負担付贈与とは:引き受けた債務と時価・贈与税・譲渡所得を検算
負担付贈与は、受け取る人が一定の債務を負担することを条件に、財産をもらう贈与です。個人間で行う場合、もらう人の贈与税だけでなく、渡す人の譲渡所得も分けて確認します。
土地をもらい、代わりに贈与者の銀行借入金を引き受ける場面を例にします。土地の評価額と、渡す人が購入したときの取得費は別の金額です。下の検算表で、それぞれをどちらの計算に使うか確認できます。
土地の負担付贈与を双方で検算
この設例では、子が引き受ける銀行借入金を土地の時価から控除して贈与税を計算します。父の譲渡所得と税金は別に計算します。
次の表は、国税庁「負担付贈与の具体的計算」の土地と銀行借入金の例に、父の取得費などを仮定して加えたものです。受贈者は子、贈与者は父で、土地全部を贈与するとします。
設例は令和8年中の個人間の土地の負担付贈与です。子は贈与年の1月1日に18歳以上で、実父からの贈与を暦年課税・特例税率で計算します。同年の他の贈与はないものとします。父は譲渡年の1月1日に所有期間が5年を超える長期譲渡です。譲渡費用・特別控除はなく、所得控除は他の所得で使用済み、税額控除もないと仮定します。以下は円未満等の端数が出ない設例です。
| 計算段階 | 子の贈与税(受贈者) | 父の譲渡所得と税金(贈与者) |
|---|---|---|
| 入力:贈与時の土地の時価 | 1,500万円 | 譲渡収入には使わない |
| 入力:子が引き受ける銀行借入金 | 1,000万円を時価から控除 | 1,000万円を譲渡収入とする |
| 入力:父の土地の取得費 | 贈与財産の評価には使わない | 800万円と仮定 |
| 差引き後の金額 | 1,500万円-1,000万円=500万円(基礎控除前) | 1,000万円-800万円=200万円(譲渡所得) |
| 基礎控除・特別控除後 | 500万円-110万円=390万円 | 特別控除なしのため200万円 |
| 贈与税 | 390万円×15%-10万円=48万5,000円 | 贈与税の計算ではない |
| 譲渡に係る所得税 | 父の税金と分けて管理 | 200万円×15%=30万円 |
| 譲渡に係る復興特別所得税 | 父の税金と分けて管理 | 30万円×2.1%=6,300円 |
| 譲渡に係る住民税(所得割) | 父の税金と分けて管理 | 200万円×5%=10万円 |
贈与税の計算は国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」、父の税金は国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」の通常の税率によります。不動産取得税・登録免許税・手続費用や、その後の保有に伴う税金はこの表に含めていません。
表の子の贈与税は、債務を差し引いた後の贈与財産の価額が年内の贈与合計になる仮定です。同じ年にほかの贈与があれば合算から見直します。一般贈与財産と特例贈与財産が混在すれば、按分計算になります。相続時精算課税を選んだ贈与者からの贈与は、この暦年課税の設例とは計算が異なります。
父の欄は、長期譲渡の通常税率を用いた設例です。取得時期や所得控除の残額、税額控除・特例が異なれば、表の税額をそのまま使えません。申告全体の納付額ではなく、この土地の譲渡に対応する税額を分けて示しています。
土地の時価と取得費を混ぜない
個人間の土地の負担付贈与では、路線価による評価額からではなく、贈与時の通常の取引価額から負担額を引いて贈与財産の価額を求めます。
一方、負担付贈与の贈与者は、負担額でその財産を譲渡した扱いになります。土地・建物の譲渡所得は、収入から取得費と譲渡費用を引いて計算します。土地の贈与時の時価を、父の取得費に置き換えないことがポイントです。
建物の譲渡所得を実額の取得費で計算する場合は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引きます。購入時の売買契約書の金額を、そのまま建物の取得費にする設例ではありません。取得費が不明な場合などの扱いは、国税庁「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」で確認できます。
個人間の負担付贈与でも、財産が土地・借地権などや家屋・構築物など以外であれば、その財産の相続税評価額から負担額を控除します。財産別の評価方法は、国税庁「負担付贈与に対する課税」を起点に確認します。
負担の受益者と金額を確認する
