースと、実際に動いている6コースは同じではない

第118条の2第1項は、キャリアアップ助成金を次の6つと定めています。条文の順番のままです。

  1. 正社員化コース助成金
  2. 賃金規定等改定コース助成金
  3. 賃金規定等共通化コース助成金
  4. 賞与・退職金制度導入コース助成金
  5. 短時間労働者労働時間延長コース助成金
  6. 障害者正社員化コース助成金

ところが、附則第17条の2の7第1項が、この5番目について次のように定めています。

附則第17条の2の7第1項「第百十八条の二第十二項の短時間労働者労働時間延長コース助成金に代えて、当分の間、社会保険適用時処遇改善コース助成金又は短時間労働者労働時間延長支援コース助成金を支給するものとし、同項の規定は適用しない。ただし、社会保険適用時処遇改善コース助成金の支給については、令和八年三月三十一日までの間、行うものとする。」

つまり、本則に書かれている短時間労働者労働時間延長コースは、いま適用されていません。代わりに置かれた2つのうち、社会保険適用時処遇改善コースは令和8年3月31日をもって支給の期間が終わっています。この記事を書いている令和8年8月16日の時点では、すでに4か月半が経過しています。

結果として、名前のうえでは「6コース」のままですが、中身は本則の5コース+附則の短時間労働者労働時間延長支援コースという組み合わせになります。

本則 第118条の2第1項が数える6コース 実際に支給されるもの ① 正社員化コース ① 正社員化コース(そのまま) ② 賃金規定等改定コース ② 賃金規定等改定コース(そのまま) ③ 賃金規定等共通化コース ③ 賃金規定等共通化コース(そのまま) ④ 賞与・退職金制度導入コース ④ 賞与・退職金制度導入コース(そのまま) ⑤ 短時間労働者労働時間延長コース 附則17条の2の7第1項「同項の規定は適用しない」 社会保険適用時処遇改善コース ↑ 令和8年3月31日で支給の期間が終了 ⑤ 短時間労働者労働時間延長支援コース ⑥ 障害者正社員化コース ⑥ 障害者正社員化コース(そのまま)
本則の第1項は6コースを列挙するが、⑤は附則第17条の2の7第1項によって適用が止められている。差し替えとして置かれた2コースのうち、社会保険適用時処遇改善コースは令和8年3月31日で支給の期間が終了しているため、令和8年8月時点で動いているのは短時間労働者労働時間延長支援コースのほうである。

正社員化コース — 1人15万〜80万円。勤続5年を超えると最低額に落ちる

正社員化コースは第118条の2第2項です。第1号が「どういう措置を講じた事業主か」を8つに分け、第2号がそれぞれの額を定めています。まず額の表です。カッコ内が中小企業事業主の額で、こちらのほうが高く設定されています。

条文(2項1号ハ)どういう転換・雇入れか大企業中小企業
(1)有期契約労働者(通算3年未満・下の職歴要件に当たらない人)→ 正社員等へ転換30万円40万円
(2)有期契約労働者(通算3年未満・職歴要件の両方に当たる人)→ 正社員等へ転換60万円80万円
(3)有期契約労働者(通算3年以上5年以下)→ 正社員等へ転換60万円80万円
(4)有期契約労働者(通算5年超)→ 正社員等へ転換15万円20万円
(5)無期契約労働者 → 正社員等へ転換15万円20万円
(6)派遣労働者(有期・派遣元での通算5年以下)を直接雇入れ60万円80万円
(7)派遣労働者(有期・派遣元での通算5年超)を直接雇入れ30万円40万円
(8)派遣労働者(無期)を直接雇入れ30万円40万円

ここでいう「正社員等」は、条文では通常の労働者・勤務地限定正社員・職務限定正社員・短時間正社員の4つです。いずれも「期間の定めのない労働契約を締結している労働者であって、通常の労働者と同等の待遇を受けるもの」と定義され、派遣労働者は除かれます。

