ファクタリングとは? 消費税はかからない — ただし「買い戻し」が付いた瞬間、法律上は借入になる
- ファクタリングは借入ではなく債権の売買です。だから消費税はかかりません(消費税法6条1項 → 別表第二第2号 → 同施行令9条1項4号の3段で降ります)。手数料部分にもかかりません。
- 契約書に「債権譲渡禁止」と書いてあっても譲渡は有効です(民法466条2項)。ただし債務者は支払いを拒めます(同3項)。「禁止だからできない」も「禁止でも問題ない」も、どちらも不正確です。
- 売主に不払いのリスクが残る形にした瞬間、貸金業に該当するおそれがあります。金融庁は買戻し特約と売主の自己資金による支払いを名指ししたうえで、判断が分かれた裁判例7件を挙げています(そのうち1件は、ノンリコースと書きながら表明保証で実質的に売主に負わせていた例)。
- 手数料は年率に直して見ると正体が分かります。支払期日まで30日の債権に手数料10%なら年率121.7%。仮に貸付けと評価されれば、出資法5条3項の109.5%を超えます。
ファクタリングは「売掛金を期日前に現金化するサービス」と説明されます。それは間違いではありませんが、経理として押さえるべき点はそこではありません。これは借入ではなく売買である——この一点から、消費税の扱い、仕訳の科目、そして「どこから違法になるのか」の線引きまでが決まります。
金融庁は、ファクタリングをこう定義しています。
一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。
この記事は、債権譲渡としての作りを民法で確認したうえで、消費税・仕訳・そして売買と貸付けを分ける実質判断までを通しで見ます。課税売上割合の分母をどう計算するかは課税売上割合とは、回収不能になったときの損金処理は貸倒損失とはと貸倒引当金とは、手形・でんさいの側は手形とはに譲ります。
2社間と3社間 — 違いは「債務者に知らせるか」だけではない
ファクタリングは、登場人物の数で2つに分かれます。売主(利用する事業者)とファクタリング業者だけで完結するのが2社間、売掛先(債務者)も加わるのが3社間です。
2社間が選ばれるのは「取引先に資金繰りを知られたくない」からですが、業者側から見ると、対抗要件を備えないまま代金を先に払うことになります。回収を売主に委ねている以上、売主が集金した金を送金しないリスクと二重に譲渡されるリスクを業者が負う。業者が抱えるリスクは3社間より構造的に大きい——価格差の理由を探すなら、まずここを見ることになります(ただし実際にいくら差がつくかは、後述のとおり公的な統計がありません)。
「債権譲渡禁止」と書いてあっても譲渡できる
基本契約書に「本契約から生じる債権を第三者に譲渡してはならない」と書いてある取引先は珍しくありません。これを理由にファクタリングを諦める例がありますが、いまの民法ではその理解は正確ではありません。
まず出発点は、債権は譲り渡せるということです。
債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
そのうえで、譲渡制限の意思表示(いわゆる譲渡禁止特約)があった場合について、民法466条2項がこう定めています。
当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
つまり譲渡そのものは有効で、債権は買主に移ります。ここまでは「特約があってもファクタリングできる」で正しい。しかし話はここで終わりません。同条3項が、債務者側の対抗手段を残しています。
前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
特約を知っていた(あるいは知らなかったことに重過失がある)買主に対して、債務者は支払いを拒めるし、もとの売主に払ってしまえばそれで消滅を主張できる。ファクタリング業者は契約書を確認しているのが通常なので、実際には「知っていた」側に立ちます。
結論として、譲渡禁止特約がある債権は「譲渡できない」のではなく、譲渡は有効だが、債務者が業者への支払いを拒める状態になります。3社間で債務者の承諾を取れば問題は消えますが、2社間で通知しないまま進めると、この不安定さがそのまま残ります。なお同条4項は、債務者が履行しない場合に買主が売主への履行を催告して期間内に履行がなければ、債務者は3項による拒絶ができなくなる旨を定めており、買主側にも出口は用意されています。
対抗要件は3通り。債権譲渡登記が使えるのは法人だけ
「誰に対して自分が債権者だと主張できるか」を決めるのが対抗要件です。民法467条は2段構えになっています。
債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
債務者に主張するだけなら通知か承諾で足りますが、二重譲渡された相手など「債務者以外の第三者」に勝つには確定日付が要る。実務で内容証明郵便(配達証明付き)が使われるのはこのためです。
3つ目の方法が債権譲渡登記です。動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律4条1項が定めています。