負担額を差し引く前に、誰の債務を、誰が、どの内容で引き受けるのかを確認します。上の表は、子が父の銀行借入金を負担する設例です。借入残高だけでなく、合意した負担の内容を契約資料と照合するための表として使います。
負担付贈与で負担額が第三者の利益に帰する場合は、その第三者が負担額に相当する金額を贈与で取得した扱いになります。例えば、財産をもらう人が、条件として別の家族へ金銭を渡すような契約では、利益を受ける人も確認対象です。既存債権の返済を受ける銀行を、返済額だけを理由に贈与の受贈者とする意味ではありません。
介護などの約束を、借入金残高と同じように金額へ置き換えて差し引く計算は扱いません。負担の評価や、実際に引き受けたかどうかの判断が要るためです。契約の成立・書面・解除については贈与契約書の解説で分けて確認できます。
相談前にそろえる資料の確認表
相談前に、当事者や土地の価額、引き受ける債務などを整理します。次の表は、個人間の土地の負担付贈与について、前提を税務署・税理士へ伝えるための整理表です。税務上の必須添付書類の一覧ではありません。会社の経理担当者が役員個人や家族間の資料を預かるときも、会社の取引と混ぜずに整理します。
| 整理するもの | 照合する内容 | 資料の例 |
|---|---|---|
| 当事者と対象財産 | 個人間の取引か、誰のどの土地を贈与するか | 贈与契約書、登記事項証明書 |
| 贈与時の通常の取引価額 | 土地の価格の基準日と根拠。相続税評価額と区別する | 評価の根拠となる査定書・鑑定評価書など |
| 引き受ける債務 | 借入残高と合意した負担の内容、利益を受ける人 | 借入契約書、残高証明、債務負担に関する合意資料 |
| 贈与者の取得費・取得時期 | 土地の購入時の代金・取得費用と取得日 | 購入時の売買契約書、領収書、登記資料 |
| 譲渡に直接かかった費用 | 取得費との重複や、保有費用との混同がないか | 手数料等の請求書・領収書 |
| 受贈者の年内の贈与・課税方式 | ほかの贈与の有無、相続時精算課税の選択の有無 | 同年の贈与記録、過去の届出の控え |
金額がそろっても、債務の引受け自体の有効性や金融機関との手続が、この表だけで確定するわけではありません。契約・借入条件の確認と、税金の計算を分けて進めます。
暦年課税の贈与税計算機で税率の計算を確認するリンク先の贈与税計算機は、負担付贈与の評価方法や控除できる債務額を判定しません。入力する贈与財産の価額を確認した後の税率計算に使い、土地の時価を未調整のまま入力しないようにします。
よくある質問
負担付贈与なら、贈与した人には税金がかかりませんか?
かからないとは限りません。個人間の負担付贈与では、贈与者は負担額で財産を譲渡した扱いとなり、譲渡益が生じれば所得税の対象です。受贈者の贈与税とは別に確認します。
土地の負担付贈与は、路線価の評価額から借入金を引けばよいですか?
個人間の土地の負担付贈与では、贈与時の通常の取引価額から負担額を差し引きます。路線価による評価額を、そのまま計算の出発点にはしません。
負担額の利益を受ける人が、贈与者以外にもいる場合は?
負担付贈与の負担額が第三者の利益に帰する場合、その第三者は負担額相当の金額を贈与で取得した扱いになります。財産をもらう人と渡す人だけで確認を終えず、契約で誰が利益を受けるかも整理します。
出典
国税庁の各解説は令和8年4月1日現在法令等の版を参照しています。計算例の追加条件は本文で区別しました。
- 国税庁「負担付贈与に対する課税」:財産別の評価、負担額の控除、第三者の利益、贈与者の譲渡所得。
- 国税庁「負担付贈与の具体的計算」:土地と銀行借入金の設例。
- 国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」:年間合計、基礎控除、特例税率、一般税率との混在時の計算。
- 国税庁「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」:土地・建物の収入、取得費、譲渡費用。
- 国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」:長期譲渡の通常税率と復興特別所得税。
この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談への回答ではありません。負担の評価や課税方式・特例の適用可否は個別の事情によって異なります。判断に迷う場合は、所轄の税務署または税理士にご確認ください。