支給人数の上限は、1つの事業所につき1年度あたり20人までです(第2項第2号の柱書)。この上限はコースごとに違いますので、あとでまとめます。

有期契約労働者を正社員へ転換したときの額(中小企業事業主・対象者1人あたり) 0 20万 40万 60万 80万 40万 3年未満 (職歴要件に 当たらない) 80万 3年未満 (職歴要件の 両方に当たる) 80万 3年以上5年以下 ← 最高額 20万 5年超 ← 4分の1に落ちる 20万 無期契約から (勤続を問わない) ※ 横軸は「その事業主に雇用された期間を通算した期間」。金額は第118条の2第2項第2号イ〜ハ(中小企業事業主の額)。
額は勤続に比例して増えるのではなく、3年以上5年以下で頂点に達し、5年を超えると4分の1まで落ちる。労働契約法18条の無期転換申込権が発生するのが通算5年を超えたときであることと、境目が一致している。

「職歴要件」とは何を指しているか

上の表の(1)と(2)を分けている条件は、第118条の2の中には書かれていません。条文は第110条第9項第1号イ(2)(3)を引いています。第110条第9項は特定求職者雇用開発助成金の中高年層安定雇用支援コースの規定で、そのイ(2)(3)は次のとおりです。

この両方に当てはまる人を、通算3年未満のうちから取り出して、額を30万円から60万円(中小企業なら40万円から80万円)へ引き上げる、という作りです。正社員としての職歴が薄い人を採ったときに手厚くする、という意図が読み取れます。

引いているのは(2)と(3)だけです。第110条第9項第1号イには(1)として「三十五歳以上六十歳未満の者」という年齢の条件もありますが、第118条の2はこれを引いていません。正社員化コースの額の判定に年齢は関係しない、ということです。中高年層安定雇用支援コースの要件を丸ごと持ってきていると読むと、ここを取り違えます。

ひとり親の場合は額が変わる

第3項が読み替えを定めています。転換した人が母子家庭の母等または父子家庭の父に当たるとき、上の表のうち(1)に当たる30万円は60万円(中小企業は40万円→80万円)、(4)(5)に当たる15万円は30万円(中小企業は20万円→40万円)になります。いずれも2倍です。

正社員化コースの3つの加算 — 制度整備とウェブ公表

正社員化コースには、1人あたりの額とは別に、事業所単位で上乗せされる加算が3つあります。第4項・第5項・第6項です。

条文何をしたとき大企業中小企業単位
4項通常の労働者への転換制度を、労働協約・就業規則等に定めて整備した15万円20万円1事業所につき
5項勤務地限定・職務限定・短時間正社員への転換制度を整備した30万円40万円1事業所につき
6項転換制度の実績をウェブサイトで公表した15万円20万円1事業所につき・1回限り

目を引くのは第5項のほうが第4項より高いことです。いわゆる限定正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)への転換制度を整備した場合の加算は30万円(中小企業40万円)で、通常の正社員への転換制度を整備した場合の15万円(中小企業20万円)の2倍です。

ウェブ公表加算で「何を公表するか」は条文に列挙されている

第6項の加算は、自ら管理するウェブサイトまたは厚生労働省のウェブサイトに公表することが条件です。公表すべき事項は第6項の各号に3つ挙げられています。

  1. 有期契約労働者等の、通常の労働者等への転換・雇入れを実施するための制度の概要
  2. その事業所において、直近の3事業年度に通常の労働者等へ転換・雇入れされた有期契約労働者等の
  3. その事業所において、直近の3事業年度に転換・雇入れに要した期間の平均期間および最短期間

3つ目の「最短期間」まで求められている点は見落とされがちです。また第6項には「既にこの項の規定による支給を受けた事業主にあつては、この限りではない」とただし書きがあり、1回限りの加算であることが明記されています。第8項・第9項・第10項・第11項にも同じただし書きがあります。

賃金規定等改定コース — 増額率で4段階に分かれる

第7項です。労働協約または就業規則に定めるところにより、その事業所のすべての、または合理的に区分された有期契約労働者等について賃金を増額したときに支給されます。額は増額率で4段階です。