法人が債権(金銭の支払を目的とするものであって、民法第三編第一章第四節の規定により譲渡されるものに限る。以下同じ。)を譲渡した場合において、当該債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、当該債権の債務者以外の第三者については、同法第四百六十七条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなす。
条文の主語をよく見てください。「法人が」です。この法律は1条で「法人がする動産及び債権の譲渡の対抗要件に関し民法の特例等を定める」と趣旨を宣言しており、個人事業主は債権譲渡登記を使えません。個人事業主が第三者対抗要件を備えるには、確定日付のある通知・承諾しか道がない——これは実務上けっこう効く制約です。
また4条1項が「みなす」のは債務者以外の第三者に対する関係だけで、債務者本人には及びません。債務者に主張するには、同条2項のとおり登記事項証明書を交付して通知するか、債務者の承諾が必要です。登記したから債務者に請求できる、ではない点は取り違えやすいところです。
| 方法 | 債務者に対抗 | 第三者に対抗 | 使える人 |
|---|---|---|---|
| 通知・承諾(確定日付なし) | できる | できない | 誰でも |
| 確定日付のある通知・承諾 | できる | できる | 誰でも |
| 債権譲渡登記 | 登記事項証明書の交付+通知が必要 | できる | 法人のみ |
債権譲渡契約書の印紙は、いくらでも一律200円
ファクタリングで交わす債権譲渡契約書は、印紙税法別表第一の第15号文書「債権譲渡又は債務引受けに関する契約書」に当たります。税額欄はこう定められています——一通につき200円。金額の階段はありません。
これは印紙税では珍しい形です。売買契約書(第1号・第2号文書)は契約金額に応じて200円から60万円まで段階的に上がりますが、第15号文書は1億円の債権を譲渡しても200円。非課税になるのは、次の場合だけです。
契約金額の記載のある契約書のうち、当該契約金額が一万円未満のもの
注意点は「契約金額の記載のある」という限定です。譲渡する債権の額を書かない契約書は、1万円未満かどうかを判定できないので非課税になりません(=200円が必要)。金額を書かなければ印紙が要らなくなる、という向きの節約はできません。
収入印紙がいくら必要か判定する(全20号の一覧つき)消費税はかからない — 条文は3段で降りる
売掛金を売っても消費税は発生しません。この結論に至る条文の道筋は3段です。
1段目、消費税法6条1項。
国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第二に掲げるものには、消費税を課さない。
2段目、その別表第二の第2号が「有価証券その他これに類するものとして政令で定めるものの譲渡」を挙げます。3段目、その政令にあたる消費税法施行令9条1項が「有価証券に類するもの」を4号まで列挙し、その第4号がこれです。
貸付金、預金、売掛金その他の金銭債権(電子決済手段に該当するものを除く。)
売掛金が名指しで書かれています。したがって売掛債権の譲渡は非課税取引であり、差額として業者に残る手数料にも消費税はかかりません。手数料は役務提供の対価ではなく、額面と売買代金の差額だからです。「手数料に消費税10%が乗っている」請求書が来たら、それは取引の性質と合っていません。
仕訳 — 手数料は「支払手数料」ではない
額面100万円の売掛金を、手数料5万円で売却し95万円が入金された場合を考えます。
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 債権を譲渡し代金を受け取った | 普通預金 950,000 売上債権売却損 50,000 | 売掛金 1,000,000 |
| (2社間で売掛先から入金があった) | 普通預金 1,000,000 | 預り金 1,000,000 |
| (同上・業者へ送金した) | 預り金 1,000,000 | 普通預金 1,000,000 |
ポイントは2つあります。1つ目、差額は「支払手数料」ではなく「売上債権売却損」(債権売却損)で処理するのが一般的です。役務の対価ではないので支払手数料には馴染まず、また支払手数料は課税仕入れとして扱われることが多い科目なので、非課税取引の差額をそこに入れると仕入税額控除の集計を汚します。科目名そのものは法令が定めていませんが、区分を誤ると消費税の集計に波及するというのが理由です。
2つ目、2社間で売掛先から入金があったとき、その金はもう自社のものではありません。債権は業者に移っているので、売掛金の回収ではなく預り金です。ここを売掛金の減少で切ってしまうと、譲渡時にすでに消した売掛金を二重に消すことになります。
税務上、この売却損は法人税法22条3項3号の「損失の額」として損金になります。
当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
