教育資金贈与は2026年3月で新規終了:残った口座の払出し・残額課税を検算
結論から言うと、教育資金の一括贈与の非課税は延長されず、2026年4月1日以後は新たに特例を受けられません。2026年3月31日までに特例を受けた口座のお金には、引き続き特例が適用されます。
残った口座では、教育費の領収書等を期限までに金融機関へ出し続けます。30歳到達などで契約が終わった時の使い残し(相続税の対象になった管理残額を除く)は、受贈者の死亡で終わった場合を除き、終わった年の贈与税の課税対象です。2023年4月1日以後に受けた分の残額は、暦年課税なら特例税率ではなく一般税率で計算します。
たとえば2023年7月に祖父から1,000万円を受け、学校等へ200万円払って30歳で終わると、残額800万円に151万円の贈与税です(200万円は全額が金融機関で確認・記録され、祖父が契約中に亡くならず、その年にほかの贈与がない暦年課税の場合・計算例A)。
特例の終了後にできないこと・続くこと
次の表は、2026年3月31日までに非課税の特例を受けた口座が、2026年4月1日以後にどうなるかをまとめたものです(租税特別措置法70条の2の2・国税庁 No.4510)。
| 手続き・場面 | 特例の終了後 |
|---|---|
| 新しい口座の開設(教育資金非課税申告書の提出) | 特例を受けられない |
| 既存の口座への追加の預入れ・信託 | 特例を受けられない |
| 口座からの払出しと教育費の支払 | 続けられる |
| 領収書等の金融機関への提出 | 続く(次の節) |
| 契約が終わった時の使い残し(管理残額を除く)への贈与税(受贈者の死亡による終了を除く) | 続く(計算例) |
| 贈与者が亡くなった時の管理残額への相続税 | 取得時期・受贈者の年齢などの条件しだいで続く(取得時期の表) |
既存の口座で非課税になっているのは、教育資金非課税申告書と追加の申告書に書いた額(非課税拠出額)で、受贈者1人につき累計1,500万円が上限です。
領収書等の提出期限と払出方法
ふだんの領収書等の提出期限は、口座を開いた時に選んだ払出方法で決まり、方法は後から変えられません(契約終了時の未提出分は別の期限)。
払出方法ごとの、領収書等を金融機関へ出す期限は次のとおりです(措置法70条の2の2第9項・国税庁Q&A Q3-1)。受贈者の死亡以外で契約が終わった時に未提出の分は、終わる日の節の期限が優先します。
| 選んだ払出方法 | 領収書等の提出期限 |
|---|---|
| 教育費を払った後に、払った額を口座から引き出す方式だけ | 領収書等の支払年月日から1年を経過する日 |
| それ以外の方式(先に引き出して払うなど) | 支払年月日の属する年の翌年3月15日 |
最初の預入れ等の日より前や契約終了日より後の支払、都度贈与の非課税(No.4405)を受けたお金で払った分は、教育資金支出額になりません。
翌年3月15日までに出す方式では、12月に引き出したお金で翌年1月に授業料を払うと、その引き出し額に見合う同じ年の領収書等がほかになければ、教育資金支出額として記録されません。
払戻しの手続きや受付の期日は、契約先の金融機関の案内も確かめてください。
塾や習い事など学校等以外への支払は、契約が終わった時の残額の計算で、差し引けるのが累計500万円までです(1,500万円の内数)。贈与者が亡くなった時の管理残額の計算でも同じです。
受贈者が23歳に達した日の翌日以後に塾・習い事など学校等以外へ払う指導などの費用は、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練の受講費用に限られます(国税庁パンフレット)。費目の細かい範囲は、文部科学省のQ&Aにあります。
契約が終わる日:30歳・40歳と届出
教育資金管理契約は、次のどれかに当たった日のうち、いちばん早い日に終わります(措置法70条の2の2第16項)。表の「教育訓練」は、教育訓練給付金の支給対象となる雇用保険法60条の2第1項の教育訓練です。
| 終わる事由 | 終わる日 |
|---|---|
| 30歳に達した(その日に在学か教育訓練中で、その月の翌月末日までに証明書類を付けて届け出た場合を除く) | 30歳に達した日 |
| 30歳に達した年の翌年以後、その年の在学・教育訓練を、証明書類を付けて12月31日までに届け出なかった | その年の12月31日 |
| 40歳に達した | 40歳に達した日 |
| 残高がゼロになり、終了に合意した | その合意に基づいて終わる日 |
| 受贈者が死亡した | 死亡した日(使い残しに贈与税はかからない) |