賃金の増額率大企業中小企業
3%以上4%未満2万6,000円4万円
4%以上5%未満3万3,000円5万円
5%以上6%未満4万3,000円6万5,000円
6%以上4万6,000円7万円

いずれも対象者1人あたりの額で、1事業所につき1年度あたり100人までです。正社員化コースの20人と比べて上限が大きく取られています。

このコースにも加算が2つあります。第8項は、賃金の増額を職務の相対的な比較を行うための手法(職務評価)を用いて行った場合の加算で、1事業所につき15万円(中小企業20万円)。第9項は、対象の有期契約労働者等について昇給制度を整備した場合の加算で、同じく15万円(中小企業20万円)です。どちらも1回限りです。

共通化・賞与退職金・障害者正社員化の額

残りのコースをまとめます。

賃金規定等共通化コース(第10項)

有期契約労働者等について、職務等に応じて賃金を決定する制度であって通常の労働者と共通のものを整備し、その制度に基づいて実際に賃金を支払ったときに支給されます。額は1事業所につき45万円(中小企業60万円)。1回限りです。

賞与・退職金制度導入コース(第11項)

有期契約労働者等について賞与または退職金制度を整備し、その制度に基づいて実際に賞与を支給し、または退職金を積み立てたときに支給されます。制度を作っただけでは足りず、運用まで求められています。

整備した制度大企業中小企業
賞与または退職金制度のいずれか30万円40万円
賞与および退職金制度の両方42万6,000円56万8,000円

いずれも1事業所あたりの額で、1回限りです。両方を整備しても単純に2倍にはならず、1.42倍にとどまります。

障害者正社員化コース(第13項・第14項)

キャリアアップ助成金の中で1人あたりの額が最も大きいのがこのコースです。

措置大企業中小企業
有期契約の障害者 → 正社員等へ転換67万5,000円90万円
 うち重度身体・重度知的・精神障害者の場合90万円120万円
障害者 → 無期契約へ転換(転換後の週所定20時間以上)/無期契約の障害者 → 正社員等へ転換33万円45万円
 うち重度身体・重度知的・精神障害者の場合45万円60万円

対象となる障害者の範囲について、令和8年8月1日施行の現行版では高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号)第2条第2項に規定する高次脳機能障害者が明記されています。同法の施行に伴って省令が整備されたもので、比較的新しい記載です。

雇用関係助成金の一覧を見る(キャリアアップ助成金を含む雇用系の助成金をまとめています)

附則のコース — 社会保険適用時処遇改善は令和8年3月31日で終わっている

冒頭で触れたとおり、本則第12項の短時間労働者労働時間延長コースは適用されていません。代わりに置かれた短時間労働者労働時間延長支援コース(附則第17条の2の7第3項)が、令和8年8月時点で動いているほうです。

このコースは、社会保険の被保険者でない有期契約労働者等について、その措置によって被保険者となる場合に限り支給されます。求められる措置は次の4つのいずれかです。

延長する時間が短いほど、求められる賃上げ率が上がる設計です。額は次のとおりで、このコースだけ3段階になっています。

要件大企業中小企業小規模企業
上の措置のいずれかを6か月継続30万円40万円50万円
上の措置を1年継続したうえ、さらに時間延長2時間以上または賃金5%以上増額・昇給制度整備・賞与制度整備と支給・退職金制度整備と積立てのいずれかを6か月継続45万円60万円75万円

「小規模企業事業主」はこの附則の中で定義されています。「その常時雇用する労働者の数が三十人以下である事業主をいう」(附則第17条の2の7第3項第2号イ)。キャリアアップ助成金の他のコースは大企業/中小企業の2段階しかないため、30人以下という3段階目の区分があるのはこのコースだけです。

また第4項が、社会保険適用時処遇改善コースと短時間労働者労働時間延長支援コースは、有期契約労働者等1人につきいずれか一方のみを支給すると定めています。同じ人について両方を受けることはできません。