ここで注意すべきは、これは貸倒れではないということです。回収不能になったから落とすのではなく、売買の結果として生じた差額を落としている。したがって貸倒損失の要件(法人税基本通達9-6-1〜9-6-3)を検討する場面ではありません。逆に、譲渡した債権はもう自社の金銭債権ではないので、貸倒引当金の繰入対象からも外れます。
「買い戻し」が付くと貸金業になる — 金融庁が挙げた裁判例
ここからがこの記事の本題です。ファクタリングは売買なので、貸金業法も利息制限法も出資法も適用されません。売買である限りは。
金融庁は「ファクタリングの利用に関する注意喚起」で、こう述べています。
ファクタリングとして行われ、契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」であることが定められた取引であっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものについては、貸金業に該当するおそれがあります。
そして具体的に、譲渡した債権の回収が売主に委託されていて、売主が集金できなかった場合に売主が債権を買い戻すこととされている、あるいは売主自身の資金により業者に支払をしなければならないこととされているようなものを挙げています。さらに、ノンリコース(売却した債権が回収不能でも売主に返済義務は生じない)の規定があるかといった形式的な要素だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断されると明記しています。
同じページに、実際の裁判例が判断の向き別に並んでいます。整理するとこうなります。
| 判断 | 裁判例 | 決め手として挙げられた事情 |
|---|---|---|
| 貸金業法の適用なし(真正な売買) | 東京地裁 令和2年9月18日判決 | 業者に償還請求権がなく買戻しも予定されていない/対抗要件は業者の判断で具備可能だった/手数料が担保目的を推認させるほど大幅でない |
| 東京高裁 令和4年6月15日判決 | 回収できなかった額を売主が負担する定めがない/無資力の危険が業者に移転している/手数料が多額でない | |
| 貸付けに当たる等 | 大阪地裁 平成29年3月3日判決 | 業者が不払いリスクをほとんど負っていない/債権の額面と無関係に金員が授受されていた |
| 東京高裁 令和3年7月1日判決 | 債務者が弁済しない場合に売主が債権額以上を支払う旨の公正証書を作成していた | |
| 名古屋地裁 令和3年7月16日判決 | 売主は資力を担保しないと規定されていたが、債権の性質と譲渡から支払日までの期間の短さから不履行の可能性が極めて低かった | |
| 札幌高裁 令和4年7月7日判決 | 譲渡が発覚すると取引継続が困難になるため売主は買い戻さざるを得ず、業者もそれを認識していた(公序良俗違反で無効) | |
| 東京地裁 令和4年3月4日判決 | ノンリコース規定はあったが、不払いの兆候がないことを売主に表明保証させており、保証を求めているに等しい |
貸付けに当たると評価された場合、業者が貸金業の登録を受けていなければ無登録営業です。
第三条第一項の登録を受けない者は、貸金業を営んではならない。
違反すれば貸金業法47条2号により10年以下の拘禁刑もしくは3000万円以下の罰金、またはその併科です。利息の側も規制されます。
前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
さらに出資法5条3項は、年109.5%を超える利息の契約について10年以下の拘禁刑もしくは3000万円以下の罰金と定めています。利息制限法1条は民事上の上限を置いており、元本の額に応じて年20%・18%・15%の3区分です(機械的に確認して3号)。
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
手数料は年率に直して見る — 30日で10%は年121.7%
ここが実務でいちばん役に立つところです。ファクタリングの手数料は「額面の何%」で提示されますが、資金を使える期間はごく短い。支払期日まで30日しかない債権に対する10%は、年率に直すと別の顔になります。
単純に 手数料率 × 365 ÷ 残日数 で換算した表です。
| 手数料率 | 期日まで30日 | 期日まで60日 | 期日まで90日 |
|---|---|---|---|
| 1% | 年12.2% | 年6.1% | 年4.1% |
| 2% | 年24.3% | 年12.2% | 年8.1% |
| 5% | 年60.8% | 年30.4% | 年20.3% |
| 10% | 年121.7% | 年60.8% | 年40.6% |
| 15% | 年182.5% | 年91.2% | 年60.8% |
| 20% | 年243.3% | 年121.7% | 年81.1% |
この表の読み方には注意が要ります。真正な債権の売買である限り、利息制限法も出資法も適用されません。年率換算はあくまで比較のための計算であって、法定上限に触れるという意味ではない。それでも見る価値があるのは、金融庁が挙げた裁判例のいくつかが手数料の大きさ自体を判断材料に挙げているからです(「手数料についても担保目的であることを推認させるような大幅なものということもできない」=東京地裁 令和2年9月18日判決)。