契約が終わった時点で出していない領収書等は、終了日の属する月の翌月末日までに金融機関へ出します(受贈者の死亡で終わった場合を除く)。
使い残しにかかる贈与税を検算する
契約が終わった時の残額(下の式)は、受贈者の死亡で終わった場合を除き、終了日の属する年の受贈者の贈与税の課税価格に入ります(措置法70条の2の2第17項・18項)。
残額 = 非課税拠出額 − 教育資金支出額(学校等以外は500万円まで・相続税の対象になった管理残額を含む)
非課税拠出額は、教育資金非課税申告書と追加の申告書に特例を受ける額として書いた額の合計です。教育資金支出額は、金融機関が領収書等で確認して記録した額の合計で、学校等以外への支払は500万円まで数え、贈与者の死亡で相続税の対象になった管理残額も含めます。
2023年4月1日以後に受けた分に対応する残額は、暦年課税なら一般税率で計算します。2023年3月31日以前に受けた分に対応する残額は、終了年の1月1日に18歳以上なら暦年課税で特例税率です。両方ある場合は、贈与者ごとに、取得した額の割合で残額を分けます(贈与者の死亡で管理残額があるときは調整あり・国税庁Q&A Q5-4)。
国税庁の設例:一般と特例への分け方
国税庁Q&Aの設例1は、祖父1人から2回受け、教育資金を900万円払った後に契約が終わった例です(贈与者の死亡はなく、受贈者は終了年の1月1日に18歳以上・暦年課税)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 2021年4月に取得した分 | 1,000万円 |
| 2023年7月に取得した分 | 500万円 |
| 教育資金支出額 | 900万円 |
| 残額(1,500万円−900万円) | 600万円 |
| 一般贈与財産(600万円×500万円÷1,500万円) | 200万円 |
| 特例贈与財産(600万円−200万円) | 400万円 |
税額は、一般贈与財産と特例贈与財産の両方がある年の計算(国税庁 No.4408 の(3))で出します。
計算例A:一般税率で計算する使い残し
2023年7月に祖父から1,000万円を受け、学校等へ200万円払い、30歳に達して終わった例です。祖父は契約中に亡くならず、支払は全額が金融機関で確認・記録され、その年にほかの贈与がない暦年課税(終了年の1月1日に18歳以上)とします。
| 計算 | 一般税率(実際) | 特例税率だった場合 |
|---|---|---|
| 残額(1,000万円−200万円) | 800万円 | 800万円 |
| 基礎控除110万円を引いた額 | 690万円 | 690万円 |
| 贈与税 | 690万円×40%−125万円=151万円 | 690万円×30%−90万円=117万円 |
計算例B:塾など学校等以外への支払が多い場合
2023年5月に祖父から1,500万円を受け、学校等へ700万円、塾など学校等以外へ600万円払って終わった例です。祖父は契約中に亡くならず、塾などの支払は受贈者が23歳になる前で全額が金融機関で確認・記録され、その年にほかの贈与がない暦年課税(終了年の1月1日に18歳以上)とします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 差し引ける教育資金支出額(700万円+500万円) | 1,200万円 |
| 残額(1,500万円−1,200万円) | 300万円 |
| 贈与税((300万円−110万円)×10%) | 19万円 |
申告が必要な場合は、終了日の属する年の翌年2月1日から3月15日までに申告します。
金融機関は、契約終了日(受贈者の死亡なら金融機関がそれを知った日)の属する月の翌々月末日までに、終了に関する調書を受贈者の納税地の税務署長へ出します(措置法70条の2の2第19項)。
相続時精算課税を選んでいる場合や、贈与者が2人以上いる場合は計算が変わります(国税庁Q&A Q5-4)。
贈与者が亡くなったときの管理残額
契約中に贈与者が亡くなると、受けた時期によっては、その日の管理残額を相続などで取得したとみなし、相続税の計算に入れます。
取得した時期ごとの扱いは次のとおりです(国税庁Q&A Q4-1の参考表)。表の「23歳未満等」は、亡くなった日に23歳未満、学校等に在学中、教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受けている場合です(在学・受講は書類を届出と一緒に出した場合)。
| 取得した時期 | 管理残額への相続税 | 孫などの2割加算 |
|---|---|---|