上限人数はコースごとに違う

条文を読むと、支給人数の上限がコースごとにばらばらであることが分かります。1つの事業所・1年度あたりの人数です。

コース上限根拠
正社員化コース20人2項2号 柱書
賃金規定等改定コース100人7項2号 柱書
短時間労働者労働時間延長コース(適用停止中)10人12項2号
賃金規定等共通化/賞与・退職金制度導入人数上限なし(1事業所につき1回限り10項・11項 ただし書

「中小企業事業主」の判定は、資本金と人数で業種の区切りが違う

ここまでの表はすべて、大企業と中小企業で額が違いました。その中小企業事業主の定義は第118条の2の中にはなく、第102条の3第1項第2号イ(5)のカッコ書きに置かれています。雇用調整助成金の条文の中に定義があり、以後の条文がそれを流用する形です。

主たる事業資本金・出資の総額常時雇用する労働者数
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他(製造業・建設業など)3億円以下300人以下

2つの基準で、業種のグループの切り方が違います。資本金で見るとサービス業は小売業と同じ枠(5,000万円)ですが、人数で見るとサービス業は卸売業と同じ枠(100人)です。「サービス業は小売業と同じ」とも「サービス業は卸売業と同じ」とも言えないため、資本金と人数のどちらの話をしているのかを常に確かめる必要があります。

なお条文は、この2つの基準を「〜を超えない事業主及びその常時雇用する労働者の数が〜を超えない事業主をいう」という形で結んでいます。この記事では、条文の文言をそのまま示すにとどめ、両方を満たす必要があるのか一方で足りるのかという判定については断定していません。実際の申請にあたっては、労働局または支給要領で確認してください。

全コースに共通する2つの入口 — 管理者の配置と計画の提出

額の話が続きましたが、どのコースにも共通して、第1号のイとロに同じ2つの要件が置かれています。これを満たしていなければ、そもそもどのコースにも進めません。

  1. キャリアアップ管理者の配置 — 事業所ごとに、有期契約労働者等のキャリアアップに関する事項を管理する者をキャリアアップ管理者として配置し、かつその配置について事業所に掲示等の周知を行っていること。配置するだけでなく、周知まで条文上の要件です。
  2. キャリアアップ計画の提出 — その事業所の労働組合等の意見を聴いて作成したキャリアアップ計画を、都道府県労働局長に対して提出していること。ここでいう労働組合等は、労働者の過半数で組織する労働組合、それがないときは労働者の過半数を代表する者です。

「キャリアアップ計画」は、有期契約労働者等のキャリアアップを図るために事業主が講ずる措置等を記載した計画である、と第118条の2第2項第1号ロのカッコ書きが定義しています。

また、正社員化コースと障害者正社員化コースには、これに加えて解雇に関する要件があります。措置を実施した日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過した日までの間(条文はこれを「基準期間」と呼びます)に、その事業所の労働者を解雇していないこと。ただし天災その他やむを得ない理由で事業の継続が不可能となった場合と、労働者の責めに帰すべき理由による解雇は除かれます。あわせて、基準期間に離職して特定受給資格者として受給資格の決定がなされた者の数などから判断して、適正な雇用管理を行っていると認められることも要件です。

第9項が引く「第六項」は、改正で取り残された参照

ここからは、条文を読んでいて気づいた技術的な点です。実務の結論を変えるものではありませんが、条文を自分で引いて確かめる人は必ずぶつかるので、書いておきます。

現行(令和8年8月1日施行版)の第9項は、次のように始まります。

第9項第六項第一号に該当する事業主が、労働協約又は就業規則に定めるところにより、同号ハの措置に係る有期契約労働者等について、昇給制度を整備する措置を講じたときは、当該事業主に対しては、同項第二号イからニまでに定める額に加え、一の事業所につき十五万円(中小企業事業主にあつては、二十万円)を支給するものとする。」

ところが、現行の第6項はウェブ公表の加算で、その各号は「一 制度の概要」「二 直近3事業年度の転換人数」「三 転換に要した期間の平均期間および最短期間」です。第6項第1号に「ハ」はありませんし、第6項第2号は額を定めていません。文字どおりに読むと、参照先が存在しないことになります。