逆算すると境界が見えます。期日まで30日の債権で、年20%(出資法5条2項の水準)に相当する手数料は約1.64%、年109.5%(同5条3項の水準)に相当するのは9.0%です。30日先の債権に手数料9%を超える提示が来ているなら、それは仮に貸付けと評価されたときに刑事罰の重い側に届く水準にある——という物差しとして使えます。
支払期日までの残日数を出す(支払サイト・支払日計算)給与ファクタリングは貸金業 — 決め手は労働基準法24条1項
個人が勤務先に対して持つ賃金債権を買い取る「給与ファクタリング」については、結論が出ています。金融庁は明確にこう述べています。
「給与ファクタリング」などと称して、業として、個人(労働者)が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行うことは、貸金業に該当します。
なぜ売掛債権と結論が分かれるのか。理屈の出発点は労働基準法24条1項です。
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
直接払いの原則です。賃金債権を譲り受けても、譲受人は使用者に直接請求できない。つまり買主にはそもそも自分で回収する道がないので、労働者本人から取り立てるしかなくなります。最高裁令和5年2月20日第三小法廷決定は、この構造を踏まえてこう判断しました(金融庁が抜粋を掲載しています)。
本件取引に基づく金銭の交付は、それが、形式的には、債権譲渡の対価としてされたものであり、また、使用者の不払の危険は被告人が負担するとされていたとしても、実質的には、被告人と顧客の二者間における、返済合意がある金銭の交付と同様の機能を有するものと認められる。このような事情の下では、本件取引に基づく金銭の交付は、貸金業法2条1項と出資法5条3項にいう「貸付け」に当たる。
注目すべきは、契約上は使用者の不払いリスクを買主が負う建て付けだったのに、それでも貸付けとされている点です。事業者向けファクタリングの判断軸(リスクが実際に移転しているか)と同じ実質判断を、賃金債権の性質そのものが決めてしまっている。
ここで、事業者向けファクタリングとの構造の違いがはっきりします。貸金業法2条1項は、何が「貸付け」かを次のように定めています。
この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。
括弧の中を読んでください。「手形の割引」は名指しで「貸付け」に含まれています。つまり手形の割引は、条文の文言レベルで最初から貸付けであり、実質判断の余地がない。一方、売掛債権の買取は条文に名前がありません。だから「その他これらに類する方法」に当たるかどうかが毎回問われ、リスク移転の有無という実質判断が必要になる。
同じ「期日前に現金化する」でも、手形割引とファクタリングは法律の入り口からして違う。手形割引は登録を受けた貸金業者(や銀行)の業務であることが前提で上限金利の規制も当然に及ぶのに対し、ファクタリングは売買である限り規制の外にあり、その代わり「本当に売買か」が争われ続ける。ファクタリング業界に登録制度がなく、金融庁が注意喚起という形でしか関与できていないのは、この構造の帰結です。
よくある質問
Q. ファクタリングの手数料に消費税はかかりますか?
A. かかりません。売掛金の譲渡は消費税法6条1項が非課税とする別表第二第2号に当たり、その範囲を定める消費税法施行令9条1項4号が「貸付金、預金、売掛金その他の金銭債権」と明記しているためです。手数料は役務提供の対価ではなく、債権の額面と売買代金の差額なので、その部分にも消費税は生じません。請求書に消費税が上乗せされている場合は、取引の性質と整合しているか確認するのが安全です。
Q. 取引先との契約書に「債権譲渡禁止」とあります。ファクタリングは使えませんか?
A. 譲渡自体は有効です。民法466条2項が、譲渡制限の意思表示があっても債権譲渡の効力は妨げられないと定めています。ただし同条3項により、特約を知っていた譲受人に対しては債務者が支払いを拒めるため、実務上は不安定な状態になります。3社間で債務者の承諾を得れば解消しますが、その場合は取引先に資金調達の事実が伝わります。
Q. 個人事業主でも債権譲渡登記は使えますか?
A. 使えません。動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律は1条で「法人がする動産及び債権の譲渡」の特例と趣旨を定めており、4条1項も「法人が債権を譲渡した場合において」と主語を法人に限っています。個人事業主が第三者に対抗するには、確定日付のある証書による通知または承諾(内容証明郵便など)によることになります。
Q. ファクタリングの手数料は「支払手数料」で処理してよいですか?
A. 一般には「売上債権売却損」など売却損を示す科目を使います。差額は役務提供の対価ではないためで、科目名自体は法令が定めているわけではありません。支払手数料は課税仕入れとして集計されることが多い科目なので、非課税取引である債権譲渡の差額をそこへ入れると消費税の集計に影響します。税務上は法人税法22条3項3号の損失として損金になります。