| 2019年3月31日まで | かからない | なし |
| 2019年4月〜2021年3月 | 亡くなる前3年以内の取得分だけかかる(23歳未満等を除く) | なし |
| 2021年4月〜2023年3月 | かかる(23歳未満等を除く) | あり |
| 2023年4月〜2026年3月 | かかる(23歳未満等で、かつ管理残額を除く相続税の課税価格の合計額が5億円以下なら、かからない) | あり |
2割加算は、受贈者が亡くなった人の子(代襲して相続人になった孫を含む)なら適用されません。その贈与者から相続などで財産を取得した人の課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超えると、相続税の申告が要ります。
特例の終了後に教育費を渡すとき
夫婦や親子などの扶養義務者が、教育費を必要な都度、支払に直接充てるために渡すお金は、通常必要と認められる範囲なら贈与税がかかりません(国税庁 No.4405)。教育費の名目でも、預金や株式の購入に充てると贈与税がかかります。
まとめて渡す場合の税額は贈与税の計算や生前贈与の比較で、贈与の証拠の残し方は贈与契約書の記事で確かめられます。
よくある質問
特例の終了後も口座のお金を教育費に使えますか?
使えます。2026年3月31日までに特例を受けた分には引き続き特例が適用されます。支出として記録される条件と例外は、本文の「領収書等の提出期限と払出方法」の節にまとめています。
4月以後に祖父母が口座へ追加で入金したら非課税ですか?
非課税になりません。2026年4月1日以後に追加で預け入れた分には、教育資金の一括贈与の特例を受けられません。
30歳になっても学生なら口座を続けられますか?
続けられます。30歳に達した日に在学中か、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けていて、その月の翌月末日までに在籍証明書などを付けて金融機関へ届け出た場合です。翌年以後は、その年に在学か同じ教育訓練の受講があれば、証明書類を付けて毎年12月31日までに届け出ます。40歳に達した日には終わります。
使い残しの贈与税はいつ申告しますか?
申告が必要な場合は、契約が終わった日の属する年の翌年2月1日から3月15日までに申告します。2023年4月1日以後に受けた分に対応する残額は、暦年課税なら一般税率で計算します。
翌年3月15日方式で、12月に引き出して翌年1月に払うと?
翌年3月15日までに領収書等を出す方式では、その引き出し額に見合う同じ年の領収書等がほかになければ、教育資金支出額として記録されません。引き出した年と支払の年が違うためです。
出典
租税特別措置法をe-Gov法令検索で、国税庁・文部科学省の案内をそれぞれのページで確認して作成。
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」70条の2の2:1項の期間と限度額、4項の追加の申告書、9項の領収書等の期限、16項の終了事由、17項・18項の残額、19項の終了に関する調書
- 国税庁 タックスアンサー「No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」(令和8年4月1日現在法令等):注1の適用期限の終了と既存分の扱い
- 国税庁「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税に関するQ&A」(令和8年5月):Q3-1・Q3-2(領収書等と学校等以外の限度)、Q4-1(管理残額の参考表)、Q5-1〜Q5-4(終了・届出・残額の計算と設例1)
- 国税庁「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」(令和5年5月):教育資金の範囲と年齢による制限
- 国税庁 タックスアンサー「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」:基礎控除と一般・特例の速算表
- 国税庁 タックスアンサー「No.4405 贈与税がかからない場合」:扶養義務者からの教育費
- 文部科学省「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」:令和8年3月31日での終了と教育資金の範囲のQ&A
この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談や、贈与・払出しの時期を勧めるものではありません。実際の手続きや判断は、口座のある金融機関・税務署・税理士にご確認ください。