一つ前の版(令和7年10月1日施行版)と突き合わせると、理由がはっきりします。

令和7年10月1日施行版現行(令和8年8月1日施行版)
6項賃金規定等改定コース【新設】ウェブ公表の加算
7項職務評価の加算(「前項第一号」)賃金規定等改定コース
8項昇給制度の加算(「第六項第一号」)職務評価の加算(「前項第一号」)
9項賃金規定等共通化コース昇給制度の加算(「第六項第一号」)
10項賃金規定等共通化コース

旧版では賃金規定等改定コースが第6項にあり、昇給制度の加算(旧第8項)が引く「第六項第一号」は正しく対応していました。現行版でウェブ公表の加算が第6項として挿入された結果、賃金規定等改定コースは第7項へ繰り下がり、加算の各項も1つずつ後ろへずれました。

隣り合う2つの加算で、生き残り方が分かれています。職務評価の加算は「前項第一号」という相対参照だったため、項がずれても自動的に第7項を指し続けています。昇給制度の加算は「第六項第一号」という絶対参照だったため、旧番号のまま取り残されました。同じ条の中で、参照の書き方の違いがそのまま改正への強さの差になっています。

内容から見れば、第9項が対応するのは第7項(賃金規定等改定コース)です。第7項第1号ハには賃金を増額する措置があり、第7項第2号イ〜ニには4段階の額があります。第9項の文言が求めている「同号ハの措置」と「同項第二号イからニまでに定める額」の両方を備えているのは第7項だけです。

ただし、この記事はここから先を断定しません。上に書いたのは条文の文言と版の比較から読み取れる事実であって、支給申請の可否や実際の取り扱いを決めるものではありません。昇給制度の加算を実際に申請する場合は、労働局または支給要領で取り扱いを確認してください。

この記事で数字を書かなかったところ

省令に書かれていない数字は、この記事では書いていません。どこが省令の外にあるのかを知っておくことは、条文だけで判断してはいけない箇所を知ることと同じです。

よくある質問

Q. キャリアアップ助成金は結局いくらもらえますか?

A. コースと会社の規模、そして対象者の状況によって変わります。最も利用の多い正社員化コースであれば、有期契約労働者を正社員に転換した場合で対象者1人につき15万円から80万円です。中小企業事業主で、その人の通算勤続が3年以上5年以下なら80万円、通算3年未満で正社員としての職歴が薄い要件に当てはまる場合も80万円、通算5年を超えている場合は20万円になります。これに事業所単位の加算が乗ります。転換制度を就業規則等で整備していれば15万円から40万円、転換実績をウェブサイトで公表していればさらに15万円か20万円です。1人あたりの額が最も大きいのは障害者正社員化コースで、有期契約の障害者を正社員に転換した場合、中小企業事業主なら90万円、対象者が重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者であれば120万円になります。いずれも雇用保険法施行規則第118条の2に金額が明記されています。

Q. 長く働いてくれたパートを正社員にするほうが、助成金は多いのではないですか?

A. 逆です。有期契約労働者の通算勤続が3年以上5年以下のときが最高額で、5年を超えると最低額まで下がります。中小企業事業主なら80万円が20万円になり、4分の1です。第118条の2第2項第1号ハは、通算3年未満、3年以上5年以下、5年超という3つの区分を設けており、第2号がそれぞれに60万円・60万円・15万円(中小企業事業主は80万円・80万円・20万円)を割り当てています。境目となる5年は、労働契約法18条により有期契約労働者が無期転換の申込権を得る通算期間と一致しています。無期転換申込権が発生した後は労働者自身の申込みで無期契約に移れるため、助成の必要性が下がると整理されているものと読めますが、条文はその理由までは述べていません。実務上は、正社員登用を検討しているなら通算5年を超える前に手続きを始めるかどうかで受け取れる額が大きく変わる、ということになります。