Q. 契約書に「ノンリコース」と書いてあれば、違法なファクタリングではないと言えますか?
A. 言えません。金融庁は、ノンリコース規定があるかといった形式的な要素だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断されるとしています。実際、ノンリコース規定がありながら、不払いの兆候がないことを売主に表明保証させていた事案について、金銭消費貸借契約に該当すると判断された裁判例があります(東京地裁 令和4年3月4日判決)。判断されるのは、売掛先が払わなかったときに実際に誰が損をするかです。
Q. 手数料が妥当かどうかは、どう判断すればよいですか?
A. 年率に換算して他の資金調達手段と比べる方法があります。手数料率に365を掛けて支払期日までの残日数で割ると年率が出ます。期日まで30日の債権に手数料10%なら年121.7%です。真正な売買であれば利息制限法や出資法の上限は適用されませんが、金融庁が紹介する裁判例では手数料の大きさ自体が判断材料に挙げられており、年率に直すと水準を客観的に見られます。
Q. 給与ファクタリングは利用してもよいですか?
A. 金融庁は利用しないよう呼びかけています。賃金債権を買い取って金銭を交付し本人を通じて回収する行為は貸金業に該当するとされ、最高裁令和5年2月20日第三小法廷決定も貸金業法2条1項および出資法5条3項の「貸付け」に当たると判断しています。背景には労働基準法24条1項の直接払いの原則があり、譲受人は使用者に直接請求できないため、本人から取り立てるほかない構造になっています。
出典
- 金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起 — ファクタリングの定義(法的には債権の売買)、偽装ファクタリングの特徴(買戻し・売主の自己資金による支払い)、形式的要素だけでなく経済的側面や実態で判断される旨、貸金業該当性が争われた裁判例7件(東京地裁 令和2年9月18日判決/東京高裁 令和4年6月15日判決/大阪地裁 平成29年3月3日判決/東京高裁 令和3年7月1日判決/名古屋地裁 令和3年7月16日判決/札幌高裁 令和4年7月7日判決/東京地裁 令和4年3月4日判決)、給与ファクタリングは貸金業に該当する旨、最高裁令和5年2月20日第三小法廷決定の抜粋。令和8年8月19日に本文を取得
- e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) — 第466条第1項(債権の譲渡性)、第2項(譲渡制限の意思表示があっても効力を妨げられない)、第3項(悪意・重過失の譲受人に対する履行拒絶)、第4項(催告による拒絶権の消滅)、第467条第1項・第2項(対抗要件と確定日付)。e-Gov法令API v2 で取得(令和8年8月19日時点の施行版)
- e-Gov法令検索 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(平成十年法律第百四号) — 第1条(趣旨=法人がする譲渡の特例)、第4条第1項(債権譲渡登記による第三者対抗要件のみなし)、第2項(債務者への登記事項証明書の交付と通知)。同上
- e-Gov法令検索 消費税法(昭和六十三年法律第百八号) — 第6条第1項(別表第二に掲げるものには消費税を課さない)、別表第二第2号(有価証券その他これに類するものとして政令で定めるものの譲渡)。同上
- e-Gov法令検索 消費税法施行令(昭和六十三年政令第三百六十号) — 第9条第1項第4号(貸付金、預金、売掛金その他の金銭債権。号数は egov_elm.py --items で機械的に確認=4号)、第48条第2項第2号(自らの資産の譲渡等の対価として取得した金銭債権の譲渡を課税売上割合の分母から除く)。同上
- e-Gov法令検索 貸金業法(昭和五十八年法律第三十二号) — 第2条第1項(「貸付け」の定義。手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付を含む)、第11条第1項(無登録営業の禁止)、第47条第2号(10年以下の拘禁刑もしくは3000万円以下の罰金)。同上
- e-Gov法令検索 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号) — 第5条第2項(業として年20%超=5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金)、第3項(年109.5%超=10年以下の拘禁刑もしくは3000万円以下の罰金)。同上
- e-Gov法令検索 利息制限法(昭和二十九年法律第百号) — 第1条(元本10万円未満は年2割、10万円以上100万円未満は年1割8分、100万円以上は年1割5分。号数は egov_elm.py --items で機械的に確認=3号)。同上
- e-Gov法令検索 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) — 第24条第1項(賃金の直接払いの原則)。同上
- e-Gov法令検索 法人税法(昭和四十年法律第三十四号) — 第22条第3項第3号(当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの)。同上
- e-Gov法令検索 印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号) — 別表第一第15号(債権譲渡又は債務引受けに関する契約書=一通につき200円、非課税物件欄「契約金額の記載のある契約書のうち、当該契約金額が一万円未満のもの」)。同上
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士・弁護士にご確認ください。