Q. 短時間労働者労働時間延長コースを申請したいのですが、見当たりません。

A. 本則には書かれていますが、いま適用されていません。附則第17条の2の7第1項が「第百十八条の二第十二項の短時間労働者労働時間延長コース助成金に代えて、当分の間、社会保険適用時処遇改善コース助成金又は短時間労働者労働時間延長支援コース助成金を支給するものとし、同項の規定は適用しない」と定めているためです。そして、代わりに置かれた2つのうち社会保険適用時処遇改善コースについては、同項ただし書が「令和八年三月三十一日までの間、行うものとする」としており、支給の期間はすでに終わっています。したがって令和8年8月の時点で利用できるのは短時間労働者労働時間延長支援コースです。こちらは社会保険の被保険者でない有期契約労働者等について、週の所定労働時間を延長してその人が被保険者になる場合に支給されます。省令の本則だけを読むと、止まっているコースを動いていると読み違えますので注意してください。

Q. 「中小企業事業主」かどうかは、どこで判定しますか?

A. 第118条の2の中には定義がなく、第102条の3第1項第2号イ(5)のカッコ書きに置かれた定義を使います。資本金または出資の総額については、小売業とサービス業が5,000万円、卸売業が1億円、それ以外が3億円。常時雇用する労働者の数については、小売業が50人、卸売業とサービス業が100人、それ以外が300人です。注意が必要なのは、2つの基準で業種のグループの切り方が違うことです。サービス業は資本金で見ると小売業と同じ枠ですが、人数で見ると卸売業と同じ枠になります。「サービス業は小売業と同じ扱い」と一括りに覚えていると、人数側で取り違えます。なお条文は2つの基準を「及び」で結んでいます。両方を満たす必要があるのか一方で足りるのかについては、この記事では断定していません。判定に迷う場合は労働局にご確認ください。

Q. キャリアアップ計画は、いつまでに出せばよいですか?

A. 提出そのものが要件であることは条文から分かりますが、期限は省令に書かれていません。第118条の2の各項の第1号ロは「当該事業主の事業所の労働組合等の意見を聴いて作成したキャリアアップ計画を、都道府県労働局長に対して提出した事業主」とだけ定めています。提出先が都道府県労働局長であること、労働組合等(労働者の過半数で組織する労働組合、ないときは労働者の過半数を代表する者)の意見を聴いて作成する必要があることの2点が、条文上の要件です。いつまでに提出すべきかは支給要領の領域になりますので、所轄の労働局にご確認ください。あわせて、キャリアアップ管理者を事業所ごとに配置し、その配置について掲示等により事業所に周知していることも、すべてのコースに共通する要件です。配置するだけでは足りず、周知まで条文が求めている点にご注意ください。

Q. 正社員化コースは1年に何人まで申請できますか?

A. 1つの事業所につき、1年度あたり20人までです。第118条の2第2項第2号の柱書が「一の事業所につき、一の年度における当該措置の対象となる労働者の数が二十人を超える場合は、当該事業所につき二十人までの支給に限る」と定めています。上限はコースごとに異なり、賃金規定等改定コースは100人(第7項第2号柱書)、適用が止まっている短時間労働者労働時間延長コースは10人(第12項第2号)です。賃金規定等共通化コースと賞与・退職金制度導入コースには人数の上限がなく、代わりに「既にこの項の規定による支給を受けた事業主にあつては、この限りではない」というただし書きにより、1事業所につき1回限りとされています。加算についても同じただし書きが置かれており、ウェブ公表加算・職務評価加算・昇給制度整備加算はいずれも1回限りです。

Q. ひとり親を正社員にした場合は増額されますか?

A. 増額されます。第118条の2第3項が読み替えを定めており、転換または雇入れをした人が母子家庭の母等または父子家庭の父に該当する場合、第2項第2号イに当たる30万円は60万円に、中小企業事業主の40万円は80万円になります。同じく第2号ハに当たる15万円は30万円に、中小企業事業主の20万円は40万円になります。いずれも2倍です。読み替えの対象になっているのはイとハで、もともと60万円(中小企業事業主80万円)が設定されているロについては、この読み替えの対象に含まれていません。なお、この増額は事業所単位の加算とは別枠ですので、転換制度の整備やウェブ公表による加算があればそれぞれ上乗せされます。

Q. 賞与と退職金の両方を導入すれば、額は2倍になりますか?

A. 2倍にはなりません。第118条の2第11項第2号は、賞与または退職金制度のいずれかを整備した場合を1事業所につき30万円(中小企業事業主40万円)、賞与および退職金制度の両方を整備した場合を42万6,000円(中小企業事業主56万8,000円)としています。両方でも1.42倍です。また、このコースは制度を作るだけでは足りません。条文は「賞与若しくは退職金制度又はその両方を整備する措置を講じ、かつ、当該制度に基づき、有期契約労働者等に対して賞与の支給若しくは退職金の積立て又はその両方の措置を講じた事業主」と定めており、整備した制度に基づいて実際に賞与を支給するか退職金を積み立てるところまでが要件です。就業規則に規定を置いた段階では要件を満たしません。

Q. 小規模企業だと有利になるコースはありますか?

A. 短時間労働者労働時間延長支援コースだけ、3段階目の区分があります。附則第17条の2の7第3項第2号は、大企業・中小企業事業主・小規模企業事業主の3区分で額を定めており、措置を6か月継続した場合が30万円・40万円・50万円、1年継続したうえでさらに追加の措置を6か月継続した場合が45万円・60万円・75万円です。ここでいう小規模企業事業主は、同号イのカッコ書きが「その常時雇用する労働者の数が三十人以下である事業主」と定義しています。キャリアアップ助成金の他のコースはすべて大企業と中小企業事業主の2段階しかありませんので、30人以下という区分が効いてくるのはこのコースに限られます。なお同条第4項により、社会保険適用時処遇改善コースと短時間労働者労働時間延長支援コースは、同じ有期契約労働者等1人について一方しか支給されません。

Q. 転換すれば必ずもらえますか。賃金は上げなくてもよいのですか?

A. 転換しただけでは要件を満たしません。第118条の2第2項第1号ハの各号は、いずれも末尾に「当該労働者に係る転換後の賃金を、転換前の賃金と比べて雇用環境・均等局長が定める割合以上で増額する場合に限る」というカッコ書きを置いています。つまり転換にあわせて賃金を一定以上引き上げることが条文上の要件です。ただし、その「割合」そのものは省令には書かれておらず、雇用環境・均等局長が定めることとされています。e-Gov法令APIで取得できるのは省令までですので、この記事では割合の数値を示していません。実際に検討される際は、必ず労働局または支給要領で現行の割合をご確認ください。あわせて、転換の前後6か月から1年の期間に事業所で解雇を行っていないことなど、雇用管理に関する要件も課されています。

Q. 助成金を受け取ったとき、経理ではどう扱いますか?

A. 一般に、雇用関係助成金は法人税法上の益金(個人事業主であれば事業所得の総収入金額)に算入されます。消費税については、助成金は資産の譲渡等の対価ではないため不課税取引として扱うのが一般的です。計上時期は、支給決定通知を受けた日の属する事業年度とするのが原則的な取り扱いです。キャリアアップ助成金は人件費に対する助成であり、固定資産の取得に充てるものではないため、補助金で機械等を購入した場合の圧縮記帳(法人税法42条以下)の対象にはなりません。当サイトには補助金の仕訳と計上時期を扱った記事、消費税の取り扱いを扱った記事がありますので、あわせてご覧ください。なお、個別の事業年度における具体的な処理については顧問税理士にご確認ください。

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。自社が中小企業事業主に当たるか、特定の労働者が各コースの対象となるか、実際に支給を受けられるかは、個別の事情および支給要領の定めによって結論が変わります。支給申請の可否・期限・必要書類については所轄の都道府県労働局またはハローワークへ、就業規則や労使協定の整備については社会保険労務士へ、助成金を受け取った場合の税務処理については税理士へご確認ください。

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